いもうと 第1話

280 名無しさん@ピンキー sage 2008/01/25(金) 17:35:26 ID:A3j2hVLl
pipipi、pipipi、pi

目覚まし時計を止めて時間を確認する。
6時35分。
もう少し寝ていても学校には間に合うが、おそらく起きられないだろう。
二度寝は人類の大敵である。
のろのろとベッドから出て洗面所へ行き、顔を洗ってリビングに向かう。

「おはようございます、兄さん。」

エプロン姿の美鈴がこちらを向いて微笑む。

「おはよう美鈴。」

お決まりの朝の挨拶。
テーブルの上には弁当が二つ。
僕が起きる頃には既に出来上がっている。

「今日も早いね。朝キツかったら弁当僕が作ろうか?」

「私より兄さんの方が朝弱いじゃないですか。
 それにお弁当作りは好きでやってますから心配しなくても大丈夫ですよ。」

やんわりと否定される。






281 名無しさん@ピンキー sage 2008/01/25(金) 17:40:08 ID:A3j2hVLl
小さい頃、僕の家はかなり貧しかった。
少しでも生活を楽にするため、母さんもパートに出ていた。
家事と育児と仕事に追われる毎日は相当大変なものだったのだろう。
僕が小学校二年の冬に母さんは倒れた。

そして二度と目覚めることはなかった。

原因が過労だと聞いた時、父さんが見せた悔恨の表情を僕は今でも覚えている。
あの日父さんは言った。

「父さんがもっと働いていればこんなことにはならなかった。
 父さんがお前達から母さんを奪ったんだ。」

そして最後に付け加えた。

「祐、美鈴を頼んだぞ。どんなことがあっても、お前が美鈴を守るんだ。」







その日から父さんは気が狂ったかのように仕事に集中した。
僕達に貧しい生活をさせないために、父さんは夜遅くまで働き続けた。
そして家を空けることが多くなった父さんの代わりに、僕が美鈴の面倒を見た。
母親がいないと美鈴がいじめられたこともあったけど、僕は全力で美鈴を守った。
いつしか僕の心には、「何があっても美鈴を守り抜く」という固い決意が芽生えていた。



282 名無しさん@ピンキー sage 2008/01/25(金) 17:41:32 ID:A3j2hVLl
そんな決意はどこへやら、美鈴に頼りっぱなしの現状を思い返す。
家事は全て美鈴がしている。
母さんのこともあったから、分担して交代制にしようと提案したこともあったけど、

「私が好きでしているんです。それに兄さんには任せられません。」

と断られてしまった。

確かにそうだろう。
自慢にならないが、僕は驚く程なくし物が多い。
特にパンツや靴下、Tシャツのような衣類の紛失は後を絶たない。
使い古したものばかりなのがせめてもの救いではあるが、やはりいい気はしない。
とにかく、こんな兄に家事はさせられないという美鈴の思いもあるのだろう。

そこまで考えて、情けない自分に溜息が漏れる。








そんなことを考えながら、食事を済ませて支度を整える。

「じゃあ美鈴、先に行くね。」

一声かけて玄関へと向かう。
普段は一緒に登校するのだけど、今週は週番なのでいつもより早く学校に行かなければいけない。


靴を履いていると、美鈴が玄関へとやって来た。

「いってらっしゃい兄さん。お弁当は昼休みに持っていきますね。」

「わざわざそんなことしなくても自分で持っていくのに。大変じゃない?」

「大丈夫ですよ。兄さんに虫がついてないかチェックしないといけませんし。
 なにより出したてを食べて欲しいですから。」

「いつも虫虫って言ってるけど、僕ってそんなに不潔かな?」

「いえ、兄さんはいつも素敵です。それより時間大丈夫なんですか?」

「わ、ほんとだ。じゃあ行って来ます。」

僕は慌てて家を出た。




283 名無しさん@ピンキー sage 2008/01/25(金) 17:43:00 ID:A3j2hVLl
外に出た瞬間、あまりの寒さに身震いしてしまう。
凍て付いた冬空の下を一人歩きながら考える。

美鈴はかなり優秀だ。
勉強も運動も完璧だし、兄の僕から見ても綺麗な顔をしていると思う。

「透き通るような白い肌、肩で揃えた艶やかな黒髪、気の強そうな印象を与えるつり目、
 そして少しつきだした唇。美鈴ちゃんは男を惹きつける全てを兼ね備えている!!
 たまらん!!非常に!!」

とは僕の親友の話。
なんだか美鈴をいやらしい目で見てるような気もするけど、いつでもこのテンションなのでさして気にならない。
とにかく、美鈴は非の打ち所がないのだ。
何もかも平凡な僕とは大違いだ。
情けなくもあるけど、兄として優秀な妹を持つのはやっぱり嬉しい。

そんな美鈴を家に縛り付けておいていいのだろうか。
美鈴は部活には入ってない。
買い物や家事があるから学校が終わったらすぐ家に帰ってしまう。
(美鈴なら勧誘してくる部活もたくさんあるんだろうな。)
そんなことを思いながら、僕は学校へと向かった。






284 名無しさん@ピンキー sage 2008/01/25(金) 17:43:31 ID:A3j2hVLl
兄さんを見送った後、私はリビングで兄さんを想いながらコーヒーを飲んでいました。
兄さんは今日も素敵でした。
見つめているだけで体が熱くなってしまう程です。
このまま自分を慰めてしまおうかとも思いましたが、お昼まで我慢することにしました。
兄さんには三食全てで私を味わってもらうんです。
   兄さんに食べられる。
なんて甘美な響きでしょう。

「……ぁ」

まずいです。想像しただけで少し達してしまいました。
ごめんなさい兄さん。
美鈴は自制心のない、いけない子です。
このままだと自分を抑えられそうにないので、少し早いですが家を出ることにしました。
鞄に二人分のお弁当を入れた後、自分の部屋に向かいます。
机の一番下、鍵のついた引き出しを開けると、中には私の宝物が入っています。

「今日はこれにしよう。」

黒のトランクスを取り出して鞄に入れた後、私は家を出ました。

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最終更新:2008年02月04日 23:33
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