512
小ネタ『酔っ払い旋風』 sage 2007/09/07(金) 01:23:22 ID:5MKuTMd5
「たっらいまぁぁ~おれぇりゃんのおかえりでしゅよ~ぉ」
夜の10時、俺の平穏は如何考えてもしらふとは思えない様子の姉ちゃんの帰宅でぶち壊された。
恐る恐る玄関の方を見ると、顔を真っ赤にして千鳥足で廊下を進む姉の姿があった。
と言うか、良く見てみると、姉ちゃん、ハイヒールを脱いでいないのだが………
まあ、それはさて置き
あの呂律の回らない喋り口調から多分、姉ちゃんは会社の飲み会か何かで散々飲んで来たのだろう。
恐らく、姉ちゃんがああなるまでに、一緒に飲んだ同僚の人の何人かは撃沈している筈だ。
済まない、至らない姉の所為で撃沈してしまった同僚の人、本当に済まない!
「あんれぇ~?だぁれもいにゃいの~ぉ?」
拙い、この状態の姉ちゃんに捕まったら多分タダでは済まされない。
ここは部屋に閉じ篭った方が安全だ。
「んぁ~………しょういえばおかあしゃんもおとうしゃんも温泉に行ってたッけ~?」
ああ、そうだよ。
今、父さんも母さんも結婚30周年と言う事で夫婦水入らずの温泉旅行に行っているんだ。
だからその間は静かに過ごせると踏んでたのに………姉ちゃんがいた事をつい失念していたorz
「おとうと~ぉ、いるんでしょ~?」
呼ばれてホイホイと出る程、俺は馬鹿ではない。
俺は姉ちゃんの呼び出しを無視して、読書の方へと意識を傾けた。
「んみゅ~、呼んでも出てこないんだったりゃこっちから来ましゅよ~」
その言葉と共に、どたどたとハイヒールを履いたまま木の廊下を歩く音がこちらに近付いてくる。
大丈夫だ、鍵はしっかりと掛けている。念の為につっかえ棒も使った。
これで例え、姉ちゃんが合鍵を持ってたとしてもつっかえ棒が邪魔をして入る事は出来ない筈だ。
「あるぇ~?なんで開かないにょ~?」
程なく、姉ちゃんがドアを開けようとドアノブと格闘を始めるが、
鍵が無い以上は鍵の掛かったドアが開く筈が無く、姉ちゃんは不思議そうに呟く。
「しかたないにゃ~………」
良し、このまま諦めてさっさと寝てくれ。お願いだ。
俺は心の中であらゆる存在に対して、必死に祈りをささげる。
513 小ネタ『酔っ払い旋風』 sage 2007/09/07(金) 01:27:22 ID:5MKuTMd5
ド カ ン !
しかし、俺の願いはドアが吹き飛ぶ音と共にあっさりと打ち崩される。
如何やら姉ちゃんはドアに思いっきり体当たりをしたらしく
倒れたドアと共に姉ちゃんが俺の部屋に転がり込む。
「ひっしゃつ、だいなみっくちょっぷぅ~………」
後で言うのか!と言うか如何見てもチョップじゃなくてさっきのは只の体当たりだ!
って、突っ込んでいる場合じゃなくて。
「んふふふ~、弟く~ん。お姉ちゃんとあしょぼう~」
直ぐに姉ちゃんがヨタヨタと立ち上がり、酒臭い息を撒き散らしながらこちらに寄って来る。
「あ、遊ぼうってどんな遊びをするつもりだよ、姉ちゃん………」
「ん~?、性的なプロレスごっこ、かな?」
やっぱりか、やっぱりそのつもりか!
「来るな…来るなって!俺は遊ぶつもりは毛頭無いって!」
「だいりょうぶりょ~、いりゃい事は何もしにゃいって~」
後ずさりする俺に対して、姉ちゃんは指先をワキワキと動かしながらにじり寄ってくる。
拙い、拙過ぎる。安全だと思っていた筈の自室が、途端に逃げ場のないどん詰まりに変化してしまった!
このままでは酔った事によって只でさえ無い自制心が完全に消し飛んだ姉ちゃんによって絞り尽くされてしまう!
考えろ、考えるんだ!何とかしてこの状況から逃れる方法を!考え出すんだ!
と、打開策を考え始めた矢先
「………う゛っ」
不意に、にじり寄って来ていた姉ちゃんの動きが呻き声と共に止まる。
しかも、顔を蒼くして口元を両手で抑えていたりする。
酔っ払いがこのポーズを取ったときは必ず………地獄の門が開く。
俺の脳内に『WARNING! WARNING! 発射秒読み開始 乗組員はすみやかに退避せよ!』のコールが響き渡る。
しかし、この時の俺に退避するべき場所は存在しなかった。
「お、おい、姉ちゃん、やめろ。こんな所で止めて………」
「も゛う゛………我慢できにゃ―――」
――――そして地獄の門は開かれた。
この後の事は俺の記憶に留めたくない為、記載しないでおく。
只、その翌朝、半分泣きそうな顔で汚染された衣服を洗濯する俺と、
姉ちゃんの自室のベットで二日酔いによる頭痛で喘ぐ姉ちゃんの姿があった事だけを記しておく。
最終更新:2007年10月21日 01:23