キモシスタープリンセス

534 キモシスタープリンセス sage 2008/02/27(水) 00:44:42 ID:G0EWXIWA
 朝起きて僕がまずすることは、布団をめくって隣に誰かいないか確認することだ。今日はいちいち
布団をめくらなくても分かった。目を開ける前から、胸に誰かの温もりと重みを感じたからだ。
「この重さ……遥だな」
「せいかーい! おはようお兄ちゃん」
「夜中に僕の布団の中に潜り込むのは止めなさいと毎日のように言っているでしょうが」
「いいじゃない、別に変なことはしてないしー。ホントだよ、抱きつくだけでお兄ちゃんのには指一
本触れてないから」
 その割に、遥ががっちり両足を巻きつけている右足の太股辺りに、ぐっしょりと湿っぽい感触があ
る。無言で布団をめくると、何も履いていない妹の下半身が見えて、股の辺りが盛大に濡れている。
「お兄ちゃん」
 息を荒げ頬を上気させている遥をやんわり引き剥がし、僕はベッドから降りる。さて、まずはどこ
を探そうか。とりあえず屈みこんでベッドの下を覗くと、闇の中に金色の瞳が見えた。その瞳がすっ
と細まり、ベッドの下に潜んでいた少女が妖しく微笑む。
「……おはよう、兄様……」
「冥、ベッドの下で眠って風邪を引くといけないからやめなさいって何度も言ってるでしょう」
「……大丈夫、愛の力でウイルス皆殺し……」
「そうだね、キモすぎてウイルスが自殺するかもね」
「あふぅ」
 小柄な体を抱きしめてぞくぞくと身震いしている冥をとりあえず無視して、僕は壁際に歩み寄る。
そこに備え付けられている大きなクローゼットを開けると、長い黒髪の少女が僕の制服に赤らんだ顔
を埋めているところだった。右手は制服をつかみよせ、左手は寝巻きの中にもぐりこんで絶え間なく
股間をまさぐっている。
「ハァハァ……兄さんの臭い……」
「おはよう楓」
「ああ兄さん、おはよう。ねえ、この制服もらってもいい?」
「ダメ。後で鼻噛んだティッシュあげるからそれで我慢しなさい」
「ああ、兄さんの体液つきティッシュ!」
 体をくねらせる楓を放置して、僕は箪笥の一番下の段を引き開ける。詰め込まれた僕の下着に、幼
稚園児ぐらいの女の子が埋もれて夢見るようにうっとりしている。
「兄ちゃまぁ」
「おはよう木霊」
「あ、おはよう兄ちゃま」
「とりあえずトランクスを頭に被るのはやめなさい」
「はーい」
 素直かつ元気に返事をしつつ、その場から動こうとはしない木霊をほっぽりだして、僕は机の下を
覗き込む。大人しそうな女の子が膝を抱えて丸くなっていた。僕と目が合った途端に、顔が真っ赤に
なって体が硬直する。
「おおおお、お兄さん」
「おはよう八重」
「あのあのあの、お兄さんが勉強してるときにここにいたら、ずっとお兄さんのたくましい下半身を
眺めていられるなーとかそういう、あのあのあの」
「妄想たくましすぎてキモイよ八重」
「ふはぁ」


535 キモシスタープリンセス sage 2008/02/27(水) 00:45:13 ID:G0EWXIWA
 半分白目になって涎を垂らし始めた八重から体を引きつつ、僕は机の傍らに置いてある短めの物干
し竿を手に取る。この辺りかな、と目星をつけて天井の一隅を突いてみる。「さすがだね」と声がし
て天井板の一部がくるりと回転し、誰かがひらりと床に降り立った。頭の上で一つに束ねた長い黒髪
と、涼やかな目元が印象的な少女。服装はいつも通りの忍装束だ。
「おはよう兄上」
「おはよう鈴音」
「凄いね、気配は完全に殺してたつもりだったのに」
「気を抜いたら好きなように視姦されると思うとね。どうせ僕が寝てる間に自慰を楽しんだんだろう
から、ちゃんと後始末はしておくようにね。天井裏から変な臭いが漂い出したらたまったもんじゃな
いから」
「ふふ、今日もクールで素敵だよ兄上」
 うっとりしている鈴音の横を通り過ぎて、壁の前に立つ。そこだけ何か、微妙に風景がぐにゃりと
歪んでいるような気がする。手を伸ばすと何か柔らかいものに触れて、「あん」と悩ましい声がした。
壁だと思っていたところから、唐突に人影が現れる。起伏激しい体のラインをくっきり浮き上がらせ
る、特殊な素材のスーツに身を包んだ女の子だ。長い金髪と青い瞳。日本人離れした容貌。彼女は舌
を出して悪戯っぽく笑う。
「ばれちゃったねー。おはようブラザー」
「おはようリリィ。風景同化能力とか、こんなしょうもないことに使わないでくれないかな。ヒー
ローだったら悪の組織との戦いとかに使ってよ」
「世界平和よりブラザーの寝顔の方が大事よ」
「うん、死んだらいいと思うよ」
「いやーん、今日もブラザーの毒舌が最高にエクスタシー」
 頬に手を添えて身をくねらせるリリィから離れて、僕は部屋の片隅に置いてある冷蔵庫に歩み寄る。
僕の部屋に、本来こんなものは置いていないはずだ。そばでじーっと見ていると、不意に機械的な唸
りを発して、冷蔵庫がガチャガチャと高速で変形し始めた。一秒も経たない内に、そこには青い
ショートヘアーのスレンダーな美少女が立っている。相変わらず謎に満ちた変形機構だ。
「感想を求めます。本日の擬装はいかがでしたか、兄的存在」
「おはようKMS-03.正直言ってあの形態の意図が分からない」
「理解を求めます。兄的存在が料理をしているときに後ろから思うままに臀部を観察するのが目的です」
「一度全パーツ解体してウイルスチェックしてもらうといいと思うよ」
「解体を求めます。兄的存在が直接作業に従事してくださるのなら」
 生真面目な表情でバグっているKMS-03から目をそらし、僕は机の上のポットに歩み寄る。い
つもならば紅茶を淹れるために使うポットだが、何故か水位計が真っ青になっている。無言でポット
の蓋を開くと、中が青い粘体に満たされていた。その青い粘体が勢いよく飛び出し、僕の体に絡みつ
く。粘体は女の形を取り、目やら口やらも次々と生成される。
「おはよーあにー。きづかずにぼくをのんでくれなくて、とってもざんねんー」
「挨拶しながら僕のズボンに潜り込もうとするのはやめなさい、スラミー」
「えー、いいじゃんいいじゃん、すげーきもちいーよぼくのからだ」
「オナグッズ使ってるみたいで嫌な気分になるんだよ君の体は」
「いやーん、じんしゅさべつー」
 大して傷ついた風でもないスラミーを無理矢理引き剥がし、僕は背後からするすると伸びてきてい
た緑色の触手を踏み潰す。力いっぱい踏みにじりながら部屋の入り口付近を見ると、植物のような緑
色の体をした女が、足の代わりに生えている無数の触手を蠢かして激しく身悶えしているところだった。
「おおう、兄ちゃんったら朝から激しいったらないわもう」
「おはようドリィ。毎朝毎朝触手で僕のお尻を狙うのはやめなさいって何度言ったら分かるの君は」
「怖がらなくてもいいのよ兄ちゃん、痛いのは最初だけなんだから」
「痛いのは君の存在だけでいいよ」
「ひどい! でもそこが大好き!」
 一人で興奮しているドリィを触手ごと投げ飛ばしつつ、僕は天井の隅を見ながら短く念仏を唱える。
すると「ぎゃん!」という声がして、空気から溶け出すように半透明の女が現れた。
「念仏プレイって幽霊特有のものよね兄君様」
「おはよう幽子。いい加減成仏してくれないかな君」
「いやー。兄君様を呪い殺して一生地獄で愛し合うのがわたしの未練だもんねー」
「そのキモい妄想を抱いたまま逝け」
「うふふのふー」


536 キモシスタープリンセス sage 2008/02/27(水) 00:45:35 ID:G0EWXIWA
 わけの分からない笑い声を響かせる幽子に向かってもう一度念仏を唱えつつ、僕は足元を見下ろす。
手の平に乗るぐらいのサイズの小さな女の子が、そろりそろりと近づいてくるところだった。摘み上
げて目の高さまで持ち上げると、小人の妹は舌打ちした。
「ちぇっ、もう少しだったのにー」
「おはようリタ。毎朝毎朝僕の足に上ろうとするのはやめなさいって何度言えば」
「リタの登山日記! すね毛の森を掻き分けて、目指すは山頂、にーやんのおにんにん! 旗を立て
る代わりにオナホールになってあげるよ?」
「悪いけどそういう類のグッズには全く興味がない」
「きもちいいのになー」
 頬を膨らませるリタをぽいっと投げ捨てて、僕はようやく一息ついた。それぞれに気持ち悪い表情
を浮かべている妹たちをちらりと見やったあと、無言で部屋を飛び出す。我先にと後に続こうとした
妹たちが、狭い入り口のところで押し合いへし合いしている内に、たったか階段を駆け下りてリビン
グに向かう。父さんがテーブルの前に座って紅茶を飲んでいた。
「おはよう父さん」
「おう、おはよう息子よ。ちゃんと全員見つけられたか?」
「ああもちろん。見つけられなかったら僕はいろんな意味で終わりだ」
 「毎朝部屋に忍び込む妹たち。見つけられなかった者は兄を好きにできる」という馬鹿げた取り決
めがなされてから早一年。隠れるつもりがさらさらない妹も多いとは言え、僕の純潔が保たれている
というこの事実は、もはや奇跡に近い。
「って言うか、今さらだけどさ」
「なんだ息子よ」
「多いよね、妹。十二人」
「ある意味常識的な数だぞ」
「どこがさ。しかもなんか人外多いし」
「父さん頑張ったからな」
「どこで誰と頑張ってきたのさ、全く。しかも全員変態ばっかりだし」
「いいじゃないか、兄として愛してもらっていて」
「いや、あれは兄に対する愛し方じゃないと思う」
 雑談している間にも、階上からは凄まじい物音と振動が響いてきている。銃撃とか剣戟とかおぞま
しい絶叫とか、そりゃもういろいろだ。部屋がメチャクチャになっていることは想像に難くない。
「でも帰ってくる頃には綺麗に元通りになってるんだもんなあ」
「父さん頑張ってるからな」
「その努力を違う方向に注いでくれ」
 会話を続けつつも、手早く朝飯を片付ける。早くしないと本日の勝利者が降りてきて、登校風景が
恐ろしいことになってしまう。
「じゃ、行ってくるね」
「おう、行ってらっしゃい」
 のん気な父さんの声と階上からの戦闘音を背に、僕は家の外へ出た。

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最終更新:2008年03月02日 21:31
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