690 まいドール 第2話(1/4) sage 2008/03/07(金) 23:41:23 ID:Op4TaBXe
突然だが、俺の妹はロボットだった。アンドロイドというのか? まあ、細かい事はどうでも良い。
マッドサイエンティストの両親が「完全な人格形成」の研究のため「本人」にも自分は人間だと
思いこませて育てるという、とんでもない実験をやっていたんだ。
だが、目下の問題は妹……舞が人間じゃなかったってことじゃない。実の兄妹じゃないという事実が、
舞の「とある欲望」を抑え込んでいた箍を爆砕してしまったことなんだ……
まいドール 第2話 「おねがい、ご主人さま」
どすん。
頭上から異音が聞こえた。音源はおそらく舞の部屋だ。無視しろとささやく第六感に逆らって2階に上がる。
「おい、どうした?」
部屋のドアを叩きつつ声をかけるが返事がない。代わりに切れ切れの悲鳴じみた声が漏れてくる。
どうやら非常事態のようだ。
「何事だ?開けるぞ」
部屋のドアに錠はない。一応声をかけてドアを開き…深く後悔した。済まん、我が第六感よ。
お前の忠告が正しかった。
舞の部屋はいわゆる「女の子っぽい」ものではない。本人曰く「物が多いと、片付けられない」とかで、
少々…かなり殺風景だ。
そんな部屋でもさすがに机はあって、机上にはノートパソコンが置かれている。そして部屋の主は机の前で、
椅子ごと床にひっくり返っていた……全裸で。
両手が軽く開いた股間でうごめく都度、色っぽいあえぎ声と共に頤がのけぞり、申し訳程度に膨らんだ胸が
突き出される。指の間から粘りつく水音がする。つまり、その…ええい、妹の恥ずかしい姿を実況するなんて
罰ゲームは勘弁してくれ。
「どうした?、何やってるんだ?」
何をやってるのかは見ればわかるが、聞かずにいられないのが人情ってものだ。いくら兄に懸想する変態妹でも、
この状況で快楽を貪り続けるほど壊れては…いるかも知れんな。
「おにい…ンッ…た、助け…アフゥ…ン…」
前言撤回。どうやら何か事故のようだ。手掛かりを求めて部屋を見回す。
机上のノートパソコンは、ロボットの設定変更やソフトウエアのメンテに使う物で、親父が
「ばれちゃったからには仕方ない。これからは自分の整備はできるだけ自分でするように」
と、もっともなのか無茶なのか判断に苦しむお言葉と共に、舞に与えた物だ。
パソコンの画面を見て状況を把握する。両腕が外部制御、サンプリングした動作を自動反復…動作の内容は…
これか。そう言えばこいつ、ロボットの癖に機械音痴だった。
「両手とも勝手に動く設定にして、止めるに止められなくなったか。愚か者が」
床で悶えている舞を椅子ごと無理やり引き起こす。
舞の左肩、鎖骨あたりの皮膚を引っ張って巧妙に偽装された端子を露出させ、パソコンから伸びた
ケーブルを接続。停止コマンドを打ち込むと、舞はようやく強制自慰から解放された。
「手を動かしてみろ。思い通りに動くか?」
尋ねたら舞のやつ、いきなり力いっぱい抱きついて、あまつさえ俺の腿にその……股間を
擦りつけてきやがった。
「うん、ちゃんと動く。あ、やっぱり本物は良いよぉ」
直ったようだな。頭の中が暴走してるのはいつものことだし、これで良……くない!
「やめんか」
とりあえず舞を引き剥がして床に坐らせる。恍惚とした表情が一気に不機嫌へと変わるのが、
面白いといえば面白い。
「そもそも、なんであんなことを?」
一人遊びなら普通にやれば良いだろう、とはさすがに言えなかった。舞の答えは俺の想像を超えた。
「お兄ちゃんに抱かれてるごっこ。自分でするより、してもらってるつもりの方が気持ち良いかなぁって」
「で、両手とも勝手に動くようにしたら、自分じゃ止められなくなることに気づかなかったと」
「うん、失敗だった。本物のお兄ちゃんの方が気持ち良いし危なくないのに。反省」
爽やかに言い放たれて、俺の気力がまた削り取られた。
「反省する所が違うだろう?ええい、抱きつくな、すりすりすんな」
「細かいこといわないの。というか、この状況なら何も言わずに押し倒すのが礼儀ってもんでしょう!」
こっちが必死に流してやっているのに、こやつは…
「嫁入り前の娘がいうセリフじゃないぞ。それ」
「ロボットをどこへ嫁にやる気よ? 裸で脚まで開いてるのに、一体あたしの何が不足?」
「常識と道徳と自制心と、なにより色気が足らんな。風邪…はひかんかもしれんが、さっさと服を着ろ。
機械は説明書を良く読んでから試すんだぞ」
俺は、再び引き剥がした舞に背を向けて部屋を出た。だから俺は、舞がかなりシリアスな目つきに
なっていることにも、再び自分にケーブルをつないだ事にも気付けなかった。
691 まいドール第2話(2/4) sage 2008/03/07(金) 23:44:11 ID:Op4TaBXe
最初の異変は、翌朝に発生した。舞が俺より先に起きていたのだ。正確には「起きた」というのは
間違いだった。眠らないように設定を変更したのだという。
「ほんとは必要ないのに、寝る時間がもったいないじゃない」
と答える様子に微妙な違和感を感じた。なんだろ?……こいつ、呼吸してない!
「心音もないよ。人間の真似する機能は止めちゃった」
「お前、何考えてるんだ!」
「人間のふりしてたら、お兄ちゃんは『妹』としか見てくれないじゃない。だからあたしは人間をやめる!
…最初から人間じゃなかったけど」
いや、お前が人間だろうとロボットだろうと、妹にしか見えないよ…という前に、背後から声がかかった。
「で、そのロボットちゃんは朝ご飯食べないの?」
お袋、いつの間に後ろを取った?
「うっ……要らないに決まってるじゃない!」
食い気に負けかけたその様を見て、俺もお袋も(大したことない)と思っちまった…甘かった。
それからの舞は、もう24時間俺にくっつきっ放しだった。家にいればのべつ幕無しに抱きついてくるし、
暑苦しいから離れろと言えば離れこそするものの、じっと俺を見つめている。場所を移ってみても、いつの間にか
密着するほどの間近に出現する。体温、心音、呼吸まで止めると気配って消えるもんらしい…気がつくとすぐそばに
舞がいて、驚きのあまり俺の心臓まで止まりそうになったことが3回ほどあった。
まずいことに連休で「学校に行け」とも言えない。こっちが家を出てみたが、きっちりついてきやがる。
無理やり振り切ろうとも考えたが、舞のやつ二輪持参だ。まさかカーチェイスを繰り広げるわけにもいかん。それに
夜になれば俺も家に帰らねばならん。
帰ったらもう、常時密着だ。風呂にまで乱入してきやがる。風呂から逃げ出したら今度は俺の部屋に出現して、
何をするでもなくじっと俺を見つめている。
抱きつかれたり、抱いてくれと迫られるのも困るが、無言で圧力を加え続けられるのも、結構怖いものだと思い知った。
「自分の部屋に帰らないのか?」
「ロボットに部屋なんかいらないじゃない」
「そんなに見つめられると、落ち着かんのだが」
「家電製品の視線なんか、気にしない気にしない」
なら勝手にしろ、と舞を無視して寝たら翌朝には全裸で布団に潜り込んでいたのはもう、お約束と諦めるべきなのか。
そして、最大の危機が訪れたのは、次の夜だった。
ストーカーというのも馬鹿馬鹿しい舞の行いに俺の忍耐が限界に達し、ついに怒鳴りつけちまったんだ。
「人間とかロボット以前に、お前のやってる事は異常だ! 人間なら病院送り、ロボットならプログラム書き換えものだぞ!」
「プログラム書き換え」のところで、舞の表情が変わった。一分に満たないほどの時間、黙って考え込んだ舞は俺に言った
「わかった。これで終わりにするから、ちょっと待ってて」
舞は俺の部屋を出、数分後に戻ってきた…全裸で、自分の端子につながったノートパソコンを抱えて。
「今度はなんだ? それに最近全裸が多いぞ…」
言いかけた俺を舞は手で制した。なにやら解らないが、異様な気迫がこもっている。
「あたしはロボットだよ。だからあたしたちって、本当は兄妹じゃないんだよね。なら本当はあたしたちって何かな?
ずっと考えてたんだ」
「何って兄妹以外の何だと」
「もし、人間だと思いこまされていなければ、あたしはお兄ちゃんの事をこう呼んでいたはずだよ……ご主人様」
「舞、何が言いたい?」
舞は微笑んだ。泣き笑いだった。
「お兄ちゃん。さっきロボットならプログラム書き換えだって言ったよね? あたしもそう思う。こんなのおかしいよね。
でも、駄目だって言われてもやめられないんだよ。ねえ、あたしって壊れたロボットかな? それとも壊れた人間かな?
どっちでもいいや。すぐに直すんだから」
舞はノートパソコンを開いた。既にアプリケーションが起動している。
「今度売り出した、あたしの市販タイプ用のソフトらしいよ。絶対服従する持ち主を設定するんだって。これを使って、
あたしはお兄ちゃんの物になるわ。妹として最後のお願い、実行ボタンを押して」
示された画面を見て、俺は生まれて初めて「背筋が凍る」という体験をした。
692 まいドール第2話(3/4) sage 2008/03/07(金) 23:48:35 ID:Op4TaBXe
「ちょっと待て!」
やばい。所有者登録どころかこいつは初期設定、それも「人格初期化」にチェックが入ってやがる。これを
実行したら舞は、舞というキャラクターは消える。わかってんのか? このメカ音痴。
「恋人になってくれないなら、お願い。あたしだけのご主人様になって」
「ちょっと待て。お前がやりたいことはその画面じゃない。人格初期化するって意味わかってるのか?」
「騙そうったって聞かないからね!」
聞く耳持たんか。どうする? 飛びかかるより舞の指の方が早い。
俺が迷っている間に舞がキーボードを操作すると、色っぽい吐息が漏れ、無毛の股間から粘液が糸を引く。
裸で迫られたことも、一人でしてるのを見たこともあるが、ここまで極端に欲情した姿を見るのは初めてだ。
性器ユニットを直接操作しやがったのか、こんなことだけはしっかり覚えやがって。
なにか策はないか……あった。! 舞が示すディスプレイの片隅に、チャンスを示す表示が。時間を稼ぐんだ…
「ほら、スイッチ一つでこんなにいやらしくなる。わかるでしょ? あたし人形なんだよ!
何したって良い玩具なんだよ!」
興奮して時間に気づかないのは助かるが、妹のこういう姿を見せられると反応に困るな…
「だからお前は妹で玩具じゃないと何度言えばわかるんだ。まずは俺の話を聞けってば」
舞は、俺の説得を完全に無視して、片足を近くの椅子にかけた。大きく開いた陰唇の間に左指を差し込み、粘液をかき回してるところを見せつける。
くそ、残り時間はイヤになるくらいゆっくりと減っていく。
「あたしは妹じゃ嫌なの! だから妹も人間もやめるの!このボタンを押すだけで、あたしはお兄ちゃんに
絶対服従する人形になる。あたしのことが嫌いなら、死んじゃえって命令すればすむんだよ!」
「だから、それをやりたいなら別の画面だと…」
「わかった。お兄ちゃんが押してくれないなら、勝手にやっちゃう。このままずっと妹なら、道具の方が良いもの!」
聞いちゃいねぇ。マウスカーソルが「実行」の上に乗る。あと5秒。なんで1秒ってのはこんなに長いんだ?
4…3……2……1…
「……あれ? なんで? 手がうごか…な…い…」
何とか間に合ったか。俺は残り時間から「バッテリー切れ」の表示に変わったPC画面を目の隅でとらえつつ、
自動シャットダウン機能が働いて倒れこんだ舞を抱き止めた。
通常のアンドロイドなら、バッテリー残量は自前のシステムで常時監視している。だが本人も人間と
誤認するように作られた舞に「電池の残りがわかる感覚」などあるはずもない。パソコンをつないで確認しないと
自分のバッテリー残量が判らないのだ。しかもこいつはこの2日間、眠りもせずにずっと俺にへばりついていた。
充電もせずに一日中バッテリーを浪費し続けていたわけだ。
「どっこいしょっと」
年寄りじみた掛け声をかけて、動かなくなった舞を肩にかつぐ。軽いな。そして柔らかい。あのマッドども、
とんでもないものを作りやがる。
作り物だということを目の前で見せつけられたばかりなのに、こいつが人間じゃないなんて未だに信じ切れん。
そんな気分にまとわりつかれつつ、俺は地下実験室(そう、我が家にはそんな代物があるのだ)に向かった。
「……Peep…整備もーど2デ起動…新規ノでばいすヲ検出シマシタ……って、あたしは何を言ってるのよ?」
ちゃんと再起動できたようだな。
「お兄ちゃん? 一体何をしたのよ?」
「何もしてねぇ、電池が切れただけだ。ロボットごっこしてるのに、充電し忘れてただろ。愚か者」
「ごっこ? あたしは…」
「うちのわがまま娘だな。少しばかり無機分が多いようだが」
「えと…その」
舞は立ち上がろうとしたようだ。無理だけど。
「整備モードになってるから首から下は動かんぞ。ついでにバッテリー残量を認識できるようにしてやるから、
ちょっと待て。下は…」
見るなよ、という前に舞がどでかい悲鳴を上げた。
「いっやあぁあ! お腹にでっかい穴あいてるぅ!死ぬ、これ死ぬ! お腹の中変な機械がいっぱい詰まってるしぃ!!」
「遅かったか。まずは落ち着け、そしてよく考えろ。お前は何だ?」
「ええと…我はロボット……そうか、そうだった」
「そういうことだ。落ち着いたらあと少し待て」
再び腹の中に手を突っ込んで作業を再開する。むう、確かにすごい光景だよな。
「あたしの中をお兄ちゃんが好き勝手にいじり回してる…なんか…ちょっと快感かも」
お前なぁ…どこかに外付け常識パックとか売ってないもんだろうか?
693 まいドール第2話(4/4) sage 2008/03/07(金) 23:50:06 ID:Op4TaBXe
気を取り直してバッテリーメーターと頭脳を接続し、デバイスドライバを登録。これでバッテリーの残りを感じるようになる。
「うう…なんか気持ち悪い…」
「むう。感覚がいきなり増えりゃ無理ないか。慣れろ、街中でいきなり動けなくなったら困るだろ?」
腹を閉じてやりながら、おれは宣告した。
「さて、ここから先はお説教タイムだ。覚悟は良いか?」
「良くない!聞かない!省みない!」
威勢の良いこと?を叫びつつ、首だけでじたばたする舞。逃げようとしてるようだが、動けないと言っただろ?
メカ音痴なメカ妹に、自分が「死ぬ」直前まで行ってたことを説明するところからはじめて、むやみによく分からない
ソフトを使わないと約束させるまで説教したら、3時間以上もかかっちまった…。
そして次の深夜…
どすん。
扉の外で異音がして目が覚めた。音源は舞だ、根拠もなく確信して部屋のドアを開ける。
案の定、廊下で舞が悶えていた…またしても全裸で。お前、今回は「全裸」がテーマなのか?
いうべき言葉が見つからん。無言でかつぎ上げ、舞の部屋に向かう。肩の上で舞は、いろんな体液を垂れ流しながら
ひきつけを起こしてる。急いだ方がよさげだ。
ベッドに舞を放り出して例のノートパソコンをつなぐ。設定確認…性感が感度最大、息を吹きかけても絶頂する
レベルに設定されていた。
とりあえず感度を落として点検プログラムを走らせる。幸い大きな故障は無いようだ。
「で、今度は何をしようとしたんだ?」
「こういう機能があるの見つけた時、これでお兄ちゃんのとこで寝れば、気持ち良いだろうなぁって思いついて」
「で、空気がそよいでも感じちまう設定にしたもんだから、俺の部屋にたどり着くこともできずに挫折したと。
だから説明書を…読んでも無駄なんだろうな」
「うん!」
「さわやかに断言するんじゃない! これじゃいつか壊れ…」
また説教モードに入りかけた俺をさえぎって、舞は言い放った。
「ご主人様になってくれたら、何でも言うこと聞くよ。それが嫌なら、壊れちゃったらメカ音痴の妹を直してね。
お・に・い・ち・ゃ・ん♪」
694 名無しさん@ピンキー sage 2008/03/07(金) 23:50:49 ID:Op4TaBXe
投下終了です。続かないはずだったんですが、酔った勢いで何故か書いちゃいました。お酒って
怖いですねぇ。皆様も気をつけてくださいね。
書いた本人も予想してなかった埋人形。楽しんでいただけた方がお一人でもいれば幸いです。
こんな長いお話書くの初めてなので、出来はとっても心配です。
では、もしも電波の御加護がありましたら、またスレの埋まる頃お目にかかりましょう。
695 名無しさん@ピンキー sage 2008/03/08(土) 00:34:08 ID:kK0+9Pi2
694
GJ!
696 名無しさん@ピンキー sage 2008/03/08(土) 00:44:33 ID:zkOYKw+l
続編キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
697 名無しさん@ピンキー sage 2008/03/08(土) 02:13:36 ID:f5cU5I7O
妹型ロボットかぁ~いいなぁ。俺の子孫なにしてんだろ?早く送りこんでこい!
698 名無しさん@ピンキー sage 2008/03/08(土) 03:33:43 ID:1wncQ6YC
697
妹型ロボといえばドラミが来るぞ・・・
699 名無しさん@ピンキー sage 2008/03/08(土) 05:16:29 ID:Tryq+cmW
子孫がキモウトロボットなんて送ってきたら他の女を排除されて結婚なんてできないぞ
そしたら子孫も産まれなかったことになってタイムパラドックス発生だ
700 名無しさん@ピンキー sage 2008/03/08(土) 05:57:47 ID:col5bkl6
いや、未来の技術を持ってすれば、子供すら産める究極キモウトロボが…
701 名無しさん@ピンキー sage 2008/03/08(土) 08:38:17 ID:ex02RdRj
妹ロボ可愛すぎGJ!
絶対服従する人形になるとか健気だなあ
まあ、ずっと実の妹と思ってた相手に迫られたら
常識的には主人公のような反応になるのだろうけど
このスレの住人なら、
自傷行為に及んだ妹を説得するのに
「妹ではないただのロボに価値はない! 人形になったら粗大ゴミの日に家から放り出すぞ!」
とか言い出しそうだ
最終更新:2008年03月09日 22:42