内の世界外の世界 第一部

952 内の世界外の世界 sage 2008/04/18(金) 20:52:59 ID:fjvJBNAY

チュンチュンチュンチュン

AM5:55
俺は起きた
冴えない目を擦りながら片手で届く位置にあるテレビの電源をつける
画面にはニュースキャスターが座ってニュースを読んでいる
くだらないニュース、くだらない毎日
テレビ画面の左上に表示された時間は6:00
そろそろか

コンコン
予想通りに鳴るノックの音

「お兄さま…朝ですよ?」
「ん…起きてるよ」

「そうですか…それはよかったです…ご飯置いときますね」

ここにきて説明するのもなんだが俺はニートという存在だ

トイレに行くか風呂に入るか
それ以外自分の部屋からは出ない

例え何かが必要なときでも
先程の声の主、妹の楓が持ってきてくれる

それをありがたいとも思ってるし煩わしく思ってもいる

とにもかくにも、俺の一日は始まった

955 内の世界外の世界 sage 2008/04/18(金) 21:14:00 ID:fjvJBNAY
第1話
「内の世界」

楓が持ってきてくれた朝ごはんを食べる

味噌汁のしょっぱさがなんとも言えない
しかし…なぜ楓の作る味噌汁からはいつも柑橘類の匂いがするのだろうか
未だに謎である

目玉焼きの上に乗っている赤い調味料ケチャップ
まるで抉りとられた目玉を潰した時に出た血のような…

そういう事を考えて楓の飯を食べている俺は罰当たりであろう

しかしこういう性分なので仕方がない

朝ごはんも終わり次にすること

スタンバイさせていたPCの前に座る
そしてネット
ブックマークから大型掲示板を呼び出す

さぁ…今日も楽しむか

退屈な内の世界は相変わらず退屈で平和だった

958 内の世界外の世界 sage 2008/04/18(金) 21:25:30 ID:fjvJBNAY
第2話
「僅かな異変」

大型掲示板に入って暫く
画面をスクロールさせた俺は一つのスレッドを見つけた

兄を愛して愛して仕方ない人達集まれ


クリック


腹筋スレだった

溜め息をつきつつIDチェックをしようとした時に1つの書き込みが目に入った

私は兄が大好きです
いえ愛しています

「…ふむ」
思わず声に出してしまった

暫くしてリロードされる
同じIDの書き込みが増えている

私の兄は私がいないと何も出来ません

私は必要とされています
それがとても嬉しくていとおしい

「…」

リロード

でも兄は決して笑ってくれません
ああ、お兄さまお兄さまお兄さまお兄さまお兄さまお兄さまお兄さまお兄さまお兄さまお兄さまお兄さまお兄さまお兄さまお兄さまお兄さまお兄さま

突然の連続した単語に背筋がゾクッとした

リロード

「…なんだこれは」

書き込みが全てaという投稿でうめつくされていた

またリロードする
投稿は増えていく
全てaだ
「…気味が悪い」
そして俺は見つけてしまったのだ

直人お兄さま、楓は直人お兄さまを愛しています
直人
それはみまちがえるはずない

俺の名前

俺はパソコンの電源


959 名無しさん@ピンキー 2008/04/18(金) 21:33:30 ID:fjvJBNAY
第3話
「扉の前」

「ハァッ…ハァッ…」
おかしい…なぜこんなに寒い
あれはみまちがいだ…でも自分の名前
そして妹の名前
きもちわるい一致だ

「ハハハハ…大丈夫…大丈夫だ」

コンコン

「!!!」

「お兄さま…?直人お兄さま?」

偶然にしてはタイミングが悪すぎる

コンコン
コンコン

「お兄さま?お兄さま?」

怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い
俺は物音を立てぬようにベッドに潜り込み暗闇の世界へと逃げようとした

コンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコン

「お兄さま?お兄さま?お兄さま?お兄さま?…直人お兄さま!」
やめろ…やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ

「寝てなさるのですか?」


…………………
………………?
行ったのか?

俺は布団の隙間から扉を覗こうとした

間近に俺と同じ黒い目玉

「なんだ…起きてるじゃないですか…愛していますお兄さま」

そこで俺の意識は途切れた


960 内の世界外の世界 sage 2008/04/18(金) 21:39:36 ID:fjvJBNAY
あげてしまった…すまない

第4話「夢」

「ん………」
目を開ける

なんてことはない自分の部屋だ

「…夢?」
そう、あれは夢

「飯を食べた後眠ってしまったのか…」

しかし体がさっきよりだるい

二度寝の影響だろうか

「…あの書き込みも悪い夢…あの楓も夢…それで解決する、そうさ…そうだろ…」

しかし俺は気付かなかった
扉が少し空いていて
そこから覗きこむ2つの目玉に

後に俺は最悪の形で外の世界の醜さを知る事となる


第一部完

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最終更新:2008年04月21日 16:14
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