貴方だけを愛し続けます 第三話

256 貴方だけを愛し続けます ◆PsPjd8yE3E sage 2008/04/29(火) 11:37:18 ID:oo22afgX

[kai side]

俺はいつもどおり起きて、いつもどおり朝食を食べて、
雪にせっつかれながら学校の用意を済まして、
雪特製の弁当を持たされて、学校へと駆け出した。
もちろんのことチャリ通学だ。

それでも、着いたのは朝の7時半。出欠確認の8時半にはには早過ぎる。

まぁ、だけど俺は生徒会の手伝いもあるかもしれないのでいいか。

「や、おはよう」
「ああ、お早うっす。会長仕事無いっすか」
「うーん、残念ながら無いねー。
 ただ放課後手伝ってくれるかい?」
「あー、じゃほかの役員も・・・」
「いや、構わんよ。私と君二人で充分だ」
「あ、そっすか」

先週みたいに、またいきなり
『すまんな、明日の朝会まで進行のを仕上げなくちゃいかなくなった』
とか会長に言われるのかと思ったが・・・。

一応言っておこう、別に役員が無能ではないのだ。むしろ有能といっても過言じゃない。
かといって、彼らの出席は芳しくなかったりする。

部活だの勉学だの恋愛だの資格取得だの、と皆々が多忙なため、
ハプニングが起きると、絶対的に労働力が間に合わないという事に成りかねないのだ。
そこで暇人たる魁や魁の現れる日だけ手伝い気分で来る雪に、白羽の矢が立ったのだ。

僕は密かに置いた私物であるコーヒーメーカーの電源を入れると、パソコンを立ち上げた。

「しかし、君もよくやるよね」
「何がっすか?」

「いや、普通学校にPC持ってきて、
 しかも学内のLANにつなげるやつなんていないよ」
「うるせー、だってしょうがねー。うちの妹が・・・」
「理由になってないよ、それ」

修羅場総合SSへの原稿を読み返しながらコーヒーをすする俺。
しかも、と頭に手を当てて会長はこういった。

「いつもいつも君は理由に妹さんが付くんだな」
「ああ?俺がシスコンだってか?」
「超一流のな、それじゃ互いに兄離れ、妹離れ出来んぞ?」
「まぁ、そうだ、な」


257 貴方だけを愛し続けます ◆PsPjd8yE3E sage 2008/04/29(火) 11:37:59 ID:oo22afgX



[Yuki side]



私の朝の日課。

その一つは、母さん、お義父さん、兄さん、私の四人分の朝ごはんを作る。
そして食器を洗って片付けること。

母さん達は起きるのが私と同じ位なのに、
食べて身支度を揃えたら「悪いわね、家事押し付けちゃって」
とばつが悪そうに仕事に出ていく。



いいんだよ、母さん。

私は、兄さんに相応しくなるためにやってるんだから。



私に言い寄ってくる人はいる。けれど兄に比べたら屑そのものだ。
私が欲するのは、容姿が整った人でも、秀才な人でも、肩書きがすごい人でもない。



              本当の優しい人。



兄のように幾度となく、私が幼少の頃に手を差し出してくれる人はいるだろうか?
否。絶対に面倒臭がって、もしくは思い通りにならない義妹に愛想を尽かすだろう。
裏を返せば兄はしつこい人でもある。が兄を動かすのは純粋な優しさを持っての行動だ。
母よりも長い時間を、お義父さんよりも濃い密度で接していた私がよく知っている。

それに私を想い、助けの手を差し伸べる人はいないし、いなかった。
大体思春期の後半から抜けきった男子は、私を厭らしい眼つきで見るのを感じることがある。
そういう、奴ばかりなのだ。だから恋愛感情を抱くこともなかった。
だというのに、残念ながら兄がそのような眼つきで見てくれることはないのだ。
ただ私としては高校生となってから、お風呂上りのバスタオル姿で偶然見て、
慌てて眼をそらしたことがあった。でも、チラッと目先だけを戻してましたよね、兄さん。

脈がないわけじゃない、そう思うとすごく燃えてきた。



258 貴方だけを愛し続けます ◆PsPjd8yE3E sage 2008/04/29(火) 11:38:46 ID:oo22afgX



結論、兄以外に恋を体験したことはないのだ。



うむ、しかし、やはり兄さんの良さに言い切るには無限の時間が必要だ。

閑話休題。

私と兄さんには、暗黙の了解がある。
兄さんが6時半になっても起きなかったら、起こす。
いつのまにかどちらともなく決まったルール。
置時計をせわしなく交差させる私。

「お早う」


残念ながらも今日は兄さんの寝顔を拝見できなかった。
昨日の朝、兄さんおベットから一日が始まったことを考えれば、
贅沢かもしれない。でも、できるならば毎日眺めていたい。

兄さんが私の料理を食べ終わるのを、私は頬杖をかいて見つめる。
私はとっくに朝食を済ましており、兄さんが食べ終わるまでやることはないからだ。

最初のころは恥ずかしがっていた兄さんだけど、
いまではテレビを見ながら、のん気にご飯を食べている。

「しかし、妹よ」
「何、兄さん」
「兄の食べる姿を見るなんて物好きだな、お前も」

まったくわかってないんだから。
片手を腰に挙げて、メッと言うように仁王立ちした。

「・・・いーい?女にとって自分が作った食事を、美味しく食べてもらうの嬉しいんだから」

最愛の人ならばなおさらね。

「はぁ、ったくお前は残存するやまとなでしこか?」

最後の一口を頬張り、ごちそうさまと手を合わせた。  兄さんは朴念仁だ。



でも、そのおかげで未だ彼女がいない。
優しさゆえに時たま人を惹きつける何かを持ってる。
なんて妄想を抱いてしまうのが私だ。






259 貴方だけを愛し続けます ◆PsPjd8yE3E sage 2008/04/29(火) 11:39:27 ID:oo22afgX
もっともその感情が恋心に変わらないように、
一つ一つ毟り取っていったのが事実だけど。



兄さんに近づく雌犬はなんびとたりとも許しません。



そのあと私は兄さんを急かして、さっさと学校に送り出す。
本当は、一緒に通いたいのだけれども、兄さんのベットで寝転がる。
その魅力には、私は耐えられないのだ。兄さんの胸板に頬ずりするのが昨日とは思えない。
だけど、それは真実で、

「今度は、最初から一緒に眠りたいな」

私は三十分位堪能した後、疼く体をシャワーを浴びてさっさと学校へと向かった。



兄さんが通う生徒会には、あの汚らわしい雌がいる。
本当は止めたいのだけども、兄さんが進路のためと言うと断れないのが現状だ。
しかしあの雌以外まともに活動を行ってないらしく、兄さんと雌二人。

これではいけないと、私も兄さんが穢れないために、動き出した。
兄さんが朴念仁なおかげで、兄が通い始めた半年前から進展という進展は無い。

気づいたときに、手遅れだったなんてオチがなくてよかった。
だけどあの雌は兄さんに時折粘ついた視線を向ける。
私には、わかる。あの雌が、描いている汚[きたな]らしい想像を。

私が思い描く兄さんとの素晴らしい日々を壊す、その夢を。


絶対に、兄さんを渡してなるものか。

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最終更新:2008年05月04日 22:30
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