淫獣の群れ(その1)

225 淫獣の群れ sage 2007/10/09(火) 04:02:48 ID:vvg88tHe

 寿司が食いたい。
 綾瀬喜十郎は、風呂場の、もうもうたる湯気の中で、何故か唐突にそう思った。

 回る寿司でもいい。
 回らない寿司なら、なおいい。
 かねは、ある。
 先週、こっそり馬で当てた二万が、まだそのまま残っている。
 この金の事を妹たちに知らせる気は当然、無い。奴らがその金の存在を知れば、たちまちの内に没収されてしまうからだ。
“うちの家計はいま、苦しいんですのよっ”
 の一言で。
 幸い、晩飯もまだだ。腹も減っている。
 そう思ったら、矢も盾もたまらず食べたくなってきた。

――はまち、うなぎ、たい、甘えび、納豆巻き。赤だしも飲みてえなぁ……。

 喜十郎は、洗面器で湯舟から、その熱い湯を自分の顎にぶちまけた。
 泡はもう残っていない。
 ヒゲの剃り跡がちりちりするが、彼は気にせず、湯船に身を沈めた。
 熱めに沸かし直した湯が心地いい。
 髪は洗った。
 身体も洗った。
 ヒゲも剃った。
 後は身体をあっためて、あがるだけだ。
 寿司食いてえなぁ
 彼は、心中に再び、そう呟いた。

 しかし、彼は知っている。
 結局、自分は寿司を食べに行く事は出来ないだろう、という事を。
 この我が家に於いて、自分に、そんな自由は与えられていないという事を。
 すなわち――。
「――お兄様、お背中を流させて頂きます」
 扉がからりと開くと、胸元をかろうじてバスタオルで隠した、全裸同然の少女たちが風呂場に入って来た。
 一人ではない。
 五人だ。
 年齢はまちまちだが、そのいずれもが美しい。もしくは美しく育つであろう、そう思わせる美少女たちであった。
 彼の――喜十郎の妹たちであった。



226 淫獣の群れ sage 2007/10/09(火) 04:04:26 ID:vvg88tHe

 無論、彼は、この風呂場への闖入に、何の許可も与えていない。
 しかし、この少女たちは、なんのためらいも無く、まるで当然の義務を果たす者のように、兄の眼前に肌を晒し、兄が浸かる湯船から湯をすくい、身体に浴びる。
 それでも、少女たちの一人は、兄の一目瞭然な不機嫌さに、やや怯えた様子を見せる。
「あの、お兄ちゃま、やっぱりその、勝手に入ってきて……怒ってる?」

 喜十郎は、半ば諦めたように苦笑いを浮かべ、泣きそうになっている妹の一人に応えてやった。
「……とにかく、取りあえず湯に入れ。風邪を引く」
「あっ、はいっ!」
 彼女たちの中に一種、ほっとした空気が流れたようだ。
 基本的には、いかに傍若無人な彼女たちとはいえ、妹たちは妹たちで、やはり兄の機嫌は気にしていたのだろう。
「それでは失礼いたします」
 そのまま彼女たちは、無駄に広い湯舟に、次々にその肢体を沈め、年頃の少女らしい雑談を交わし始めた。

 喜十郎は、そんな妹たちの様子を見て再び溜め息をついた。
「――桜(さくら)、ちょっといいか」
「はい?」
 彼女たちの中でも一際長身の少女が、その声に振り向く。
 ツインテール、というのだろうか。腰まで伸びた栗色の長髪を左右に分け、両方の肩口で結わえ、垂らしている。そんな子供っぽい髪型と、大人びた相貌が生み出すアンバランスさが、彼女に絶大な魅力を与える効果をなしていた。
 その頬が淡く桃色に染まっているのは、決して熱めの湯のせいだけではない。
 喜十郎の声音は、そんな彼女の期待には、まず添わないであろう険しさを含んだものであったが、――桜と呼ばれた彼女の表情には、それを残念がる気配は微塵も無く、ただ、彼に声をかけられた、という事実が嬉しくてたまらないようであった。

「昨日言ったはずだな。今後の俺の入浴には、介添えは一切無用だ、と」
「ええ」
「なら、何故ここにいる」
 湯舟の隅で、自らの背を壁にして他の妹たちに聞こえないように一応、気を遣う。
 この質問を、何故この場にいる妹たち全員ではなく、桜個人に問うのかと言えば、この桜こそが、綾瀬家の六人姉妹の長姉であり、どんな時でも常に彼女たちの音頭を取る役割を担っているからだ。

「本当に分からないの? ――全く、お兄様ったら……」



227 淫獣の群れ sage 2007/10/09(火) 04:05:23 ID:vvg88tHe

 まただ。
 桜から“お兄様”と呼ばれるたびに、喜十郎は、何とも言えないむず痒さのような感覚を背中に感じる。
 実際、喜十郎と桜は、半年しか誕生日が離れておらず、学校でも共に同じ教室で、机を並べて授業を受けている。だから、そんな桜が自分の事を“兄”呼ばわりするのは、喜十郎にとって、かなり奇異に感じられる行為だった。
 その感覚は、無論、今でも変わっていない。

 湯気の中でうつむいたその美貌に拡がったのは、嘲笑、とでも言うべき表情だった。
「簡単よ、お兄様に理解してもらうためよ」
「理解?」

 桜は自分の唇を、れろり、と舐めた。
 その真っ赤な舌と、唇の端からこぼれ落ちる一筋の唾液が、たまらなくいやらしい。

 もう、さっきまでのひそひそ声ではない、風呂場にいる全員に聞かせる声だった。
 いまの桜は、まぎれも無い、ここにいる妹たち全員の利益代表として、兄と交渉しようとしているようだった。
「お兄様は、これでも由緒正しき綾瀬家の時期当主。常に身だしなみには気を遣ってくれないと、私たちの恥にもなるわ」
 音すら立てずに桜が湯舟から立ち上がる。
 その背後には、さっきまで雑談していたはずの四人の妹たちまでが、無言でこっちを見ていた。桜と同じく、年齢に似合わぬ潤んだ光をその目に宿らせて。
「だから私たちが、お兄様を綺麗にするの。私たちに出来る範囲でね」
 喜十郎の両頬に手を添え、熱のこもった目線で彼を見下ろし、桜は兄に訴える。

「すまないが、俺はそこまでガキってわけじゃない。自分の身体くらい自分で洗える」
 喜十郎は、何かから逃れるように桜の手を払うと、湯舟から立ち上がった。
「今日だってもう、洗うべきところは洗い終わったよ。当然、背中もな」
 捨て台詞のように言い放つと、振り向きもせずに彼は湯舟から出た。――はずだった。



228 淫獣の群れ sage 2007/10/09(火) 04:07:49 ID:vvg88tHe

 湯舟の敷居をまたいだ瞬間、喜十郎はひっくり返って湯舟に落ちた。
 彼の重心が片足に移った瞬間、桜が喜十郎の手首を引っ張ったのだ。
「あらあら」
 兄を湯舟に沈めてなお、涼しい顔で桜は妹たちを振り返る。
「私には洗い終わってるようには見えないのだけれども……みんな、どう思う?」

「そうですわねぇ。確かに、兄君さまのお背中は、まだまだ垢が残っておられるようにお見受け致しますわ」
 ポニーテールにくくってなお、桜と同じく、ほとんど腰まで隠れる長髪の少女――春菜(はるな)が、長姉の問いに歌うように答える。

「うん。ぴっかぴかに洗えば、お兄ちゃまはもっともっと綺麗になるって詩穂も思うなっ」
 肩のあたりでこざっぱりと切り揃えられたショートカットの少女――詩穂が、ポニーテールの姉に調子を合わせる。

「くしししし、うん。ヒナもヒナもそう思うっ」
 五人の妹たちの中で一番幼い少女、いや幼女か?――比奈(ひな)までもが、きらきらと輝く瞳を兄に向けていた。さっきまで遊んでいた船の玩具には、もはや一片の興味も残っていないようだ。

「大丈夫ですか兄上様。お湯は飲まれてはおられませんか?」
 桜や春菜同様、腰まで伸びた長髪の少女――真理(まり)が、喜十郎に寄り添い、気遣う。もっとも、彼女の髪型はポニーテールではなく、その圧倒的な量の黒髪を三つ編みにまとめている。
「ああ、ありがとう。真理」
 喜十郎にとって姉妹の中では、この真理こそが一番気の置けない存在であった。
「でも――」
 ただし、
「兄上様のお体で洗い残しがあるのは、どうやらお背中だけでは無さそうですわ」
「真理……!」
 一度スイッチが入ってしまえば、この真理という少女は、姉妹の中で一番の残忍性を発揮する、サディスティンに変貌するという欠点があったが……。



229 淫獣の群れ sage 2007/10/09(火) 04:09:17 ID:vvg88tHe

「五対一。民主主義の勝利ね」

 いつの間にか彼の背後に忍び寄った桜に反応して、思わず立ち上がった喜十郎の背を、春菜が羽交い絞めにする。
「くっ、放せ春菜っ!」
「みなさん、用意はよろしいですかっ?」
「いつでもいいわよっ」
 妹たち全員の位置を確認するように、桜が素早く視線を走らせ、そのまま叫ぶ。
 そして、その声に呼応するように少女たちが各々、配置につく。
 まるで手馴れた作業をするように、その動きには迷いが無い。

 詩穂は喜十郎の右手を。
 真理は喜十郎の左手を。
 比奈は喜十郎の股間を。
 春菜は喜十郎の背中を。
 そして桜は、そのまま喜十郎の正面に自らの身体を預け、その豊満な乳房を押し付ける。

 いかに男女に体力差があったとしても、五対一では所詮、勝負にはならない。
 喜十郎は、全身を妹たちの肉の檻に封じられ、微動だに出来なかった。
「放せっ! 放せっ! 放せぇぇっ!!」
「いやですわ」
 かぷり。
「――っ!!」
 春菜が、背後から彼の耳朶を甘噛みする。あたかも捕らえた獲物の悲鳴を塞ぐかのように。さらに次の瞬間、桜が、だらしなく開けた喜十郎の唇を文字通り塞いでしまう。無論、花びらのような自らの唇で、である。

「ああ~~~っ、桜ちゃんずるぅいっっ! 詩穂もお兄ちゃまとキスしたいぃぃ~~~」
「ふふふ……詩穂ちゃんもあまり、がっつかないで下さいまし。兄上様のお体がどこでも美味なのは、あなたもご存知でしょう?」
 そう言うと、真理は兄の左乳首に舌を這わせる。
「――っっっ!!」
 もとより口を塞がれた兄の悲鳴は、真理のいやらしい囁きと桜のキス、さらには彼の耳朶にしゃぶりつく春菜の口舌音によって、簡単にかき消されてしまう。
「んふふふ……ほんと、美味しゅうございます、兄上様……」
「ああっ! じゃあ、じゃあ、詩穂もぉ!」
 その上で、今度は詩穂の舌が、彼の右乳首に襲い掛かる。
「んぐっ! ふぐっ! んんんんっ!!」



230 淫獣の群れ sage 2007/10/09(火) 04:11:17 ID:vvg88tHe

 二つの乳首と耳朶、さらに舌をしゃぶり尽くす情熱的な接吻。
 妹たちが風呂場に闖入してきた時点で、例えこうなる事は予想していたとしても、やはり喜十郎の陽根は、硬く膨れ上がってしまった。――最も幼い末の妹、比奈の眼前で。
「くししし。それじゃあ、おにいたま、一番気持ちのいいところ、ヒナが責めてあげるね」
 何度、快楽の中に身を浸そうとも、この瞬間だけは――この屈辱だけは慣れる事が出来ない。少女どころか幼女と呼ぶに相応しい末の妹に、自分のペニスを弄ばれる、この瞬間だけは。

 いや、比奈だけではない。
 この少女たちは、自分を責める上で、まだ全然、本気になっていないのだ。
 何度も何度も彼女たちに、この身を嬲りまわされていた喜十郎には分かる。
 その証拠に――。
「ねえ桜さん、今日の“ノルマ”はどのくらいになさいます?」
 耳朶から口を放した春菜の言葉に、桜も応えるように兄の舌を解放した。
「そうねえ、……二時間ってところかしら」

 にっ、にじかんっ!?
 喜十郎は、真っ青になってふるふる、ふるふると首を振る。
 そんな彼を見て、桜は慈しむような、とびっきりの笑顔を浮かべる。
 そして、自由になった喜十郎の唇に、今度は右側から詩穂が跳びつき、深く己の舌を絡ませる。

 ノルマとは、即ち妹たちが兄を責める時間的・回数的条件である。
 六人の妹たちが常時身辺に付きまとう彼にとって、時間・回数に制限を定めない性交渉は、彼の日常生活に支障をきたす可能性があり、それゆえに彼女たちは“ノルマ”という形で、互いに歯止めを掛け合っていた。
 しかし、やがて“ノルマ”は変質し、いまや妹たちが集団で兄を弄ぶ際の、単なる指針と化してしまっていた。

「二時間は長いですわ、桜ちゃん。せめて一時間で切り上げないと、折角の深雪(みゆき)ちゃんのお料理が冷めてしまいますわ」
「あっ、それ確かにまずいよぉ。深雪ちゃんって普段やさしいけど、怒ったらすっごく怖いんだよぉ。ヒナ、一度怒られたことあったもん」



231 淫獣の群れ sage 2007/10/09(火) 04:12:15 ID:vvg88tHe

 深雪とは、詩穂の姉にして真理の妹。つまり、この場にいない六人目の妹のことである。
 現在、彼女は厨房で家族全員分の夕食を調理している最中であり、十代前半にして、己の料理の味が落ちる行為を何よりも嫌う、こだわりの料理人であった。
 もっともそれは、喜十郎に関する好意の量が、他の姉妹に比較して少ないという意味では決してない。
 彼の身体を愛撫するのと同次元で、彼に食べさせる愛情料理に精魂を傾ける、というだけの話であり、要は他の姉妹たちと、その人間的本質は何ら変わらない少女なのだ。

「では桜さん、今回の“ノルマ”は一時間ということで宜しゅうございますか?」
「……仕方ないわねえ。不本意だけど今日のところはこれで勘弁してあげる」
「良かったですわねえ兄君さま。桜さんの優しさに、きちんと礼を言わねばなりませんよ」
 そう言いながら春菜の指が、背後から喜十郎の肛門に、ずぶりと侵入する。
「――ぃぃぃぃっっ!!」
 思わず詩穂から、口をもぎ離して悲鳴をあげる喜十郎。
「ああっ! お兄ちゃまったら、ひどいなぁ、もう!」
 温和な詩穂にしてもムッとしたのか、右乳首に爪を立てる。
「そんなひどいお兄ちゃまには、お仕置きだよっ」
「ぁぁぁっ!! いたいいたい詩穂ぉっ!!」
「痛いの? 痛いのはどこなの、お兄ちゃまっ?」
「むねがっ、むねがいたいよぉっ!」
「胸じゃないでしょっ!? なんで教えた通りに言えないの、お兄ちゃまっ!!」
 詩穂が、乳首もちぎれよと言わんばかりに、さらに爪に力を込める。
「あああああおっぱいれすっ!! いたいのはおっぱいれすぅっ!!」

「あら詩穂ちゃん、もう兄上様にお仕置きするのですか?」
 半分うっとりしながら彼の左乳首を舐めていた真理も、
「仕方ないですわねえ、もう少し兄君さまで楽しみたかったんですけど……」
 彼の肛門をほじくり返しながら、背骨に舌を這わせていた春菜も、
「ま、いいじゃないの。これはこれで楽しいんだから。ね、お兄様?」
 詩穂の唇が離れた後の、喜十郎の右乳首を責めていた桜も、
「くしししし、わるく思わないでね、おにいたま。ヒナはただ、くーきを読んだだけなんだからね」
 亀頭をちろちろと舐めていた比奈も、

 一斉に、喜十郎の身体に歯と爪を立て始めた。

「~~~~~~~~~っっっ!!!!」

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最終更新:2007年10月21日 03:01
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