お姉ちゃんの独り言

624 お姉ちゃんの独り言 sage 2008/08/03(日) 10:54:35 ID:Om8d2l/T
 秋冬は同年代と比べても、よく眠る方だ。

 幼い頃から秋冬は、一度眠ると滅多なことでは起きない程、睡眠が深い子供であったが、あくまで平均してよく眠る程度の話だった。
 けれども、姉である玉恵が感染した奇病、変異性フェイスチェンジモンスター症候群(通称FCM症候群)を治すために使った力。
 別種である秋冬だけが持つ力の使用が、さらに秋冬の睡眠時間の増長を後押ししてしまった。
 自分の命を他人に分け与える能力。あらゆる生命に気力と活力を与え、傷すら完治させる奇跡の力。
 けれども、その力を使用するとき、その分の代償を払わなくてはならない。大いなる力には、大いなる責任が伴うものなのだ。
 別種が持つ力の使用時間は、平均でも20分が限界とされている。20分程度なら肉体に疲労感が残る程度で、負担はそう重くないからだ。
 30分を過ぎると肉体への負担と疲労が大きくなり、気絶してしまうこともあるのだ。
 そのため、肉体の疲労を考慮して、普通は一回使ったら十分に休息を取るのが大原則だ。
 しかし、秋冬は姉のために毎日力を使った。限界とされる20分を超え、毎日1時間近く力を使い続けたのだ。
 結果、秋冬自身に後遺症が残り、場所、時間、関係なしに突然、肉体が休息を求めるようになってしまったのだ。
 それはスーパーの帰り道でも例外ではない。
 まだ5時を回った辺りだとか、隣に玉恵が居るとか、歩いているとか、秋冬には関係なかった。

「シュウちゃん、眠いの?」
「…………うん…」

 自然と首がうつらうつらと船を漕ぐ。重力に負けそうになる目蓋に力を入れて我慢しようとするけど、睡眠という甘美な世界に抗うには心許ない。
 いつもなら一定の高さを漂っているのに、不規則に上昇したり下降したり、安定していなかったあたり、眠気を堪えることで手一杯なのだろう。
 それを見た玉恵は、素早く秋冬が持っていたスーパーの袋を取り上げる。そして、秋冬の前で背を向けて腕を軽く広げた。

「それじゃ、はい、お~んぶ」
「………いい…よ……」
「何言っているの、ふらふらじゃない。危なっかしくて見ていられません。大人しくおんぶされなさい」

 既に眠気も我慢の限界に達しようとしていた秋冬に、断ることは出来なかった。



625 お姉ちゃんの独り言 sage 2008/08/03(日) 10:55:29 ID:Om8d2l/T
 できるかぎり体重をかけないように、玉恵の腕と腰の間に両足を通し、首に腕を回し、背中に抱きつくようにして体重を預けた。

「……おも……な…い……?」
「私が元FCM症候群だってこと忘れてない? ベンチプレス記録450kgは伊達ではありません。
 全然重くないですよ~、軽すぎて心配しちゃうくらいだよ」
「……お……すみ…」

 そこまでが秋冬の限界だった。秋冬の意識は夢の世界へ旅立ち、脳は休眠を取った。

「……お休みなさい、シュウちゃん」

 だから気づけなかった。

 玉恵が、首に回していた秋冬の手を掴み、さりげなく自分の乳房を掴むように動かしていたことに。
 秋冬の手が玉恵の乳房を服の上から掴んだとき、玉恵は、はっきりと快楽のため息を溢した事に、秋冬は気づけなかった。



626 お姉ちゃんの独り言 sage 2008/08/03(日) 10:56:39 ID:Om8d2l/T
 誰も居なくなった夕方の住宅街。玉恵は秋冬をおんぶしたまま、帰路に付いていた。
 夕陽が秋冬と玉恵の横顔を照らす。細くて長い影は、二人の体が触れ合うことで、一つの大きな影になる。
 騒ぐ子供達の喧騒も静まり、お母様方の井戸端会議も終わりを告げる昼と夜の境目。
 子供達は全員家に帰り、母親達は夕食の準備に追われ、家路に帰る父親達や、学校帰りの子供達が帰ってくるまでの、ほんの僅かな時間帯。
 玉恵は、この時間がたとえようもなく好きだった。
 耳を掠めるそよ風と、背中に背負う愛しい者の体温。伝わる鼓動と、かすかな寝息が、とても好きだった。
 ちらりと、玉恵は視線を自分の胸に向ける。
 そこには、背後から伸ばされた愛しい者の手が、自分の胸を鷲?みしている不思議な光景だった。
 けれども、嫌悪感は全く無かった。
 それどこか、震えるくらいの多幸感があった。
 この時間が永遠に続けばいい。玉恵はこの時間が訪れるたびに、強く願う。
 秋冬と私、二人で永遠を生きる。
 頬をくすぐるそよ風と、時々聞こえる虫の声。
 愛する人と、二人きり。

「あ、玉恵さん、今お帰りですか」

 今日も秋冬、とっても可愛かったな。

「……また、秋冬君……ですか」

 私の作ったお弁当を美味しそうに食べているときの表情なんて、涎ものだったわ。

「俺が言うのもなんだけど、あんまり秋冬君を甘や」

 もう、五月蝿いハエだわ。
 背中に抱えている秋冬を起こさないように、ハエの居るほうに蹴りを放つ。
 トマトが潰れるような、水風船が破裂するような、嫌に耳に残る音が辺りに響いた。

「おっと……ごめんね、シュウちゃん。早くお家に帰ってゆっくりしようね」

 秋冬を抱えなおす。
 ギュッ、と、秋冬の手が、玉恵の胸を強く握る。
 雷鳴のように快感が胸を中心に、全身へと広がる。

「んん……お姉ちゃん…」

 秋冬がポツリと寝言を立てた。

「…………………………」

 玉恵は言葉を返すことが出来なかった。というより、出来なかった。
 耳から入る、天然の麻薬。それが耳奥の鼓膜を愛撫し、三半規管を舐め上げ、大脳を蕩かす。
 どんな麻薬よりも甘美な麻薬。それを脳に直接送り込まれてしまったら、玉恵ですらどうしようもない。というより、抵抗するつもりもない。

「~~~~~~~~!!!」

 全身に広がる甘い痺れが、玉恵の子宮を揺らし、精神を蝕む程の快楽となって増幅される。
 膣壁が伸縮を繰り返し、止めどなく愛液を吐き出す。ジットリと湿っていく下着の感触を覚えながら、淫らなダンスを踊る。
 決して秋冬を起こさないように気をつけながらも、静かに、言葉無く絶頂に達した。

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最終更新:2008年10月20日 01:18
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