266 名無しさん@ピンキー sage 2008/11/07(金) 01:07:36 ID:QZgBDgEr
【その1】
俺の朝はとにかく早い。
あまり遅く起きると、妹が朝飯を作ってしまうからだ。
妹の体から出たいろいろな液体が、まったく隠れていない隠し味として
これでもかと混入されている、あの恐怖の朝飯が。
白いはずなのに、ほんのりと色づいているようなご飯や、
わかめと大根以外になにが入っているのかわからない味噌汁。
スクランブルエッグなんて、もはや怖くて直視するのすらためらわれる。
そんな恐怖の朝飯を回避するためには、早起きするしかないのだ。
そういう訳で、いつものように速攻で朝飯を食らい、
手早く身支度をして登校準備を進める俺。
そして玄関で靴を履くと同時に家の中が騒がしくなり、妹が慌てて起きてくる。
「兄上ドノ、起こしてくれないなんてひどいじゃないですかぁ」
ニタニタ笑いながら、長い髪を振り乱しながら、俺に挨拶する妹。
昨日も遅くまで起きていたらしく、目許にはどんよりとした隈ができている。
起きてなにをしていたのか。ナニをしていたのか。やはり怖くて聞けない。
「俺はもう学校行くからな!」
こんなキモい妹とは、一秒たりとも一緒にいたくない。
慌てて学校
「フヒヒッ!待ってほしいですよぅ兄上ドノ」
凄い勢いで身支度を始める妹。
バラエティ番組の早着替えなんて目じゃないほど、凄い速さで身だしなみを整えていく。
そうこうして俺が靴紐を結び終えて家から出た瞬間、
恐ろしい速さで着替え終えた妹が、玄関から飛び出てきた。
267 名無しさん@ピンキー sage 2008/11/07(金) 01:08:16 ID:QZgBDgEr
【その2】
「お兄ちゃん、お待たせ♪」
あんなにボサボサで貞子も真っ青だった髪は美しく整えられ、
慢性疲労の様相を呈していた目の下の隈も消えうせている。
猫背気味だった背筋もしゃんと伸び、
口調もねっとりまとわりつくようないやらしいものから、明るくハキハキしたものに変わる。
なぜ!家から出ると!妹は!こんなにも!かわいくなるのか!
家の中ではテレビのバラエティに出てくるようなアイドルオタクがかわいく見えるほど
キモくストーカーじみた変態女なのに、
一歩外に出ると、そのアイドルオタクに崇拝されるような、可憐な美少女に大変身。
もはや詐欺といっても過言ではない。
いまどきマンガでもこんなに容姿が一瞬にして変わるようなヤツはいない。
「あら、雅浩くんに優子ちゃん、おはよう」
「おはようございます!」
隣のオバサンの挨拶に、明るく返事をする妹。その笑顔はまぶしく輝いている。
昨日の夜、フヒヒと笑いながら「兄上ドノのブリーフ美味でござるぅ」
とつぶやきながら俺の使用済みブリーフをしゃぶっていた
変態キモオンナと同一人物とは本当に思えない。
268 ◆YSssFbSYIE sage 2008/11/07(金) 01:09:34 ID:QZgBDgEr
【その3】
明るく、元気で、そしてかわいい。それでいて品行方正、成績優秀。
だけど、ちょっとブラコンなのが玉に瑕。
それが妹・優子の対外的な評価。
しかし、それがこいつの猫かぶりだと知っているのは家族だけ。
もちろん、家族が止めることはない。むしろ奨励しているぐらい。
なぜなら美人妻で通っている母親も、親父に対しては似たようなものだからだ。
なんとも困ったもんだ。
「お兄ちゃん♪」
いつものように、俺の腕にその手を絡めてくる妹。
ニコニコと満面の笑顔で抱きついているように見えるが、よく観察すると鼻息が恐ろしく荒い。
なんでも「授業中に『お兄ちゃん分』が足りなくなってもいいように、いっぱい吸い込んでいる」のだとか。
「兄上ドノの髪のにおい兄上ドノの腕のにおい兄上ドノの腋のにおいぃぃ」
と小さな声でつぶやいているのが怖すぎる。
逃げ出したいが、逃げ出すとこの前みたいに道の真ん中で泣かれる可能性もある。
いつものように朝から憂鬱になりながら俺は、
妹から開放される唯一の楽園、学校を目指して歩くのだった。
最終更新:2008年11月09日 19:26