700 15スレ650 sage 2008/11/25(火) 20:03:38 ID:OAtHik8Q
裕子さんがこっちに来るみたいだ。
7年ぶりに会う事になるのか。
俺は公園で音楽を聴きながら、ベンチに座って待っている。
むにゅっ
何だ?この柔らかい感触は・・・
俺は恐る恐る振り返ってみた。
「久しぶりね、会いたかったわ!」
「裕子さん!」
振り返ると裕子さんが俺に抱きついていた。
こんな所で、何考えてるんだよ。
胸当たってるし
「ん~この感触はやっぱり弟君の感触ね」
「裕子さん離れてください!恥ずかしいっす!そもそも俺は弟じゃないっすよ」
「私、弟君に会えなくてずっと寂しい想いをしてたの・・・もう少しこのままでいさせて」
「裕子さん」
裕子さんはまるで愛しい人を一生離さないように俺を強く抱きしめてる。
ちょっと苦しいけどもう少し甘えさせてあげようかな・・・
昔よく世話になったしな。
それにしても裕子さん美しくなったな。
170cmくらいかな?背も俺より高いし、スタイル抜群で、黒髪が長くて綺麗だ。
そしてシトラスの甘い香水の香りがする。
俺は何を言ってるんだ・・・
「そろそろいいっすか」
「ごめんなさいね」
「急に後ろから抱きつかないで下さいよ。ビックリしたっすよ」
「久しぶりに弟君に会えたからつい嬉しくて」
「だから俺は弟じゃないっすよ。けど俺も久しぶりに会えて嬉しいっすよ」
「本当!?」
むぎゅ
「昔から抱きつく癖は変わってないっすね」
「私の大事な、大好きな弟君だからよ」
「・・もう弟でいいっす」
「じゃあ私の事は裕子さんじゃなくてお姉ちゃんって呼んでね」
「それはちょっと・・・それと仕事の事なんですが」
「それはお茶でもしながら話しましょ」
俺は裕子さんとカフェへ向かった。
701 15スレ650 sage 2008/11/25(火) 20:05:00 ID:OAtHik8Q
「バイクの免許持ってたんすね」
「車の免許取ったついでに最近とったのよ」
俺は裕子さんの中型バイクの後ろに乗せてもらってる。
「でも本当は免許取って1年経たなきゃ2ケツしちゃいけないんじゃ」
「細かい事は気にしない、さあ着いたわよ」
俺と裕子さんはお洒落な喫茶店に入った。
「どうして高校に進学しなかったの?」
「親に甘えたくないからっす。俺は親に頼らず1人で生きて行きたい」
「じゃあ自分のお金で1人暮らししてるの?」
「はい、物心ついた頃からからずっと金稼いで、貯めた金がありますからそれで」
「そう言えば昔から弟君は親に甘えてなかったわね」
親父もおふくろも俺の事なんか全然見ないで、妹の事しか見てないからな。
「今時自力で生きてくなんて珍しいわね。今の世の中そんなに甘くはないわよ」
俺と同じくらいの年の奴は大抵親の金で高校行ってるよな。
自分の金で行ってる奴はどれくらいいるのかな。
少ねえだろうな。
「でも俺はあんな家族とは一緒に生活したくない。例え辛くても1人で生きてく方がマシっす」
「よほど辛い想いをしたのね・・・私は弟君の味方だから」
「裕子さん・・・」
裕子さんに会えてよかったな。
昔から俺の悩み事に真剣に相談してくれて。
本当にこんな姉がいたら・・・
「それで本当に俺を雇ってくれるんすか?」
「可愛い弟の頼みは断れないわよ」
「でも話がうますぎるっすね。詐欺とかじゃないっすよね?」
「安心して、詐欺じゃないから。証拠だってあるわよ。ほらっ」
そう言って、写真や雑誌とか色々見せてくれた。
どうやら本当みたいだ。
「じゃあ決まりね」
あっさり決まっちゃったけどそんなに簡単に決めてもいいのだろうか。
でも早く働かなきゃな。
親父にはばらさないみたいだし、今のところデメリットはないし、いやになったら辞めればいっか。
さて、仕事も決まったし、夕飯のおかずでも買って帰るか。
「それじゃあ俺はこの辺で。色々とありがとうございました」
「待って、せっかくだから弟君の家に行ってみたいな」
「急に言われてもお茶くらいしか出せませんよ」
「私は大丈夫よ」
雇ってくれたし別にいいか。
702 15スレ650 sage 2008/11/25(火) 20:07:00 ID:OAtHik8Q
俺は裕子さんと夕飯のおかずを買いにスーパーへと入った。
「そんなにべたべたくっ付かないでください」
「いいじゃない。姉弟なんだし」
「姉弟じゃないけど姉弟だからこそまずいと思いますが・・」
「恥ずかしがっちゃって可愛いわね。私が全部お金出してあげるわ」
「いいんすか?」
「だから一緒に手を繋ごうよ」
「それは・・・でも出してくれるなら」
恥ずかしかった買い物を終え、俺のアパートへ向かった。
「ただいま~」
「普通お邪魔しますじゃないっすか」
「この家具は全部自分で稼いだお金で買ったの?」
「貰ったのもありますが」
「本当に自分1人で生活してるのね。そんな弟君の為に私が腕を奮ってハンバーグを作ってあげるわ!」
「えっ?別にそこまでしなくてもいいですよ」
「弟君はゆっくりしてなさい」
「じゃあ俺も手伝いますよ」
「いいのよ」
裕子さんの手料理か。
ちっちゃい頃もよく裕子さんが料理作ってくれたな、楽しみだな。
それに最近ろくなもん食ってねーからな。
だから俺は痩せてるのか。
何もしなくてもいいみたいなので、音楽聴いたりしながら適当に時間を潰すか。
「できたわよ」
うはっ美味そうだな。
「ハンバーグに何か入れました?」
「隠し味をたっぷり入れたわ」
「隠し味?何すかそれ?」
「ひ・み・つ」
まあいいか、変な物は入ってないだろう。
「いただきます」
俺はハンバーグを口に運んだ。
美味い!こんな美味い物食ったのはいつ以来だろうか・・・
ちょっと鉄っぽくて、何とも言い表せない味にごりごりした食感。
ハンバーグってこんな味だったっけ?
俺はハンバーグの味を忘れる程ロクなもんを食ってないのか・・・
「むふふふふふふふふふふふふふふふふ」
「裕子さん?」
ニヤニヤ笑ってどうしたのだろうか?
「裕子さんは食わなくていいんすか?」
「私はいいの」
俺は残さず全部ハンバーグを食い終えた。
こんな美味いハンバーグを残す方がおかしいくらいだ。
「じゃあ明日8時に迎えに行くから」
「ご馳走様でした。帰り気をつけて下さいよ」
「そうだ、番号とアドレス教えてよ」
「それくらいなら」
俺は裕子さんに番号とアドレスを教えた。
「じゃあまた明日」
そう言って裕子さんは帰って行った。
最終更新:2008年12月07日 22:08