淫獣の群れ(その11)

545 淫獣の群れ(その11):2007/10/23(火) 18:39:30 ID:RJT42fGI

 可苗がゆっくり腰を上げる。
 それまで騎乗位の体勢で密着していた二人の身体が、ごぽごぽ、という音を発して分かたれてゆく。
 さっきまで彼女の膣孔深く挿入されていた喜十郎のペニスが、ゆっくり抜かれてゆくに従って、大量に射精された十回分の精液が、音を立ててこぼれ落ちているのだ。
 その白い液体は、いまだ寝そべったままの兄の身体に、少し大きめの白い斑点を作ってゆく。

「あっ……!」
 彼女は思わず股間に手を当てた。
 実の兄に、剥き出しの女陰を見られる羞恥からではない。
 愛しい男の精子が、自分の女陰から流出するのを防ぐための、反射的行為だ。
「ああ……こぼれちゃう……折角お兄ちゃんが可苗に出してくれたのに、こぼれちゃうよぉ……」
 悪酔いしたように呟きながら、可苗は自分の学習机の一番下の引出し(一般的に、一番容積が大きい引出し)をごそごそと探り、“それ”を取り出した。
「……でも、安心してお兄ちゃん。すぐにこぼれないように、“栓”しちゃいますから……」
 それは、喜十郎も何度も“観た”ことはありながら、実際にその目で“見る”のは初めてのプレイ用具。
 男根を模した器具を、股布の内外両面に取り付けた黒い下着――ペニスバンド。
「――おい、それ、お前……!?」
 喜十郎としても、色々ツッコミたいところがあり過ぎて、もはや眼前の可苗に何と言っていいのか分からなくなっている。

 可苗は、その股布の内面に生えた、やや小ぶりな張型を、
「――んんんんっ!!」
 と、うめきながら、今日まで“未開の地”だった膣孔に、一気に突っ込んだ。
「んはっ、……これで“栓”が出来ましたよ、お兄ちゃん」
 そう歌うように言いながら、ビキニタイプの水着のように、左右の腰でカチリと固定する。
「でも、これはただの“栓”じゃないんです。開通しちゃった可苗の“栓”であると同時に、……お兄ちゃんという極上のワインの栓を開通させるワインセラー……お兄ちゃんのための“栓抜き”でもあるんです」

――さあ、お兄ちゃん。
 彼女の目が、陶酔したように輝く。
――言ってください。さっきの一言を。
 そう、可苗が瞳で訴えかけた瞬間、彼女は気付いた。
 喜十郎の目に、さっきまで無かった動揺の光が生じているのを。



546 :淫獣の群れ(その11):2007/10/23(火) 18:40:59 ID:RJT42fGI

いもうと”の股間からニョッキリ生えた人工ペニス。その鎌首が自分に向けられる。
 その瞬間、喜十郎はその心中に、これまで感じた事の無い恐怖を感じたのだ。
 ペニバンを見た瞬間は『ヲイヲイ』というツッコミの対象でしかなかったはずの物体が、その本来の、“他者を凌辱するための擬似男根”という用具として可苗が装備したとき、喜十郎の心中に余裕は消えた。

――かつて尻をほじられたことは何度となくあった。
 最初は怖かったし、若干痛みもあったが、今では厳然たる性感帯として存在している。
 指も一本二本どころか、最近では五~六本以上まとめて挿入できるように拡張されてしまった。
 しかし、それでも、眼前の――他者の股間から生えた禍々しい“男根”を目の当たりにしたとき、己をこれから思う存分蹂躙せんとする、その器具に反射的な恐怖を抱くのは当然だろう。
 これが女性なら『今からお前を強姦してやる』と言われたようなものだからだ。
 ましてや、彼は――当然ながら――男だ。
 男の本能に、他者の“男根”によって征服される快楽なるものは、普通は存在しない。
 いかに、日頃から『嬲られ慣れ』している喜十郎とはいえ、その心底はやはり並みの男と変わらない。つまりペニバンが発する禍々しさは、彼に影響を与えるのには充分だった。

 可苗に、そういう喜十郎の心理は分からない。
 が、分からずとも、彼が身に纏う空気が変わったのは、敏感に察しがついた。
 さっきまでの、
……かつて目を背け続けてきた“マゾヒスト”としての自分を認めさせられた羞恥心。
……“ヘンタイ”としての自分を周囲に暴露され、社会的に抹殺されてしまう恐怖感。
 さらには、
……それら全ての負の要素は、眼前の彼女によってのみ救われるという依存心。
 可苗が意図的に追い込んだ、その雰囲気が一変してしまっている。
 まるで、この家の扉をくぐった当初の、あのガチガチに緊張していた兄のようだ。

(まずいわ。可苗、どっかでミスっちゃったんだ)



547 :淫獣の群れ(その11):2007/10/23(火) 18:42:18 ID:RJT42fGI

――まあ、いい。

 可苗は聡明な娘だ。
 兄の動揺の原因が、己の腰に揺れる張型だとは、彼女はまだ気付いていない。
 が、原因はともかく、彼が雰囲気を変えた以上、今までの流れで話を進める危険性を瞬時に嗅いだ。
(それならそれで、話の持ってゆき方を変えればいいだけ)

「――お兄ちゃん、“前立腺”って知ってます?」
「……え?」
「男の人のGスポットみたいなものらしいんですけど」
「……?」
「そこでイっちゃうのって、男の人には、スッゴク気持ちいいらしいんですよ」
(何を言ってるんだコイツは?)
 喜十郎は、眼前の“いもうと”が何を意図して発言しているのか、理解できない。
 だが……。
「そこで……イカせてあげます」
 そう言った瞬間、可苗は、いまだブザマに仰向けになったままの兄の脚を持つと、膝小僧が肩に触れんばかりの角度まで、喜十郎を二つ折りにしていた。
「うわああああっ!?」
「すごぉい! お兄ちゃんの身体、すっごく柔らかぁい!」

 れろっ、れろっ、れろれろっ。
「ひぃっ……!」
 彼女の舌が、喜十郎のアナルを襲撃する。
 ゆっくりと、皺の一本一本を解きほぐすように、その柔らかい武器は兄の肛門をなぞりまくり、いじりまわす。しかしその動きは――これまで彼が経験した、どの肛門責めと比較しても、その差がハッキリ分かるほどに丁寧で、執拗なものだった。
(きっ、きもちいい……!?)
 喜十郎は、その舌遣いの繊細さに驚きながらも、一方では半ば、安心感すら感じていた。
――こいつなら、こいつだったら……オレを壊さないかもしれない。
 股間の男根型の凶器に対する畏怖が薄らぐとともに、湧き上がってきたのが、先程の一言。

『スッゴク気持ちいいらしいんですよ』



548 :淫獣の群れ(その11):2007/10/23(火) 18:44:28 ID:RJT42fGI

(オレは……期待しているのか? さっきまであんなに、寒いくらい怖かったのに……)

「いいんですよ、お兄ちゃん」
 そんな喜十郎の自問自答を読み取ったかのように、可苗が囁く。
「お兄ちゃんは、感じたい時に感じてくれればいいんです。誰にも遠慮なんかする必要は無いんです」
「でっ、でも……ひぁぁぁぁっ!!」
「んふふふ……まあ、恥かしいのは分かりますよ。“いもうと”にお尻の穴舐められて、全身びくんびくんケイレンするくらいに感じちゃって……、まるでお魚さんみたい」
「――やっ、やめっ……あああ……そんなこと……いうなぁぁっ!!」
 そんな喜十郎の悲鳴は、しかし叫んだそばから無視される。
「でも、お兄ちゃんは大事なことを忘れてますよ?」
 そう薄笑いを浮かべつつ、可苗は兄の肛門に指を突き立てた。
「~~~~~~~~っっ!!」
「お兄ちゃんは、痛くて、苦しくて、恥かしいのが大好きな、ヘンタイさんなんですから」
――ですから、遠慮なく恥かしくなってください。
 彼女の唇が、そう動いたように思えた。
 なぜ“思えた”のか?
 彼の目には、もう何も見えなかったから。
 彼の耳には、もう何も聞こえなかったから。
 ただ、喜十郎の脳中を支配していたのは、体内に侵入した“いもうと”の、二本の指から与えられる、夢魔のごとき快感だけ。
 桜とも春菜とも真理とも深雪とも詩穂とも比奈とも違う、……ぐねぐねとした、その蠢(うごめ)きは、まるで指の形をした触手のようだった。

「ここですね――」
 その指先が、くるみ大のざらざらとした器官を捉え、刺激する。
「っっっっっっっっ!!」
 瞬間、胃液が逆流すほどのエクスタシー。
 その無理やり捻じ曲げられた背骨が、逆に反り返るほどの快感。
 しかし可苗は、それでも彼を解放しない。
 まるでブリッジのような体勢で、全身の力を振り絞ってもがく兄の裸体を、上から彼女自身の全身を預ける事で押さえると、そのまま彼の耳朶に唇を寄せた。

「お兄ちゃんの前立腺、ぱんぱんに肥大してますよ」
「いつもいつも、お家でお尻をイタズラされてる証拠ですね?」
「毎日毎日お尻で感じさせられて……普通の男の人なら絶対にありえないですよ。ほんと、お兄ちゃんはいやらしいんだから……」
「でも――」
 そのまま可苗は、渾身の愛情を込めた口付けを、兄に送る。
「そんないやらしい、ヘンタイさんのお兄ちゃんが、可苗は大好きなんです。ですから、もっともっとお兄ちゃんの感じてる、……ヘンタイ的な顔を可苗に見せてください」



549 :淫獣の群れ(その11):2007/10/23(火) 18:46:12 ID:RJT42fGI

 そうだ。
 感じていいんだ。
 喘いでいいんだ。
 恥かしくてもいいんだ。
 だって、オレはヘンタイだから。
 恥かしくて感じる、ヘンタイだから。

 その瞬間、屈辱は消えた。恐怖も消えた。その他あらゆる雑念が消えた。
 喜十郎の中には、ただひたすらに快楽を求めようとする、純粋なまでの欲望が残った。
「――して、ください……」
「え?」
「オレ――ぼくのお尻の“処女”を奪って下さい……」
 ほろりほろりと大粒の涙をこぼし、魂からしぼりだすように喜十郎は、願いの言葉を口にする。

 その瞬間、
「――わかりました」
 可苗のリミッターもまた、
「奪ってあげます」
 完全に外れた。


 ずぼぉっ!!
「かはぁぁぁっっ!!」


 可苗の腰の張型が、正常位の体勢で喜十郎のアナルに押し当てられた、その次の刹那には、“それ”は根元まで彼の体内を侵略していた。
「――ひゃうあっっっ……ふっひひぃぃぃっ……ぁぁぁっ!!」
 ずぽっ! ずぽっ! ずぽっ! ずぽっ! ずぽっ! ずぽっ! ずぽっ! ずぽっ! ずぽっ! ずぽっ!
 白目を剥き出しにして、一切の理性を剥奪された表情で喘ぐ喜十郎。
――いかに彼を日常的に弄ぶ本家の“妹”たちといえど、ここまで快楽に溺れた“兄”の貌(かお)は見たことがあるまい。まさしく百年の恋も覚め果てるであろう間抜け面で、彼は無残に喘ぎまくる。
 そんな兄をAV男優顔負けのストロークで、兄を凌辱する実の妹。
 そして、そのまま彼の腰を固定していた自分の両手を、そろそろ、そろそろと移動させてゆく。
 未だ斑状内出血が生々しい、兄の首へ。

――おにいちゃん。……かなえが、もっともっと、きもちよくしてあげます……!!
――だから、
――おにいちゃんも、かなえをきもちよくさせてください……!!



550 :淫獣の群れ(その11):2007/10/23(火) 18:47:48 ID:RJT42fGI

 ぴんぽ~~ん。ぴんぽ~~ん。ぴんぽ~~ん。ぴんぽ~~ん。ぴんぽ~~ん。ぴんぽ~~ん。
「はいは~~い」

 重い鉄のドアの向こうから聞こえる、明るい声。――それが、不安と苛立ちでささくれだった桜の神経を、いっそう逆撫でにする。
 がちゃ、がちゃがちゃ、――かちん。
「――はい、どな……あれ、桜ちゃん?」
 チェーンロックをかけたまま、細めに開いたドアの向こうから、キッチンのいい匂いと共に、三ヶ月ぶりに会う可苗の、いかにもご機嫌な美貌が垣間見えた。
「可苗ちゃん、お兄様は来てる?」
 久闊を叙する挨拶などカケラも無い。ドアの隙間に足を突っ込み、仏頂面の桜はイキナリ口を開く。
 さすがの可苗も、その剣幕にはたじろいでしまう。
「ちょっと、……どうしたんですイキナリ? お兄ちゃんに何かあったんですか?」
「いいからっ! お兄様は居るの!? 居ないの!?」
「――待って下さい。いま、チェーン開けますから」
「そんなことはいいから訊かれた事に答えなさいっ!!」

「桜ちゃん、少しは落ち着いてくださいっ」
「あんまり騒ぎ過ぎると、まずいですわよっ」
 口々にそう言いながら、春菜と真理が、怒り狂う長姉を取り押さえる。
 いくら従姉妹同士とはいえ、他人の家の玄関先でこんなやりとりをしていたら、流石にまずい。下手をすれば、団地の隣人に警察を呼ばれかねない。
 桜とて、それくらいの理性は残っていた。家に入れてくれると言うなら、大人しく従った方がいいに決まっている。少なくとも誰に聞かれるかもしれない、こんな玄関先でつかみ合いを起こすよりは。
「うん……分かった。――ごめんなさい可苗ちゃん、いきなり大騒ぎしちゃって……」
 桜は、先程までのヒステリーが嘘のように、しおらしく従姉妹に詫びた。
「いいんですよ、可苗は気にしてません。……で、お兄ちゃんなら」
 ロックが外れた。

「お兄ちゃんならウチに居ますけど……取り合えず入ってください」

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最終更新:2007年10月25日 17:40
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