小ネタ「幸福論」

371 小ネタ「幸福論」 sage 2009/02/28(土) 20:17:13 ID:QE7rDPjj
――ねえ、アナタの幸せは、なんですか?

昨日の夜見たテレビ番組――確かドラマだったかの最終回。
そこでよく知らない女優が、カメラ目線で訴えかけてきた言葉だったと思う。
正直なところ、幸せなんてよくわからないけれど、私にとって唯一のソレは、弟と一緒にいることだ。
弟は可愛い、というのは私が彼の姉だからの表現であって、正確には「カッコいい」だと思う。
優しくて、大切な人は必ず守ることを信条にしていて、でも打たれ弱い、そんな弟。
その全部が、私の大切な弟だ。このことを口にすると、周りの友達に変人呼ばわりされたけど。
でも別にいいや。どうでもいい「誰か」や、壮大すぎる「何か」に、望みをかけるわけではない。
弟の、泣いたり笑ったりする表情に、私の恋心が燃え上がる。ただそれだけのことなんだから。


――本当の幸せというのは、目に映らないから、傍にあっても案外気づかない。

いろんなところで目にするこのフレーズ、最近になって身を持って理解できた。
弟と一緒に夕飯の買い物に出かけた帰り道。時々だけど、私の楽しみにしている時間。
まだまだ3月に入る直前のこと、この町の気候はまだまだ寒い部類に入る。
弟と二つに分けた買い物袋を持つのとは反対の手――弟との間の手がだいぶ冷えてきた。
指がかじかんできたから、弟と手をつないで、暖まりたい。
そんなことを思いながら、指をポケットに入れようとしたとき、弟が手をつないでくれた。
寒そうだから、と言ってくれた弟の赤い横顔に、思わずキスをしそうになった。

でもその時、後ろからやかましい女が突然私達に声をかけてきた。弟の知り合いらしい。
そして「姉弟で気持ち悪い」とか好き放題言って、弟に何か言われると、どこかに行ってしまった。
悲しそうな顔をした弟に「あの女は誰?」と聞くと、どうやらクラスメートとの事。
なにやら弟に気があるらしいが、弟には正直付き合う気はないとの事。私はホッとしていた。
その後、なぜか弟は私に謝ってくれた。弟のそんな悲しそうな顔を、見たいんじゃないのに。

次の日の夕方、弟を侮辱し否定した、あの生意気な女を車道へと突き飛ばした。
突き飛ばされた女は、見事に走ってきたトラックに衝突され、遠くへ吹っ飛んでいった。
不思議と怖くなかった。
弟の優しさや言葉を否定するような、どうしようもない連中なんて、消えればいい。
弟を守る為なら、少しくらいの苦労なんて、私にはなんでもないんだ。
さあ帰ろう。家で待ってる弟に、あの子の大好きなおかずを作ってあげるんだ。


別に何かを望むわけじゃない。私はただ、弟の全てを愛している。私はただ、弟の全てを守ってあげる。

――ねぇ、おとうと。あなたがそこにいてくれるだけで、お姉ちゃんは幸福なんです。

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最終更新:2009年03月01日 22:38
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