664 I do not want to let you meet (1/6) ◆6AvI.Mne7c sage 2009/03/13(金) 19:18:59 ID:6dc/obKX
「ふう、これでよし。少し休憩しときますか」
ひととおりの作業を終えて、私は少し回想する。
私は来週、ある男性と結婚する予定だ。
彼は、昔から私と一緒の家で暮らしてきた、大切な家族だ。
わかりやすく言うと、昔ウチで養子に引き取った、義理の弟なんだけど。
彼がウチに来たのは、私が5歳の時で、彼が3歳の時。
孤児院の院長を友達に持つパパが、ある日突然、連れて帰ってきたのだ。
何でも、両親に捨てられたせいで、他人に懐かない子供だったらしい。
孤児院でも、周りの人間を仲間だと認めず、ずっと孤立していたそうだ。
「そんな話を聞いてね、ウチで幸せにできないか、と思って引き取ったんだ」
そんな両親の話を聞いて、最初私は少しバカらしくなったのを覚えている。
どうやってそんな難しそうな子供と打ち解けるのか、と子供ながらに思った。
まあ、今の私からしたら、そんな自分をビンタしたくなるんだけど。
結局、引き取ってからもあの子はあまり家族に馴染んでくれなかった。
私もそんな子供に関心を向けることができず、どちらかというと無視していた。
パパとママは、それでも頑張って、彼と打ち解けようとしていたけど。
そんなこんなで2年経った頃、私が小学2年生の時に、ちょっとした事件があった。
当時の小学校では、男子が数人で女子1人を囲んで、苛める遊びが流行っていた。
私も当然のように、その対象にされ、学校の帰り道で苛められることがあった。
あれは確か、14回目くらいだったかな。義弟がその輪に飛び込んできたのだ。
そして義弟は、果敢にも2歳年上の男子に挑んで、やっぱりつき飛ばされていた。
なんとかしようと、ランドセルの縦笛を振り回して、必死に男子連中を追い払った後。
傷だらけの義弟に「なんであんな危ないことしたの!」と叱る私に、義弟は言ってくれた。
「お、おねえちゃんが、ないてたもん。たすけなきゃって、おもったんだもん……!」
そのとき私は、あまりの嬉しさに、力いっぱい義弟を抱きしめたことを覚えている。
痛いくらいに抱きしめた私にビックリしながら、義弟も抱きしめ返してくれたっけ。
665 I do not want to let you meet (2/6) ◆6AvI.Mne7c sage 2009/03/13(金) 19:21:24 ID:6dc/obKX
「思えば私って、あの時の義弟に、すっごく惚れちゃったんだよねぇ」
いかんいかん、多分いますっごく顔がにやけてる。でも我慢できないや。
あの事件以来、義弟は私に懐いてくれるようになった。
パパとママがその光景を見て、びっくりしたり悔しがったりしてたっけ。
だから私も義弟を説得して、2人とも仲良くなれるように頑張った。
そのおかげで、数ヶ月する頃には、家族みんなで和気藹々とできるようになった。
義弟は、私達の家族の一員として、自然に溶け込めるようになった。
けれど、私はそれだけじゃ止まらなかった。
小学生の頃はまだお姉ちゃんとしていられた。義弟も私を慕ってくれていたし。
けれど私が中学生になり、弟も小学校高学年で、若干反抗期が入りだした頃。
一緒にお風呂に入るのを嫌がり、一緒の布団で寝るのを嫌がり出した義弟。
「寂しいけど、義弟も男の子だもんね」なんて誤魔化して、毎晩布団で泣いていた私。
ある日とうとう我慢できず、義弟が眠りについた頃、私は彼の寝室に忍び込んだ。
寝ている義弟の唇。寝相が悪くてはみ出した、少し硬くなりだした義弟の腕や脚。
無防備で、男の子をさらけ出している義弟に、衝動が抑えきれず、ついキスしてしまった。
その瞬間、私の全身に一気に電流が駆け抜けた、ような気がした。
私の身体が、オンナノコとして反応している。私は義弟に欲情している――!
理解した私は、これ以上はマズイと思い、義弟の布団を掛けなおして、部屋をあとにした。
私は、この子のお姉ちゃんなんだ。この子を男の子として好きになっちゃいけない。
そう自分に言い聞かせておきながら、結局毎晩、同じコトを繰り返した。
義弟へのキスは、彼が眼を覚まさない程度に、徐々に深くなるようになった。
それだけではない。義弟が精通を迎えたのを知る前に、初めて射精させたのは私だ。
手で優しくしごいて、最後は口で受け止めた。はっきり言って、美味しかった。
義弟のものなら、唾液だって涙だって、血液だって髪だって、なんでも大好物だ。
変態にもほどがある、そう思っても、この毎晩の狂宴はやめられなかった。
表では理想のお姉ちゃん、裏では愛欲に溺れる変態義姉、それでも構わない。
私は義弟に一生を捧げる。私は結婚しなくていい。義弟も他の女にくれてやるもんか。
666 I do not want to let you meet (3/6) ◆6AvI.Mne7c sage 2009/03/13(金) 19:22:12 ID:6dc/obKX
「独占欲丸出しの私……よく義弟にばれなかったよね」
休憩を終え、作業を再会しながら、ふたたび回想に耽る。
私はそこそこの器量だったらしく、結構いろんな男子から告白されていた。
無論、全部断った。しつこい奴や逆上して襲ってきた奴は、男性機能に死んでもらった。
義弟から彼の同級生を紹介されたときは、デートに呼び出し、ケチョンケチョンにした。
「何してんだよ!」って怒鳴る義弟の顔を見るだけで、ご飯3杯は軽くいけたね。
もちろんその逆もしかり。義弟も性格よし器量よしで、結構もてた。
器量はともかく、性格はひとえに、私の教育の賜物ですよ~だ。
それで、義弟に好意を持った雌どもは、各種手段で片っ端から遠ざけさせた。
それでも義弟に告白したバカは、不幸な事故や転校で消えてもらった。
なんというか、私には、そういう策略や裏工作に関する才能があったらしい。
とにかく、そんな犯罪まがいなことを繰り返していたある日、とうとう義弟にばれた。
いや、裏工作ではなく、夜這いを掛けていたほうがバレたんだけど。
私が大学生3年、義弟が大学1年の夏の日、生理も相まって、ムラムラしてた日。
情欲の勢いに流され、義弟が目を覚ますのに気づけずにキスをしていた。
当然義弟は驚いて、私を思いっきり突き飛ばした。そして文句を言ってきた。
「なんで……コトするんだよ! 僕らは……義理でも、姉弟じゃないか……!」
この言葉を聞いたとき、私はもう義弟に嫌われたと思った。
義弟に見捨てられる、義弟と一緒に暮らせなくなる、義弟と、義弟と………
けれど、予想に反して、義弟は私を抱きしめて言ってくれた。
「僕だって、姉ちゃんが好きだ。僕だって悩んでたのに。ひどいよ。
寝込みを襲って、こんなマネするくらいなら、一言言ってくれたらよk」
つい嬉しくて、義弟の告白の途中で、キスしちゃった。猛省。
むしろその勢いで、うっかり義弟とエッチしちゃった方が、よっぽど問題だけどね。
あっはははははっ…………義弟、あの時はマジでゴメン。
667 I do not want to let you meet (4/6) ◆6AvI.Mne7c sage 2009/03/13(金) 19:23:13 ID:6dc/obKX
「むしろ、あれ以降義弟とイチャイチャできるようになったから、正解だったかな?」
手に持ったロープを引っ張りながら、それを思い出す。
義弟と愛を交し合った翌日から、私は義弟に遠慮することなくイチャついた。
義弟も、困った顔をしながらも、体重を預けてくる私を受け止めてくれた。
そして時々2人でこっそり外出して、デートや、エッチするようにもなった。
お互いの同級生連中には、「姉弟でそんなに仲良かったっけ」とか言われたなぁ。
時々いた「気持ち悪い」とかの少数意見には、従来どおり退場していただいたけど。
まあ当然、パパとママには、そんな私達の関係はバレバレだったらしい。
最初の日から2年後くらい経って、義弟も大学卒業と就職の目処が立ったくらいの日。
「義父さん、義母さん、自分勝手で悪いんですが、娘さんを、僕にください!」
どうしてもと聞かずに、私のパパとママにそんな挨拶をかましてくれた義弟。
バッチリ決めていて、カッコよかったから、また惚れ直したよ。
そんな義弟に笑いかけ、養子間の結婚に関する準備をしてくれていたパパとママ。
「昔からあなたたちを見ていたら、こうなることくらい、わかってましたよ」
そう言ってくれたママ。何も言わず、義弟の肩を叩くパパ。
「みんな、みんな、ありがとう。私、幸せになるね!」
その日は、ちょっぴり義弟が引いちゃうくらいに、嬉しくて嬉しくて、泣き続けた。
パパとママも、つられて一緒に泣いてくれた。
最後には義弟も泣きながら、私を抱きしめてくれた。
他人からどう見られても構わない。私は最高に幸せなんだ。
668 I do not want to let you meet (5/6) ◆6AvI.Mne7c sage 2009/03/13(金) 19:24:17 ID:6dc/obKX
「――と、ここでお話が終わらないのは、世の無常とでもいうのかな?」
自分でも解るくらい低い声で呟き、私は真上にぶら下がるモノを見上げた。
義弟が大学を卒業して就職し、ようやく仕事に慣れてきた頃のこと。
突然、義弟宛てに電話がかかってきた。
電話を取り次ぐ前に確認したところ、義弟の本当の両親だという。
その場で切ることもできたが、やっぱり義弟に替わることにした。
義弟が自分を捨てた両親をどう思っているかは知っていたが、無視はできなかった。
結果、それがあそこまで義弟を悲しませることに気づかずに。
受話器を置いて、義弟は電話の内容を教えてくれた。
「僕の生みの親が、僕に一目でいいから、逢いたい、んだそうだ」
そう話す義弟の顔は、複雑な表情を浮かべていた。
「逢いたくないなら無視しようよ。逢いたいなら、私も途中までついていくよ」
そんな私の一言で決心したのか、義弟は指定された場所に行く、と言い出した。
私も心配だったけど、「大丈夫。決着をつけてくるから」と義弟に止められた。
でもやっぱり心配で、義弟に黙って、こっそり跡をつけていった。
やっぱり逢いに行かせるんじゃなかった。私はひどく後悔した。
呼び出されていったのは、ウチの近場にある、潰れかけの喫茶店。
義弟の実の両親はいた、けどそこには、他に複数の男女が隠れていた。
「どうもすいません。我々は『I want to meet.』という番組のものです」
そういって、にやけ顔の壮年の男が、義弟に名刺を渡していた。
なんでも、義弟の両親はTV番組の力を使って、息子の居場所を探したらしい。
その結果、その全容を、TV番組で全国放送されることをわかっていながら。
自分達の浅ましい過去、義弟の触れられたくない過去も、全国にぶちまけるのに。
「ふ……っざけんな! アンタらが俺にした仕打ち、わかってんのかよ!
恥ずかしいと思わないのかよ! こんな真似して!」
実の両親に怒鳴る義弟。怒りのあまり、口調がいつもと違う。
こんな義弟、私は知らない。こんなに怒った義弟、初めて見た。
「もういい。金輪際アンタらを、両親として認識しない。二度と近づくな。
周りのTVスタッフ、あんたらも、こんなもん放送するんじゃないぞ!!」
そう言い捨て、義弟は店から出て行ってしまった。
私は義弟に見つからないように隠れながら、店の様子を窺った。
バカみたいにうなだれた義弟の実の両親、小声で文句を垂れるスタッフ。
そして興味のなさそうな顔をする店主と、例のにやけ顔の男。
ふざけるな。私の大事な義弟を泣かせた連中が!
私達の幸せを、自分達の都合で潰そうとする害虫どもが――!
669 I do not want to let you meet (6/6) ◆6AvI.Mne7c sage 2009/03/13(金) 19:25:33 ID:6dc/obKX
「物語は、ハッピーエンド以外認めない。格好いいセリフだよね」
そう言って、私は周りの痕跡を全て隠滅し、この場を立ち去ることにした。
あの後、怒りながら泣き顔で帰ってきた義弟を慰めた。
先回りして帰っていなければ、義弟にばれていたけど。
あの場での顛末は知っていたけど、義弟の話を何度も聞いて。
「そんなことは忘れて、私達で幸せになりましょう? 愛しています、義弟」
そうなだめているうちに、義弟は泣き疲れて、いつの間にか眠っていた。
そんな様子の義弟を見たパパとママも、結局一緒に憤っていた。
私は、この人たちが、義弟が家族で本当によかったと、心の底から思った。
「害虫には死を。憂いは一切残してはいけません。っと」
私は、あの時あの場にいた連中を全て潰して回った。
あのにやけ顔の男は、怨恨の末に、女に刺し殺されて。
あの喫茶店は、店主ごと不審火で燃え尽きてもらい。
あのスタッフ達は、それぞれ別々に事故死してもらって。
そして今夜は、義弟の、実の両親を――
「息子に拒絶された末の心中。お似合いですよ、義弟を捨てた馬鹿には。
貴方達にはほんの少し感謝しています。義弟を生んでくれたこと。
でもね、恥知らずな真似を、これ以上されたくないんですよ。
あなたたち、そのうち息子に、お金を融通してもらいに来るでしょう?
そうなったら最悪です。生みの親が膿みの親になる前に、抹殺です。
それではごきげんよう。二度と思い出すこともないでしょうね」
天井の梁にぶら下がったまま動かない、2つの汚物に振り向くことなく。
私はその場を離れ、義弟の待つ家に帰ることにした。
「さあ、邪魔な連中もようやく片付いたわ。
うふふ、2人で――いいえ、家族4人で幸せになりましょう。
だから、待っていてね、私の義弟――いいえ、私の最愛の夫」
いい加減、家で待っている夫のもとに帰って、抱きしめてもらおう。
私は、あの人のために、なんだってしてあげる。
あの人が泣かないために。あの人が笑えるために。
――さあ、不幸の時間はここまで。これからは幸福の時間だよ。
―HAPPY END―
最終更新:2009年03月15日 22:22