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小ネタ「『さいご』のおまじない」 ◆6AvI.Mne7c sage 2009/03/17(火) 19:22:48 ID:WED4YJQQ
「これでよし。あとは時間まで待てば、全てが終わる――」
3月15日の午前3時5分。真夜中の暗い部屋の中。
携帯のわずかな明かりを頼りに、僕は待ち続ける。
3日前に失踪したクラスの女子から聞いた、絶対に効くおまじない。
「3月15日の午前3時15分に、作法通りに作った『願い札』を持つと、
その札に書かれた願い事が、1つだけ、なんでも叶うらしいよ?」
その話を聞いて、僕は彼女に頼み、詳しい内容を教えてもらった。
そのせいで、彼女はいなくなってしまった――ごめんなさい。
僕の願いは、妹と二度と逢わないこと。妹がいなくなること。
僕は妹が怖い。僕を愛していると言う、血を分けた妹が。
僕の下着や紙ゴミを漁り、精液や汗をしゃぶりとる妹。
1日3回どこででも、口移しでしか食事を許さない妹。
複数の薬で僕の自由を奪い、僕を何度も犯してくる妹。
僕に接触するすべての女性を妬み、全員失踪させた妹。
逃げ出した僕をなんなく発見し、傍らに縛り続ける妹。
とにかく、もう妹には、傍にいて欲しくない。
だから、「妹に逢うのを昨日で『さいご』にする」と願う。
あともう少し。あと数分経てば、僕は妹と永遠に逢えない――
「こんばんは、愛するお兄ちゃん。ごきげんいかが?」
「う……うわああああぁぁぁぁぁ!?」
妹が突然現れた。それも僕の目と鼻の先にだ。
そしてそのまま、僕の身体に絡みついてくる。
「ふ、ふん。僕はお前が嫌いだ。けどもう二度と逢うことはないんだ!」
おまじないの効力がでるまで、僕は強気で誤魔化し通す。
しかし、そんな僕を嘲笑うように、妹は唇を近づけてくる。
「あはは。お兄ちゃんも、あのおまじないを使ったんだ?
――でもね、その『願い札』の折り方、間違ってるよ」
は……? 何を言ってるんだ? 僕はちゃんと、情報通りに――
「本当は、3つに切って1束にして、それを5つ折りにするんだよ。
まあ、私が嘘の情報を意図的に流したから、間違って当然だよね?」
そう言いながら、妹は懐から、なにやら畳んだ紙を取り出す。
間違いない。あれは正しい折り方の『願い札』だ!
「内容はナイショ。叶うまで、解っちゃったらつまらないでしょ?
お兄ちゃんの願いは知らないけれど、それじゃ叶わないもの。
だから、私がお兄ちゃんといられるよう、ちゃんと願ってあげる。
さあ、願いが叶うまであと10秒。お兄ちゃん、ずっとずっと、愛してる」
そう言いながら、片手で器用に僕の服を剥ぎ取ってくる妹。
おそらく、本当にあと数秒で、妹の願いは成就される。
もう、このキモチワルイ妹から、一生逃れられない――!
定刻に合わせた携帯アラームの電子音。願いの叶う合図。僕への死刑宣告。
「お兄ちゃんと私の愛の絆は『さいご』まで何者にも邪魔させない――
ねえお兄ちゃん。私のお腹の子は、男の子と女の子、どっちだと思う?」
――妹の最期の告白を聞きながら、僕は正気を失った。
― The last words come true ―
最終更新:2009年03月23日 00:51