756 広小路淳 ◆3AtYOpAcmY sage 2009/03/18(水) 13:43:31 ID:1I2biUot
741
兄妹の親が有名人や地位のある人物だったりしたら、
情報をマスコミに売って関係を絶つという方法も考えられるな。
「お兄ちゃん、今日こそ私と一緒に・・・・・・」
「やめろ、俺たちは兄妹なんだぞ!」
彼は妹からのアプローチを強硬に拒んだ。
妹は決してブスではない。ウェーブのかかったセミロングの髪に、均整の取れた体つき、それでいて豊かな胸。政治家の娘でなければ、グラビアアイドルになっても良かったかもしれない。
だが、いくら美人でも、妹は妹。近親相姦などもってのほかである。
(このままでは俺は実の妹との関係を持つことになってしまう)
そう恐れた兄は、テープレコーダーに妹とのやり取りの一部始終を録音した。
数日後、兄はテープレコーダーを携えて都内某所の喫茶店に入った。
血を分けた妹に対する背信行為。メディアに情報を売りつけるという行為。
罪悪感に胸が痛まなかったわけじゃなかった。
(でも、長い目で見ればこれでいいんだ・・・・・・)
そう自分に言い聞かせる。
「それにしても遅いなあ」
そのとき、駐車場にホンダのシビックが停まり、まだそれほど年を取っていない男が降りてきた。
彼が、今回ネタを買うという名前の通りの良いとある名門週刊誌の記者である。
「遅れてすみません。あなたが三宮内相の息子さんですね」
「そうです。今日はご足労いただきありがとうございます」
「いえいえ、こちらこそ。で、用意していた物はありますね?」
「はい。これがテープです」
「ありがとうございます。ちなみにこれが写真です」
兄がリークして撮影させた、件の妹が兄に抱きつき、甘える写真だ。
「やっぱり写真があるのとないのとでは信憑性が違いますからね。・・・・・・っと」
「何です?」
「言ってあるかと思いますけど、情報提供者はあくまでも『兄の友人』でお願いしますよ」
「当然ですよ。なんなら、ゲラをお送りしましょうか?」
「そうですか。ご迷惑をおかけします」
「いえいえ」
兄は一通りの話を終え、情報提供料の入った封筒を受け取って立ち去った。
(こっちが金一封よこしてもいいぐらいなんだがな・・・・・・)
そして彼はほくほくした顔で帰った。
数日後、バイク便で送られてきたゲラの出来に、彼は大いに満足した。
「『三宮内相』の愛娘が『実兄』に向けた『狂気の愛』」
そう題された記事には彼が流した情報が余すことなく載っている。
満足して、机の引き出しにしまった。
757 広小路淳 ◆3AtYOpAcmY sage 2009/03/18(水) 13:44:03 ID:1I2biUot
さらに数日後、期待感に満ちて、新聞を開けた兄は、絶句した。
その週刊誌の広告には、どこにも自分と妹の記事はなかった。
あわててコンビニに走り、週刊誌の内容を確かめる。やっぱりない。
あまりのことに、携帯を取り出し、記者にかける。
「どういうことですか?お見せしてくれた記事、どこにもありませんでしたよ!?」
「いや、・・・・・・その、上が・・・・・・」
「上?上からの圧力で記事が潰されたって言うんですか!」
「ええ、まあ・・・・・・」
あまりのことに、ふらりとしてその場にへたりこんでしまった。
「大丈夫?」
「ああ、だいじょう・・・・・・ぶっ!?」
見間違えようもない。兄を愛してやまない妹その人である。
「いきなり血相変えて出て行くんだもん。驚いちゃったよ。
それとね・・・・・・」
ああ。
「家族の秘密を週刊誌に売りつけるのは良くないと思うな。
今度は水際で止めたけど、もうやっちゃだめだよ」
全部ばれていた。
「ということで、今日は一日お仕置きだからね。覚悟してね」
そう言うなり、妹は兄はずるずると引きずって連れ戻す。
その日、兄妹が学校を休んだのは言うまでもない。
しばらくして、休日に妹にデートと称して連れ出された。もちろん拒否権などない。
歩いていると、急に走っていた一台の車が停まり、声をかけてきた。
「やあ、元気かい?」
「あっ、あんた・・・・・・」
絶句したのは、何も件の週刊誌記者との思いもよらぬ再会にではない。
彼が乗っていたのがフェラーリ・カリフォルニアだったからである。
「これ、日本じゃまだ発売さえされていない最新モデルだろ?
いくら大手出版社に勤めているとはいっても、そんなに金があるのか?」
「いや、まあ・・・・・・。でも、仲良さそうで何より。じゃ!」
彼はそう言うと、そのまま走り去ってしまった。
「ほんと、何よりだね」
そう言って寄り添う妹、そして伴侶である少女の言葉に、兄はただ頷くことしか出来なかった。
以上です。
結局キモウトに敗戦してしまいました。
最終更新:2014年09月11日 14:49