記憶の中の貴方へ 第4話

865 記憶の中の貴方へ 第4話  ◆YVZUFUAt8U sage New! 2009/03/23(月) 00:39:50 ID:bJ8avmsq
「……あの。雫姉、どうしたの?」
「なにが?」
「いや、腕が……」
 真琴さんと出かける約束をしてから数日たった。
最近の雫姉はちょっと変だ。どこがとは上手くいえないけれど、たとえばそう――
「何か近くない?」
「そうか?」
 放課後の迎えの車の中。雫姉は僕の右腕を抱きしめ、体を預けていた。隙間も出来ないほど。何度かこんなことはあったけど、ここのところ毎日だ。
なんだか、ここ数日で僕に対しての距離が近くなったような気がする。気のせいだろうと雫姉が言っているから自意識過剰なのかもしれないけれど……。
「なあ、広樹。今日は何が食べたい?」
上機嫌の雫姉が訊ねてくる。作ってくれる料理はどれもおいしいから特にこれといった希望は思い浮かばないんだけど……。
それよりも……あのデスね……胸がね。隙間無くきっちりと抱きしめているから、雫姉の胸が僕の腕にデスね。
「ほら言ってみろ。大概のものなら作ってやるぞ」 
 うっすらと微笑みを浮かべながら体を寄せる。腕が二つのふくらみの真ん中に挟まれる。グイグイ押しつけられるこの感触はまさに……。
「……マシュマロ」
「広樹……それは料理じゃない、材料だ。しかもお菓子だ」
半眼でそう告げる雫姉。
「え、あ……いや……その。」
とっさにカレーなんてどうかなと言いつくろったが、内心はそれどころではない。
それにしても、改めて変だなと思う。真琴さんと会った日はあんなに機嫌が悪かったのに……。
そして……雫姉の横顔を眺める。たぶん夕方だからだろう、ほのかに赤らんだ美しい横顔。絹のようにきめ細やかな肌。芸術家が磨き上げられたような精緻な目、鼻それぞれのパーツ。花のように整った口元。
窓の向こうの夕焼けをバックに佇む雫姉はどこかの絵画のようだった。
挟まれた僕の腕に雫姉の鼓動が伝わり、自然と僕の鼓動も高まる。
ふと締め付けられるような想いが、鼓動に合わせて血液と一緒に胸の中に流れ込んだ。流れ込んだ想いははき出され、より強い鼓動を刻んで再び胸に流れ込む。何だろうこの気持ちは。こんなに雫姉は綺麗だったのだろうか。
そんなことを思ってしまった自分に違和感を覚える。



866 記憶の中の貴方へ 第4話  ◆YVZUFUAt8U sage New! 2009/03/23(月) 00:41:23 ID:bJ8avmsq
ちょっと変になったのは、実は僕のほうかもしれない。


「カレーか。それも良いな」
 返事をしながらも雫の意識は、抱きしめた広樹の腕に集中していた。細い腕が自身の胸――その先端――をこする。
そのたびに電流のような甘い刺激が体に走る。思わず声が漏れるそうになるのを噛み殺していた。
 広樹は気づいているだろうか。制服の下、雫が下着を――上のブラジャーはもちろん、下のショーツまで――着けていないことを。
 何故こんなことをしているのかわからない。
いや、理由は分かるのだ。クラスの友人が言っていたのだ。「朴念仁にはあからさまな色仕掛けだよ。たとえば穿いてないとか?」と。そのときは馬鹿にするなと怒鳴って終わりだったが……。
迎えの車がくる少し前に思い出して、気付いたら脱いでいたのだった。
雫は広樹のことが好きだ。言葉なんかでは語り尽くせないほど愛している。
それは広樹と会ったあの日、雫の価値観とプライドのことごとくを、彼が壊したあの日から、ずっと続いている想いだ。いちいち確かめるまでもなく、心の真ん中、その大きな場所を占めている。この想いとともに成長し、生きてきた。
そして先日の真琴――あの穢れた娘だ――との出会い以降、この気持ちが日に日に増しつつある。ほんの1週間前なら考えもしなかったであろう、こんな破廉恥な振る舞いをしている自分に驚く。焦っているのだろうか。私が?生粋の名家、雛守家当主のこの私が?
それはともかく、
最初は直接肌に触れるブラウスとスカートの感触に違和感を覚えていたが、
「……んんっ」
今度は僅かに声が漏れてしまった。
いまでは違和感が気にならなくなっている。いや気にしていられなくなっている。
燃えたぎる釜の中に放り込まれたかのように全身が熱い。特にスカートの中。そこは切ないほど熱を帯びていた。耐えきれずにとろりとした蜜が溢れ、僅かにスカートを湿らせる。
「んはあ!」
どこからか聞こえてきた艶やかな声に驚き、それが自分のものだったことに更に驚く。今更ながら後悔しはじめる。なんだこの様は、痴女ではないか。
 このことが広樹に知られたらどうなるだろう。軽蔑するだろうか、無視するのだろうか、喜ぶのだろうか。それとも……。
 犯してくれるのだろうか。
 ブルリと震えた。彼に突き放されるかもしれない恐怖と、もしかしたら犯されてしまうかもしれないことへの暗い喜び。ごちゃ混ぜの感情が熱を帯びた体を揺さぶった。
 そうなったら……と雫は考える。
 広樹はあたしが泣いても叫んでも許してくれないだろう。既に濡れている私を見て「なんなのコレ?」って嗤いながら必死に抵抗する私を犯すのだろう。
組み敷かれ、吸われ、奪われ、体の隅々を、髪の先から足の先まで徹底的に蹂躙されるんだろう。
そしてご主人様と呼ぶように強制されて、昼も夜も屋敷の中で弄ばれるのだろう。私は広樹――いや、ご主人様の匂いで染められて、ご主人様は私の匂いに染められる。それがずっと続く。
朝も、昼も、夜も明日も明後日も次の日も次の日も次の日も次の日も次の日も次の日もその次の日も……ずっとずっとずっとずっとずっとずっと続くのだろう。
想像しただけで体が歓喜にふるえた。ガタガタと震え出す。

でも、
 広樹がこんなことで迫ってくれることなんてはずがないのに……。頭では分かっているのに。
「……?雫姉、どうしたの」
「!!……ぁん」
 すぐそばでささやかれた広樹の声が、耳をくすぐる。ダメだ。こんなことでは気づかれてしまう。返事をしなければ、
「んんっ!!……別に……なんでもない。カレー、だったな。そう…ん…だな。んあっ、シーフードではどうだろう?」
「……? いいね、手伝うよ」
耳と胸。押し寄せる莫大な刺激の波に体が耐えきれない。また蜜がスカートを汚した。
それだけならまだしも陰核が膨れてきているのが分かる。花弁はゆっくりと確実にパクパクと開いて閉じてをを繰り返している。体の自由はきかず、広樹にほとんどしがみつくように、寄りかかったまま動けない。
足は冗談の様にがくがくと震え……このままでは、
「~~~っっっ!!」
急ブレーキで車が止まった。耳障りなブレーキ音が車内に響く。信号無視で飛び出した車にのせいで急停止したのだが、そんなことは雫にとってどうでもよかった。音なんて聞こえていなかった。
それよりも、抱きしめていた広樹の腕がブレーキの勢いで大きく揺られ、指がスカート越しに雫の陰核を押しつぶし、内腿(うちもも)――これは直接――に触れたのだった。



867 記憶の中の貴方へ 第4話  ◆YVZUFUAt8U sage New! 2009/03/23(月) 00:45:15 ID:bJ8avmsq
陰核をつぶされ、水気で湿った秘所からほんの5㎝ほどの場所を勢いよく触られる。それだけでもどうにかなりそうだった。さらに、
広樹は広樹で、体勢が崩れると、寄りかかった雫も一緒に崩れると判断したらしい。その優しさのため、目をつぶりながらも、とっさに体勢を崩すまいと手さぐりで何かをつかもうと、力を込めて、手近な、そう『今さっき触れた雫の太もも』をきゅっとつかんでしまった……。
「~~~!!!」
言葉にならず声にすらならない。波なんて穏やかな物ではない。台風クラスの暴力的な快楽に体はがくがくと揺さぶられる。翻弄される。痙攣が始まる。
これまで押しとどめられていた熱が行き場を失い、結果、言葉にも声にもならない音として、雫の口から出たのであった。そして間をおかず、視界は一瞬で白く塗りつぶされ、場違いなふわっとした浮遊感に襲われる。
そのあまりの衝撃に、雫は最初事故で車外に飛ばされたのだと思ってしまった程だった。


「雫姉。大丈夫?」
「んあ……?」
広樹に声をかけられるまで、ほんの少しだが気を失っていた。
「らいじょうぶれす、ごしゅじんさ――」
ろれつが回らない。もうすこしでトンデモナイことをいうところだったのだが。だがそこはさすがの、雛守家の姫。散り散りになった意識を必死になってつなぎ止めると、すぐさま現状を確認。
どうやら、事故でもなく車外に飛び出たわけでもないことを判断。すぐさま自分が『どう』なったかを理解した。
手をそっと座席とスカートの間に滑り込ませ、座席が濡れていないのを把握する――幸いなことに厚いスカートの生地が濡れるだけで済んだようだ。それにこの色の生地なら濡れていても目立たないだろう――。
そしてわずかにたれていた、よだれを芸術的な『さりげなさ』でふき、心配そうに見つめている広樹と中杉(運転手)に向き直った。
それら一連の行動を悟られぬよう、クールな表情のままでやってのけた――もっとも、それでも顔が僅かに赤かったのは仕方なかったのかもしれないが。
ともかく、
「大丈夫だ。心配ない。」
今度はしっかりとした声で答える。我ながら褒め称えたいほどの持ち直し具合だった。
「そうなの?それなら良いんだ。何かうつむいて黙っていたから、ブレーキの拍子にどこか打ち付けたのかなと思って」
 さっきの『アレ』はブレーキの瞬間のことだったので目をつぶっていた彼は見ていなかったのだろう。
助かった。本当に助かった。

広樹は安心したように肩の力を抜く。そしてほおを涙が伝った。
なんとそのまま泣き出した。何も言えずに、うつむき、子供みたいにぼろぼろと涙をこぼす。
「お、おい、どうした?」
 これには雫が驚いた。涼しげな表情は消え、らしくなく、おろおろし始める。
 が、理由に気がつくとすぐさま抱きしめた。
「……そうか、ご家族は交通事故で亡くされたのだったな」
 未だ記憶は戻らないまでも、交通事故というのはまだ彼の中で消化しきれない出来事なのだろう。
雫は力一杯抱きしめていた。自分はここにいるから大丈夫だと、何処にも行かないから大丈夫だと。そして、溢れてくる暖かい愛しさをこめて、力一杯抱きしめる。
伝えたかった。ひとりぼっちで取り残された少年に。絶対のものが無く、全て変化してしまう世の中でも、やっぱりそれはあるのだと。
この想い、雫が広樹を想うこの気持ちだけは確かに揺るがず、決してぶれずにいつも広樹のそばにあり続けるのだと。
 だから万感の思いを込めて抱きしめる。
「大丈夫だ」と自然に優しい声が出る。
抱きしめる。





868 記憶の中の貴方へ 第4話  ◆YVZUFUAt8U sage New! 2009/03/23(月) 00:46:17 ID:bJ8avmsq
やがて、涙も止まり、しゃっくりが収まってしばらくすると、広樹は照れくさそうに雫を見つめた。
「ありがとう。心配するつもりが心配されちゃったね。ははは……」
「ううん、いいんだ。これは私がそうしたいからしているだけだ。だからいいんだ」
もう一度抱きしめる。髪をなでる。くすぐったそうにしていたが知るものか。
「広樹、何かつらいときがあったら横を見ろ、私は必ずそばにいる。だから大丈夫だ」
 素直な気持ちを伝える。
「うん、ありがとう。僕も雫姉に何かあったら助けになるから、きっと。ううん、絶対」
「広樹……」
一途に見つめるそのかわいさに胸が締め付けられる。思わずキスしてしまおうかと悩んでいると。
「あ、ごめん。制服が濡れちゃったね」
 ハンカチを出して、抱きしめたときに涙で濡れた肩口を拭きだした。
 イヤな予感がする。
「あれ?こんなところも?」
妙なところで目ざとい広樹はスカートが濡れていることにも気づいた。ハンカチを近づける。
「広樹、いいんだ。そこは大丈夫だ。ははは、それにしてもお前もずいぶん泣いたものだな。スカートまでぐっしょりだぞ。んなっ! おい、だから、拭かなくていいと言っている。近づけるな!!」
「え?でも」
「お前、女のスカートを弄んでナニする気だ!?」
生粋の華族、雛守家の当主がまさか穿いてないとは、口が裂けても言えない。絶対にばれるわけにはいかない。
「拭くよ」「触るな!!」。そうこうしている内に、
「お嬢様、広樹様つきましたよ」
運転手、中杉の声で自宅に着いたことが分かった。
「ほら、着いたぞ。さっさと降りろ。いいから、これくらい、平気だ」
「分かったよ降りるよ。でも洗濯ぐらいはさせてよ」
「いらん!!」
「………………」
「………………」
「ねえ、降りないの雫姉?」
「私は……」
降りないのではなく、降りられないのです。絶頂(い)ったせいで腰が抜けてまだ動けないのです。
とは口が裂けても言えない。絶対にだ。
どう答えたものか……。精一杯のしかめっ面を貼り付けながら思案する。未だ痙攣している体に鞭を打ちながら、『こんなこと』はもう止めようと固く誓ったのだった。

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最終更新:2009年03月23日 01:04
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