585 :
理緒の檻 ◆/waMjRzWCc :2007/10/24(水) 22:34:36 ID:3f+o/uGy
俺は、夢を見ていた。
昔、いつだったか好きな人ができた事が有った。
理緒姉にも話した。
その時理緒姉は笑って「頑張ってね」
って応援してくれた。
それで勇気を貰った俺はその子に告白した。
その子は、意外とあっさりとOKをくれた。
そして俺とその子は付き合っていた。
もちろんまだお互い子供だったからただ遊んでいるだけだ。
それでも、俺は確かに幸せだった。
両親が死んで以来初めて幸せを感じた。
でも、長くは続かなかった。
ある日突然、その子は泣きながら別れを告げてきた。
俺が何を聞いてもただ泣きじゃくるだけで答えは聞けなかった。
それから、俺は、学校でいじめられる様になっていた。
学校では俺がふって、その子を泣かせたという事にされていた。
いくら否定をしても誰にも信じて貰えなかった。
そんな絶望すら感じる状況で唯一助けてくれたのが、理緒姉だった。
理緒姉だけが俺の言葉を受け止めてくれて、理緒姉だけが俺と一緒に居てくれて。
その時から俺は、人と接する事を減らし、人を好きにならずにいた。
中学に入って、大広リエさんの本を読んで憧れを持った。
図書館に有ったこの人の本を全て読破した程だった。
586 :理緒の檻 ◆/waMjRzWCc :2007/10/24(水) 22:35:23 ID:3f+o/uGy
この人の本は推理小説でありながら、人間の描写がとても細かい。
あまり人と話す事をしなくなった俺には分からない事だった。
その中の登場人物にまるで理緒姉の様な人が居た。
誰にでも優しく、いつも元気で、人を疑う事をしない人だった。
こんなキャラクターが書ける人なら、きっと優しい人だ。
そう思って、ファンレターも送った。
高校に入ってからは、やっとまともに人と話せる様にはなった。
まだ、距離を置くようにはしてるけど。
人を好きになる事は未だにできない。
それほどまでに俺の傷は深かった。
眩しい…もう、朝か。
顔を触ると涙が出ていた。
こんな姿理緒姉には見せられないな…夢で泣くなんて情けなさすぎて。
理緒姉は隣で寝息をたてている。
理緒姉の寝顔を見ていたら
なんとなく気持ちが落ち着いた。
さて、朝飯でも作るか…
今日はトーストにしよう。ジャムもマーガリンもちゃんと有るし。
トーストを焼いていると理緒姉が起きてきた。
まだ眠そうな顔で「おはよぅ~…」
なんて言ってくる。
「おはよう理緒姉。今日はパンだよ」
「うん…顔、洗ってくるね…」
本当朝に弱いよなぁ…
587 :理緒の檻 ◆/waMjRzWCc :2007/10/24(水) 22:36:16 ID:3f+o/uGy
しかし…昨日の事を考えると、こんな日常に戻れるとは思わなかった。
本当に、家を出て行こうかと思う程だった。
でも、理緒姉は許してくれた。
多分次は無いだろうと思うけど。
顔を洗った理緒姉が戻ってきた。
「お腹減った…修くん、早く食べよう?」
「うん、もうすぐ焼けるよ。飲み物はコーヒーで良い?」
「いつも通りミルクと砂糖も入れてね?」
「分かってる。理緒姉ブラックのコーヒー飲めないもんね」
「あぁっ、なんか修くんお姉ちゃんを馬鹿にしてない?」
「そんなこと無いよ。ただ子供みたいでかわいいなぁとか思っただけ」
「子供みたいは納得いかないけど、かわいいって言ってくれたから許してあげる」
「それは良かった。さて、焼けたから食べようか」
「ん。ジャム大目でお願いね?」
「はいはい」
「いただきま~す」
はむはむとパンを口に含む理緒姉。
本当にこうしてると小動物なんだけどなぁ…
まるで種をかじるハムスターみたいだし。
「ねぇ、修くん」
「何?」
「今日は学校おやすみしても大丈夫?」
「ん~、一応平気だけど…どうして?」
「あのね、お姉ちゃん今日お仕事おやすみだから、一緒に居たいなぁって…駄目?」
588 :理緒の檻 ◆/waMjRzWCc :2007/10/24(水) 22:36:57 ID:3f+o/uGy
うっ…そんな上目づかいで頼まれたら断れないって…
この微妙に潤んだ目とか首の傾け具合とか…反則クラスだ。
「分かった。正直俺も休もうかと思ってたしね」
「ん、どうして?」
「…下半身にあんまり力が入んない」
「うわぁ…ごめんね?お仕置とはいえやりすぎちゃったね…」
「いや、あれは…俺が悪いんだし、理緒姉のせいじゃないよ」
「うん。じゃ、おやすみの連絡入れておくね?」
「分かった。熱が出たとでも言えば大丈夫だから」
「もしもし、お忙しい所すみません、3年の織部修の姉ですけど…………はい、すみません、失礼します」
ガチャリと受話器が置かれる。
「これで今日一日修くんと一緒に居られるね♪」
「理緒姉、楽しそうだね」
「あったり前じゃない!だってお仕事はおやすみだし、修くんとは一緒に居られるし。」
「俺と居るのが楽しいとは思えないんだけど…」
「そんなわけないじゃないっ!」
「あ…う、その…ごめん」
強く否定する理緒姉に驚き、謝ってしまった。
「えっと、とりあえず何をする?」
なんとなく質問する。
「とりあえず…いちゃいちゃしたいな」
は?と思った時にはくっつかれた。
今日一日どうなるんだ…?
最終更新:2007年10月25日 17:51