353 アナタがワタシにくれたモノ(1/3) sage New! 2009/07/11(土) 21:39:47 ID:eclZnTZc
「ただいま~」
「お帰り~」
居間で雑誌(少年○ャンプ)を読んでいると、出かけていた妹が帰ってきた。
「あれ?兄貴居たんだ」
「居るよ。ってかお前、随分早く帰ってきたな?」
「まあね」
ただ今午後3時。ついで今日は日曜日だ。
「今日って確か、彼氏君とデートじゃなかったか?」
「うん、そうだったよ」
「途中でやめたのか?」
「…………」
何故黙る?
「香奈?」
「…ねぇ兄貴」
「あん?」
「しよ」
「…は?」
「だからしようって言ってるの!」
「何を?」
「ナニ」
「…………」
「どしたの兄貴?」
「…なぁ香奈。お前自分が何言ってるのか解ってんのか?」
「何よ?別に初めてって訳でもないでしょ?」
「初めてじゃないって…ってことはお前、まさか!?」
「うん」
「またかよ!!」
ふと浮かんだ嫌な予感を訊ねると、この愚昧は臆面も無く肯定しやがった。
「お前、また彼氏振ったのか!?これで何回目だよ!?」
「6回目」
「数えてるのかよ!!」
こいつは男癖が非常に悪い。外面はそれなりにいいのだが、数ヶ月付き合っていた男をあっさりと振ったりする。それも一方的に。
男に振られたのは最初の数回だ。それ以降は、『男を振るのが趣味』なんじゃないかと思わせるくらいの、ビッチに成り下がってしまった。
「はぁ…今回はどれくらいだ?」
「3ヶ月」
「どっちかってぇと長い方か…まったく。またダチに文句言われる…」
今回このビッチに捨てられた男は、友人に頼まれて紹介した奴だった。
外見は勿論、性格的にもそれなりにいい男で、俺としては妹を更正させてくれるかと期待していたんだが…
とりあえず、慰謝料は控えめにしてくれると、お兄さんとしては嬉しいです。
「ご愁傷様」
「誰のせいだと…とりあえず聞いておくけど理由は?」
「タイプじゃない」
「3ヶ月も付き合っといてそれかい。じゃあお前のタイプはどんな男なんだよ?」
「兄貴」
354 アナタがワタシにくれたモノ(2/4) sage New! 2009/07/11(土) 21:42:12 ID:eclZnTZc
至極真面目顔で、一言だけ呟く香奈。
えぇと、それはひょっとしてギャグで言ってるのか?
「…みたいな男かな。時に厳しく、時に優しくしてくれて、何より、あたしの我侭を聞いてくれる男!」
「そんな都合のいい奴居るわけ無いだろう」
途端にニヤケ顔になって、無理難題を口にする自己中女。
って事は何か?俺はお前にとってそんなに都合のいい男だったってのか?
お兄ちゃんちょっとショック…
「そうなんだよねぇ…ねぇ兄貴。どっかの家の養子にならない?そうすればあたしと結婚できるよ?」
「俺がかよ!冗談じゃない。お前の面倒を一生みるなんてゴメンだ」
「ちぇっ、いけず」
口を尖らせる愚妹。
仮に、仮にだ。仮に一千億歩譲って、何かの、天文学的な単位の確率での偶然が起きて、仮にも俺とお前が結婚できたとあくまで仮定しよう。そう、あくまで仮定だ。
一週間もしない内に新婚生活が破綻するのが目に見えている。主に浮気とか愛人的な意味で。
「あのなぁ香奈。男を振るのが悪いとは言わないけどな。もう少し相手の気持ちを考えて…」
「うるさい」
それまでのニヤニヤした顔を一変させ、至極冷静な表情で言葉のナイフを突き刺す香奈。
「うるさいよ兄貴。もてない男の戯言なんて聞きたくない」
「…泣いていいか?」
「泣けば」
「…しくしく」
ああそうさ。生まれてこの方女にもてたことなんてねぇよ。告白して受け入れられたことなんか無いよ。告白されたことすらないよちくしょう!
ああ、空はこんなに青いのに、何故人はこんなにも孤独なんだろうか…
「そんなことより兄貴。セックスしよう!」
「…たった今、男としての何かを粉砕された実兄に対して『そんなこと』ですか」
「何よ?兄貴には、失恋で傷ついた妹を慰めてあげようっていう気は無いの?」
「お前が振ったんだろうが」
こいつが始めて男に振られたその数日後、俺は香奈と肉体関係を結んでしまった。
どうやらこいつはその男に相当入れ込んでいたようで、丸一日泣き続けていたのだ。
このままだと引きこもりになりかねないと危惧した俺は、翌日かなり渋られたものの、香奈を気晴らしに連れ出した。
丸三日我侭(買い物やら食事やら遊園地やら)に付き合ったおかげで、何とか気持ちを持ち直したようだが、その最終日、俺は香奈の誘惑を受けてしまったのだ。
多分、慣れないワインを飲んだせいだろう。高校を出たら一人立ちするつもりで貯めていた貯金を切り崩したり、一月ほどバイト漬けで色々と堪っていたせいもあるかもしれない。俺は、至極あっさり香奈を抱いてしまったのだ(実はあまりよく覚えていなかったりする)。
…その翌朝、俺に襲ってきた後悔と絶望は推して知るべし。隣に香奈がいなかったら本当に自殺するところだった。事実、予備のシーツを寄り合わせて作った、即興の縄を天井から吊るしているところで正気に戻ったくらいだ。
「振った方にもダメージはあるのよ」
「お前それ毎回言ってるよな?」
「毎回ダメージを受けてるって事。そんなことより兄貴~」
「はぁ…解った解った。とりあえずシャワー浴びて来い」
「や」
「『や』ってお前…」
「あたしはしたいの。今すぐしたいの!」
「大声で言うなはしたない!だからシャワー浴びて来いって言ってるだろう。その後なら相手してやる」
生憎と俺に匂いフェチのケはない。確か、香奈が三回目に振られた時に,学校帰りのあいつとそのままやったら死にそうになった。色々な意味で。
「一緒に入ればいいじゃない」
「この前風呂場でやった時に、湯にのぼせて盛大に吐いたのはどこのどなたでしたっけ?」
「…てへ♪」
「ごまかすな。とにかく、やるんなら風呂からあがってからだ」
「は~い…ああそうそう。兄貴」
「ん?」
355 アナタがワタシにくれたモノ(3/4) sage New! 2009/07/11(土) 21:42:53 ID:eclZnTZc
「解ってると思うけど…逃げるなよ?」
キツイ眼差しで…まるで捕食者のような目で俺を睨む妹。
「逃げたらどうなるか…わ か っ て る な」
俺が香奈と肉体関係を結んでしまった翌朝、土下座する俺に対して、妹はこう言った。
『別に気にしなくていいよ。あたしの方も色々堪ってたからさ。野良犬に手を噛まれたとでも思って諦めて…あ、でも一つだけ。これはあたしと兄貴の、二人だけの秘密ね?もし他人にばらしたら…その時は兄貴を殺してやるから。主に社会的に』
清々しいエガヲがとても怖かったです。
「解ってるって。俺も社会的に抹殺されたくは無いからな」
「ならいいんだ♪玉のお肌に磨きをかけてくるから、楽しみにしててね☆」
跳ねるような足取りで、風炉場へと向かう愚妹の背中を眺めながら、俺はため息をついた。
「はぁ…」
香奈曰く、『一度男に抱かれたら、オナニーくらいじゃストレスや性欲の発散なんて出来ない』そうだ。
「実の兄で性欲処理する妹ってどうよ?」
俺はあいつの将来が真剣に心配になってきた。や、自分の事は棚上げだというのはよ~く解ってますヨ?
「ふぅ…」
シャワーを浴びながら、あたしは胸の鼓動を感じていた。
他でもない。この後に待ち受ける、兄貴との情事に対してだ。
「…久しぶりだな…兄貴とするの」
今度の男とは三ヶ月続いた。つまり、三ヵ月も兄貴としていないってことだ。
「兄貴も馬鹿だよね~。オナニーするくらいならあたしの体を使えばいいのに」
変なところで生真面目な兄の性格を思い出して苦笑する。
「毎晩、あたしとのセックスを思い出しながらオナってるくせに」
家の部屋の壁はとても薄い。いや、もしかしたら普通なのかもしれないが、隣の部屋の声くらい余裕で聞こえる。夜は周りが静かだから余計に。
「本っ当に馬鹿だよね…あたしの嘘に気付かないなんてさ…」
兄貴は馬鹿だ。本物の馬鹿だ。
あたしの体を思い出しながらのオナニーは勿論、あたしが男を振ったことに対するショックを受けていると本当に思い込んでいる。
「そんなの、あるわけ無いじゃん」
男を振ったことに対する後悔なんて微塵も無い。というか、正直兄貴とするための口実として、男を振っているからだ。
「今度こそ、妊娠できるといいな…」
あたしは下腹部を撫でながら呟いた。
「兄貴とあたしの子供か…どんだけ可愛いんだろう」
兄貴とする時はいつも『安全日』だと言ってあるが、これも嘘だ。本当は危険日。超危険日。あたしが始めて男に振られた日以降、兄貴を誘惑する日は、いつも危険日だ。
「…何で妊娠しないんだろう?」
普通に考えて、人間の女性に『安全日』なんてものは存在しない。安全日と言えども、膣内射精されれば、約2割の確率で妊娠してしまう。危険日の膣内射精など、子供を孕む確率は120%だ。
「だってのに!」
過去2年。兄貴の仔を孕んだことはまだ無い。間はまちまちだが、危険日に膣内射精されているにも関わらずだ。
「兄貴ぃ…寂しいよぉ…」
まるで世界から、『お前に兄の子供など、産めるはずが無いだろう!』と言われている気分だ。
「…そんなの嫌だ…」
いつから兄貴が好きだったのか?それは正直解らない。だが、『兄を好きだと言う気持ち』を受け入れたのは2年前。最初の男に振られた時だった。
彼に振られたその日、私は泣いた。悲しくて泣いた。『彼に振られた』ことがではない『本当に好きな男が誰なのかに気付いてしまった』ことがだ。
356 アナタがワタシにくれたモノ(4/4) sage New! 2009/07/11(土) 21:43:33 ID:eclZnTZc
「よりによって、兄貴が好きだなんてね…」
決して叶わない思いであることが苦しくて、決して報われない願いであることが悲しくて、いつかこの思いを抱えたまま、兄貴が別の女性と結婚することを祝わなければならないこと辛くて、私は泣いた。
でも…
「馬鹿だよ…本当に…」
そんな私の価値観を、私にとっての世界を、世界の常識をぶち壊してくれたのが、他でもない兄だった。
「…………」
シャワーを止めて、体を拭う。いつもならパジャマを着るところだが、どうせこの後脱いでしまうのだ。バスタオル一枚で十分だろう。
「さてと、今度こそ妊娠しなくちゃね♪」
兄の匂いを、温もりを、迸りを思い出しながら、あたしは浴室を後にする。
既に股間は愛液で濡れている。つい先程、水を拭いたばかりだというのに。
ふと鏡を見ると、覗き込んだ自分が恐くなりそうなくらい、幸せそうな笑顔が映っていた。
「兄貴はやらない…誰にもやらない…」
あたしの物だ…ずっとあたしだけのモノだ…!
今、行くからね…オニイチャン…
シスプリはよくわからないが、『可憐』の名前だけでこんな話を書ける俺は死んでいいと思う。
最終更新:2009年07月12日 20:40