とらんすとらっぷ

669 とらんすとらっぷ (1/3) ◆6AvI.Mne7c sage New! 2009/07/27(月) 18:17:52 ID:Coqmvwth

 俺の姉貴は、かなり傍若無人なヤツだ。
 俺の持ち物は勝手に持っていくし、返してくれやしない。
 俺の予定を聞かずに、勝手に俺を連れまわし、振り回す。
 どこまでも自分勝手で、唯我独尊で、どうしようもない。
 昨日だって、俺のお気に入りのシャツを、勝手に持って行きやがった。
 それも俺の部屋、俺の目の前で、俺を無視して、堂々とだ。
 いい加減自然なその所作に唖然としつつも、俺は姉貴を怒鳴りつけた。
「おい……! いつも勝手に俺のもの、持ってくんじゃねえよ!?
 なんで姉貴はそうやって、俺のイヤなことばかりしやがんだ!?」
「あーうっさいうっさい! 別にいいじゃんシャツくらいさぁ?
 あんたまだいっぱい、いいもの持ってんじゃないの?
 ケチ臭いこと言わないで、あたしに寄こしなさいっての!?」
「誰がケチだ誰がっ!? いい加減にしるぎゅ!」
 取り返そうと腰を上げた瞬間、姉貴の素足の裏が俺の顔面にヒットした。
「――ふふん♪ あんた、姉の命令に、弟が逆らえるって思ってんの?
 古今東西、弟は姉に逆らえなくて、弟は姉の言うことを聞くものよ?」
 そう言って姉貴は、2回ほど足指で俺の顔面を擽った後、その足を下げて――
「あんたのものは、このあたしのもの。どぅーゆーあんだーすたん?」
 そのまま振り向かずに、言いたいことだけ言って、俺の部屋から出て言った。
 もちろん、例の俺のお気に入りのシャツを手にしたまま。
「――戦績、喧嘩36戦全敗、盗難被害計測不能全敗……」
 納得いかないが、今のところ確かに、俺は姉貴に対抗する術がない。
 姉貴は何故か俺より喧嘩が強くて、勝ち目は万に一つもない。
「くやしい……っ! そしてちっとも嬉しくない……っ!?」
 とりあえずいろいろイヤになったので、俺は不貞寝することにした。


 チャンスは意外なところで訪れた。
 今日の夕方は、姉貴も親父もお袋も、全員用事で出かけるらしい。
 そして俺は部活が休みで、早い時間に家に帰宅することができた。
「これはまぎれもないチャンス……。今こそ奪還の時が来た……!」
 いつもは家に誰かいるから、姉貴の部屋に忍び込むことさえできない。
 だからこそこの機会を逃せば、俺の私物を奪還する機会はないと思う。
「親父もお袋も、この件に関してはちっとも味方になんねえしなぁ……」
 何度か姉貴のことで相談したけど、信じちゃくれなかったのだ。
「あの輪奈(りんな)がそんな酷いこと、するわけないだろう?」
「そうよ掛(かかる)、お姉ちゃんを貶めちゃ、だめでしょう?」
 こんな感じで、完っ全に姉貴の味方で、逆に俺が怒られたのだ。
 姉貴が普段、どれだけ猫を被るのが上手いか、よくわかったよ……

 そんなわけで俺は今、姉貴の部屋のドアの前にいる。
 実は今まで数年間ほど、俺は姉貴の部屋に入ったことがない。 
 小学生高学年くらいまでは、入ってた記憶があるんだが……。
 なぜかある日突然、姉貴に部屋に入ることを禁止されたんだっけ。
「そういやその頃から、姉貴は今みたいに傍若無人になった気がするな」
 本当に、なんであんなことになったんだろうか。
 昔の姉貴はどちらかというとブラコンで、俺を猫かわいがりしていたのに。
「っと、考え事をしている時間は、あんまりないんだよな……」
 昔の思い出はどうだっていい。目的はそこじゃない。
 さっさと姉貴の部屋から、俺の私物をできる限り取り返さないと。

 姉貴の部屋の扉は、何故か鍵が掛かっていなかった。
 外からかけられる鍵のついてる扉なのにもかかわらず、だ。
「姉貴のヤツ……、俺に対して油断しすぎてんのか……?」
 常日頃から、自分の部屋には入るなと、お袋にも言っている姉貴なのに。
「まあ別にいいや。錠開けの小細工がいらんかっただけ、儲けもんか――」
 俺は喜々として、部屋の扉のノブを回し、扉を引いて――


670 とらんすとらっぷ (2/3) ◆6AvI.Mne7c sage New! 2009/07/27(月) 18:20:31 ID:Coqmvwth

――ジャ~ジャッジャジャンジャン~ジャンジャジャッジャッジャ~♪
「………………っ!!?」
 突然鳴りだした自身の携帯の着信音に、その場で飛び上がってしまった。
 着信音は某国民的アニメに出てくる、ガキ大将のテーマソング。
 ということは、この着信は姉貴からのメールで――
「な、なんでこんな見計らったタイミングで、姉貴からメールが……」
 もしやバレてたのか、とヒヤヒヤしながら、俺は届いたメールを確認した。

「掛、いま家に父さんも母さんもいないんだっけ?
 さっき用事が済んだから、あたしはこれから帰るわ。
 夕飯のおかず、作るのメンドイだろうから、適当に買ってく。
 追伸:もしかして、あたしの部屋に勝手に入ろうとしてない?
    散らかってるから、絶対の絶対に、入っちゃ駄目だよ?」

 バレかけてる……!? まずい、奪還計画は中止するべきか?
 けどこのタイミングを逃したら、次はいつ忍び込めるか――
「――しかたねえ……。とりあえず中の様子だけでも探っとくか」
 結局俺は、姉貴の部屋に忍びこむことにした。


 姉貴の部屋は、案外普通の部屋だった――とは言い難かった。
 確かに散らかってはいた――俺の私物と、壁一面の俺の写真で。
「え……と、どういうことだよこりゃ……?」
 足元には俺の衣服(下着含む)やら、昔の学習道具やらが散乱している。
 壁(&天井)には、明らかに隠し撮りな俺の写真がビッシリ貼ってある。
 どう考えても、小説で見た電波系やストーカーの部屋じゃねえか……!?
「まずい……、ここに入ったことがバレたら、俺は確実に死ぬ……!?」
 なぜなら、目の前に人型――俺の衣服を縫い合わせた等身大人形があったから。
 その人形には、頭部に俺の顔写真が貼ってあり、俺の服が着せられていたから。
「な、なんつーもん作ってやがんだ、あんの――変態姉貴は――っ!?」

 恐怖と混乱からくる油断。好奇心からくる選択ミス。そして理解不能な展開。
 俺が思わず人形を持ちあげてしまった瞬間、部屋の四方からしなる音が響く。
 それが鉄製のワイヤーだと理解した時には、俺は既に全身を捕縛されていた。
「しまっ……た……! これは……全部……罠だったのか………!?」
 逃げられそうにない。10本以上のワイヤーが、俺を完全に固定している。
 うち数本は、天井と壁に繋がっていて、絶妙に俺の移動を許してくれない。

――らーんらんらんららら~ら~ららら~ららら~ららら~♪
 死刑宣告。俺の携帯の着信音とは違う別の電子音――有名な動揺の1節が響く。
 同時に姉貴の部屋のクローゼットが開かれ、中から1台のパソコンが現れた。
 唖然とする俺を尻目に、起動しているパソコンから姉貴の声が響いてくる。
 よくわからないが、たぶん姉貴には今の状況が、全て知られているはずだ。
『掛――あんたは約束を破って、あたしの部屋に忍び込んだのね……。
 この会話は、いま帰宅中のあたしの携帯から、直接繋いでるものよ。
 残念だったねぇ……、あたしはちゃんと、警告してあげてたのにさ』 
 ディスプレイには姉貴の顔が表示されていて、まるで悪の秘密結社の総帥のようだ。
『掛よ、あたしは悲しい。あんたにならあたしの警告の真意を、理解できると思っていたんだけどね……。 
 まあいいわ、あたしから逃げられると思いあがっているのなら、いくらでもあがいてごらんなさい……。
 あは、あはは、あ~っはっはっはっはっはっ…………!!』
 脳内に黒い装束を纏った某カルト教団のボスの姿が思い浮かんだが、それどころじゃない。
 手段を選ばずに、迅速にこの部屋――家から逃げ出さないと、確実に恐ろしいことになる。
『――ああそうそう。あたしが家に帰るまでの1時間、たぶん退屈でしょう?
 だからあたしのパソコンに保存してあるとっておきの動画、見せてあ・げ・る♪』
 その言葉と同時に、ディスプレイ上でなにやら動画が再生される。
 映し出されたのはここ――姉貴の部屋で、画面外から姉貴が登場して――
「――!? こ、これは――!?」
 俺はその内容に驚愕し、絶望し、そして興奮してしまった。


671 とらんすとらっぷ (3/4) ◆6AvI.Mne7c sage New! 2009/07/27(月) 18:28:45 ID:Coqmvwth

「――たっだいま~♪ その様子だと、アレは効果覿面だったみたいね♪」
「――何が効果覿面だ……! 実の弟に、あんなイカレたもん見せやがって……」
 ようやく帰ってきた姉貴は、いつもの意地の悪い笑顔を見せながら、俺を観察している。
 訂正。意地の悪い笑顔の中に、今はなにか淫乱で陰惨な表情が宿っているようだ。
「ふふん♪ 強がっても否定しても、身体はどうしようもなく正直だねぇ?
 あたしの『1人遊び』の動画だけで、こんっなにバキバキに勃起しちゃって♪」
 そう、あの後ディスプレイで再生されたのは、姉貴の……その……自慰行為の動画だった。
 いつも傍若無人な姉貴が、頬を染めて、虚ろな瞳で、卑猥な言葉を紡いで、全裸でよがる。
 しかもオカズはどう見ても、俺の私物や写真――または例の人形――つまり俺だった。
 普段見せない姉貴の痴態に、軽蔑の視線を送るつもりで――できなかった。
 俺はこれ以上となく、姉貴の牝の貌(おんなのかお)に魅せられ、興奮してしまった。
「んふふ~♪ それじゃあ御開チン――うはぁ♪ やっぱりおっきくて美味しそう……♪」
 オヤジ臭い科白とともに、俺の下半身の衣服を文字通り破りとる姉貴。
 そして出てきた俺の性器に、涎その他を垂れ流して、じっと魅入っている。
「うふふ、夢にまで見た掛のおちんぽ~♪ 今にも泣きそうなくらい、プルプル震えて可愛い♪」
 そう言いながら、俺の性器――姉貴曰くおちんぽ――を口に頬張る姉貴。
 マズイ。本当にさっきの動画の興奮と併せて、冗談抜きで我慢ができ――
「――んきゃ!? っもう……、凶暴なんだから、あんたのおちんぽ♪」
 頬張られて舌で数回撫でられただけで、俺は姉貴の口内に射精してしまった。
 そのことに対して姉貴は別段怒った雰囲気も見せず、むしろ嬉しそうにしている。

「つうかやめてくれよ姉貴っ!? 俺たちは姉弟だろ!? こんな――」
「あら? その姉の部屋に忍び込んで、興奮して、射精したのはどこの誰だっけ?
 いいのよ別に。今から父さんか母さんに連絡しても。掛にぶっかけられたって」
 ぐうぅ……っ!? ここで脅迫なのかよ? 明らかに立場がおかしいだろう!?
 ああでも親父もお袋も、姉貴の言い分を信じそうだし、マジで有効そうだなその手。
「さあてそれでは本番を――って萎えちゃってるし。これはこれで可愛いけど。
 でもあたしは最後までイきたいから、もっかい勃起してもらわないと、ね♪」
「馬鹿言うな姉貴、1度射精させられた以上、そう簡単に勃起させられたりは――」
 俺の科白を最後まで言わせることなく、姉貴は上目づかいで、俺に囁きかけた。
「――ねえ掛くん、今までの恨みも込めてあたしのこと、めっちゃくちゃに犯して?」
 瞬間、萎れていたはずの俺の性器が勃起して、一気に天を仰いだ。


672 とらんすとらっぷ (4/4) ◆6AvI.Mne7c sage New! 2009/07/27(月) 18:32:22 ID:Coqmvwth
「な、なんでこんな簡単に!? なんで姉貴のおねだり如きに反応してんだ俺は!?」
 俺に姉貴みたいな属性を好むフェチはないし、そもそもシスコンですらない。
 だっていうのに、なんで姉貴で――他のエロ本とかでも、こんな反応はしないのに!?

「うふふ♪ わけがわからないって顔してるね、掛。可愛いわ♪
 蒐集も兼ねて、あんたにちょっとずつ憎まれるように仕向けたのはあたし。
 常にあんたの傍で、あたしの姿や匂い、声や感触を覚えさせたのはあたし。
 これまでの積み重ねは、今みたいにあんたを精神的に縛るための下地だったの。
 だから、あたしがちょっと気弱に『懇願』しただけで、興奮できちゃったのよ?」
 つまり、物理的な罠に嵌ったのは今日だけど、精神的には既に罠に嵌っていたのか?
 姉貴が時折見せるギャップに極限まで反応して、逃げ出すことさえ許さないように?
「まあそういうわけで――逃げられるなんて思わないことね、掛くん?
 あたしだってあんたが小学校高学年の頃、性的に興奮した時は絶望したのよ?
 そして悩んで悩んで苦しんだ末、この道を選んだの。もう後悔はしないわ。
 あんたへの気持ちを押しとどめるくらいなら、あたしはあんたと一緒に堕ちる。
 だから、逃げ出さないで――あたしをボロボロに犯してよ、掛くん?」
 さらに張り詰める俺の性器。気付けば俺は、床に押し倒されていた。
 姉貴が俺と壁を繋ぐワイヤーを切除したらしい。けれど逃げられる気はしない。
「ああ、待ちに待ったこの瞬間。あたしが掛に操を捧げるこの瞬間。
 それじゃあ――その凶器なおちんぽで、あたしの処女膜をぶち抜いて、掛くん?」
 蕩ける表情と虚ろな瞳を俺に見せつけながら、姉貴は腰を落とし――

――その日を境に、俺は姉貴というトラップに、完全に絡め取られてしまった。


                                  ― Who is it that it was caught by a trap? ―

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最終更新:2009年07月27日 19:27
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