かいじゅう

103 かいじゅう 1 sage New! 2009/07/31(金) 23:53:24 ID:cUfXe0B5
これは人類の危機を救った勇気ある地球防衛軍の記録である

ある日の東京
突如として地面が割れて巨大な怪獣が出現した
…本当は世界観とか、予兆とか、混乱の様子を描写するべきだろうが、ここは敢えて割愛して想像に任せるとしよう
とにかく怪獣は強かった
地球防衛軍の戦車や戦闘機が出動したが、お約束通り手も足も出ず壊滅した

防衛軍が壊滅すると、出番を見計らったように人類の味方が現れた
銀テカの体に赤いラインが入った光の勇者とか
高速回転しながら空を飛ぶた巨大なカメとか
原色の全身タイツを着た5人組が呼び出した巨大ロボットとか
放射能の炎を吐くゴジラとか…いけね、名前出しちゃった

まあ色々都合よく戦ってくれたけど現実は厳しい
みんな怪獣にいいようにボコられてスゴスゴと家に帰って行ったのだった

「もうだめっスね」
すっかり諦めムードの防衛軍指令室で若い隊員が新聞を広げながら呟いた
岡田真澄に似たダンディな長官は何やら思案していたが、やがて意を決したようにその重い口を開いた
「やむを得ん…オペレーションKを発動しよう」


104 かいじゅう 2 sage New! 2009/07/31(金) 23:56:04 ID:cUfXe0B5
「何を言い出すんスか」
「危ないことはやめましょうや長官」
「僕は嫌ですからね」
あちこちから役人特有の倦怠感を口調に滲ませた異論が出る
「ん~…」
長官は葉巻をくゆらせながら少し考え込んだ
「だけど、怪獣倒せなかったら責任とらされるの僕らなんだよね」

長官の熱い思いが若い隊員の胸をうち、最後の手段、即ちオペレーションKの発動が決定した


105 かいじゅう 3 sage New! 2009/07/31(金) 23:56:54 ID:cUfXe0B5
その数時間後
ハズレくじを引いたパイロットの操縦する戦闘機が怪獣の頭上を通過し、十個余りのパラシュートが降下した
怪獣の直近に降下したのはいずれ劣らぬ屈強の兵士…ではなく、どこにでもいそうな10代の若者だった
境遇も外見もバラバラだったが真面目で大人しそうな、そして取り立てて取り柄も無く、何となく周りに流されやすそうな雰囲気だけは共通していた

恐らく何も聞かされてないのだろう
誰もが、どうしていいか分からずに、物陰に隠れたり、オロオロしたり、とりあえず怪獣に石を投げたりした



106 かいじゅう 4 sage New! 2009/07/31(金) 23:57:47 ID:cUfXe0B5
何だこいつら―怪獣もよく分からなさそうな感じだったが、何だか鬱陶しいその連中を踏み潰そうとして―――

その数分後にはバラバラの肉塊と化していた


「大丈夫?お兄ちゃん」
少年の1人に駆け寄ったのは、先ほど怪獣の目玉を素手でえぐり出したツインテールの少女

「よかった…アナタが死んだらお姉ちゃんも生きてられない」
逃げ出した怪獣の尻尾を掴んで数十回地面に叩きつけた清楚な黒髪の女性が泣き崩れた

「兄さんを苛めていいのは私だけ。そうだよね」
倒れて痙攣する怪獣の腹を引き裂いて、あはははは、と嗤いながら臓物を投げ散らかしたショートヘアの美少女が最愛の兄を抱きしめて囁いた

(中略)

地球は守られたのだった。



107 かいじゅう 5 sage New! 2009/07/31(金) 23:58:46 ID:cUfXe0B5
「ところでさあ」
巨大な鉄骨を怪獣の頭に叩きつけつトドメをさした少女がふと呟いた

「誰が兄貴達をこんな危険な目に合わせたんだろ」

いずれ劣らぬ可憐な少女達は互いに顔を見合わせて…全員同時にあどけない表情でクスリと笑った

もう一度言おう
地球は守られた

だが、その後の地球防衛軍が守られたかどうかは誰にも分からなかった


それからも人類は宇宙人の侵略やら太古の邪神やら幾多の危機を迎えることとなる
しかし、この作戦が二度と発動されなかったことを付け加えておこう

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最終更新:2009年08月02日 22:51
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