168 21歳のキモウト~水○灯変~ (1/3) sage 2009/08/03(月) 06:17:53 ID:f+WVxoa+
「ただいま…」
「乳酸菌とってるぅ~?」
玄関を開けると、ゴスロリの女性がいた。
「…すみません。部屋を間違えました」
「あっ!ちょっと待った待った!」
即座に扉を閉めようとして、足を挟まれる。ちっ!
「で、今度は誰にそそのかされたんだ?」
「別にそそのかされた訳じゃないけど…」
「じゃあコレはお前の趣味か」
「ちょっとスレの空気を読んでみました♪」
「随分遅レスだなオイ」
ちなみに舞の格好は、某銀髪赤眼の薔薇人形の姿である。
正直に言おう。20を過ぎてのコスプレはイタイぞ。
「どこからそんな衣装を持ってきたんだ?」
「バイト先の衣装を無断借用」
「ちょっとマテ」
そういや、こいつがバイトしてるのは知ってたけど、どこで働いているかは聞いてなかったな。
「なぁ舞。お前どこでバイトしてるんだ?」
「制服パブ」
をい愚妹。
「お前そんなところで働いてたのか。別にお前のバイト先がどこであろうと干渉する気は無いが、悪い客に引っかからないようにしろよ?」
「冗談に決まってるでしょうが」
冷めた目でボソリと呟く舞。その後の「兄さん以外の男に酌するなんて御免よ」という言葉は聞かなかったことにしよう。
「で、本当はどこでバイトしてるんだ?」
「単なるモデルよ。隣町のね」
「ふ~ん」
舞曰く、友人と買い物をしている最中に声をかけられたらしい。まあこいつは見かけ『だけ』はいいからな。
「ねぇ兄さん♪な~にかとっても失礼~なことを考えてないかなぁ♪」
「うん」
「…………」
169 21歳のキモウト~水○灯変~ (2/3) sage 2009/08/03(月) 06:18:23 ID:f+WVxoa+
臆面も無く肯定した俺に沈黙する舞。ふっ、俺とて、いつもしてやられるばかりではぬぁい!
「あ~っ、こんなところに兄さん秘蔵のエッチDVDが~」
「ちょっ、おまっ!」
「まぁ大変。こんな有害なものは、即刻処分しなくては~」
「ごめんなさい!勘弁してください!ってかそれ借りもんだから!マジで!壊すと弁償だからホントにやめて~!」
「ごめんなさいは?」
「ごぉめんなさぁぁぁいっ!!」
所詮男なんてこんなもんさ…orz
「ところで兄さん、私の格好を見て何か言うことはありませんか?」
「年を考えろ」
「…………」
「大体お前、ゴスロリの意味って知ってるか?」
とある服飾店に勤めている友人から聞きかじった話だが、ゴスロリ、『ゴシック・アンド・ロリータ』は、15歳未満の少女向けに作られた、フリルとレースがたっぷりついた服に、ロックシンガーが身につけるような小物を合わせて着るというファッションだ。
さらに、ゴスロリにはもう一つの面があって。『自分に似合う洋服を着る』のではなく、『洋服に似合う自分になる』という意味もある。
「そういう意味で、お前は二重の意味で似合っていないぞ」
こいつにはドレスとかの方が似合うんじゃないか?淡い色合いの。
「なるほど。つまり私にウェディングドレスを着ろって言うのね!?」
「どこからそういう話になったんだ?」
「本当は結婚式までとっておくつもりだったけど、兄さんのリクエストとなれば話は別よ!待っててね!今から忍び込…いえ時間外営業してもらって、ちょっと強だt…借りてくるから!」
「好きにしろ。ただしお前が警察に捕まっても知らぬ存ぜぬを貫かせてもらうが」
『本気で相手にしない』
これが同居開始から1ヶ月で学んだ、我が妹に対する最大の処世術である。
「じゃあね兄さん!行って来るわ!」
「気をつけてな。後、明日の講義には遅れないように」
「帰ってきたら早速結婚式ね!」
「だ が 断 る !」
兄妹で結婚なぞできるはずがないだろう。
「私は兄さんを婿にするわ!いいわよね!?答えは聞いてない!!」
170 21歳のキモウト~水○灯変~ (3/3) sage 2009/08/03(月) 06:19:14 ID:f+WVxoa+
そう言うと、本当に答えも聞かずに飛び出して行ってしまった。
「やれやれ…ん?」
ふと部屋を見渡すと、片隅にビールの空き缶が10本ほど転がっていた。
「…あいつ酔っ払ってたのか…」
通りでいつもより言動がぶっとんでると思った。
「酒癖悪いなあいつ…おっと、こうしちゃいられん」
素面でバカをやる分にはどこで何をしようと知ったことではないが、酒が入った時のあいつは少しばかり倫理や道徳が緩むことがある。
「さて、酔っ払いのお姫様を回収に行きますかね」
俺は脱いだばかりの靴を履き直した。
最終更新:2009年08月10日 21:20