21歳のキモウト~最終回変~

202 21歳のキモウト~最終回変~ 1/7 sage 2009/08/05(水) 23:49:33 ID:R/Zzq+U1


「…………」

やぁみんな、こんばんわ。俺の名は七志野…え?タイトルを見れば解る?それは失敬。
でだ。俺は今、自分の家(アパート)の扉の前にいる。どうしてさっさと開けないのかって?
聞かなくても解るだろう?詳しくは過去作品を参照してくれ。

「…ふぅ」

いつまでもこうしているわけには行かない。そろそろ覚悟を決めるか…いい加減腹も減ってきたし。

「ただいま…」

ドアを開けてただいまの挨拶。さて、あの愚妹は今日はどんな格好で…

「お帰りなさい、兄さん」
「…あれ?」

今日はどんな姿で出迎えるのかと思いきや、いつものコスプレ系の服ではなく、ごく普通の私服(ライトグリーンのTシャツに薄いピンク色のミニスカート、そして白い薄手のカーディガン)に、黄色のエプロンを着ていた。

「?どうしたの兄さん」
「いや…」

今日はどうやって突っ込んでやろうかと思っていたが、拍子抜けしてしまった。

「あ~、とりあえずただいま」
「おかえり兄さん。御飯にする?お風呂はあと5分くらいで温まるけど」
「んじゃあ飯にするか」
「わかった。あ、その前に背広渡して。ハンガーにかけとくから」
「ん、頼む」

あれ?

「はい、兄さん」
「ああ、ありがとう。いただきます…」
「どう?」
「普通に美味い」
「よかった」

あれれ??

「兄さん、お風呂温まったよ?」
「じゃあ入るか」
「あっ、今日は洗濯する日だから、お風呂に入る前に、洗濯機のスイッチを入れておいてね」
「了解」

あれれれれ????


203 21歳のキモウト~最終回変~ 2/7 sage 2009/08/05(水) 23:50:01 ID:R/Zzq+U1

「ふぅ…さっぱりした」
「何か飲む?ビールとか」
「酒はいいや。麦茶あるか?」
「補充したばっかりだから少し薄いけど」
「じゃあ何かジュースくれ」
「はい、ポ○リ」
「俺はアク○リアスの方が好きなんだけどな…」
「文句言わないの」
「へいへい」

…………

「っじゃねえ!!」
「何よ急に」
「どうしたんだお前!?熱でもあるのか!?それともどこか調子悪いのか!?」
「は?」
「こうしちゃいられん!救急車!110番!…じゃなかった119番だ!」
「もしもし?」
「えーと、夜間でもやってる病院は…」
「とりあえず落ち着けバカ兄貴」
「あふんっ!?」

か、踵落とし…ミニスカで繰り出す技じゃないぞ。

「落ち着いた?」
「ああ、すまん。少し動転していたようだ」
「そ、ならいいけど」
「で、何があった?」
「何って?」
「いつもなら、俺が帰ったと同時にコスプレで出迎え、キチ○イじみた言動を繰り広げては勝手に暴走、自滅のコンボを決めるではないか」
「自滅って…」
「何かあったのか?」
「別に。ただ、たまには普通に出迎えようかなって思っただけだよ」
「そうだったのか。すまん、妙な勘繰りをしてしまったみたいだな」
「あとネタが無かったし」
「マテ」

随分メタな発言だな。

「まぁいい。明日は休日だが、どうする?夜更かしでもするか?」
「それなんだけど…」

何やら口ごもる舞。

「ねえ兄さん、一緒に寝よう?」
「だ が 断「何もしないから」…る?」
「お願い。襲わないから。誘惑しないから。何もしないから。本当に、ただ寝るだけでいいから。だからお願い。一緒に寝よう?…お兄ちゃん」
「何かあったのか?」
「…………」
「…まあいい。約束だぞ」
「うん…」



204 21歳のキモウト~最終回変~ 3/7 sage 2009/08/05(水) 23:50:34 ID:R/Zzq+U1
電気を消し、二人でベッドに入る。どうせ寝に帰る部屋だからと、思い切ってダブルベッドを買っていたのだが、今日、それが初めて役に立った。
(いつもは舞がベッドで、俺が床で布団を敷いて寝ている)

「ねえ兄さん。こっち向いて?」

僅かな逡巡の後、俺は舞の方へ身体を向ける。

「…………」

『綺麗だ…』
思わずそう口走ってしまいそうだった。
元々美形の舞だが、月の光に照らされていると、ある意味神秘的な雰囲気を醸し出している。

「うふふ♪えいっ!」
「なっ!?おまっ!?」

少しの間魅入っていたようだ。その隙に、半人分の空間を一気に詰め、舞に身体を密着させられた。

「どうしたの?兄さん」
「お前…何もしないって…」
「私は何もしてないよ?ただ抱きついただけだもん」

くっ!…た、確かに、この程度では『誘惑』とは言えまい。むしろ過剰反応すれば、この妹に何を言われるかわかったものではない。
後、俺の左腕を腕枕にするな。人間の頭って結構重いんだぞ。

「久しぶり…兄さんの胸の中…」

うっとりした声で呟く舞。意外にも本当に抱きついているだけで、アレをアレしたりコレをコレされたりすることは無かった。
『アレ』や『コレ』では解らないって?君達のお姉さんか妹に聞いてみなさい。

「最後に抱っこしてもらったのって、いつだったっけ」
「日曜に俺が昼寝していた時」
「もう!そうじゃないよ!」
「悪い悪い。そうだな、確か舞が中学に上がった頃くらいまでじゃないか?」
「そうだったね…」

別の言い方をすれば、俺が高二になった頃でもある。
さすがにその頃になると、舞も女らしくなってきていて、密着されるのが苦痛だったりした。
ちなみに、一緒に風呂に入るのを止めたのもその頃だ。
こう見えても結構ストイックな人間だったのである。
…ごめん。ただもてなかっただけです…orz

「泣き虫でいつも虐められていた舞がな…随分大きくなったもんだ」
「当たり前だよ。私だって、いつまでも子供じゃないよ?」
「そうだな。でも俺にとって、舞はいつまでも可愛い妹のままだよ」
「それ、あんまり嬉しくない」
「そうか?」



205 21歳のキモウト~最終回変~ 4/7 sage 2009/08/05(水) 23:51:02 ID:R/Zzq+U1

いつもの攻防(性的な意味で)を忘れて、昔話に花を咲かせる。

「ねえ、お兄ちゃん」
「ん?」
「好き」
「…………」
「私はお兄ちゃんが大好き」
「舞…?」
「兄としてじゃなくて、一人の男の人として、私はお兄ちゃんが、蛍さんが好き」

不意打ちだった。今までも性的な意味で襲われていたので、舞が俺をそういう目で見ていることには気付いていた。
だが、『ひょっとしてからかっているのではないか?』という希望的な考えもあったのだ。
しかし、それが今全て覆された。

「…舞、俺は…」
「解ってる。兄さんが私のこと、妹としてしか見ていないって。妹としか見ようとしないって」
「…………」
「兄さん知ってる?私結構、ううん、かなりもてるんだよ?」
「そりゃミスキャンパスだからな」
「正確にはセミキャンパスだけどね。今まで沢山の人に告白されたよ。3桁、もしかしたら4桁行ってるかも」
「中学の頃からラブレターもらいまくってたもんな。ある意味羨ましいよ全く」
「中には2~3回告白してきた人もいたなぁ」
「それだけ本気だったってことだ。でも結局は振ったんだろう?」
「うん」

臆面もなく肯定する舞。実は一度、俺は告白の現場に偶然居合わせたことがある。

『ごめんなさい。私、好きな人がいるんです。世界で一番、好きな人がいるんです』

その時の舞はそう言っていた。思えばその頃から、舞は俺を男として見ていたんだろう。

「お前は理想が高すぎなんだよ」
「誰のせいだと思ってるの」

そこで俺に振るか。

「今まで告白してくれた人の中には、兄さんよりも素敵な人もいたよ。兄さんよりカッコよくて、兄さんより頭
がよくて、兄さんよりしっかりしてて、兄さんより優しい人もいたよ」
「そりゃあ、俺は中の中、凡人って言葉が服着て歩いてるようなもんだからな。で、そいつはどうしたんだ?付き合ったのか?」
「振った」

バッサリだなお前。

「ダメなの。どうしても。どうしても兄さんと比べちゃうの。相手が完璧であればあるほど。相手が兄さんに似ていれば似ているほど。『どうしてこの人は兄さんじゃないんだろう』って」
「…………」
「ねえ兄さん。多分私は、兄さんがいる限り普通の恋愛って出来ないんだと思う」
「…………」
「兄さんが私の手の届くところにいる限り、私が兄さんに期待している限り、私は他の男の人を『そういう』目で見られないんだと思うんだ」
「…俺にどうしろってんだよ」
「…結婚して」
「へ!?」
「私以外の人と結婚して。私以外の女の人と結婚して、私以外の人の赤ちゃんを作って」
「…舞…?」
「そこまでしないと、私はきっと兄さんを諦めない。私より素敵な人を見つけて。私より綺麗で、私より優しくて、私より兄さんを愛している人と結婚して!そうでないと私…わたし…」



206 21歳のキモウト~最終回変~ 5/7 sage 2009/08/05(水) 23:51:30 ID:R/Zzq+U1
舞の声が震えだす。密着しているから顔を見なくてもわかる。

「舞…泣くな…」
「お兄…ちゃん…!」

舞の背中に右腕を回し、左手で舞の頭を撫でる。

「落ち着いたか?」
「…ぅん…」

5分…いや、10分くらい経っただろうか?
ようやく舞の嗚咽が止み始める。

「ごめんな舞。そこまで思いつめてるなんて知らなかったよ」
「いいの。本当はね、兄さんと一緒に、暮らすつもりは、無かったんだ。どこか、遠いところで、兄さんのいない、ところで、兄さんのこと、思い出せなく、なるくらい、遠いところで、生きるつもり、だった、のにっ!」

嗚咽で詰まらせながらも、必死に言葉を紡ぐ舞。

「でも、ダメだった。私は、兄さんがいないとダメなの!私には兄さんしかいないの!兄さんがいてくれないと生きていけないの!」
「舞、俺が結婚すれば、お前は生きていけるんだな?お前が勝ち目が無いって思えるくらいの相手と結ばれれば、お前は俺が居なくても生きていけるんだな?」
「…うん…」
「…解った」

腕に力を入れ、舞の身体を強く抱きしめる。

「俺、きっと見つけるよ。お前よりいい女を。お前より愛せる人を。お前より愛してくれる人をさ…」
「…うん…」

今日が最初で最後だろう。妹を女として、抱いて眠る夜は。

「ねえ兄さん」
「ん?」
「キス、して」
「え?」
「約束の、キス…」
「…解った。目、閉じろ」

15年ぶりの妹の唇は涙の味がした。



207 21歳のキモウト~最終回変~ 6/7 sage 2009/08/05(水) 23:53:31 ID:R/Zzq+U1





「ごめんなさい、兄さん…」

兄が寝静まってから、私は小さな声で謝罪した。

「私、きっと諦めない。きっと諦めきれない」

兄のためなら、自分は何でもする。兄を愛するためなら、自分は何でもできる。

「どんな女と結ばれても、その女と子供を作っても、きっと私は、全てを壊す」

私はそういう女だ。独占欲と嫉妬の塊。いや、狂愛で生きる人間というべきか。

「兄さんを取り返すために。兄さんの愛を奪い取るために」

思い出すのも忌まわしい。8年前、私は一人の人間をこの手にかけた。
兄に好意を抱く女性だ。名前は確か…いや、どうでもいいことだ。
兄にとって最初の、そして最後の恋人。

可愛らしい女性だった。そして優しい女(ヒト)だった。
兄が初めて『その女』を家に招いた時は、家族総出で驚いたものだ。
父はしきりに『信じられん』と繰り返し、母は『天変地異の前触れか』と経文を唱えだす始末。
兄は憮然とし、その女は愛想笑いをしていた。
私は…多分苦笑していた、いや、苦笑している振りをしていたと思う。
なぜなら、その時私の心を支配していたのは、抑え切れない憎悪だったからだ。

『兄さんに微笑まないで!』

『兄さんに触らないで!』

『兄さんの名を呼ばないで!』

『兄さんを返して!』

少しでも気を緩めれば、そんな言葉を叫んでしまいそうで、私は挨拶も早々に、部屋へ引きこもってしまった。

3ヶ月。たった3ヶ月。私が耐えられたのはたったそれだけ。でも、それが限界だった。
当時の私は13歳。中学1年生。子供であるはずの私が、一人の人間を殺したのだ。それも何の躊躇も無く。

「そのために、兄さんの幸せを壊してしまう…」

正直、自分がそこまでする人間だとは思わなかった。同時に理解した。

『私がいる限り、兄さんは誰とも結ばれない』

狂喜した。そして絶望した。

「だからお願い。守ってあげて」

兄さん…

「私からその人を守ってあげて」



208 21歳のキモウト~最終回変~ 7/7 sage 2009/08/05(水) 23:53:58 ID:R/Zzq+U1

愛してる…

「私を愛さないで」

私を見て…

「私を憎んで」

私を愛して…

「私を殺して…」

兄さんに殺されるなら

「兄さん…愛してる…」

地獄に堕ちても

「…アイシテル…」

きっと、笑顔でいられるから…





「…………」
「どう?兄さん」
「とりあえず一言言っていいか?」
「うん」
「妄想乙」
「それほどでも~」
「褒めてねぇよ。で、こんな嘘99.9%の文章読ませてどうする気だ?」
「『キモ姉&キモウトの小説を書こう』のスレに投下しようと思って」
「投下するのはいいけど実名は止めろ」
「ごめん、もう投下しちゃった♪」
「ちょっ、おま」
「言ったでしょ?私は最初から兄さんにLOVEだって!」
「いつ言った。全国の七志野・蛍さんと七志野・舞さん。ごめんなさい…orz」
「と言う訳で兄さん!早速私達も結ばれましょう!」
「脈絡が全然無いぞ。そしてあえて言おう」

「だ が 断 る!」

「そう言うと思ったよ。でも今日という今日は逃がさない。最初に言っておく!私は色々な意味で、
か~な~り、限界だ!」



「その後、兄は妹の愛を受け入れ、末永く幸せに暮らしましたとさ。

21歳のキモウトシリーズ…完!」
「嘘をつくな」

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最終更新:2009年08月10日 21:26
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