627 埋めネタ「Overwrite」 ◆6AvI.Mne7c sage New! 2009/08/29(土) 02:33:22 ID:Gemy0m86
「おはよう、兄ちゃん。今日もよく眠ってたね?」
一番聞きたくない声――妹の甘える声で目を覚ました。
今が朝かどうかもわからない。いや、何月何日かもわからない。
けれど1つだけ、解っていることがある。
目の前の妹に、俺はいろいろなものを失わされてしまった。
大切な家族。大事な友人。最愛の恋人。自分の将来。そして、平穏。
みんなみんな、目の前の妹が自分の欲望のために、壊してしまった。
俺のことが好きだと、ある夜の公園で、実の妹に告白された。
もちろん俺は首を横に振った。近親相姦なんて、吐き気がする。
それに俺はもうすぐ就職で家を出るし、将来を誓った恋人もいる。
だからこそ、ブラコンの過ぎた妹を、これ以上なく罵って貶して討ち捨てた。
わたしは兄ちゃん以外はイヤなの、と叫ぶ妹を突き飛ばして自室に戻り。
次の日気がついた時には、俺は妹と一緒に、知らない場所に居た。
それからは、文字通りに地獄だった。
妹からの求愛に――誘惑に応えるのを拒否する度、遠くで血飛沫が舞う。
大事な、大切な、最愛の、人間関係が確実に、1つずつ消失していく。
一度など、その現場を撮影したビデオ動画を見せられたから、間違いない。
「大丈夫。私が兄ちゃんの失くした大切なモノのかわりに、なってあげるから」
その科白を最後に、俺はまた今日も、妹に犯されてしまい――
いや、今日は少しだけ結末が違ったらしい。
突然部屋の扉らしき建材が爆ぜ飛び、そこから懐かしい女性が現れた。
「あ、あんた……! まだ生きて――!?」
「だからどうしたの? それより、私の大事な弟ちゃん、返して――」
そんな会話を聞きながら、俺はなぜか再び、意識を手放してしまった。
「おはよう、弟ちゃん。今日もよく眠ってたね?」
できるなら聞きたくない――姉の甘える声で
今が朝かどうかもわからない。いや、何月何日かもわからない。
「あのお馬鹿な妹ちゃんのせいで、辛い目に遭わされてたんだよね?
大丈夫。私が弟ちゃんの失くした大切なモノのかわりに、なってあげるから」
けれど1つだけ、解っていることがある。
きっと多分、この間と同じようなことが、今これから起きるのだと。
――願うならどうか、誰でも良いから姉と妹以外の記憶を、俺にください……?
― ENDLESS ―
最終更新:2009年08月29日 20:28