131 私の生き方 ◆YMBoSzu9pw sage New! 2009/09/01(火) 20:25:33 ID:SE784J3q
ある梅雨の時期の、じめじめと蒸し暑い日の午後。
私は通う高校の校長室にいた。
呼び出された理由は簡単である。
私が他所の高校の生徒を殴って、怪我をさせたのだ。
相手は二人。一人は打撲で済んだが、もう一人は足を骨折した。
校長室には私と殴られた二人の他に、先生方、そしてそれぞれの保護者。
私が殴った事実を認める一方で、殴られたうちの一人は必死に私を庇った。
――私が怪我をさせたのは、兄とその彼女であった。
それは、三日前のことである。私は母と喧嘩していた。
「こないだも! その前も! 何なのよこの成績は!! あんたちゃんと勉強したの!? どうせ毎日遊び呆けてたんでしょ!!」
喧嘩の話題は、その日返ってきたテストの結果のことだった。
母の一方的な物言いに、私も声を荒げた。
「してたわよちゃんと!!」
実際、私は今回いつも以上に勉強を頑張った。
テスト前に帰りが遅い日が続いていたので、母は遊んでいたのだと決めつけているが、実際は学校の図書室で勉強をしていただけである。この家族のいる家で、勉強する気になれなかったのだ。
「じゃあ何なのよ、この成績は!!」
そして母はそう言うが、前回に比べればかなり成績は良くなったし、全体から見てもそれほど悪いほうではないのだ。それでも母には不満だった。
母の言い分は、決まっていつもと同じである。
「まったく! 隆史に比べてあんたは!!」
隆史――私の兄は、頭が良かった。県内で一番頭の良い進学校に通い、その中でも上位をキープしている。
母は、そんな兄を自慢に思っていた。そしてその兄と私を比べ、いつも私を非難する。
私にはそれが、我慢ならなかった。
その夜、私は家を飛び出した。
小さい頃からの親に対する不満が、私の中に積み重なっていた。兄ばかりを褒め、私の努力を見ようとしない親が嫌いだった。
私だって、努力はしているのだ。いつも褒められる兄に少しでも追いつこうと、毎日勉強を頑張っていた。
そして、自分としては結果を残しているつもりでもあった。
兄の通う高校には及ばないとは言え、寝る間も惜しんだ受験勉強の末、担任に無理だろうと言われた高校に合格することもできた。その高校の授業にも、毎日の勉強を欠かさずについていくことができていた。
だがそれでも、親は私を褒めてはくれないのだ。そして私の努力を認めてくれないばかりでなく、まるで私を不良少女のように扱うのである。
勉強が出来ないから、裏で煙草でも吸ってるのだろう。勉強が出来ないから、変な奴らとつるんでるんだろう。勉強が出来ないから、駄目な人間なのだろう。
そう謂れのないことを言われるのが、私はひどく嫌だった。
家を出た私は、適当に街をブラブラと歩いていた。衝動的に飛び出してきてしまったが、行く宛があるわけでもない。
結局すぐに家に帰ることになるのだろうと思ったが、帰ったとき親がどんな反応をするのか、それを考えると怖くて仕方がなかった。
賑やかな商店街を離れしばらく歩いていると、やがて小さな公園があった。
疲れていた私は、そこにあったベンチにポツンと座った。公園に設置された時計を見ると、時刻はちょうど十一時を回ったところである。
空気が冷えてきているのを感じて、空を見上げる。
黒い雲が一面に広がっていて、
――ポタ。
雨が、降りだした。
最初は小降りだったそれもだんだんと強くなり、やがて打ち付けるような強い雨になった。
私は周囲を見回した。しかし雨宿りできそうなところはなく、しょうがなく葉の生い茂った樹の下に移動する。
何もないところよりはマシだったが、それでも葉から滴る水滴が、体を濡らした。
132 私の生き方 ◆YMBoSzu9pw sage New! 2009/09/01(火) 20:25:55 ID:SE784J3q
寒い。私はしばらくそこに居た。
雨は強くなる一方で、まったく止む気配がなかった。
体が震える。思わず手で体を擦ったが、気休めにしかならなかった。
寂しかった。
そして家を出てこんなところで震える自分が、滑稽だった。
――結局、私は親の言う通りの駄目人間なんだ。
心が弱っていたからだろうか、そんな考えが頭に浮かんだ。
「優奈!!」
突然、私の名前を呼ぶ声がした。
眩しい光が私に向けられ、ぬかるんだ地面を駆ける足音がした。
私が顔をあげると、そこには走り寄る兄の姿があった。
兄が、憎かった。
いつも親に褒められ、そして私には決して手の届かない兄が、私は大嫌いだった。
だからその時も、
「何で来たの!!」
私は叫んだ。
私の近くに来た兄は、おそらく走り回っていたのだろう、荒く息を吐いていた。
「優奈……! 見つかってよかった……!!」
兄は私の言葉には答えず、自分の差している傘とは別に、腕に提げた袋から傘を取り出し私に差し出す。
「これ、使って」
その手を私は無視した。
「私はお兄ちゃんに来てくれなんて行ってない!!」
私の剣幕に、兄は少し狼狽えた。
「お、俺は優奈が心配で……」
「隆史くん! 優奈ちゃん見つかったの!?」
兄の来たほうから、高い女の声がした。
「舞! こっちだ!」
その女は跳ねた泥に服が汚れるのも構わず、ぬかるんだ地面をこちらに向かって走ってきた。兄と同じ学校に通う、兄の彼女の舞さんであった。
「はあ、はあ、よかった……優奈ちゃん無事で……」
「来ないで!!」
舞さんの顔を、私はキッと睨みつけた。
だが兄と違って、彼女は動じなかった。
「傘、差さないと風邪引いちゃうよ?」
そんな舞さんの様子が、私の癪に触った。
「来ないでよ! 母さんも! 父さんも! あんたたちも!! 私は大嫌いなの!! お兄ちゃんやあんたなんかに、私の気持ちがわかるもんか!!」
兄に助けられるのが、嫌だった。
私では決して敵わない、兄に助けられるのが、情けをかけられているようで嫌だった。
私のことなんて、放っておいてくれればいいんだ。
「……帰ろう、優奈」
だがそれでも、兄は私に手を差し伸べた。
カッとなって、気付いたときには拳を振り上げていた。
「隆史くん!」
舞さんが悲鳴をあげる。
殴られた兄は吹っ飛び、近くにあった遊具に思いきり足を打ち付けた。
私は倒れた兄に覆い被さり、さらに何発も殴りつける。
133 私の生き方 ◆YMBoSzu9pw sage New! 2009/09/01(火) 20:26:22 ID:SE784J3q
「やめて! やめて優奈ちゃん!!」
舞さんが傘を手放し、私の腕を抑え付けた。私は抵抗し、勢いなく彼女の顔にも拳を当てたが、それでも彼女は手を離さなかった。
「放して! 放してよ!!」
「お願い、落ち着いて! 優奈ちゃん!!」
「あんたなんか……! あんたなんか!!」
「おい! お前ら何してる!!」
突然遠くから声がして、懐中電灯を持った警官がこちらに走ってきた。
それを見て私の気持ちが、何だか急に覚めていった。
結局私はその警官に抑えられ、兄と舞さんとともに近くの交番に連れていかれた。
兄は足をひどく痛めたようで、舞さんに支えられながら歩いていた。
交番では、痛さに呻く兄に変わって、舞さんが事情を話した。
やがて救急車が来て、兄はタンカに乗せられて運ばれていった。
それからしばらくして、連絡を受けた私の両親が来た。交番に入ってきた母に、私は真っ先に頬を叩かれた。
母のことは嫌いだが、これに関して彼女を責める気はない。家出した挙句、兄を殴って大怪我をさせたのだ。彼女の反応は当然だった。
私は、自分が惨めだった。
親に不良少女と罵られても、実際にそうはならないことで守っていたプライドを、私は自らの手で崩したのだ。
公園で考えていたことが、再び頭に浮かぶ。
結局、私は本当の駄目人間だったのだ。
舞さんも怪我はしていたがひどいものではなく、兄とのことは身内のイザコザだということで、幸い警察沙汰にはならずに済んだ。
警察に厳重注意を受けた後、私たちは舞さんと一緒に父の運転する車で病院に向かった。
兄は足をギブスで固定し、松葉杖をついて出てきた。時折顔をしかめ、足を痛そうにする。
兄は、右足を骨折していた。おそらく私が殴った衝撃で兄が倒れ、遊具にぶつかったときに折ったのであろう。
「ああ、隆史、大丈夫? 優奈のせいでこんなことに……」
「う、うん、大丈夫だよ、母さん」
兄はそう言った後、ちらりと私のほうに顔を向けた。私はすぐに顔を背けた。
兄と目を合わせるのが、何故だか怖かった。
ついでに病院で舞さんの顔の傷の手当てもしてもらった後、私たちは舞さんと別れ、兄と一緒に家に帰った。
「この馬鹿娘が!!」
家に入った途端、予想した通りすぐに父親から殴られた。
「まったく! 兄妹だってのに、隆史と違って何でお前はそうなんだ!!」
父の怒号が家に響き、それに母の声も加わる。
いつもと違って、さすがに今日ばかりは私も何も言えなかった。ただ黙って、親の言葉に身を小さくする。
だが、私は泣けなかった。家に着くまでは、今日は今まで親に見せたことのない涙を見せてしまうことになるだろうと、何となくそう思っていた。
だが何故だかその日、私は泣けなかった。
結局親の説教は、日が昇り始め、兄が止めに入るまで続いた。
134 私の生き方 ◆YMBoSzu9pw sage New! 2009/09/01(火) 20:26:48 ID:SE784J3q
舞さんの親から電話があったのは、その次の日だった。
顔の傷を見た親が彼女に問い詰め、舞さんは渋々事情を話したらしい。
舞さんの親は被害届を出すとこそ言わなかったが、私の学校に連絡すると言っていた
加害者側である私とその家族は何も言うことが出来ず、そうして今日、私たちは校長室にいるのである。
「この度は私の娘が、おたくの娘さんにお怪我を負わせてしまって、本当に申し訳ありませんでした」
母が舞さんの親に、深々と頭を下げた。
「申し訳ありませんでした」
その横で、私も頭を下げる。
「まあ、そんなかしこまらずに」
だが舞さんの父親はそう言って、私たちに頭を上げさせた。
彼は、娘とおたくの隆史くんがお付き合いしていることは知っているんだがね、と前置きして、私に向かって話し始めた。
その話をまとめると、こんなところだった。
娘が付き合っている相手の家族に、他人を殴るような人間がいるということは、正直親として心配でならない。
だが娘も、そして隆史くんも、君は本当はいい子なのだと言っている。
隆史くんのことは娘からよく聞いて知っているし、実際に何度か会ったこともあるが、根の真っ直ぐな非常に優しい子だ。
その隆史くんが、骨折をしておきながら君を優しい子だと言っている。そして私たちの娘も、同じように言う。
だから私は彼らと君を信じて、責めることはしない。
「でもね」
最後に、東条さんの父親はこう締めくくった。
「どんな事情があったにせよ、君が人を殴ったという事実は変わらない。だから私は君を責めないけど、学校には連絡させてもらうことにした。悪いことをすれば、罰を受けなきゃいけない。それが社会のルールだ」
私は、聖人君子のような目の前の男に感服した。そして同時に罪悪感を感じた。
いくら信じてもらっても、私はそんないい子ではない。駄目人間なのだ。
その後は、先生方を中心に私の処分をどうするかという話になった。
兄が一人、処分をしないように訴えた。
「自分が妹を怒らせてしまっただけなんです! 妹は悪くないんです!」
だが舞さんの父親が言うように、私が誰かを殴った事実は変わらない。
私は、一週間の停学処分になった。
処分の決定した次の日、私は家にいた。
父は仕事で、母はパートに行っている。
そして兄は、学校を休んでいた。ギブスをしていても少し動く度にまだ足が痛み、一人で行動するのはきついらしい。
もう二、三日休むことになるだろうと、そう言っていた。
ベッドに横になりながら、私は考えていた。
――何故私は、こんなに駄目人間なのだろう。
頭に浮かぶのは、兄のことだった。
駄目人間でない兄が、羨ましく、妬ましい。
親に褒められる兄。私には決して手の届かない兄。
だがそれでも、兄は小さい頃から私に優しくしてきたのだ。
私が親に理不尽なことで怒られる度に、お前は悪くないと、私を慰めてくれた。
そしてその度に、私は兄を嫌いになっていったのだ。
私が欲しくても貰えない、親からの愛情を独り占めしておきながら、どの口でそんなことを言うのだと。
兄が私に優しくすればするだけ、浅ましい嫉妬で、私は兄への憎しみを募らせてきたのだ。
――コン、コン。
不意にドアを叩く音がして、それから兄の声が聞こえた。
「優奈。話があるんだ。入っていいか?」
私は答えずに、ベッドに寝たまま天井を見上げていた。
その沈黙を肯定の返事ととったのであろうか、兄がドアノブを回した。滑りの悪いドアが、ギィッと嫌な音を立てて開く。
松葉杖をついた兄が部屋に入り、後ろ手にドアを閉めた。
「優奈」
兄が呼びかける。
事件のあった日から、私は兄と会話をしていなかった。どんな顔をして、何を言えばいいのかわからなかった。謝罪の言葉さえ、一言も述べていなかった。
136 私の生き方 ◆YMBoSzu9pw sage New! 2009/09/01(火) 20:27:27 ID:SE784J3q
「こないだのこと、話しにきたんだ」
黙ったままの私に、兄は続けた。
「その、こないだはごめん」
何で、お前が謝るのか。
私はすぐにそう思った。
「俺が優奈の気持ちを全然わかってなくて、優奈を怒らせちゃって……」
違う、悪かったのは私だ。
兄のことが憎くても、それに関しては私は自分の非を認めていた。
「ごめん。本当に悪かった」
違う、謝らなければいけないのは私なのだ。
私が、憎いお前に謝らなければいけないのだ。
「ごめん、何度でも謝る。許してくれ」
繰り返す兄に、私はベッドから起き上がった。
「そんなことで、お兄ちゃんを許すと思ってるの?」
だが口をついて出てきた言葉は、思っていたのとは正反対のものだった。
「私が! 謝られただけで! お兄ちゃんを許すと思う!?」
違う、私は謝らなければ……。
そう思えば思うほど、私の口からは兄を非難する言葉が出てきた。
「お兄ちゃんのことがどれだけ憎かったか! 私がどれだけ惨めな思いをしてきたか!! お兄ちゃんにわかる!?」
「ごめん! ごめん優奈! 何でもする!!」
兄はさらに声を大きくし、必死に謝り続けた。
違う。違うのだ。
何でお前が謝るのだ。
お前は、怒ればいいのだ。
人のことを殴っておきながら、何だその態度はと、私を怒ればいいのだ。
お前がそんなに優しいから……。
「うるさい!!」
――お前がそんなに優しいから、私はお前が憎いのだ。
私はベッドから飛び降り、兄の胸ぐらに掴みかかった。
兄の体が壁に打ちつけられる。
その拍子に兄は持っていた松葉杖を手放し、バランスを崩した。
兄は床に崩れ、私は引っ張られて、その上に馬乗りになる形になった。
「つっ……!」
兄が呻き声をあげた。おそらく、骨折している右足が痛いのだろう。
それでも兄は、私に謝り続けた。
「ごめん、ごめん優奈……」
――パチンッ。
思わず、私は兄の顔を平手で打ち付けていた。
137 私の生き方 ◆YMBoSzu9pw sage New! 2009/09/01(火) 20:28:12 ID:SE784J3q
「何で……!」
「なっ……!?」
「何で!!」
私は叫んだ。
何で。何で。何で。何で。何で。
私の頭の中で、その言葉が渦巻いていた。
何でお前は、そんなにも優しいのだ。
何でお前は、私を慰めるのだ。
何でお前は、駄目な私に優しくするのだ。
何でお前は……。
「……っ!」
私は兄の顔を両手で掴み、
「ゆ、優奈……!」
「黙れ!!」
その口に、私の唇を押し当てた。
激しく口を吸い、舌で口内を蹂躙し、唾液を飲ませる。
兄がジタバタと暴れたので、私はギブスに巻かれた右足を軽く叩いてやった。
しばらくそんなことを続け、やがて兄が諦めたように抵抗をやめてから、私は口を離した。
「ぷはぁっ、はぁっ……! ど、どうして……!!」
兄の問いに、私は答える術を持たなかった。
私にも、その理由がわからなかったからだ。
だがそれでも、私は衝動に任せて手を兄の股間に伸ばした。
「や、やめろ! やめてくれっ! ゆ、優奈!!」
兄の制止の言葉など、聞く気はなかった。
ズボンに手をかけ、ズルズルと下に引っ張る。
途中でギブスに引っかかったが、私は痛がる兄を無視して無理矢理それを脱がした。
さらにパンツをずり下げると、ひょろんと寝ている兄のぺニスが現れた。
「ふふっ……オチンチン曝け出して不様な格好ね、お兄ちゃん……」
「ううっ、お、お願いだ。ゆ、優奈、やめてくれ。頼む、頼む……!」
私は兄の言葉を無視して、兄のぺニスに手を触れた。
兄の体がビクンと震える。
しばらくそれを手で弄っていると、やがて不完全ながらぺニスが立ってきた。
私はそれを迷わず口に含む。
「うっ……!」
兄が、痛みによるものとは違う呻き声をあげる。
またジタバタと抵抗し始めたので、何度か兄の右足を叩いた。
ジュブジュブと音をたてて、私は兄のぺニスを口に出し入れした。
そのぺニスを蹂躙するように、出来るだけ激しく、出来るだけ卑猥に。
138 私の生き方 ◆YMBoSzu9pw sage New! 2009/09/01(火) 20:28:42 ID:SE784J3q
「ゆ、優奈……ううっ……! ゆ、許してくれ……!!」
兄は泣いていた。
私は、妙な征服感に包まれた。
私より優れている兄が、私の下で喘いでいる。
憎い兄が、私の下で許しを請うている。
「ううっ……や、やめてくれ! 優奈……!」
「しっかりオチンチンおったてておいて、何言ってるのよ」
私は兄のぺニスから口を離すと、履いていたズボンを脱いだ。さらに下着も脱ぎ捨て、床に放る。
私のそこは、既に濡れていた。
セックスの経験はなかったが、そこをいじったことはあった。
特に生理前などでムラムラしたときにはよく行う。
だがそれでも、それは私にとってちょっとした息抜きであり、昂った性欲を抑えるためのものでしかなかった。
しかし今、私のそこは濡れていた。
兄のぺニスを舐めただけで、私のそこはひどく濡れていた。
私は今まで味わったことのないような、強い性的興奮の中にいた。
私が下半身を露にしたことに気付いた兄が、声をあげた。
「ゆ、優奈! 何を……」
「ふふっ、お兄ちゃん、舞さんとはもうセックスした?」
「セ、セックスするつもりなのか!? 俺たちは兄妹だぞ!!」
「ねえ、質問に答えてよ。舞さんとはセックスした?」
「……そ、そういうことはまだしてない……! お願いだ! やめてくれ優奈……!!」
それを聞いた瞬間、私のそこはさらにジュンと濡れた。
あの女の前では出したことのないような声を、兄は今私の下で出しているのだ。
頭がよくて、優しくて、美人で、私では何一つ敵わない女の彼氏を、私は今襲っているのだ。
兄を奪っていった女の彼氏の童貞を、私は今奪おうとしているのだ。
「お願いだ! ゆ、優奈! それだけはやめてくれ!!」
「さっき、何でもするから許してくれって、そう言ったでしょう? あれは嘘だったの?」
「う、嘘じゃない! だけど……! だけど……!!」
「ふふ、これを舞さんが知ったらどんな顔をするかしら」
見てみたかった。
これを知ったときの、あの女の顔を。
さすがにあの女も、私が彼氏を襲ったことを知れば怒るだろう。
もしかしたら温厚なあの女でも、ビンタの一つくらい私に浴びせるかもしれない。
いい気味だ。
泣き叫べばいい。
怒鳴り散らせばいい。
あの女の表情を、醜く崩してやりたかった。
139 私の生き方 ◆YMBoSzu9pw sage New! 2009/09/01(火) 20:29:21 ID:SE784J3q
「お願いだ! ううっ! 優奈、やめてくれ!!」
今さら引き返すことなど、できなかった。
私は左手でいきり立った兄のぺニスを掴むと、既に十分に濡れた自分のそこに宛がった。
「そ、そのまま入れるのかっ!? お願いだ、優奈! 落ち着いてくれ!!」
私は再び兄の右足を叩いて、黙らせる。
避妊など、どうでもよかった。
後のことなど、どうでもよかった。
兄をめちゃくちゃにしてやりたかったし、私もめちゃくちゃになりたかった。
兄への憎しみに身を任せて、狂ってしまいたかった。
「入れるよ、お兄ちゃん」
「ううっ、優奈……!」
私は、一気に腰をおろした。
「……っっ!!」
「ああああっ!!」
声にならない私の叫びと、兄の叫びが重なる。
破瓜の痛みは、想像を絶するものだった。
そのまま倒れこみたくなるのを必死で堪える。
死ぬほどの激痛とはよく言ったものだ。
私のそこから、赤い液体が流れていた。
「……!? お、お前……!!」
「ふぅっ……ふぅっ……!」
痛みに、呼吸が荒くなる。
「お、お前初めてなのか!? い、いったい何考えて……!!」
「うるさい……!」
私が初めてかどうかなど、どうでもいいことだ。
そんなことは問題ではない。
私は痛みを我慢しながら、ゆっくりと腰を上下に動かし始めた。
「ああっ! 優奈! 優奈!! お願いだやめてくれ!!」
「ふっ……そう、うっ、言いながら……ふぅっ、ふっ……しっかり、感じてんじゃ、ないの」
動く度に全身に激痛が走り、声が漏れる。
私の額からは嫌な汗が流れていた。
私は痛みに感じるどころではなかった。
だがそれでも、兄を犯しているという状況に、興奮はどんどん高まっていった。
私は必死に腰を動かし続けた。
140 私の生き方 ◆YMBoSzu9pw sage New! 2009/09/01(火) 20:29:46 ID:SE784J3q
「ふぅっ……! ふぅっ! あぁっ……! ああっ!!」
私は叫んだ。
それは痛みをごまかすためでもあったし、気持ちが昂って思わず漏れたものでもあった。
この状況に、私の頭の中ではたくさんの記憶がフラッシュバックしていた。
親に叱られる私。
それを慰める兄。
冬に玄関から閉め出された私。
こっそり窓から入れてくれた兄。
親から褒められる兄を、遠くから見ている私。
私の頭を撫でる兄の手。
兄と手を繋いで歩いた、あの道。
『優奈のことは、ずっと俺が守ってやるから』
小さい頃の、兄の言葉。
「ああっ! お兄ちゃんっ! お兄ちゃん!!」
私は叫んだ。
気付けば、私の目からは涙が流れていた。
それでも私は腰を振り続けた。
「優奈……! 優奈!! ううっ、ごめん……! ごめん……!!」
「謝らないで! ああっ! 謝らないでよ!! 憎いあなたが、私に謝らないで!!」
「優奈……!」
「ああ! ああっ!! 謝らなきゃいけないのは私なの!! だから……!!」
私の感情の昂りにあわせて、腰の動きはどんどん速まっていった。
「と、止まってくれ! 優奈!! お、俺もう……!」
「止めない……! 離さない!! 離れないでよ!! ずっと! ずっと私を守ってよ!! 私の傍にいて!!」
「も、もう駄目だ! 優奈! お願いだ! 優奈!!」
「来て! お兄ちゃん!! 来て!! ああ! ごめんなさい! お兄ちゃん! ごめんなさい!! ああ!! ああああっ!!」
「ううう!! ああああっ!!」
その瞬間、私の中に兄の精が放たれた。
私は兄の体の上に倒れ込んだ。
私も、兄も、荒い息をしてしばらくそのままだった。
「優奈……」
上を見上げると、そこには涙まみれの兄の顔があった。
私はそこに顔を近付け――短い、キスをした。
今度は、兄は抵抗しなかった。
141 私の生き方 ◆YMBoSzu9pw sage New! 2009/09/01(火) 20:30:13 ID:SE784J3q
そして、急に現実的な感覚が戻ってきた。
自分が今しでかしたことの意味を、今更ながら理解した。
私は兄を弾き飛ばした。
兄の体が転がり、兄が右足を痛そうにして呻く。
「ゆ、優奈!?」
「出てって!」
「は!?」
私は大きく息を吸った。
「出てって!! 今すぐこの部屋から出てってよ!!」
そう叫んで、私は兄の衣服と松葉杖を兄に投げつけた。
「ちょっ! ちょっ……!?」
「出てって! 出てって!!」
私はさらにそこら中のものを、手当たり次第兄に向かって投げつけた。
兄は困惑しながらも、何とか立ち上がり右足を引きずりながら急いで出ていった。
「優奈! 優奈!?」
疑問の声をあげる兄を前に、私は部屋のドアをピシャリと閉めた。
その後、私はずっと泣いていた。
大声をあげてワンワンと泣いた。
母が帰ってきても、父が帰ってきても、私は泣いていた。
親が部屋の前で怒鳴っても、机をドアの前に引っ張って、部屋にこもり続けた。
今まで溜め込んでいた気持ちが、全部出ていくようだった。
親のこと。勉強のこと。舞さんのこと。兄のこと。私のこと。
やがて泣き疲れて眠ってしまい、そして起きたのは次の日の朝だった。
私は、妙に清々しい気分だった。
カーテンを開けると、眩しい日差しが部屋の中に差し込んだ。
窓から見える光景が、いつもと違って見えた。
とりあえず早急にしなければいけないことが、ひとつあった。
机の引き出しをいくつか漁って、目的のものを見つける。
その封を破って口に入れ、唾液と一緒に飲み込んだ。
それから、母がパートの仕事に行くのを待った。
それまでに何度か部屋の前に来て怒鳴られたが、私は黙っていた。
昨日から、親は私が兄を襲ったことに関しては何も言っていなかった。おそらく兄が、親に言わないでいてくれているのだろう。
母が家を出ていくのを確認してから、私はドアの前の机をどかして部屋を出た。
真っ直ぐに兄の部屋に向かい、そのドアをノックする。
――コン、コン。
「お兄ちゃん、入るよ」
「え、あ、優奈!?」
素っ頓狂な声をあげる兄を無視して、私はドアを開けた。
兄はベッドの上に、ギブスの巻かれた右足を放り出して座っていた。
私は部屋に入り、後ろ手にドアを閉めた。
「ゆ、優奈。どうしたんだ?」
「ちゃんと、謝りにきたの」
心臓が、小さく跳ねた。
私は深呼吸をしてから、続きを言った。
「昨日のことと、あとこの前殴っちゃったこと。ごめんなさい」
私は兄に向かって頭を下げた。
「謝って済むようなことじゃないけど、それでも謝らせて」
142 私の生き方 ◆YMBoSzu9pw sage New! 2009/09/01(火) 20:30:55 ID:SE784J3q
兄は少し慌てて言った。
「いいよ、そんな謝らなくても」
「私が、謝りたいのよ」
「そ、そうか」
私は頭をあげて、兄の顔を見た。
「それと、舞さんにも謝りたいの。……舞さんには、本当に悪いことをしちゃった」
「……舞なら、許してくれるよ」
「うん……」
それから、私たちはしばらく無言だった。
数十秒か、あるいは数分してから、私が口を開いた。
「私は今まで、全部お兄ちゃんのせいにしてたの」
「え?」
「お兄ちゃんが羨ましくて、妬ましかった。だからお兄ちゃんが嫌いで、お兄ちゃんなんかいなければって……」
兄は、黙って聞いていた。
「だけど、違うの。お兄ちゃんと比べられるのを嫌がってたのに、誰よりも私とお兄ちゃんを比べてたのは、私自身だった」
「優奈自身?」
「自分に、自信がなかったのよ。いつも親からお兄ちゃんと比べられて、それで私もいつしか、自分とお兄ちゃんを比べるようになってた。自分に自信を持ってれば、そんなことはしなくていいのに
……だから、決めたの。私はもう母さんの声も、父さんの声も気にしない。自分に自信を持って生きていく。
まだ自分でも胸を張って生きられるような自分じゃないけど。私は私の道を行く。お兄ちゃんの背を追っかけるようなことはもうしない」
「……それが、正しいよ」
兄の声は優しく、私の心をなごませた。
「あ、そ、そう言えば」
兄が慌てた声をあげた。
「何?」
「そ、その、昨日、な、中に……」
兄の言葉に、私は言い忘れていたことを思い出した。
「それならたぶん、大丈夫だと思う。朝、アフターピルを飲んだの」
「アフターピル?」
「性交後に飲むピルよ。友達に貰ったのがあったの、本当に偶然だけど。それに昨日は、生理周期的には安全な日だったし。……まあ、100%大丈夫とは、言えないけど」
「そっか……よかった……」
兄は安堵した声をあげた。
「そのことも、本当にごめんなさい。今回はよかったけど、ひょっとしたら大変なことになってた」
私はまた深々と頭を下げた。
「うん……」
私の謝罪を、兄は黙って受け入れた。
それからまたしばらく無言の時間が続き、もう言うことのなかった私は部屋を出ようとした。
「じゃあ……」
「あ、ゆ、優奈」
部屋から出かかった私を、兄が引き止めた。
「その、優奈、昨日が初めてだったんだろ? それで、その」
「謝らないで」
私はピシャリと言った。
「昨日は、私が悪かったのよ。……受け入れたつもりだけど、そうやって謝られると、私はまたお兄ちゃんのこと嫌いになっちゃうかもしれないから」
「そ、そうか。じゃあ謝らない……。だけど、初めてが俺なんかで……」
まだぐだぐだと続ける兄に、私は言った。
「私もお兄ちゃんの初めてを貰っちゃったんだから、お互いさまよ」
それから、私はこう付け加えた。
「それに、初めてがお兄ちゃんで、私はよかったと思ってるよ?」
「え? え!?」
顔を赤くする兄に、私は笑って部屋を出た。
今日からは今までと違う毎日が始まりそうだと、そんな気がした。
最終更新:2009年09月05日 22:37