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私は貴方に相応しい? 第3話 1/7 sage 2009/10/18(日) 09:40:07 ID:V10f0c/6
「おい御影、なんだその格好は。ウチの校則を何だと思っている」
「すみません」
私は今、生徒指導室の椅子に座らされている。それと言うのも、今朝風紀チェックに引っかかったからだ。
「大体なんだその格好は。ウチの制服は膝上10センチ以内だ。どう見ても20センチはあるぞ」
「申し訳ありません、今朝慌てていたもので。どうやらサイズが小さいものを、間違えて穿いて来てしまったようです」
目の前に立っているのは、今朝服装チェックをしていた男。小太りで少し油が浮いている。名は…まあどうでもいいか。
スカートから伸びるふとももと、サイズが合っていない故に、乳房に押し上げられてはちきれそうなブラウスをじろじろと無遠慮に眺めている。
これでまがりなりにも教育者だと言うのだから世も末だ。
「フン、口では何とでも言えるがな…大体その口調は何だ?本当に悪いと思っているのか?」
「勿論です。後この口調は素なのでどうかお気になさらずに」
「ふ~ん…そもそもお前、なぜサイズの小さい服などとってあるんだ?」
「単に貧乏性なだけです」
「本当か?」
「何を仰りたいので?」
「話がわかるな…お前位の年齢の女と言うのは、アレだろ? 男とヤリまくってるんだろう?」
「それは偏見ではありませんか? 確かに世の中には、そういう女性もいるそうですが、それが全ての女子高校生とは限りません。それに私は処女です」
「へぇ…」
男の目付きが変わった。獲物を見つけたような、見定めたような目だ。
「(…この下衆が…)」
どうやら女子生徒に難癖つけて、セクハラまがいのことをしていたと言うのは本当らしい。
「おい御影。スカートをめくれ」
「何故です?」
「お前が本当に処女かどうか確かめてやる」
「どうやって?」
「処女のマ○コは臭いっていうからなぁ? 俺が直々に匂いを嗅いでやるよ」
「お断りします」
「何だと!? 俺の言うことが聞けないってのか!?」
「教師にあるまじき暴言ですね」
「うるせえ! 人が下手に出てりゃあ付け上がりやがって!」
「セクハラまがいをすることが下手ですか?」
「いい度胸だ! この俺に逆らえないようにしてやる!」
「どうやって?」
「俺の部屋に閉じ込めてやる! 朝から晩までヤリまくって、俺なしでは生きられない体に調教してやるよ!」
「ほぅ?」
「何発も中出しして妊娠させてやる! 子供が生まれてもまた犯してやる!」
「それはそれは面白い。ですが残念です。あなたの望みは叶いそうにないですね」
「何!?」
187 私は貴方に相応しい? 第3話 2/7 sage 2009/10/18(日) 09:40:47 ID:V10f0c/6
突然扉が開き、校長先生が入ってくる。
「○○先生? 今の発言はどういう意味でしょうか?」
「なっ!? こ、校長!?」
「前々から、生徒に対するセクハラの容疑はありましたが、ここまで明確な証拠を突きつけられては庇いきれませんな」
「な、何を仰っているのかわからないのですか?」
「恍けるのは止めなさい。先程の会話、全て全校に響き渡っているのですよ」
「なっ!?」
「加えて物的証拠もあります」
掌に隠していたボイスレコーダーを再生する。
「っ! てめぇ! ハメやがったな!!」
「そんな言葉を生徒に、それも女子生徒に吐きかける時点で貴方は教育者失格ですね」
「なっ!? ちょっ!」
「今日中に荷物をまとめてください。後警察には既に連絡してありますので、到着までこの部屋で謹慎していてくださいね」
「こ、こうちょ「さようなら○○先生」
力なく項垂れる下衆野郎を尻目に、私は校長先生と生徒指導室を後にする。
ふん、『吹雪の服装に異常があれば、それを口実にレイプできるのに』などと口にするからだ。
「ざまあみろ」
188 私は貴方に相応しい? 第3話 3/7 sage 2009/10/18(日) 09:41:37 ID:V10f0c/6
俺は自室で、椅子に腰をかけながら考えごとをしていた。
「う~ん…」
今、ただでさえあまり良くない俺の頭を悩ませているのは、妹の友達(傍から見ると親友レベル)の女の子のことだ。
彼女の名前は七海・吹雪。初めて紹介された時は、どちらが名前なのか解らなかった事を覚えている。
「う~~ん…」
最近その子の様子が変なのだ。どう変かというと…
毎朝、登校時に校門の所で待っている。さっさと校舎に入ってしまえばいいのに。
休み時間、事ある毎に俺の教室を訊ねてくる。2年の教室は2階、1年の教室は1階。態々階段を上ってまで会いに来ることもなかろうに。
昼休み、毎日弁当を届けてくれる。料理上手のようなので特に文句はないのだが、彼女が弁当を持ってくるようになってから、可憐は俺の昼飯を用意してくれなくなった。どうせ朝の残りを詰めるのだから、俺の分も用意してくれればいいのに。彼女の手を煩わせる事もなくなるし。
放課後、一緒に帰ろうと誘いに来る。先も挙げたが、1年の教室は1階だ。どうせ降りることになるのだから、態々階段を上ってまで誘いに来る必要もないだろう。
「う~~~ん…」
極めつけは彼女の目だ。陶酔しているというか、白馬の王子様を見るような目と言うか…そう、まるで『俺に恋をしている』かような目なのだ。
「う~~~~ん…」
だが、相手は学園で5指に入ると言われているほどの美少女だ。彼女に憧れている男子生徒も数多い。加えて、彼女はそれなりに高い身分と言うか、俗な言い方だが、『結構な金持ち』という奴らしい。(彼女の家を訪ねた事は無いのだが)
そんな絵に描いたようなお嬢様が、平凡と言う言葉が服を着て歩いているような、ましてや身体に故障がある人間に恋などするだろうか? 否! 断じて否!
「…よしっ!」
考えていても埒が明かない。こんな時は誰かに相談すべきだ。
「さて、誰に相談しようか?」
クラスの男共に話そうものなら、答える代わりに拳が飛んできそうだ。かと言って、こんなことを相談できるほど、親しい女友達もいない。
「こいつは参ったな」
こんなことを相談できそうな人間と言えば…
「とりあえず、可憐に相談してみるべきかな?」
当事者の友人だし。何より、血は水よりも濃いっていうしな。
思い立ったが吉日。自分の部屋を抜け出し、可憐の部屋の扉をノックする。
「可憐、ちょっといいか?」
『だが断る』
にべもなく拒否された。
「…そうか。邪魔したな」
可憐がダメとなると…参ったな。他に相談すべき人物がいないぞ。両親は当分帰ってこないと聞いているし、誰か「待たんか愚兄」む?
次に相談すべき人物を知人リストから探していると、扉が開いて可憐が顔を出した。
「どうしたんだ可憐?」
「どうしたはこちらの台詞だ。貴様私に何か話があったのではないか?」
「断ったのはお前だろう」
「すまん。貴様がお約束というものを、全く理解していない大馬鹿者だということを失念していた。先程のは条件反射という奴だ。貴様の声を聞くと無条件で拒否したくなるというな。ああ気にするな。私は気にしない」
…まあ、この際可憐の暴言は、遥かイスカンダルの彼方へ追いやることにしよう。
「でだ、少し相談に乗って欲しいだけど…」
「だがことわ…ゲフンゲフンいいだろう。聞くだけ聞いてやる」
こいつ、本当に俺の事が嫌いなんだなぁ…まあ無理もないことだけど。
「あのさ、ふぶ「とりあえず部屋に入れ」あ、うん」
189 私は貴方に相応しい? 第3話 4/7 sage 2009/10/18(日) 09:41:59 ID:V10f0c/6
可憐に促され、可憐の部屋に入る。
「…………」
可憐の部屋は、思っていたよりも生活観に溢れていた。絨毯とカーテンは桃色で統一され、窓際のセミダブルのベッドを、
真っ白なシーツが覆っている。
ドアから入った真正面の隅に本棚、その右側にテレビ。入り口のすぐ右にアルミ製の洋服がけ、そのとなりに、高さ1メートルくらいのタンスが配置されている。
部屋の中央には小さなテーブル。教科書やノートが広がっているところから、勉強の最中だったらしい。
そういや可憐の部屋に入るなんて何年ぶりだ? …あれ? ひょっとして初めてなんじゃ?
「何を見ている」
「いや…思ったより女の子っぽい部屋だなって…ぐふっ!」
「殴るぞ貴様」
もう殴ってます。
「で、何だ?」
「ああ…あのさ、ちょっと聞きたいんだけど」
「どうした。さっさと話せ。私はこれでも忙しいんだ。貴様と違って、私は学校では優等生で通っている。そんな評価に未練など微塵もないが、将来の選択肢を広げるための勉強を捨てるほど、悟れているわけでもないのだよ。毎日をノリと勢いだけで過ごしている貴様と違ってな」
随分な言われようだ。まあ否定できるだけの要素もないんだが。
「じゃあ聞くけど。あのさ、お前の友達の吹雪ちゃん、いるよな?」
「ふむ。吹雪か。あの純粋培養貞淑可憐絶滅危惧種良妻賢母の大和撫子(外的評価)がどうした?」
「(外的評価)って…あのさ、吹雪ちゃんって俺の事好きなのかな?」
「…………」
まるで、ブリザードのように冷たい沈黙が襲ってきた。え? 何々? 俺何か変なこと言った?
「貴様…前々から聞こうと思っていたのだが…」
物凄く冷たい声。聞いているだけで身体の芯から凍えてきそうだ。こういうのを『絶対零度の声色』というのだろうか?
「貴様本当に男か?」
「は?」
「貴様は、本当に男なのかと聞いている」
一瞬、可憐が何を言ったのか解らなかった。
髭は生えるし、喉仏もあるし、胸も膨らんでないし、何より男性用の性器を持っている。
これで俺を『女』と言う奴がいたら、即刻救急車を呼ぶところだ。黄色いやつを。
「えっと、一応」
「…………」
可憐の『凍てつく沈黙(サイレント・ブリザード:俺命名)』は続いている。そろそろ風邪を引きそうです。いやマジで。
「はぁ~~~~…」
『凍てつく沈黙』は唐突に終焉を遂げた。っていうか何その深っかぁ~いため息は。そこまでやりますか? というか何をそんなに呆れているんですか?
「なぁ愚兄よ」
「はい」
「貴様一度病院に行って来い。脳外科でも精神科でもいい。何なら私がいいところを調べておいてやる。後貴様が空いている時間を教えろ。私も付き添ってやる。なぁに、知る事は恥ではない。知らない事こそが恥なのだ」
あの~、可憐さん? 一体何を仰っているのでしょうか?
「…はぁ」
首を傾げる俺に、今にもうずくまってしまいそうなほど脱力する可憐。
「えっと、どうしたんだ可憐? どっか具合でも悪い「黙れ下郎」イエッサー!」
地獄の底から響いてくるような、暗く殺意に満ちた声。絶対零度の声色と違って、こちらは熱に満ちている。ただし、どす黒い炎だが。
190 私は貴方に相応しい? 第3話 5/7 sage 2009/10/18(日) 09:42:27 ID:V10f0c/6
「マムだ。とりあえず最初の質問に答えてやる」
最初の質問って何だっけ? ああ、『吹雪ちゃんが俺のことを好きなのか』っていう話か。
「貴様その様子だと忘れていたようだな…まあいい。いや良くはないが…とりあえず返答だが、その質問に私から答えることはできない。その問いに答える権利があるのは吹雪だけだからな。私が彼女の感情を代返するわけにはいくまいよ。例え答えがどちらでもな」
「そうか…」
こういうのを『振り出しに戻る』と言うのだろうか? いや、『吹雪ちゃんに直接答えを聞くべき』という答えはもらえたのだから一歩前進? でも全体としてはあまり変わっていないような…
「さて、話は変わるのだが『駄』」
「だ…ひでぇ」
愚兄、馬鹿兄貴、女の敵、倒辺朴、朴念仁、駄・兄貴と、今まで色々な呼ばれ方をされてきたが、さすがに『駄』と呼ばれたのは初めてだった。ってか一文字かよ。
「貴様など駄で十分だ。さて駄よ。確か先週辺りに、貴様に雑誌を買い与えたよな?」
「せめて兄と付けてくれ…ああ、今時の若者が読むような奴だろ?」
「うむ。貴様それをちゃんと読んだか?」
「ううん」
「(ピキッ!)」
!?
何!? 何今の音!? 今何か聞こえたよ!? 可憐のこめかみの辺りから確かにナニカが!!
「ほぉぅ…貴様読んでいないのか…」
「か、軽く目を通した位かな…」
乗っていた情報は、男のファッションとかデートスポットとか、後は女性の口説き方とかばかりだった。
ハッキリ言って俺には関係ないことだらけだ。少なくとも今は。
「読み直せ」
「は?」
「もう一度頭から読み直せ。全部だ」
「で、でも今の俺には「問 答 無 用」ひっ!」
たった一言で、こちらの反論する意思を根こそぎ奪い去るくらい、暗い、暗ぁ~い声だった。
瞬間理解した。『逆らえば殺される』。割と本気で。
「全てを読み直せ。一言一句覚えるくらいに。全てを暗記するくらい熟読しろ。理由など考えるな。貴様が今果たすべき使命はそれだけだ。わ か っ た か」
「サー! イェッサー!」
「マムだ!」
ふと思った。可憐が軍に入隊したら、さぞかし恐ろしい鬼教官となるだろうと。
191 私は貴方に相応しい? 第3話 6/7 sage 2009/10/18(日) 09:43:14 ID:V10f0c/6
キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン…
4時限目終了の鐘がなる。
「では、今日はここまでにします」
「起立! 礼!」
号令も終わり、これから昼休みになる。
「さて、と」
私は、右斜め前に座っているクラスメイトとアイコンタクトを交わした。
彼女は席から立ち上がると、私の後ろにいるクラスメイトの背後に回った。
「ふ~っぶきちゃ~ん!」
「きゃっ!」
真理亜が後ろから吹雪に飛びつく。ついでとばかりに彼女の胸を揉みしだいている。
「今日も聡明君の所行くの?」
「え、ええ…」
吹雪の胸は少しばかり大きい。確かDカップだったか?
「聡明君も果報者だね~♪ こ~んな美人な後輩にお弁当作ってもらえるなんて~♪」
「あ、あの、真理亜さん?」
「吹雪ちゃんのおっぱい柔らか~い♪ い~な~羨ましいな~」
話しながらも胸を揉んでいる。Dカップの美乳が面白いほどに形を変えている。というか、
「そこまでにしておけ真理亜」
吹雪は弁当箱(青い包みに包まれている)を抱えたまま、真理亜の悪戯の餌食にされている。
女同士なので特に気に留める必要は無いのだが、将来兄のものになるのだと思うと、同性の指とはいえ、見ていて面白いものではない。
揉むなら自分の胸にすればよいものを。ああ、真理亜はAしかなかったな。
「むっ!? 可憐ちゃん! 今何か失礼なこと考えてたでしょ!?」
「とんでもない。真理亜の胸はAしかないから、揉んだところで面白くもなんともないだろうな、などとと考えていないぞ?」
「きーっ! 人が気にしていることをー! 可憐ちゃんのおっぱいも揉んでやるーー!!」
「だが断る」
伸ばしてきた両手の肘部分に右手を当て、胴体と一緒に抱え込む。開いた左手は、真理亜の首を軽く絞めてやった。
「く、苦しいよ可憐ちゃん! ギブギブ!」
「大げさだな。そんなに力は入れていないはずだぞ」
「あ、あの、可憐さん?」
割と本気にしているのか、苦しむ振りをしている真理亜におろおろしている吹雪。
「(今日はこんなことをしている場合ではないだろう)」
「(はっ! しまった! そうだった!)」
小声で真理亜に囁き、本来の目的を思い出させる。
「さて、真理亜の仕置きは後にするとして、吹雪、今日もあの愚兄のところに行くのだろう?」
192 私は貴方に相応しい? 第3話 7/7 sage 2009/10/18(日) 09:43:55 ID:V10f0c/6
「え? ええ、そうですが」
「なら一緒に行こうよ! 今日は聡明君と一緒にご飯食べたい気分なんだ♪」
「え?」
「私も同席しよう。今日は天気がいいしな。屋上で一緒に昼食にしないか? あの愚兄も交えてな」
「えっと…」
「吹雪ちゃんはこないの?」
「真理亜、そう強制するな。来るか来ないかは吹雪次第だ」
「…………」
「そうだ! 折角だから『あ~ん』でもしてあげようかな!」
「!」
「それはいい。胸は薄いとはいえ、一応真理亜も美少女の範囲内だからな。あの男もきっと喜ぶぞ?」
「!!」
「胸が薄いは余計だよ! それでそれで、口移しなんかしちゃったりして…きゃ~っ♪」
「!!!!」
「あまりあの朴念仁をからかうなよ? 女性と付き合ったことなどないのだから、勘違いされてしまうぞ」
「別にい~よ? 聡明君可愛いし♪ 年上の彼氏っても案外いいか「私も行きます!」
「「どうぞどうぞ」」
「はっ!?」
面白いほど単純な罠にかかってくれた。これだから吹雪いぢりは止められない。
「さて。では行くとしようか、吹雪」
「さ、いこ~? ふ・ぶ・き・ちゃ・ん♪」
「////」
初々しいな…これが若さか…
(『あ~ん』の権利は、本来貴方だけのものよ? あんな女に譲っていいの?)
「むっ!?」
「どしたの可憐ちゃん?」
「いや…」
また幻聴か? 最近多いな…
最終更新:2009年10月26日 16:58