103 三つの鎖 14 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2010/01/29(金) 23:15:54 ID:sooJAhF2
三つの鎖 14
チャイムが鳴る。玄関に行ってドアを開けると幸一君がいた。切羽つまった顔をしている。随分と走ったのだろう。春先の涼しい季節なのに汗だくだ。
「春子。急な頼みで悪いけどシロを貸してほしい」
「いいよ。シロ!」
私は即答してシロを呼んだ。シロはしっぽを振って犬小屋から出てきた。
幸一君は学校指定の女子の靴をシロに近づけた。
「シロ、持ち主を追える?」
シロはくんくんと匂いを嗅いだ後、私を見た。
「頑張ってね」
シロはわうと吠えて走り出した。幸一君もシロの後を追い走り去った。
さてと。
「これでいいのかな」
私は後ろに振り返って玄関を見た。奥の居間の入り口から夏美ちゃんは頭だけぴょこっと出して私を見た。
一応自己紹介をしておこうかな。
私の名前は村田春子。
幸一君と梓ちゃんのお隣さんにしてお姉ちゃんだよ。
別に幸一君とあずさちゃんと血のつながりがあるわけじゃないけどね。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
夏美ちゃんが幸一君の家を飛び出した時に私がいたのは偶然じゃない。
私は幸一君の家の数か所に盗聴器を仕掛けている。ちなみに夏美ちゃんの家にも仕掛けてある。初めて幸一君とホテルに行った時、待ち伏せできた理由はこれだったりする。
夏美ちゃんを私は自宅の前で待ち構え連れ込んだ。夏美ちゃんは裸足だった。
別に大した理由があるわけではない。ただ、追いついた幸一君が夏美ちゃんに優しくすると考えると腹が立っただけ。
今の幸一君は私に優しくない。怒りと悲しみの渦巻く瞳を私に向ける。それはベッドの上でも同じ。いつも荒々しく私を抱く。今日は特に乱暴だった。レイプされているみたいで本当に怖かった。
もちろん分かっている。幸一君は何も悪くない。責任は私にある。
「ちょっとは落ち着いた?」
私はソファーの上に体育座りしている夏美ちゃんに声をかけた。夏美ちゃんは泣き腫らして赤くなった眼を私に向けた。
「すいません。もう大丈夫です」
夏美ちゃんの声は小さいけどしっかりしている。
その体勢だとパンツが丸見えだ。白くて柔らかそうな足も。そうやって幸一君を誘惑しているのかと思うと腹が立つ。
「お兄さんとシロちゃんは大丈夫でしょうか。私はここにいるのに」
「大丈夫だよ。シロには適当に走り回るように言ってるから」
夏美ちゃんは驚いたように私を見た。
「シロちゃんって賢いですね」
「幸一君には悪いけど、シロの運動に付き合ってもらうよ」
夏美ちゃんは笑った。元気のない笑顔。
「で、いったい何があったのかな?」
私は夏美ちゃんに尋ねた。むろん、私はリアルタイムで盗聴して聞いていたから全てを知っている。
夏美ちゃんはうつむいて唇をかみしめた。そしてポツリポツリと話した。
「私、梓に無神経なことをしたんです」
無神経な事、か。
「私、梓がお兄さんのこと好きな事を分かっていたのに、梓はその気持ちを我慢しているのに、梓がお兄さんを一緒にいられる場所に踏み込んじゃったのです」
私が幸一君にしている事を知ったら、夏美ちゃんはどう思うのだろう。私は幸一君の気持ちを土足で踏みにじっている。
怒るのだろうか。同情するのだろうか。
「それで梓を怒らせちゃったのです」
そう言って夏美ちゃんはうつむいて膝に顔をうずめた。
本当に夏美ちゃんはいい子だと思う。幸一君に相応しいまっすぐで優しい子。
「夏美ちゃんは悪いことをしたと思っているのかな?」
夏美ちゃんは顔をうずめたままうなずいた。
「じゃあどうするのかな?」
夏美ちゃんは少し黙ってから口を開いた。
「お兄さんの家にはもう行きません。梓の前でお兄さんと親しくするのはやめます」
本当に健気な子。夏美ちゃんにとっては幸一君も梓ちゃんも大切なのだろう。
「そうするとね、夏美ちゃんはずっと幸一君から離れられないと思うよ。だって一緒に住んでいるんだよ?」
夏美ちゃんは顔を上げた。戸惑った顔。
「好きな人と同じ屋根の下にいて我慢できるかな?」
「それは、その」
104 三つの鎖 14 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2010/01/29(金) 23:18:25 ID:sooJAhF2
それきり言葉が続かない夏美ちゃん。
「どれだけ好きでもね、いつかは別れが来るよ」
そう。どれだけ好きでも、どれだけ身近にいても、どれだけ長く傍にいても。
「私もね、幸一君の事は大好きだよ」
夏美ちゃんはびっくりしたように私を見た。
「ずっと一緒にいたんだもん。梓ちゃんもそうだよ。私にとって二人は可愛くて大切な弟と妹だよ」
この言葉に偽りはない。ただ私の場合、それ以上に傍にいたいという気持ちが強いだけ。
だから、あんな事をして、今も続けている。
「でもね、それでも別れは来るよ。うんうん、この場合は今まで通りの関係ではいられなくなるって言う方が正しいかな」
私は分かっている。例え幸一君を脅迫して従わせても、いつかは終わりが来る。梓ちゃんの鎖が切れたように、私の鎖もいつか切れる。
それでもいい。それまでは傍にいたい。
「私はお兄さんと梓の関係にまで立ち入るつもりはありません」
「あのね、もし私が幸一君にべたべたしたら夏美ちゃんは嫌でしょ?」
夏美ちゃんは絶句した。
「嫌でしょ?」
少なくとも私は我慢できなかった。だから幸一君を襲った。はじめてホテルに行ったあの日もそう。夏美ちゃんと幸一君がしてるのを盗聴器で聞いて我慢できなかった。だから待ち伏せしてホテルに連れ込んだ。
どうなのかな。夏美ちゃんは我慢できるのかな。
夏美ちゃんは意を決したように私を見た。
「わたし、その、ハル先輩なら、お兄さんにべたべたしても」
「やめて」
私は夏美ちゃんの言葉をさえぎった。
「そんな事聞きたくないよ」
私は夏美ちゃんを見た。脅えたように夏美ちゃんは後ずさる。
「私が幸一君にべたべたしても我慢できるの?私が幸一君に抱きついても?私が幸一君とキスしても?幸一君と寝ても?」
私は夏美ちゃんに近づき頬を両手で挟んだ。夏美ちゃんの顔が恐怖に見開く。
「嫌でしょ?」
夏美ちゃんは震えるばかりで何も言わない。私は夏美ちゃんの顔から手を離した。
「そんな事二度と言っちゃだめだよ。夏美ちゃんのその考えは最終的には幸一君が夏美ちゃんのもとに戻ってくるって余裕の表れでしかないよ」
いけない。気持ちが高ぶっている。私は深呼吸した。気持ちを鎮める。
「それにね、その考えは幸一君を侮辱しているよ。幸一君を私物扱いして貸してあげるって言っているのと同じだよ」
幸一君は私のものだ。ずっと一緒だった。ずっと傍にいた。夏美ちゃんに私物扱いされたくない。
夏美ちゃんはうなだれた。
「ごめんなさい。私が間違っていました」
そう言って私に頭を下げる夏美ちゃん。本当に素直でいい子。それが腹立たしい。
「この後どうするの?良かったらお泊まりしていく?」
「いえ。家で頭を冷やします。そうしてから明日お兄さんと話します」
そう言って夏美ちゃんは立ち上がった。
「今日は本当にお世話になりました」
「気をつけて帰ってね」
靴を履いていない夏美ちゃんに私はサンダルを貸した。
外はもう暗い。夏美ちゃんは礼を言って帰って行った。
私はそれを見送って部屋に戻ると、思い切りベッドをたたいた。
夏美ちゃんが憎かった。幸一君に大切にされ、優しくされ、女として愛されているのが悔しかった。
殺してやりたいと思ったけど、私は抑えた。幸一君が私に従うのは、夏美ちゃんの存在があるからだ。夏美ちゃんがいなくなるとどうなるか分からない。
違う。分かっている。夏美ちゃんがいなくなると幸一君が私から離れて行きそうで怖いからだ。
一番許せない相手の存在が幸一君を従わせる事を可能とする。頭がおかしくなりそうな矛盾。
私はため息をついてベッドに転がった。
幸一君に乱暴に扱われたお尻と胸が少し痛んだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
私は気持ちを静めてアルバムを開いた。
写真の多くは私と幸一君と梓ちゃんの三人が写っている。明るく笑う私と恥ずかしそうに笑う幸一君と不機嫌そうな梓ちゃん。
あの頃の私は幸一君と梓ちゃんが可愛くて仕方がなかった。それは今でも変わらない。何も知らない人には姉と弟と妹と間違えられるぐらいだった。
腕白だけど女の子に対しては恥ずかしがりやな幸一君といつも不機嫌で面倒くさがり屋な梓ちゃんの世話を焼くのが私の楽しみだった。
次のページを開いた。中学校に入学したばかりの私と幸一君の写真。二人とも購入したばかりの制服を着ている。私が幸一君の腕に抱きついていて、幸一君は居心地悪そうに笑っている。
105 三つの鎖 14 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2010/01/29(金) 23:22:50 ID:sooJAhF2
このころの幸一君は今と違っておバカさんだった。部活バカで試験はいつも赤点。お勉強を助けてあげた回数は数え切れない。そして今よりはるかに単純だった。
そしてお調子者だった。女の子に対して恥ずかしがりやなのは今と変わらないけど、今とは別人のようにはしゃぐ男の子だった。写真を見ても底抜けに明るい笑顔が多い。
懐かしい。中学に入ってすぐだったと思う。幸一君が私に告白したのは。私は断った。
あの時の幸一君は年頃の男の子だった。恋に恋する年頃。周りにはやし立てられて彼女がほしいと思い、いちばん身近な私に告白しただけ。
本当に私の事を一人の女の子として好きならいいと言った私に、幸一君はすぐに答えられなかった。私は幸一君にめっと怒った。最低だよという私に幸一君は落ち込んでごめんなさいと言った。私は笑って許した。
あの時、断らなかったら今はどうなっていたのだろう。
次のページを開いた。幸一君と梓ちゃんの仲が悪くなってから、幸一君は変わった。いつも少し悲しそうに微笑んでいる。写真を見ても別人にしか見えない。
梓ちゃんの件からだ。幸一君と梓ちゃんと私の間に距離ができたのは。
幸一君は梓ちゃんの事しか考えなくなった。私が傍にいても、話しかけても、抱きついても、頭の中には梓ちゃんの存在があった。私が料理や家事を教えている時も、幸一君は梓ちゃんの事を考えていた。
梓ちゃんは幸一君を傍に置いて嬉しそうだった。私がかまっても昔以上にうっとうしがるだけだった。
あの頃は二重の意味で寂しかった。
すぐそばにいても幸一君も梓ちゃんも私を見ていなかった。成長して私を必要としなくなっていく幸一君をすぐそばで見続けた。
いっぺんに弟と妹が独り立ちした気分だった。
幸一君は優しくて思いやりのある落ち着いた男の子に成長した。でも、その優しさと思いやりを一番向けていたのは梓ちゃんだった。
私は昔の関係に戻りたかった。ちょっと手のかかる情けない弟と、不機嫌で面倒くさがりやな妹の世話を焼く昔に。
何度か幸一君に女の子を紹介した。幸一君に彼女ができたら少しは梓ちゃんから離れると思ったから。でも幸一君は梓ちゃんの事しか考えていなかった。幸一君に彼女を作る意思は無かったし、他の女の子に好意を持つこともなかった。
夏美ちゃんを手伝ったのも深い理由はない。私たちの関係に変化を期待してのことだった。
あの日、幸一君の家にみんなで泊まった日。私は自分の事を分かっていない事に気がついた。
幸一君が夏美ちゃんに好意を持っている事を理解した時、感じたのは弟に好きな人ができた喜びではなく、嫉妬だった。女としてなのか、姉としてなのかは今でも分からない。
自分でも信じられない暗くて醜い感情。幸一君に対する独占欲。
夏美ちゃんが寝ている隣で私は悩んだ。自分自身の醜い独占欲が怖かった。
私は幸一君と話そうと部屋を出た。リビングでぼんやりとしている幸一君を見て私は泣きそうになった。幸一君の表情は恋をした男の子のそれだった。そして恋の対象は私ではない。
もし幸一君が梓ちゃんから離れても、次は夏美ちゃんの事を考えるだけ。
私は声をかける事も出来ずにリビングを出て家を出た。自分の部屋で泣くつもりだった。
自分の部屋に戻って私はベッドにあおむけになった。その時、中古で購入した高性能ビデオカメラと戯れに購入した手錠が目に入った。
私の脳裏に思いついた考えは最低の発想だった。
このビデオで幸一君を脅迫できる映像をとれば全てがうまくいく。
幸一君を苦しめるだけという良心の声はすぐに消えた。指をくわえて幸一君が手の届かない場所に行くのはもう我慢できなかった。
私はビデオカメラを持って幸一君の家に戻りリビングを確認した。幸一君はまだぼんやりとしていた。私は幸一君の家のお風呂場の窓に外から目立たないようにビデオカメラを設置した。風呂場の様子が見えるのを確認し、録画スイッチを押した。
もし幸一君がお風呂に入らなかったらどうしようとハラハラしたけど、幸一君は思惑通りお風呂に入った。
私はお風呂場に入り幸一君を誘惑した。でも幸一君は乗らなかった。
どこかで分かっていたのだと思う。幸一君はそんな男の子じゃないって。そうじゃないと手錠を家から持ってくる理由がない。購入した時はこんな形で使うとは夢にも思わなかった。
私は幸一君を拘束して無理やり犯した。
初めてのセックスだったけど、痛いのは最初だけだった。幸一君とつながっていると思うと身も心も蕩けそうだった。
幸一君が私の体に反応してくれたのが何よりもうれしかった。幸一君は少なくとも私の事を女として見ているのだから。幸一君の悲しそうな表情も可愛かった。
106 三つの鎖 14 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2010/01/29(金) 23:25:59 ID:sooJAhF2
もちろん残念だったこともある。幸一君が自分から私を抱いてくれなかったのは少し悲しかった。魅力がないのかと思った。
そして撮影した映像もいまいちだった。どう見ても私が無理やりしているようにしか見えない。
最初は私と幸一君の情事を夏美ちゃんに見せてあきらめさせるつもりだったけど、この映像では無理だ。それに幸一君を脅す材料にもならない。
私は考えた。幸一君自身だけに害が及ぶ映像では幸一君を脅す材料にはなりえない。幸一君が脅しに屈するとすれば、幸一君以外の人に害が及ぶ場合。
それにはどうすればいいのか。私には分からなかったけど、とりあえず夏美ちゃんの家にビデオカメラを仕込もうと考えた。考えるのも嫌だけど、将来二人が男と女の関係になった時に脅す映像が撮れるかもしれない。
早速その日から行動した。しかし作業は思った以上に大変だった。
幸一君の家に泊まった次の日に私は夏美ちゃんの家を訪ねた。夏美ちゃんは不在だった。私は躊躇無く鍵をピッキングで開けて侵入した。
もし夏美ちゃんが来たら遊びに来たけど鍵が開いていたと言うつもりだった。しかし、なぜか夏美ちゃんは寝るとき以外は家にいないようで鉢合わせすることはなかった。
ビデオカメラを仕掛けるいい場所はあったけど、問題はビデオカメラの制御だった。まさか録画ボタンを押しっぱなしにして放置するわけにはいかない。
私はその問題をノートパソコンに接続することで解決した。ビデオカメラはパソコンに接続して制御したりデータのやり取りを行うことができるタイプだったのは幸いだった。ノートパソコンを置く空間もあった。
夏美ちゃんの家のパソコンが無線LANなのも助かった。ビデオカメラで取り込んだ画像をノートパソコンに取り込み無線LANでネットにつなぎ家に送るように設定した。
この家のパソコンのセキュリティは無いに等しかったけど、一応夏美ちゃんのパソコンに細工して勝手に無線LANを使用しているのがばれないようにした。
もちろん鮮明な映像をリアルタイムで送るのはノートパソコンの性能的にもネット環境的にも無理だから通常は荒い画像を一定時間ごとに送るようにし設定した。
必要があれば家のパソコンからの制御で鮮明な映像をいったん撮影してから送信できるようにした。
一番不安だったのは電源コードとノートパソコンの騒音だった。もちろん電源コード自体は目立たないように設置した。ノートパソコンの騒音も静かなものを選んだけど、いつばれてもおかしくない。こればかりは仕方がなかった。
ついでに盗聴器を仕込んだ。これは小型だからばれる心配は少ないし、無線LANでリアルタイムに音声を聞く事が出来た。
作業が終わった時、私が感じたのは激しい自己嫌悪と徒労だった。私は何をしているんだろうと思った。達成感など微塵もなかった。いつ役に立つのかもわからないし、役に立つという事は幸一君が夏美ちゃんの部屋に行く時。
幸一君も夏美ちゃんも奥手だ。その二人が夏美ちゃんの部屋でエッチするなどいつの話になるか分からない。
要するに私は冷静でなかった。幸一君とエッチした事と、私自身の考えに興奮して冷静な行動ができなかった。冷静になればなるほど危険な橋を渡っているのを思い知った。
まだ幸一君と夏美ちゃんが付き合うわけじゃないし、私にだってチャンスはある。
そう考え、私は今後の展開を考えた。あの奥手な幸一君と恥ずかしがりやな夏美ちゃんが男女の仲になるには時間がかかるはず。梓ちゃんは徐々に仲が深まる二人に我慢できるだろうか。
できない。私もそうだった。きっと何かのトラブルを起こすはず。そうなれば幸一君と夏美ちゃんの仲は今まで通りにはいかなくなるだろう。今、無理に二人の仲を引き裂く必要は無い。
私はそう考えた。だったら幸一君と夏美ちゃんが徐々に仲が良くなるように仕向ければいい。
幸一君と夏美ちゃんを屋上に呼び出して私が行かなかったのもこの発想に基づく行動だ。あの二人は自分から会いに行く事はないだろうから、会うように仕向ける必要がある。
これを繰り返していけば二人の仲は徐々に深まるはず。そして梓ちゃんはそれに耐えられなくなる日がいずれ来る。
夏美ちゃんに花を持たせるのはしゃくだけど、今だけ幸一君を貸してあげる。後で返してもらうけど。
だけど事態は急展開した。梓ちゃんとの帰り道に公園で幸一君と夏美ちゃんがキスしているのを目撃してしまったのだ。
その時の衝撃は忘れない。私の幸一君が、夏美ちゃんに恥ずかしそうに、そして嬉しそうに口づけしている姿。
その後は私が望んだ事とはいえ、背筋の寒くなる光景だった。梓ちゃんがあそこまで取り乱すとは思わなかった。あそこまで直接的な行動に出る事も。
107 三つの鎖 14 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2010/01/29(金) 23:30:00 ID:sooJAhF2
走り去る梓ちゃんと立ち尽くす幸一君。私は梓ちゃんを追った。まさか夏美ちゃんに追わせるわけにはいかない。梓ちゃんは問答無用で夏美ちゃんを投げ飛ばすだろう。私が追うのが適任だった。
私はあの時の行動を心底後悔している。あの時、何が何でも幸一君の傍にいるべきだった。
あの後、梓ちゃんは部屋に引きこもって出てこなかった。とりあえず加原の家の家事は私が行った。何もしないとご両親に怪しまれる。ついでに盗聴器を仕込んだ。
いったん家に戻って幸一君にメールを送った。今日は帰ってこない方がいい。耕平君の家にでも泊まるようにと。梓ちゃんは冷静でなかったし、会わせると昔の二の舞になる予感がした。
京子さんが帰宅してから私は事情をかいつまんで話した。京子さんは話の分かる人だ。私に任せてほしいという頼みを二つ返事で承諾してくれた。
私はふと夏美ちゃんが何をしているのか気になった。まさか幸一君を家に連れ込むとは思えないし、幸一君も女の子の家に泊まるような男の子じゃないと思っていた。
それでも正体のわからない不安を感じた私は夏美ちゃんの家の映像を見た。
ディスプレイに映っているのは抱き合う二人の姿だった。荒い画像でも誰かは分かった。
私は頭が真っ白になった。幸一君が夏美ちゃんをベッドに押し倒した姿を見て気が狂うかと思った。
それでも頭は冷静だった。この映像をとればこれ以上ない脅しの材料を手に入れる事が出来る。そうすれば幸一君を想いのままに操る事が出来る。
私は高精度の映像を撮影するように設定した。高精度の映像を撮影している間、画像は届かない。私は盗聴器で幸一君が夏美ちゃんを抱いているのをリアルタイムで聞いた。
幸一君は夏美ちゃんに優しかった。私は泣いた。涙が止まらなかった。幸一君と夏美ちゃんの情事を聞きながら、自分を慰めた。
時間を見計らって私はデータを送信させた。思ったより時間がかかった。
私は映像を確認した。鮮明な映像。幸一君と夏美ちゃんがベッドの上で裸で絡み合う。これ以上ない脅しの材料。
みじめだった。私は幸一君のそばにずっといたのに、幸一君が選んだのは夏美ちゃん。
私は幸一君を梓ちゃんに取られ、次は夏美ちゃんに奪われた。
次の日に梓ちゃんにご飯を持っていた時に二人で話した。
好きな兄を従わせるために罪悪感という幻の鎖で幸一君を縛る梓ちゃん。
好きな弟を従わせるために幸一君と夏美ちゃんの情事を撮影し脅そうとしている私。
私と梓ちゃんは間違いなく姉妹だと思い知った。例え血のつながりがなくても。幸一君を傷つける方法でしか従わせる事が出来ない愚かで哀れな姉妹。
そして梓ちゃんは未来の私の姿だった。幸一君を縛り付ける鎖は、その鎖が何であれいつか必ず解かれる。それでも縛り付けずにはいられない。
梓ちゃんがあれだけ幸一君を傷つけても私は梓ちゃんが好きだ。愛おしい妹。私と同じだから。それは私が入院させられても、幸一君を入院させても変わらない。
幸一君と梓ちゃんの関係はとりあえず決着がついた。とりあえずと言うのは、梓ちゃんが我慢できるはずがないからだ。私が我慢できないのと同じ。
それは今日の出来事で証明された。
私は幸一君を脅してこの家のベッドで体を重ねた。そしてその様子を録画した。幸一君を脅す材料をさらに手に入れた。
それ以来、私は幸一君と何度も寝た。二人きりになるたびに幸一君は私を説得しようとした。それでも私は止めなかった。あの映像を持ち出すと、幸一君は従うしかなかった。
ベッドの上で幸一君は私を荒々しく抱いた。夏美ちゃんを優しく抱くのとは違って獣のようだった。
今日のお昼休みの事を思い出すと、それだけで体が震える。本当にレイプされているみたいで、思い出すだけで恐怖がこみあげてくる。
幸一君は精神的に思いつめているのかもしれない。もともと男女関係に対して真面目な幸一君が、夏美ちゃん以外の女の子と体を重ねるのは苦痛でしかないのだろう。それを強要する私に思い切り負の感情をぶつけたのかもしれない。
私はため息をついてアルバムをめくった。高校生の私と幸一君が写っている。幸一君の腕に抱きつく私に恥ずかしそうに微笑む幸一君。
写真に写る幸一君はもういない。今の幸一君は私の裸を見ても顔色一つ変えない。それどころか軽蔑の眼差しを向ける。
滴がアルバムに落ちる。拭っても拭っても涙はあふれる。
外で犬が吠える声が聞こえた。私は涙をふいて玄関に下りた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ドアを開けると幸一君がいた。シロの頭を優しく撫でている。シロは気持ちよさそうにしている。
羨ましいな。私も幸一君に優しく頭を撫でてほしい。
幸一君が私を見た。複雑な表情。
108 三つの鎖 14 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2010/01/29(金) 23:32:16 ID:sooJAhF2
「シロを貸してくれてありがとう」
シロが気にするなというようにワンとないた。
「いいよ。夏美ちゃんには会えた?」
幸一君は首を振った。
「メールが来た。落ち着いてから明日に会いたいって」
そうなんだ。
幸一君は汗だくだった。
「上がって。飲み物とタオルを持ってくるから」
「いいよ」
「いいから」
私は渋る幸一君の手をつかみ強引に家に連れ込んだ。お尻の痛みに足元がふらつく。こけそうになったのを幸一君は支えてくれた。私の部屋に行くように告げ、飲み物とタオルを持って部屋に入った。
幸一君は部屋でぼんやりと立っていた。
私は幸一君にタオルを渡した。汗を拭き終わると、冷たいお茶を幸一君に渡した。
「ありがとう」
幸一君はぶっきらぼうに言って立ったままお茶を一気に飲んだ。
「あの、幸一君」
私は幸一君に声をかけた。幸一君は荒んだ目を私に向ける。その瞳に体がすくむ。
「その、ベッドに座ってくれないかな」
心底嫌そうな顔をする幸一君。胸が痛む。
「お願い」
幸一君はベッドに座った。私はその隣にちょこんと座った。
私は幸一君にもたれかかった。幸一君の太ももの上に頭を載せる。俗に言う膝枕。
「春子?」
上から怪訝そうな幸一君の声。幸一君の太ももは温かい。
「あのね、そのね」
駄目だ。恥ずかしすぎる。だけど言わなくちゃ。
「その、お、お姉ちゃんのね、あ、あ、頭を撫でてほしい」
幸一君が戸惑っている気配が伝わる。
しばらくして幸一君は私の頭を撫でてくれた。優しい動きだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
訳が分からなかった。
春子が自分の部屋に僕を呼ぶ時は何時もエッチのときだけだ。それなのに今僕は春子に膝枕をして頭を撫でている。
この変化は吉か凶か。
春子の髪はサラサラしている。
そういえば何時から春子は髪を伸ばすようになったんだろう。活動的な春子は、動きやすい格好や髪形を好んだ。昔は今ほど長くなかったのに、気がつけば伸ばすようになった。
春子は何も言わない。
「春子。一体どうした」
びくっと震える春子。この姿勢だと春子の顔が見えない。
「えっとね、そのね」
それでも春子が恥ずかしがっているのは容易に分かる。春子が恥ずかしがるのは珍しい。春子の頭を撫でる僕の手に春子の温かい体温が伝わる。
「その、お姉ちゃんの事変に思わない?」
「思わないよ」
今さら何を言っているのだろう。僕を脅して何度も体を重ねたのに。
「笑わないでね」
そう言って春子は黙った。僕はせかさなかった。
しばらくして春子は口を開いた。
「さっき幸一君がシロの頭を撫でていたでしょ」
確かにそうだ。それがなんだと言うのか。
「そのね、お姉ちゃんね、シロが羨ましかったの」
春子の頭を撫でる手を僕は思わず止めてしまった。背中を曲げて春子の顔を覗き込むと、春子は真っ赤な顔で恥ずかしがっていた。
不覚にも可愛いと思ってしまった。春子がいつも僕を恥ずかしがらせようとする気持ちが初めて分かってしまった。
「春子の馬鹿」
僕はそう言って笑った。春子と一緒にいて笑ったのは久しぶりだった。
本当に久しぶりに感じる。泣きたくなるほど懐かしい。
「え!?だ、だれが馬鹿だよ!?」
春子はぷりぷり怒った。
「春子が」
「もー!お姉ちゃんを馬鹿にしないの」
109 三つの鎖 14 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2010/01/29(金) 23:34:16 ID:sooJAhF2
そう言って春子は体を起こし僕を胸に抱きしめた。大きくて柔らかい春子の胸が顔に当たる。
「ふふーん。お姉ちゃんの胸の中はどう?恥ずかしいでしょ」
僕はため息をついた。
「今さら何を言っているんだ」
何度も体を重ねたのに。今さらこれぐらい何とも思わない。
「むー。幸一君が生意気だよ」
春子は僕の胸に顔をうめ頬ずりしてきた。
「あのね、そのね」
頬ずりする春子。僕の顔をちらちら見る。
「頭を撫でてほしいのか?」
僕の言葉に春子は恥ずかしそうにうなずいた。僕は春子の頭をそっと撫でた。
春子は嬉しそうに頬ずりする。そこまで嬉しそうだと僕も恥ずかしい。
「春子」
僕の呼び声に春子は顔をあげて上目使いに僕を見た。
恥ずかしそうな表情に頬が熱くなる。
「その、えっと、お尻は、大丈夫?」
春子はびくっと震えて僕の胸に顔をうずめた。
僕の背中に春子の腕がまわされる。
春子は何も言わずに震えた。
「うっく、ひっくっ、ぐすっ」
春子は震えながら嗚咽を漏らした。
僕は春子の背中と後頭部に手を添えてそっと抱きしめた。
「ごめん」
罪悪感を感じてしまった。
春子の背中と頭を撫でながら不思議に思った。春子の背中は何時からこんなに小さくなったんだろう。春子の肩は何時からこんなに華奢になったんだろう。
「お、お姉ちゃんねっ、分かっているよ。ぐすっ、お姉ちゃんが悪いってっ。ひっくっ。で、でもね、怖かったよっ」
春子は顔を上げた。涙でぬれた春子の表情。
その悲しそうな表情に胸が痛む。
「い、痛くてねっ、怖かったんだよっ。お姉ちゃんが止めてってお願いしても、幸一君、ケダモノみたいにお姉ちゃんにひどい事して、本当に怖かったんだよっ」
春子目尻から涙がぽろぽろ落ちる。
僕は春子を抱きしめた。
「本当にごめん」
春子は泣きながら僕にしがみついた。僕は震える春子の背中と後頭部をゆっくりと撫で続けた。
自分でも自分の気持ちが分からない。春子には本当に感謝している。それと同じぐらい憎しみと怒りを感じている。
でも、今のこの瞬間は、春子には申し訳なさと哀れみしか感じない。
「春子。ごめん。もう泣かないで」
僕の言葉に春子は鼻をぐすぐすしながら顔を上げた。
春子がびっくりするぐらい頼りなくて幼く見えた。
何も言わずに春子は僕の胸に顔をうずめた。震える春子を僕は抱きしめた。
どれぐらい時間が過ぎただろう。春子は泣きやんで顔を上げた。恥ずかしそうに僕の胸に顔をうずめる。
そのまま甘えように頬ずりしてくる。
「幸一君。そのね、あの、えっと」
もじもじしながら春子は上目使いに僕を見た。
春子はすぐに恥ずかしそうに視線を逸らす。
「お、お姉ちゃんをね、も、もうちょっとだけ、だ、抱きしめて」
僕はそっと春子を抱きしめた。背中と後頭部に手をまわし、ゆっくりと撫でる。
恥ずかしそうに僕の胸に顔を埋める春子。
気恥ずかしくて静かな時間が流れる。
今なら春子も分かってくれるかもしれない。
「春子。お願いがある」
春子はびくっと震えた。
「もうやめよう」
春子は頭を振った。まるで子供がいやいやと駄々をこねるような幼い仕草。
「お願い。昔の僕たちの関係に戻ろう」
「やっ!絶対にやっ!」
僕を見上げる春子。涙がぽろぽろ頬を伝う。
こんなに頼りない姿の春子は初めて見た。僕の中で春子はお姉さんだった。いつも年上ぶって世話を焼いてくれる頼もしい人。
それなのに今の春子は幼い子供みたいだ。
春子は両手で僕の頬を挟み、顔を近づけてきた。僕は拒めなかった。唇に柔らかい感触。春子は拙い動きで僕に口づけをする。
「……んっ……ちゅっ……あふっ……んっ……」
110 三つの鎖 14 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2010/01/29(金) 23:35:48 ID:sooJAhF2
拙い動きだけど一生懸命な口づけ。春子は唇を離し僕の顔を見た。泣きそうな顔だった。
「お姉ちゃんを抱いてっ」
「ねえ春子」
「いやっ!幸一君はお姉ちゃんの言う事を聞けばいいのっ!」
そう言って春子は僕をベッドに押し倒した。僕に覆いかぶさり何度もキスしてくる。拙いキス。滴る涙が僕の頬に落ちる。
そんな春子が哀れで可哀そうだった。
僕は春子と体を入れ替えた。押し倒された形の春子を見下ろす。そして春子にそっとキスした。
春子の服の上からそっと胸をもむ。くすぐったそうに身じろぎする春子の耳を優しく甘噛みする。
「ひゃうっ!?」
春子は驚いたように体を震わせた。
僕は春子の服を一枚一枚脱がした。春子の白い肌が徐々に露わになる。
一糸まとわぬ春子。恥ずかしそうに顔をそむけるあごに手を添え僕の方を向かせる。そしてキスした。
最初はついばむようなキス。続いて春子の口に舌を入れた。びくっと震える春子を無視して、ゆっくりと春子の口腔を舐める。春子も一生懸命に舌をからませてくる。
「……ちゅっ……じゅるっ……んっ……はふっ……ちゅっ……んんっ……」
僕は唇を離した。糸が僕と春子の唇の間に垂れる。
手早く服を脱ぐ。春子が恥ずかしそうに僕から視線をそらす。僕は春子の胸をゆっくりと愛撫した。
「……ひうっ……ああっ……ひゃっ……あああっ……やあっ……」
顔を真っ赤にしてそむける春子。
「春子。こっちを向いて」
「やだよっ…恥ずかしいよっ…」
僕は春子の耳を甘噛みした。体を震わせる春子。切なそうな吐息。
耳だけでなく全身にキスし舐め吸う。春子は恥ずかしそうに体をくねらせる。
僕は春子の膝を割って足を開いた。春子の恥ずかしい場所が丸見えになる。
「きゃあっ!?やあっ!だめだよっ!」
恥ずかしそうに暴れる春子をしっかり押さえつける。春子の膣の入り口はすでに濡れていた。
「ううっ…だめぇ…見ないで…恥ずかしいよ…」
顔を真っ赤にして弱弱しくつぶやく春子。
「春子。ここは大丈夫」
今日のお昼休みのことが脳裏に浮かぶ。痛めつけるように抱いたのは僕だけど、妙に責任を感じてしまう。
「んっ、まだ痛いけど、それほどでもないよ」
恥ずかしそうに顔を背ける春子。僕は春子の足の間に顔をうずめ舐めた。
「ひあああっ!?」
体を震わす春子。僕は膣の入り口に舌を這わせた。
「やあっ…だめっ…ひっ…きゃふっ…いやっ…ひうっ…んんっ…きゃっ…」
羞恥に体を震わす春子。愛液がとどめなくあふれる。
僕は顔を上げ春子の顔を覗き込んだ。春子は恥ずかしそうに顔をそむける。その顔は真っ赤だ。
「どうした?いつもとは違う反応だけど」
僕の言葉に春子は僕をちらりと見てすぐに視線をそらした。
「だって、こんなに優しくしてくれた事、無いもん」
僕は春子の頬にキスした。そしてすでに硬くなった剛直の先端をあてがう。クチュリと水音がした。
春子は僕の顔を見て恥ずかしそうに頭を縦に振った。
僕はゆっくりと腰を押しだした。剛直が徐々に春子に入っていく。
「ひあっ…あああっ…入っているっ…ひっ…あっ、ああっ、あっ」
体を震わせる春子。春子の膣は熱くて心地よい締め付け。膣の一番奥に触れると春子はびくっと震えた。
春子は顔を赤くして恥ずかしそうにそっぽを向いた。かすかに肩で息をしている。白い胸が震える。僕は春子の頬に軽くキスした。
「んっ…動いてっ…」
蚊の鳴くような小さい声で春子は言った。僕はゆっくりと腰を振った。
「ひうっ…あっ…んっ…ふあっ…んんっ…」
恥ずかしそうに身をよじらせる春子。子宮の入り口をつつくたびに膣がキュッと締め付ける。
僕は何度も春子の膣を擦りあげた。春子の嬌声が部屋に響く。
「んっ…いいよっ…もっとっ…はげしくっ…」
春子が恥ずかしそうに言った。僕は動きを大きくした。
「ひあっ…ああっ…ひうっ…きゃふっ…」
大きくて白い胸が揺れる。僕はその胸を両手でつかみ揉んだ。結合部からいやらしい水音がする。
「ひうっ…やあっ…あっ…きゃふっ…ひっ…」
自然と腰の動きが速くなる。恥ずかしそうに乱れる春子。僕は何度も春子を責めた。
部屋に春子の喘ぎ声と腰のぶつかる音、結合部のくちゅくちゅという水音だけが響く。
春子は恥ずかしそうに顔を背けた。視線だけを僕に向けるけど、すぐに恥ずかしそうにそらす。
「んっ…ああっ…ひうっ…はあっ…んあっ」
僕の下で春子は恥ずかしそうに体をよじる。
111 三つの鎖 14 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2010/01/29(金) 23:38:08 ID:sooJAhF2
白い肌は微かに桜色に染まっている。
「ひぐっ…やあっ…やめっ…ひぎっ…きゃうっ…もうらめっ…んんんっ!」
春子の膣が締め付けた。余りの締め付けに僕も我慢できなかった。頭が真っ白になるような快感。春子の膣に精液をはきだす。
「ひっ…んっ…あうっ…でてるよっ…はあっ…んっ…」
体を震わす春子。僕は春子を抱きしめキスした。泣きそうな顔で春子は僕を見上げた。すぐに恥ずかしそうに顔をそらす。目尻から涙が流れる。
その泣き顔が夏美ちゃんとかぶる。
春子は泣きながら僕を見上げた。僕にキスする。
「んっ…おねがいだよっ…今はね…お姉ちゃんを見てっ…」
春子は四つん這いになって僕にお尻を向けた。膣の入り口からは愛液と精液が混ざり合って垂れる。
僕は硬いままの剛直を一気に押し込んだ。
「ひあっ!!」
春子は嬌声を上げる。膣の中は精液でぐちゃぐちゃでスムーズに動く。僕は春子の腰をつかみ少し速めに腰を振った。
「きゃふっ!ああっ!ひぐっ!やあっ!」
夏美ちゃんの笑顔が脳裏に浮かぶ。それを振り払うように僕は何度も腰を振った。腰と腰がぶつかる柏手のような音が響く。
「ひぎっ!やあっ!ひっ!きゃあっ!んあっ!」
子宮の奥をつつくたびに膣がキュッと締め付ける。それがたまらなく気持ちいい。春子の背中に玉のような汗が浮かぶ。僕は激しく春子を責めた。悲鳴のような嬌声を上げる春子。
僕は春子に覆いかぶさり、耳を甘噛みした。膣がキュッと締め付ける。獣のような体勢で僕は春子を犯し続けた。
「ひぐっ!すひっ!ひああっ!すひだよっ!ひぎっ!きゃふっ!」
春子は涙を流しながら体を震わせた。呂律の回らない下で僕を何度も好きだと叫ぶ。
徐々に射精感が高まる。子宮の入り口を何度もつつく。そのたびに春子は嬌声を上げて体を震わす。
もうだめだ。僕は限界まで腰を振った。抜かずに春子の一番奥に射精した。
「あああっ…あつひよっ…んんっ…ひゃひっ…」
体をよじる春子を押さえつつ僕は何度も精液をはきだした。剛直を抜くと春子の太ももに精液が垂れる。
僕と春子は絶頂の余韻に肩を震わせた。
そのままの姿勢で僕たちは荒い息を繰り返した。
「ねえ…こういちくん…おねえちゃんのこと…好き…?」
夏美ちゃんの泣いた顔が脳裏に浮かぶ。僕は何も言わなかった。
春子は体を起して僕を見た。
「今日は何で優しかったの」
シロが羨ましいと恥ずかしそうに言う春子の姿が脳裏に浮かぶ。
「春子が可哀そうだったから」
春子は寂しそうに笑った。
「やっぱりお姉ちゃんと幸一君は姉と弟だね」
そう言って春子は僕にキスした。
「二人とも馬鹿なとこはそっくりだもん」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
春子は玄関まで送ってくれた。
僕は春子を見た。寂しそうで泣きそうな表情。
不思議な気持ちだった。春子を許せないという気持ちは確かにある。それと同じぐらい哀れに感じてしまう。
「春子」
僕は春子に声をかけた。春子はびくっと震えた。
「もうやめようよ。お願いだ」
春子の目から涙がぽろぽろ落ちる。春子は耳をふさぎ首を横に振った。
「やだよっ。やだっ」
頬を伝う涙が地面に落ちる。
「もう幸一君が私を見てくれないのはやだっ。あんなに寂しい思いをするのはもうやだよっ」
春子は僕に抱きついた。僕の背中に腕をまわして精いっぱい抱きついてくる。その非力さに悲しくなった。
「お願い。もうこんな事はやめよう」
「ひっくっ、いやっ、ぐすっ、いやだよっ」
僕は春子の背中に腕をまわして抱きしめた。春子の背中はいつの間にこんなに小さくなったのだろう。それとも僕が大きくなっただけなのだろうか。
「姉さん」
春子は驚いたように顔を上げた。涙でぬれた顔。
昔、春子の事をお姉ちゃんと呼んでいた。いや、春子が呼ばせていた。恥ずかしくなってそう呼ばなくなったのは何歳の時だろう。
「姉さんはずっと僕を助けてくれた。苦しいときも、寂しいときも、嬉しいときも、いつも傍にいてくれた」
両親が家にいなくて心細いときも、勉強が分からない時も、梓の事で悩んでいる時も春子は助けてくれた。いつも明るい笑顔を向けてくれた。
涙があふれた。何でこんな事になったのだろう。僕は春子が好きで、春子も僕が好き。その好きの意味が違うだけで、どうしてこんな事になってしまったのだろう。
「姉さんを嫌う事は出来ないよ。嫌いになってしまうなんて僕は嫌だよ」
春子は僕の目元にふれてた。白い指が僕の涙をぬぐう。
112 三つの鎖 14 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2010/01/29(金) 23:42:50 ID:sooJAhF2
「幸一君はおバカさんだよ。お姉ちゃんね、幸一君に嫌われたと思ったのに」
泣きながら春子は僕の涙を拭く。
「どうしてこんなお人よしに育っちゃったのかな。お姉ちゃん分からないよ」
僕は笑った。
「ずっと姉さんを見て育ったから」
優しい春子がずっとそばにいてくれたから僕はそう育った。そういう男になった。
春子の言うとおり僕がお人よしの馬鹿ならば、それは春子も同じ。
「姉さん。僕たちは血がつながっていなくても姉と弟だよ」
春子は涙を流しながら僕を見上げた。悲哀に満ちた瞳が僕を見つめる。
「ずっと姉さんを見て育った。だから分かるよ。姉さんは、本当はこんな事を平気で出来る人じゃないって。姉さんは本当は優しい人だって」
春子は顔をくしゃくしゃにして涙を流す。
僕の胸に顔をうずめて春子は声をあげて泣いた。
「ごめんねっ、こんなお姉ちゃんでごめんねっ、お姉ちゃんねっ、それでもだめなのっ」
春子は顔を上げ僕にキスした。ふれ合うだけの悲しいキス。
「幸一君のそばにいたいのっ、幸一君が他の女の子のものになるのがいやなのっ、幸一君を私だけのものにしたいのっ」
泣き叫びながら春子は僕にしがみついた。僕はその腕を振り払う事は出来なかった。
この後、僕は涙を流す春子が落ち着くまで傍にいた。
家に入った時、もうみんな寝ている時間だった。
僕は梓の部屋の前で立ち尽くした。泣きながら夏美ちゃんにつかみかかる梓の姿が脳裏に浮かんで消える。
部屋に入ろうとしてやめた。
夜も遅い。梓はもう寝ているだろう。話は明日にしよう。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
次の日の朝、僕は目覚ましではなく誰かに揺らされて目を覚ました。
「兄さん。おはよう」
起したのは梓だった。呆然とする僕に梓はにっこりと笑いかけた。
今日は僕が料理担当だったけど、梓は手伝ってくれた。昨日の事を感じさせない不自然なほど明るさだった。
京子さんが出勤する時、僕に声をかけた。
「梓ちゃんと仲良くね」
そう言って京子さんは笑った。意味が分からなかった。
二人で登校する時も梓は明るかった。人目もはばからずに僕の腕に抱きつく。たしなめても笑ってすますだけだった。少し早めに出たおかげで登校している人が少ないのが幸いだった。
今日は曇っていた。今にも雨が降りそうなどんより雲。
学校について僕は夏美ちゃんの教室に向かったけど、夏美ちゃんはいなかった。教室で梓と別れ屋上も行ったけどいなかった。
僕は屋上で立ち尽くし空を見上げた。曇っていて青い空は見えなかった。夏美ちゃんはどこにいるのだろうか。携帯を取り出して電話した。
『もしもし?』
電話に出た声は知らない女の人だった。不安に胸がざわめく。
「加原幸一と申します。失礼ですがどちら様でしょうか」
『私は夏美の母の中村洋子と申します』
夏美ちゃんのお母さん。一緒に暮らしていないはず。
「夏美さんはいらっしゃいますか?」
『夏美は昨日の夜に救急車で運ばれて今は病院にいます』
夏美ちゃんのお母さんの声は微かに震えていた。その言葉が意味をもつのに数秒かかった。
「兄さん」
突然耳元で囁かれ僕は驚いて振り返った。
そこには梓が笑って立っていた。
全く気がつかなかった。
「どうしたの?」
梓は不思議そうに僕を見上げて笑った。
本当に不思議そうに僕を見上げて笑っていた。
遠くで雷が鳴った。
雨が降りそうだった。
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最終更新:2010年02月07日 20:17