42 名前:【SS】ぷちぷちぷちぷち 1/2[sage] 投稿日:2011/08/08(月) 15:47:58.45 ID:hfFBCW9i0 [4/7]
ぷち
「桐乃」
ぷち
「おい桐乃」
ぷち
「お~い桐乃」
ぷち
「桐乃!」
ぷち!
「あーもう、うるさいな!
 なんか用なの?」
俺の呼びかけに、ようやく桐乃が反応を示す。
「『用なの?』じゃねえ!おまえこそ何しに俺の部屋に来てんだ!」
30分ほど前、突然桐乃が勉強をしている俺の部屋に押しかけ、なにやら一人で黙々と作業を始めたのだ、
「ぷちぷち」
そんなの見りゃわかる。
俺が聞きたいのは、何で俺の部屋でそんな事してるかだ。
「あんた一人で勉強してても寂しいでしょ?
 だからこうやって一緒の部屋にいてあげてるの。
 感謝しなさいよね」
「今は誰かに教わってるわけじゃねえし、勉強ってのは一人でやるもんだろ?
 大体、なんでよりによってぷちぷちなんだよ」
「ゲームとかしてたらあんたの邪魔になっちゃうじゃん。
 あたしと遊んだせいで受験に失敗したなんて言いがかり付けられたくないし」
言いがかり付けられたくない、か。
言い方はきついけどよ、多分こいつなりに俺のことを心配してるんだろうな。
まあ今は結構余裕があるし、元々いきなりおまえに相談を持ち込まれても平気なように余裕を持って勉強してるんだけどな。
「勉強を邪魔しないっていう心掛けはいいんだけどよ、なんでぷちぷちなんだ」
「今日は八月八日でしょ。
 88はエアパッキンみたいに見えるからぷちぷちの日なんだって。
 さっきamaz○nから新作エロゲが届いたんだけど、その中に入っててちょうど良かったから潰して遊んでるの」
「ぷちぷちを潰して遊ぶ、ねえ。
 それって限りなく無駄な遊びの一つだよな」
「無駄って言うな。これはこれで楽しいんだから」
「そうかよ。でもな、勉強している後ろでそれを潰すのは止めてくれ。
 気になって集中できねえだろうが」
そもそも桐乃が部屋にいる時点で、桐乃の匂いとか、吐息とか、仕草なんかが気になっちまって集中できないんだがな。
「なに?せっかくあたしがあんたの部屋なんかに来てあげてるのに、あたしと一緒にいるのがイヤって言うの?」
「そうは言ってねえよ。一緒に遊びたいって言うなら、好きなだけ付き合ってやらあ。
 でもな、勉強の邪魔しないために部屋で黙々とぷちぷち潰してるっていうのに、そのせいで邪魔になってたら本末転倒だろうが。
 エロゲが届いたんだろ?暇なら自分の部屋でそれで遊んでたらどうだ」
「ちっ。はいはい分かりました!」
桐乃は舌打ちすると立ち上がり、手に持ったぷちぷちを俺の顔に向けて叩きつけてきた。
「ぶはっ」
痛くはないが驚いた。
顔に乗っかったぷちぷちを取り除くと、桐乃が部屋から出るところだった。
「おい、桐乃?」
「ふん!あんた、あたしがいないほうが良いんでしょ?
 だからあたしは部屋に帰ってあげる。
 あんたは勉強でも何でもしながらそのぷちぷちでも潰してれば?」
桐乃はバタンと思い切り扉を閉めた。
まったく、なんなんだよ、一体。
最初から最後まで訳がわからなかった。
「ぷちぷちでも潰してろ、ねえ?」
桐乃に投げつけられたぷちぷちを手にとってみる。
あいつのことだから几帳面に端っこから潰してるのかと思いきや、そういうわけでもなく、結構隙間が開いてるな。
「ちっ、丸めて一気にぶちぶち潰してやろうか」
そんなことも考えてもみるが、せっかく桐乃から貰ったもんだし、暇なときに一つ一つ潰すか。

43 名前:【SS】ぷちぷちぷちぷち 2/2[sage] 投稿日:2011/08/08(月) 15:48:33.00 ID:hfFBCW9i0 [5/7]
「なんか横に長いよな」
丸められたぷちぷちを広げてみる。
横幅は一メートルくらいはあるな。
「あ」
広げてみて、気が付いた。
この潰されたぷちぷちの配置、これは・・・・・・


イ・ツ・モ・ア・リ・ガ・|


『いつもありがとう』

そう書きたかったんだろう。
でも俺が部屋から追い出してしまったせいで完成しなかった。
「まったく、不器用だな、あいつは」
これだけ書くのに時間がかかりすぎだ。それに、こんなの、声に出せばすぐじゃねえか。
俺はぷちぷちを手に取ると、部屋を出て桐乃の部屋のドアの前に立った。
「桐乃、ちょっといいか?」
声をかけてみる。
「うるさい。
 あたしは今からエロゲするんだから入ってくんな」
桐乃はご機嫌斜めだ。
仕方がない。
言いたくはないが、この扉を開けさせる言葉なら知っている。
「なぁ桐乃」
「・・・・・・」
扉の向こうからの返事はない。
俺は一つ深呼吸し、

「いつもありがとう」

そう口にした。
「・・・・・・」
返事はない。
俺は顔に熱さを感じながら、ドアの前で立ち尽くしている。
「・・・・・・」
少しだけ扉が開き、隙間から桐乃がこちらを覗いてきた。
「忘れもんだぞ」
ぷちぷちを桐乃に差し出す。
「ん・・・・・・」
桐乃はそれを素直に受け取った。
ふぅ。これで仲直りだよな。
部屋に戻って勉強を続けるか、そう考えた時、桐乃が口を開いた。
「・・・・・・別にあたしと遊ぶのは構わないんだよね」
それは問題ないさ。そのためにいつも一生懸命勉強してるんだしな。
「ああ、かまわないぜ」
俺が返事をすると、桐乃は少しだけ開いていた扉を大きく開け、にこりと笑みを浮かべた。


「じゃあ今からシスカリしよ!
 あんたなんてぷっちぷちにしてあげる!」




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最終更新:2011年08月08日 21:20