196 名前:【SS】その笑顔の点数は 1/4[sage] 投稿日:2011/09/06(火) 20:42:58.20 ID:+/Jn1dmi0 [3/8]
桐乃「それで、どうして平日の忙しい時にアキバなんかに連れて来たの?」
京介「今日は『妹の日』だからサービスしろって言ったのはおまえだろうが」
桐乃「あたし、そんなこと言ったっけ?」
京介「一月前くらいから週に一度は
   『知ってる?九月六日は妹の日なんだって』
   って言ってたじゃねえか。
   あれって『妹の日にはあたしにサービスしろ』って意味だろ?」
桐乃「べ、別にそんなつもりで言ったわけじゃないし。
   まあ、でもあんたがあたしに尽くすって言うなら尽くされてあげてもいいけど」
京介「相変わらず生意気だな、おまえは」
桐乃「あんたが泣いて頼んだから、あやせと遊ぶの断ってあんたに付き合ってあげてるの。
   あたしを満足させなかったら容赦しないからね」
京介「へいへい」
桐乃「それで、どこ連れて行ってくれるの?」
京介「おまえに好きなものを一つ買ってやる」
桐乃「いいの!?
   じゃあ前から欲しかった『星くずうぃっちメルル 第一期 BD-BOX 特装版』を―」
京介「ただし、普通の高校生の小遣いで買えるレベルのな」
桐乃「ちっ。
   ・・・・・・じゃあさ、あんたが選んでよ」
京介「俺が?
   たぶんロクなの選ばないぜ」
桐乃「あまりに『なし』ならちゃんと言うから。
   じゃあ一緒に色々見て周ろうか」
京介「お、おう」


京介「『珠樹姉フィギュア』なんかどうだ?
   このボンッキュッボンのお姉さんにはなかなかソソルものが」
桐乃「あたしお姉ちゃん属性ないし。
   水着フィギュアより、もっとゴテゴテして手間がかかってるほうが好き」
京介「じゃあこの『あた兄 灰猫フィギュア』はどうだ?
   おまえ好きだろ、『あた兄』。
   白黒ツートンのヒラヒラ服のデキもかなり細かくていいんじゃねえか」
桐乃「確かに身体のデキはすごくいいんだけど・・・・・・
   顔がのっぺりしすぎじゃない?
   あと素立ちだから躍動感がないのもね。
   それに、キャラ的には仕方ないんだけど、もっと笑顔の方が好みかも」
京介「そうか・・・・・・
   『あた兄 霧乃フィギュア』は売り切れちまってるし、メルル系は大体持ってるし・・・・・・フィギュアじゃねえ方がいいか?
   ん?これなんかどうだ?」
桐乃「あ、『SISCOLOID』の『RAT式 ミクネ ハツ』じゃん。
   まだ残ってたんだ。先週きた時はもう残ってなかったのに。
   キャンセル分かな?」
京介「あざとい赤縁眼鏡に、露出は高くてもきっちりと作りこまれたあざとい衣装、ツインテールに絶対領域、ロリプニ顔といったあざと

い属性、
   可愛らしさを前面に出したあざといポーズ、そして童顔に良く似合ったあざとい赤縁眼鏡。
   結構おまえ好みじゃないか?」
桐乃「・・・・・・メガネかけてるからお勧めしてるわけじゃないよね」
京介「あたり前だろ?おまえへのプレゼントなんだからよ」
桐乃「・・・・・・わかった。それじゃあこれにしてあげる。
   あんたにしてはマシなチョイスだしね」
京介「へいへい。どうせ俺にはセンスがありませんよ」
桐乃「あと、これも追加で」
京介「ディスプレイ用のケースか。結構高いな。予算以内だからいいけどよ。
   ちゃんと大切にしろよ?」
桐乃「はいはい、あんたに貰ったっていうのが気に入らないけど、ハツちゃんに罪はないし、
   ちゃんと大切にしてあげるって」

197 名前:【SS】その笑顔の点数は 2/4[sage] 投稿日:2011/09/06(火) 20:43:24.48 ID:+/Jn1dmi0 [4/8]
桐乃「意外に時間かかっちゃったね。晩くなって怒られたらあんたのせいだから」
京介(晩くなったのはおまえがケチつけまくったからなんだがな)
京介「その点は問題ないぜ。親父にもお袋にも、今日は晩くなるって伝えてあるからよ。
   妹の日だから桐乃にサービスするって言ったら許可してくれたぜ」
桐乃「あんたにしては手際がいいね。
   ・・・・・・あんた、あたしを遅くまで連れ出してなにする気!?
   終電無くなったからとか言って、ラブホに泊まる気じゃないでしょうね!」
京介「ちげーよ!どうせ晩くなるだろうから、急いで帰るより、一緒にゆったりとディナーにしようと思ったんだよ」
桐乃「ディナーねぇ・・・・・・
   いつものメイド喫茶じゃないの?」
京介「ああ。渋谷に行くぞ」


桐乃「あんたが選んだにしてはマシなレストランだったね。
   また今度あやせ達と一緒に来ようかな」
京介(クラスの女子に土下座してオススメの場所聞いといてよかったぜ。
   それに買ったものはコインロッカーにしまっといて本当に良かった)
桐乃「まあ、あんたのことだしクラスの女の子にでも聞いたんだろうケド」
京介「やっぱバレますよねー」
桐乃「これからどうするの?
   遅くまでいられるのに、まさかもう帰るだなんて言わないでしょうね」
京介「せっかくだからどこかに寄っていかねえか?
   財布がピンチだから高いモンは買ってやれねえけど、見て周るだけならタダだろ?」
桐乃「う~ん。ちょっと見ておきたい服とかもあるし、そうしようか。
   感想言うのがあんただけってのは寂しいけど、あたしのファッションセンスを見せてあげる」


桐乃「どう?このキュロットスカートとベストの相性良くない?」
京介「いいんじゃねえか?」
桐乃「ちょっとこの色合いは地味かな?どう思う?」
京介「いいんじゃねえか?」
桐乃「やっぱりこのカーディガンはこのスカートと合わせると最高だよね。あんたもそう思うでしょ?」
京介「いいんじゃねえか?」
桐乃「あんた、他の言葉言えないの?」
京介「そんなこと言ったって、俺にはよくわからねえからな。
   けど、どれもおまえには似合ってるぜ」
桐乃「に、似合ってるのは当たり前でしょ?あたしが選んでるんだから。
   けど、どれだけ似合ってるかわからないと選びようがないじゃん」
京介「それじゃあこれからは点数で言うよ。そいつは92点な」
桐乃「~~~!
   そ、それじゃあこれは?」
京介「95点」
桐乃「これ!」
京介「89点」
桐乃「ぐぬぬ・・・・・・じゃあこれでどうだ!」
京介「む・・・・・・103点」
桐乃「え?」

198 名前:【SS】その笑顔の点数は 3/4[sage] 投稿日:2011/09/06(火) 20:43:49.71 ID:+/Jn1dmi0 [5/8]
桐乃「~♪~♪~♪」
京介(桐乃のヤツ、随分機嫌がいいな。
   まあ、あんだけ買えば機嫌も良くなるか。
   それにしても随分買い込んだな。100点以上のヤツ全部買ったんじゃねえのか?
   俺のプレゼントの何倍の値段だっつうの)
京介「そろそろ帰るか?
   ・・・・・・さすがに3時間も付き合わされて疲れてるんだが」
桐乃「もう帰るの?
   疲れたって、あたしのファッションショーを見れたんだから逆に元気になりなさいよ。
   とは言っても、これ以上遅くなるとさすがに怒られるか」
京介(ようやく楽になれる。
   ・・・・・・とは言っても、この服の山とフィギュアとケースは全部俺が持つから、本当に楽になるのはまだまだ先だがな!)
桐乃「それじゃあこれで終わりなんだよね・・・・・・」
京介「まだなんかしたいのか?」
桐乃「そういうわけじゃないけど、あっさりした終わり方だなって。
   あんたも男なら、あたしが服を選んでる時に、その服に合ったアクセサリーをひっそりと見繕っておいて、後で渡すとかした方がい

いよ。
   あんたの事だし、期待してなかったけどね」
京介「へいへい、どうせ俺は気がききませんよー。
   ・・・・・・なんてな」
桐乃「?」
京介「っと」ゴソゴソ
京介「ほらよ。『妹の日』の本命のプレゼントだ」
桐乃「え・・・・・・」
京介「なんだよ、いらないのか?」
桐乃「そうじゃなくて・・・・・・貰って、いいの?」
京介「当たり前だろ?この日のために随分前から用意してたんだからよ」
桐乃「開けていい?」
京介「いいぜ」
桐乃「わぁ・・・・・・ネックレスだ」
京介「その、どうだ?」
桐乃「すごい綺麗・・・・・・
   色々な宝石がちりばめられてて、あとこの羽の意匠が・・・・・・
   あれ?これってもしかして・・・・・・」
京介「お、気づいたか。
   それはメルルのステッキをイメージしたオーダーメイドの一品だぜ。
   それなら普通のアクセサリーとしてつけられるだろ?」
桐乃「・・・・・・なるほど、御鏡さんに作ってもらったんだ。
   さすがだね、御鏡さん。あとで観鏡さんにお礼を言わなきゃ」
京介「ぐっ。で、でもな、ネックレスのイメージとか、細かいところとか、俺がリクエストしたんだぞ!」
桐乃「はいはい、拗ねない拗ねない。
   ・・・・・・あんたの頑張りに免じて、このネックレスをつけさせてあげるからさ」クイ
京介(あごを上げて、まさか正面からつけろってことか?)
桐乃「・・・・・・」
京介(目も瞑りやがって・・・・・・
   目を瞑って顔を上げた女に正面から首に手を回すなんて、なんかキスしようとしてるように思っちまうんだが・・・・・・)ドキドキ
桐乃「・・・・・・」
京介「・・・・・・」カチッ
京介「・・・・・・これでいいか?」
桐乃「・・・うん。ちゃんとついてるね」チャラ
桐乃「ねえ、どう?
   似合ってる?」
京介「・・・・・・いいんじゃねえか?」
桐乃「・・・・・・またそれ?

   まあ、いいわ。あんたの顔見れば何点くらいかわかるからね!」

京介(認めたくねえけど、御鏡は本当にいい腕前だよな。
   あいつの作ったネックレスをつけた桐乃の笑顔に、とても点数なんかつけられねえ)

199 名前:【SS】その笑顔の点数は 4/4[sage] 投稿日:2011/09/06(火) 20:44:24.40 ID:+/Jn1dmi0 [6/8]
「桐乃、今日は満足できたか?」
帰りの電車で、隣に座る桐乃に問いかける。
今日はなかなか大変だった上に、「ありがとう」の一言も貰っていないが、果たして桐乃は満足できたのだろうか?
「・・・・・・」
桐乃から返事はなく、代わりに俺の肩に重みと温かさが伝わってきた。
「桐乃?」
そちらを見ると、桐乃が目を閉じ俺に寄りかかっている。
どうやら寝ているみたいだ。
「あんだけ尽くして、構ってやって、文句言われて、それでも頑張ったってのに、感想すら聞かせてくれねえのかよ」
プレゼント選びは文句と否定ばかりだったし、食事は『マシ』としか言われなかったし、洋服選びは俺に感想は聞きつつも、基本的に自分

で決めてるし、
一ヶ月かけて用意したペンダントは御鏡のことばっかり褒めるし、散々だったな。
まあ、俺に対して不満そうだったり、理不尽に文句を言うのはいつものことだがな。
「まったく、幸せそうな面で寝やがって」
顔を隠すように垂れた前髪をかきあげながら、そんなことを呟く。
俺には終始不満だったり、勝手に盛り上がったりと、感謝している様には見えなかったが、こんな顔で寝てるくらいだ、きっと楽しかった

のだろう。
この顔だけで全部に満足できるのかと聞かれるとNOだが、俺にはこれくらいの褒美がちょうどなんだろうさ。
「・・・・・・り・・・・・・と・・・・・・」
ん?今なんか言ったか?
もう一度言わないかと聞き耳を立ててみるが、桐乃は一行に喋る気配はない。
その代わり、俺に対してもっと身体を預けてきた。
少し退けば、そのまま俺の膝を枕にしちまいそうだ。
身体の側面から伝わる温もりが、なんとなく桐乃が俺に甘えているように錯覚させる。
「『妹の日』なんだから、俺が妹に尽くすだけじゃなくて、妹が俺に甘えてもいいのにな」
肩のほうから腕を回し、桐乃の頭を撫でてやる。
起きている時には決してさせてくれないが、寝ている時は無防備なもんだ。
「んん・・・・・・」
くすぐったいのか、桐乃が身をよじる。
それがなんとなく、身体を俺にこすり付けてくるようで心地よい。
「今日一日頑張った俺へのご褒美だ。おまえの目が覚めるまで、もう少しだけ兄貴気分を味あわせてもらうぜ」
頭を撫でたり、髪を手櫛で梳いたりするたびに桐乃が身をよじるようにして身体を俺に預け、
その胸元では俺がプレゼントしたネックレスがきらりと光った。

205 名前:【SS】その笑顔の点数は おまけ[sage] 投稿日:2011/09/06(火) 21:32:43.53 ID:+/Jn1dmi0 [7/8]
Prrrrrr

桐乃「もしもし、黒猫?
   どうかしたの?」
黒猫「・・・・・・私のことを名前で呼ぶなんて、やけに機嫌がいいわね。
   今日は『妹の日』でしょう?
   あなたが兄さんになにをしてもらったのか聞かせてくれないかしら。
   その様子だととても良い事があったみたいだけれど」
桐乃「・・・・・・秋葉原に連れて行ってもらったよ」
黒猫「それだけじゃないでしょう?」
桐乃「そうだけど・・・・・・
   あんたは妹ちゃんに何かしたの?」
黒猫「珠希に頼まれて、契約の白き獣の形代に魂を吹き込んだわ」
桐乃「たまちゃんにキュゥべぇぬいぐるみ作ったんだ。
   あたしも欲しいな」
黒猫「そもそもあなたが珠希に一番くじで当てた、あの陰獣を見せたのが原因なのだけれど。
   突然動き出して珠希を勧誘し始めたらどうしようかと心配しているわ」
桐乃「BDは持ってるけど、たまちゃんに貸したら駄目だよね」
黒猫「当たり前でしょう!
   日向ならともかく、瑞希にはまだ早すぎるわ。
   いつかは一緒に見たくはあるのだけれど。
   ところで、あなたは今なにをしているのかしら?」
桐乃「あたし?
   あたしはさっき『RAT式 ミクネ ハツ』をディスプレイケースに飾り終わったところ」
黒猫「あら、あなたスペースがなくなってきたからハツフィギュアは諦めたのではなかったかしら?
   その後レビューを見て後悔していたようだけれど。
   それにエロゲが出しにくいからディスプレイケースは買わないと・・・・・・
   ・・・・・・ああ、そういうことね?」
桐乃「な、なんのこと?」
黒猫「今日秋葉原で兄さんに買ってもらったから、大事に保管しようとしているのでしょう?」
桐乃「違うから!
   飾ってみたら思ったよりも出来がよくて、沙織にもちゃんと保管しろって言われてるし、
   だからディスプレイケースに飾ってみたの!」
黒猫「ククク・・・・・・そういうことにしておいてあげるわ。
   それにしても、フィギュアを斜め下から覗きながら、だらしなくニヤけているあなたの姿が目に浮かぶわね」
桐乃「別に、今はフィギュアを見てないし」
黒猫「あら、あなたのことだから愛しのお兄さんに買ってもらったフィギュアを一時間は愛でると思ったのだけれど。
   それでは今はなにを見ているのかしら?」
桐乃「鏡」
黒猫「鏡?あなたの姿を見ているのかしら?」
桐乃「うん。すっごく素敵な物を貰っちゃったからね。
   今度の週末に遊びに来たとき、今日あったことも含めてめいっぱい自慢してあげるから、覚悟しててよね!」

鏡の向こうで、今日の出来事を思い出したあたしが嬉しそうに、楽しそうに、幸せそうに、満足そうに笑い、
その首にかけられたネックレスも、あたしの笑顔につられるようにキラリと光った。




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最終更新:2011年09月12日 08:39