629 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/09/13(火) 15:35:13.73 ID:nqbfbYLM0 [2/5]
SS『兄妹愛~麻奈実の襲来編~』



麻奈実から告白を受けてから、俺は特に何もしてこなかった。
いや、麻奈実の事を無視してたわけじゃない。
今まで、単なる幼馴染だと思っていた麻奈実が、あんな気持ちを抱いていたなんてな・・・

それに、桐乃や黒猫とのことも決着がついたわけじゃない。
特に毎日顔を合わせている桐乃との事で頭がいっぱいで、とてもそれ以上の事は考えられねーんだよ。



そんな思いを抱えている中、突然麻奈実が家に来ることになった。
学校でもあまり話せていないってのに、どうしたってんだろうな。

「ね、きょうちゃん。わたしの言った事、考えてみてくれた?」

家に上がった麻奈実の第一声がそれだった。

『みんなが幸せになれる未来』

ちょっとひっかかる事はあったけど、意外と簡単な気がしていた。
麻奈実と付き合っていく。黒猫とヨリを戻す。あやせたんにセクハラをする。
・・・どの未来でも、意外と簡単にみんなが納得してくれるような気がしていたんだ。

でも、最近はっきりと気がついた事がある。
どんな未来を選んでも、『桐乃以外のみんな』しか幸せになれない。
だから、俺はこう答えるしかなかった。

「ああ。考えてみたけどよ、本当にみんなが幸せになれる未来なんて、あるわけねーよな」
「きょ、きょうちゃん?」
「だってそうだろ?今、俺が誰かを選んだら、必ず他の誰かが悲しい思いをするだろ?」
「で、でも、桐乃ちゃんは妹だよ?
 いつか、桐乃ちゃんだって、他に好きな人ができるかもしれないし、
 それをずっと束縛するなんて、どうかと思うよ?」
「そうだな・・・でも、それはおまえだって同じなんだぜ?」

麻奈実は『えっ?』と、不思議そうな表情を浮かべている。
まあ、それだけ俺の事を思っていてくれるのは嬉しいんだけどよ・・・

「おまえだって、仮に俺と出会う機会が無くなって、色々な経験を積んで、
 色々な人に出会えば、きっと、別の人を好きになるだろ?」
「わ、わたしは・・・ならないよ」
「そっか。おまえも黒猫と同じで、俺のことずっと好きで居てくれるんだな」
「うん」
「だけど逆に考えれば、桐乃が俺の事をずっと好きでいる可能性だって否定できないわけだよな」
「・・・」

やべ、ちょっときつく言い過ぎたか?
でも、麻奈実の物言いには、『桐乃は妹だから絶対に別れなきゃならない』というニュアンスが含まれてる。
俺はそんなのはゴメンだ。

だいたい、そもそもの話として、なんで俺が必ず女の子と付き合わなきゃならねえ?
なんで桐乃が、どこかの男と付き合わなきゃならねえ?
・・・なんかむかついてきたな。

「ねえ、京介。それに、まな・・・麻奈実さん・・・」

部屋の入り口から桐乃が覗いていた。
どうやら俺は、また周りも見えないくらいに暴走しかかっていたらしいな。

「桐乃」
「桐乃ちゃん・・・」

それにしても、今の話・・・間違いなく聞かれちまってたよな。
責任感の強いこいつのことだ。今の話を聞いて悩まなきゃいいんだが・・・

先に行動を起こしたのは麻奈実だった。

「ね、桐乃ちゃん。桐乃ちゃんからも言ってあげて。こんなの絶対おかしいよって」
「・・・・・・・・・」
「桐乃ちゃんだってわかるよね。きょうちゃんの言う事、お父さんだってお母さんだって許さないし、
 そんなの、わたしも許さないって」
「・・・・・・・・・うん」

桐乃・・・

「よかったぁ~。桐乃ちゃんまでおかしくなってたらどうしようかって、わたし、少し心配してたんだ。
 でも、桐乃ちゃんが分かっててくれたなら安心だな。もう何も怖くないよ」

怖い?・・・こいつ、桐乃の事を怖がっていたのか?
おっとりとした麻奈実の態度からはわからなかったけど・・・

「わたしって、ほんとバカだよね。桐乃ちゃんがきょうちゃんのこと好きだなんて」
「ううん。好きだよ」

たった二文字の言葉に、麻奈実が凍りついた。

「でも安心して。あたしは世間体ってものが大事だってことも知ってるし、
 法律で結婚できないなんて事、言われるまでも無く分かってるから」
「で、でも・・・」

なんかおまえにばかり喋らせちまってるな。
ここからは俺に任せてくれよ。

尚も喋り続けようとする桐乃を目で制して、俺は今の自分の気持ちを麻奈実に伝えた。

「だからな。おまえには目先の答えなんて言われちまったけどよ、
 俺たちはもうちょっと、その『目先の答え』を続けていこうと思ってるんだ」
「・・・」
「もし、本当に、俺に大事な人が出来たり、桐乃に大事な人が出来たら、
 この奇妙な関係は消滅しちまうだろうし、それが自然じゃねーかって、そう思うんだよ」
「・・・」
「それに、良く考えればおかしな話だろ?
 まだ、ただの学生に過ぎない俺たちが、生涯の伴侶をここで決めないといけないとか、
 一緒に過ごしている家族に対して、急に態度を変えるなんていうのはな」
「・・・そっか・・・わたしが、急ぎすぎてたのかなあ・・・」
「そうだろ?」

でも、わからんでもないぜ?
おまえの家、じーちゃんたちが妙な焚き付け方してくるからなー
もうちょっと・・・せめて大学を卒業して、社会人になって・・・
それくらいまでは、今のままでいようぜ?

俺はそう考えたんだ。

「うん。わかった。きょうちゃんが真剣に考えてくれて、桐乃ちゃんも真剣だってわかったから・・・
 だから、もうちょっとだけ。もうちょっとだけ待ってみるね」

ま、本当の意味で結論が出たとはいえねーが、
結論を出す時期じゃねーってのが俺たちの結論・・・になるのかな?

「すまねえな。麻奈実」
「ごめんね、まなちゃん」

懐かしい呼び名を聞いた。
昔、桐乃は麻奈実の事、慕ってたんだったよな。
それがいつの間にか、あんなに険悪になっちまって・・・・・・・・・ん?

「そういや桐乃?」
「何よ」
「そもそもおまえ、なんでこの部屋に来たんだ?」
「えっ・・・」

麻奈実が来るって事は昨日教えといたけどよ、俺たちの話を聞きたいだけなら壁越しに聞こえるわけだし・・・

「あ、思い出した!」
「・・・今まで忘れてたのかよ・・・」
「だ、だってしょうがないじゃん!あたしにとっても大事な事、話してるし、
 京介だけじゃ頼りないって思ったし・・・」

ま、まあ、俺だけで麻奈実を説得できたかってーと、確かに怪しいところがあるけどよ?

「と、とにかく、何の用だったんだ?」

話を逸らしたのは、俺がヘタレだからってわけじゃないんだからねっ!
と・・・桐乃をふと見ると、なんか怒りのオーラが・・・

「あんた・・・あたしのぱんつ!全部もっていったでしょっ!?」
「!!!?」

ぱ、ぱんつだとっ!?

「ま、待て!俺が麻奈実との対決に備えてぱんつを一枚消費したのは確かだがっ!」
「・・・ふぅん・・・」
「い、いや、確かそれだけじゃ足りなかったんだっけ?
 えーと、最後は気持ち良くなって、目の前でぱんつが10枚くらい乱舞してたっけな・・・?」
「あーキモいキモい、このシスコンマジキモーい♪」
「きょ、きょうちゃん!?」

ま、待て、麻奈実さん、そんな冷たい目で見ないでください、はい。
つか、おまえにも弟居るんだし、ぱんつの嗅ぎあいくらいやってんだろ!?
それに、それにだなっ!

「お、おまえだって、俺のぱんつ、全部持って行きやがっただろっ!」
「っ!?」
「俺が朝起きて、どんなに焦ったか・・・!」
「だ、だってしょうがないじゃん!あたしだって不安で兄ぱん1枚じゃ我慢できなかったんだもん!
 それにっ!洗濯した兄ぱんって匂いが少ないんだもん!」
「じゃあ、直接が良いってのかよ!」
「そ、そんな目で見られても、京介のリヴァイアサンくんかくんかとかしないかんね!」
「なにがシスコンキモーい!だよっ♪おまえのほうがキモいじゃねーか♪」
「き、桐乃ちゃん!?」

お、そういえば麻奈実がいたじゃねーか。

「この際だ、麻奈実にジャッジしてもらうってのはどうだ?」
「そ、そうね。ねえ、まなちゃん―――今のあたしたちのやり取り見てたでしょ?
 どっちがキモいと思う?」

「どっちも気持ち悪いとおもう・・・よ・・・ばたんきゅ~・・・」

「やった、魔王ベルフェゴールを倒したぜ!!!
 ってか倒れるときに本当にばたんきゅーとか言うやつ初めて見たぜ」
「きょ、京介っ、け、警察っ!ち、違った!霊柩車っ!」



結局なんとか麻奈実を家まで送り届けてやったんだが・・・
あの麻奈実が黒猫みてーに倒れるとはおもわなかったぜ。
やっぱ、恋愛がらみで相当にストレスが溜まってたんだろうな。
じゃなきゃ、あんな普通の兄妹のやりとりで失神なんてするわけねーよな?

ともかく、俺と桐乃はもうちょっとだけ、今まで通り普通の兄妹で居ようと思うんだ。
その方が『みんなが幸せになれる未来』のような気がしているしな。

兄妹らしく、今後の予定表には桐乃とのイベントがたくさん詰まっている。
来月のクリスマスイブには、去年みたいにデートをする事にもなってるし、
またホテルにも行こうってことにもなっていて、予約だってしている。
それに、去年はイヤリングだったプレゼントも、今年は指輪にしようかなって思ってる。

まあ、もしかするとちょっとだけ普通より仲が良い兄妹かもしれないけどよ、
こんな関係が、この先も一生続けばいいなって、そう思えるんだ。



End.




-------------

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2011年09月14日 22:34