181 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/09/16(金) 00:58:21.18 ID:cmEYAw5/0 [1/5]
SS『過ちのダークエンジェル~前日譚~』



俺の手の中には2枚のチケット。
今週の日曜に行われるメルフェス(ほしくずうぃっちメルルのイベントの事さ)のモノだ。
加奈子から、あやせ経由で送りつけられてきたチケットなんだが・・・

いや、本当は俺が頼み込んで2枚も送って貰ったんだ。
だけど、今になってこのチケットを持て余しちまってる。

だってそうだろ?
俺は彼女と別れたばっかりだし、一緒にメルフェス見に行くような友人も居るわけが無い。

赤城のヤローなんか連れて行っても、ただのキモオタ二人としか見られねー。
あやせたんなんて、オタク的な趣味自体を嫌悪してやがる。
部長はメルル好きってわけじゃねー。
御鏡のヤローと一緒に行くなんて、俺の気分が悪い。
沙織は忙しい・・・多分。
麻奈実も、こんなもんに興味あるわけねー。

そう考えていくと、必然的に一人の人間が、俺の頭の中に残る事になる。
高坂桐乃。俺の妹だ。

桐乃は妹キャラ全般が大好きで、その中でもメルルは大のお気に入りだったハズだ。
以前、メルルのコスプレ大会で、王国民に混じって奇声を上げてたくれーだ、
たぶん、誘えば狂喜乱舞してくれるんじゃねーかと思ってる。

でもよぉ?
妹をデートに誘うって、はっきり言っておかしいだろ?

俺も、チケットを貰う段までは、桐乃の事しか考えてなかったから、
これがデートにあたるんじゃないか、なんて考えても見なかったんだけどよ?
チケットを手に入れてからよくよく考えてみると、コレ、完全にデートじゃねーか!

この夏の一件で、俺はとんでもねえシスコンだって、桐乃にバレちまったし、
桐乃だって超のつくブラコンだって事がわかっちまった。
でもよ?やっぱ、兄妹って、越えちゃいけねー一線ってもんが有るとおもわねーか?

結局、この日は丸一日悩んだけど、結論は出なかった。
頭を冷やすためにも、桐乃の部屋に行くとすっか・・・



「桐乃ー?入るぞ?」

どうせ桐乃の事だ、返事をしねーことくらいわかってるから、そのまま部屋に入る。

俺の妹様は、俺が部屋に入った音も聞こえてるだろうに、
パソコンの画面にかじりついて離れようともしねえ。

・・・つか、その画面にうつってるのは、なんのエロゲだよ?
妹が触手でエロエロな事になってんじゃねーか!

「おい、桐乃」
「あ、あんた、いたの?」

そして、これだぜ?これ?
俺の兄としての威厳なんぞ、どうでもいいってか?

「つかさー?最近、毎日あたしの部屋に入ってきてない?」
「そうか?」
「そうだって!」
「仮にそうだとして、何か問題あんのかよ?」
「も、問題って・・・!」

うーん。こいつは何を気にしてやがんだ?

「だってよ?俺たち兄妹だろ?」
「そ、そうだけど!」
「だったら、お互いの部屋に行き来したって、何も問題ねーだろ?」
「そ、そう・・・かな?」

そうだって。そうに決まってる。
だいたい、昔は同じ部屋で生活してたんだぜ?俺たちはよ。

「じゃ、じゃあ、京介がここに居る事は、許可してあげるから」
「おう!それじゃ、遠慮なく、ここに居させてもらうぜ!」

桐乃は、俺に興味を失ったかの様に、パソコンに向き直る。
ま、多少仲良くなったとは言え、俺と桐乃の仲はこの程度だよな。

それにしても、桐乃の部屋は気持ちがいい。
部屋中に漂う桐乃の匂いが鼻腔を満たして、なんだかたまらない気分になってくる。

それに、桐乃を好きなだけ間近で見ていられる。
少し丸っこいけど可愛らしい顔、発達途中なのに大きく張りのある胸、美しくくびれた腰、
揉みたくなるようなお尻、健康に色づいた引き締まった太もも、足だって桐乃だったらこんなにも綺麗だ・・・

ふと気がつくと、桐乃はパソコンのゲームも殆ど進めず、こちらに向き直っていた。

「きょ、京介。な、なんであたしの事ばっか見てんのよ?」
「ん?俺はシスコンなんだろ?妹の事ばかり見てて当然じゃねーか?」
「そ、そうだけどっ!ず、ずっと舐め回すように見てるとかっ!」
「おいおい。俺とおまえは兄妹だろ?兄妹だからずっと見てたって何も問題あるわけねーだろ?」
「そ、そうなんだっけ?」

まったくよ?
さっきからおまえの言い分を聞いてると、まるで俺が変みたいじゃねーか。
兄妹だからコレくらい大丈夫だって、ちゃんと言ってんだろ?

・・・ん?兄妹だから・・・?
そうか!その手があった!

よく考えりゃあ、兄妹で一緒に出かけることをデートなんて言うわけがないんだよな!
これで、メルフェスに堂々と桐乃を誘えるじゃねーか!

「桐乃」
「な、なに?」

さっきから、桐乃、妙に落ち着きがねーな・・・
でも、俺はただ桐乃を見てただけだしな。
気にせず誘ってみるか。

「おまえ、確かメルルの事大好きだったよな?」
「あ、あったりまえじゃん!あたしを誰だと思ってるワケ?」

やっぱな。メルルって言葉にこれくらい反応するって事は、幸先よくね?

「今度の日曜、メルフェスがあんのは知ってるよな?」
「そんなの当たり前じゃん!」

おっしゃーーーー!この感触!これならっ!

「あー、でも・・・」
「でも?なんだよ?」
「あたしさ、その日、実は仕事入ってんだよね」
「マジかよ・・・」
「マジ」

モデルの仕事・・・か。
アメリカから帰ってきてからやってないなと思ってたけど、いつの間にか復帰してたのか。
真面目なこいつの事だ、今からやめるって選択肢はあるわけねーよな・・・
でも、念のために聞いておくか。

「おまえ、メルルの事あんなに好きだったじゃねーかよ」
「今でも好きだって。本当に残念だもん。
 新OPの披露とか、メルちゃんとあるちゃんのコスプレイベントとかもあるし」
「だったら・・・」
「でも、あたし、将来の事とか考え直すいい切っ掛けじゃないかって思ったんだ。
 それに、他にもいくつか理由があるんだけど・・・」
 
そうか・・・そうだよな。
こいつだって、来年には高校生。そして四年後には大学生。
将来の事を真剣に考えてるこいつにとっては、『今はまだ』なんて言葉は存在しないんだよな。

でも、それじゃせっかくのチケットが・・・

もう一つだけ・・・確認してみっか。

「なあ、桐乃?その撮影っていつまでかかるんだ?」
「予定だと・・・お昼の2時かな?」
「それじゃ、全然余裕じゃねーか!」
「で、でもっ、撮影って結構長引く事あるからさ。
 それで、イベントに間に合わないかもって焦ったりして、仕事に支障がでたらまずいでしょ。
 だから、とりあえず、行かない事にしとく。撮影が終わってから、行くかどうか決める」

でも、それじゃ、チケットが売り切れちまってるだろ?
仕事に真面目なのは良いんだけどよ、そんなに根詰めたらまた潰れちまうぜ?

俺は一枚のチケットを取り出し、桐乃に手渡した。

「な、なによ、この紙・・・って、メルフェスのチケット!?」
「そうだ。俺が取り寄せてもらった」
「だ、ダメだっていったじゃん!撮影中に気になっちゃったりしたら!」
「大丈夫だ。おまえはちゃんと仕事を優先できる人間だよ」

それは、これまでの一年間でよく分かってる。
おまえは、やらなければならない事は絶対におろそかにしたりしないって。

「だ、だけどっ!」
「それに・・・」

俺はもう一枚のチケットを取り出した。

「おまえと一緒に、メルフェスに行きたいんだよ」
「・・・なっ!?」

おっと、兄貴のセリフとしちゃ、やりすぎたかな?

「とにかく、おまえは仕事に集中すればいい。そして、終わってから、まだ時間があれば・・・」
「・・・わかった。そしたら、メルフェスに行くね」

ほっと一息をつく。
やっと納得してくれたみてーだな。
なんか、とっても嬉しい気もするけどよ、これも兄妹だからだよな?
兄妹で一緒に居られる時間が増えるから、俺は嬉しいんだよな。
それに、桐乃もさっきまでと違って嬉しそうだ。
やっぱ、メルフェスに行けるのが楽しみなんだろうな。

「で、でもさっ・・・」
「ん?」
「なんだか、恥ずかしいね。あんたに誘われて・・・出かけるなんて。
 なんか、デートみたいな気分・・・」
「そりゃ、兄妹だからこれくらいやって当然だろ?」
「そっ、そうだよねっ!」

そうだぜ、兄妹だから、これからはデートみたいな事もたくさんやっていかないとな。
デートみたいだけど、兄妹だからデートなわけがねーし、全く問題があるはずないしな!

「でも、もしかすると、もしかするとなんだけど・・・
 やっぱり長引いて行けなくなるかもしれないんだよ?」
「ああ。ちゃんと覚悟してるさ。
 それに、おまえの仕事の方が大事だってちゃんとわかってる」
「う、うん・・・」

おいおい、そんな寂しそうな顔すんなよ。
まだ行けないって決まったわけじゃねーし、それに予定なら4時間も余裕があるんだぜ?
普通に考えりゃ大丈夫に決まってんだろ?



でも、俺はそうは言わず、少しおどけた口調でこう言った。

「ま、もし、本当に長引いてしまったらな~」
「そうしたら?」
「撮影場所まで、おまえをさらいに行ってやるぜっ!」
「ぷっ・・・あーキモいー!このシスコ~ンっ♪」
「ふっ!・・・悪いか?」
「ううん・・・悪くないよ」



End.




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最終更新:2011年09月17日 11:07