204 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/09/16(金) 02:45:42.65 ID:6KDB4mXt0 [3/3]
【SS】下着のプ・レ・ゼ・ン・ト

「ねえ、あんたはあたしに下着をプレゼントしないの?」
学校が終わり家に帰ると、リビングで俺を待っていたらしい妹様から、そんな爆弾を投下された。
「ななななな、なに言ってるんだ桐乃!?」
確かに最近は少しは仲良くなってきたとは思うけどよ、
妹に日常的に下着のプレゼントを要求されるまでは仲良くなっていないはずだろ?
例えそれが普通の兄妹なら当たり前の行為だとしてもしてもさ。
「おまえ、俺にパンツ選んで欲しいの?」
わけがわからないので、率直に聞いてみる。
「そ、そんなわけないでしょ!」
桐乃が顔を真っ赤にして怒ってきた。じゃあ、どんなわけがあるんだ。
「昨日せなちーに聞いたんだけど、昨日はメンズバレンタインデーとかいって、男の人から意中の女の人に下着をプレゼントする日だった

んだって。
 せなちーは毎年お兄ちゃんに下着をプレゼントされてて、サイズの合わなくなったブラとかも記念にとってある、とか自慢されたから、
 あんたはあたしにプレゼントしてくれないのかなって思ったの」
「それは初耳なんだが・・・・・・そうか、赤城のヤツ、毎年そんなことをやってたのか」
下着をプレゼントするためだとか言って、あのおっぱいのサイズを手ずから測ったりしていたに違いない。
だが、今日の赤城はションボリしてたから、瀬菜に色々きついこと言われたんじゃないのか?
それにしても下着をプレゼントか・・・・・・
赤城には負けたくねえし、桐乃も瀬菜に負けたくないみたいだから下着を買ってやりたいが、これはかなり度胸がいるな。
悩んでいる俺を見かねたのか、桐乃が助け舟を出してきた。
「知らなかったみたいだし、一日遅れでも受け取ってあげるから、今から一緒に買いに行かない?」
「へ?」
つまり、妹に下着をプレゼントするために、妹と一緒にランジェリーショップへと買いに行く。
少し過激に感じたが、まあ、兄妹ならどうということもない、普通のイベントか。
「その方がいいとは思うけどよ、桐乃は恥ずかしくないのか?」
桐乃は恥ずかしそうに顔を赤く染め、
「は、恥ずかしいけど、あんた一人に選ばせたら、黒の総レースとか、紫の透けてるのとか、紐にしか見えないやつとか、
 ヘンなところに穴が開いてるのとか、おもちゃが内蔵されてるのとか、南京錠がついてるのとかを買ってくるでしょ?
 さすがにそういうの穿いて学校に行くと注目されちゃうし、お母さんに怒られるし・・・・・・」
「さすがにそんなの買わねえよ!」
妹にエロ下着送るとか、どんな勇者だよ。
俺がプレゼントするとしたら、某フィギュアが穿いていたような、超ローライズの縞パンだっつーの。
「わ、わかんないじゃん!『赤城が瀬菜に買ったヤツより派手なのにしないとな』とか言いかねないし!」
た、確かに・・・・・・でもな、
「学校で他の男に見られるのかも知れないのに、そんな下着は選らばねえよ」
「・・・・・・一応信じてあげる」
桐乃がジト目で俺を見る。
桐乃が信じてくれるなら、ちゃんとした下着を選んでやらないとな。
・・・・・・桐乃と一緒に下着を見に行くということは、もちろん試着したのを見せてくれるんだよな!
「ひゃっほぅ!!」
「なに奇声上げてるのか知らないけどさ、試着してもあんたには見せないからね」
桐乃が冷ややかに言う。
「なに!?それじゃあおまえに似合うのが選べないじゃねえか!」
「し、仕方ないじゃん!
 あんたに下着姿見せるのなんか死ぬほど恥ずかしいし、それに試着姿なんか見せたら、
 『買わなくていいからちょっとこれ着てみてくれないか』とか言ってキワドイの持ってくるかもしれないし、
 しばらくしたら試着室の中に入ってきたりして、『着せる感触も確かめないとな』とか言って好きな下着を着せてきたり、
 『もちろん、脱がせる感触も大切だよな』ってあたしを脱がしたりするかもしれないじゃん!
 あんたにそんなことされちゃったら、試着する下着が汚れちゃって、全部買わなくちゃいけなくなるでしょ!」
「それこそしねえよ!おまえはエロゲのやりすぎだ!」
俺を見くびるな!
狭い試着室の中で下着姿の桐乃と二人きりになったら、あまりの衝撃に気絶する自信があるね!
「とにかく、試着はしてもあんたには見せないから。
 その、妄想だけは許してあげるから、それで決めて」
桐乃がモジモジとしながら言う。
よし、妄想がOKなら問題ない。
桐乃に最高に似合う下着を選んでやるぜ!


「女物の下着って、意外と高いんだな・・・・・・」
俺は桐乃へのプレゼントとなる、下着の入った袋を持ちながら呟いた。
結構多めに持っていったのだが、三セット分の下着しか買えなかった。
「あんたのパンツなんて、三着千円だもんね」
桐乃が機嫌良さそうに笑う。
まあ、俺にこんだけ金を使わせればそりゃ機嫌も良くなるだろう。
とは言っても、俺も機嫌がいいんだけどよ。
確かに桐乃は基本的に試着した姿を見せてくれなかったので妄想して悶えていたが、
二着だけ、薄手だが透けていないピンクのスリップと、メイド風の白黒フリルたっぷりの夜着だけは見せてもらえたのだ。
それでどうなったかって?
無言で携帯を取り出したら、さっと仕切りの向こうに隠れちまったよ。
一回目は許してくれたみたいなんだが、二回目はそうもいかなかったみたいで、それ以降見せてくれなくなっちまったけどな。
「せっかく桐乃にプレゼントするってのに、それを着てるところを見れないのは残念だな」
結局、あのメイドっぽいのも『家じゃ着れないし』と言って買わなかったしな。似合ってたのに。
「着てるところは見れるじゃん。上に他の服も羽織ってるけど。
 それとも、妹の下着姿が見たいの?」
頬を赤く染めながら、上目遣いで聞いてくる。
おい桐乃、卑怯だぞ。見たくてもその問いにYESとは答えられないだろうが。
「見たいがYESと答えたら叩かれたりからかわれたりするんだろ?
 確かに桐乃の下着姿は見たいけどよ、おまえを不機嫌にするようなこと言えねえよ」
「・・・・・・盛大に本音がこぼれてたけど、聞き逃してあげるね」
あれ?今本音こぼれてた?
「そうそう、メンズバレンタインにはお返しの日がないみたいだからさ、今のうちにあたしからのお返ししておくね」
なに?桐乃から俺にお返しだって?
メンズバレンタインのお返しってことは、俺の想いを桐乃が受け取って、承諾してくれたってことか!?
俺たちマジ両想い!?

「それでさ・・・・・・男物と女物どっちがいい?」

あれぇ~?隣でモジモジする美少女からヘンな選択が聞こえた気がするぞ~?
「ねぇ、どっちがいい?」
「・・・・・・男物で」
ここで女物の下着を要求するとか、赤城くらいのシスコンじゃねえとできねえよ。
「・・・・・・女物じゃ、ダメ?」
「ダメ!」
そんな可愛らしく聞いても駄目だ本能がそう言ってるでも桐乃が喜んでくれるなら変態と呼ばれようとその女物の下着を着用することも―
「じゃあ、はい」
桐乃はバッグから紙袋を取り出すと、俺に差し出してきた。
俺は紙袋を受け取ると、中を覗いてみる。
「これは―俺のお気に入りのトランクスと同じヤツか」
二ヶ月くらい前になくしてしまったのと同じ柄のヤツだ。それが二枚。
「・・・・・・ありがとうな、桐乃。
 俺なんか俺好みの下着をチョイスしたってのに、おまえは俺の好きなパンツを覚えていてくれて、それをプレゼントしてくれた。
 男物のパンツを買うなんて恥ずかしかっただろうに、おまえは最高の妹だよ」
じーんとする心の赴くままに、桐乃の頭を優しく撫でる。
「ああああああ当たり前でしょ?大切なパンツなんだから覚えてるのは普通だし、実際にあんたに渡すのより恥ずかしいことはない

し・・・・・・」
桐乃は俺の手を払いもせずに、顔を真っ赤にさせてうつむいた。
目が泳いでいるようにも見えたが、きっと俺と目を合わせるのが恥ずかしいんだろうな。
「ずっとずっと大切にするからな」
俺は桐乃に笑いかけながら、もう一度頭を撫でてやった。


「それにしても、柄といい質感といい、この使い込んだ感じといい、俺のお気に入りそのままだな」
食事を終えシャワーを浴びた後、俺は自室でパンツの履き心地を確認していた。
桐乃が苦労して探し出したのか、貰ったパンツは無くしたパンツそのままだった。
違いといえばやけに桐乃の匂いがすることくらいか。
ただ買ってきただけでは顔を近づけなくてもわかるほどに桐乃の匂いがするはずないし、もしかして―
「俺が穿きやすいように、あらかじめ慣らしておいてくれたのか?」
ラッピングはされていたが買ったばかりというわけでもなさそうだったし、そうに違いない。
本当にできた妹だ。俺にはもったいないぜ。
よし、もう一度桐乃にお礼を言ってこよう。
そう考え後ろを振り向くと、

ドアの隙間から覗く桐乃と目が合った。

「うぉぉぉ!」
とっさに脱いでいたパジャマのズボンを穿く。
「おまえ何時からいたんだ!いるなら声くらいかけやがれ!」
俺が桐乃に声をかけると、桐乃は恥ずかしそうに部屋の中に入ってきた。
「あんたの様子を見にきたら、扉が開いてたからつい覗いちゃったの!
 ちゃんと扉を閉めておかなかったあんたが悪いんだから!」
むぅ。
ちゃんと扉は閉めたと思ったんだが・・・・・・こういう時に鍵がついていないのは不憫だな。
「そ、そうか・・・・・・それで、何の用だったんだ?」
俺が悪いとは認めないが、追求しても仕方がないだろう。
それより話題を変えたほうが随分マシだ。
俺の問いかけに対し、桐乃は顔を真っ赤に染め、
「し、知らない!!」
と言うと、部屋を飛び出していった。
「・・・・・・なんだったんだ?」
もしかして、俺の下着姿なんかを見て機嫌を悪くしてしまったのかもしれない。
下着をプレゼントしてくれて、それに礼を言いたかったというのに、これじゃあどう声をかければいいのやら・・・・・・
少し考えていると、桐乃が去った後に、ぽつんと何かが落ちているのを見つけた。
「ん?これは・・・・・・」
拾い上げてみると、いつも桐乃が愛用しているヘアピンのようだ。
「これを口実に桐乃に話しかけてみるか」
怒らせたままなのも気分が悪いし、早く下着のお礼も言いたいしな。
俺はヘアピンを握り締めると、自室を出て桐乃の部屋へと向かう。
「お、部屋にいるみたいだな」
桐乃の部屋の扉はわずかに開いており、そこから明かりが漏れている。
それにしても、俺の部屋の扉が開いていたことを怒っておきながら、自分もちゃんと扉を閉めてないじゃねえか。
「おい、桐乃ー」
俺は鍵を確かめる必要もないので、そのまま扉を開き―

下着姿で立っている桐乃を目撃した。

「くぁwせdrftgyふじこlp!?」
意味をなさない言葉が俺の喉から零れ落ちる。
なんで桐乃が下着姿なんだよわけが分からん!
しかもその下着、俺が今日桐乃にプレゼントしたやつじゃねえか!
え?どんな下着かって?
それは桐乃の名誉のためにも言えねえ。
だが、下着選びを済ませ、会計をする直前に桐乃に気づかれないよう追加しつつも、結局気づかれ、
恥ずかしそうに『止めて』と言う桐乃に対し、家でのみの着用を条件に何とか承諾させた下着、とだけ言っておこう。
「・・・・・・・・・」
慌てて眼を逸らすこともできない俺に対し、顔を怒りで真っ赤に染めつつも、桐乃は落ち着いた様子で俺の前まで来ると、
腰に手を当て俺を睨みつけ、
「・・・・・・何か言うことは?」
と言った。
俺は見せ付けるように仁王立ちする桐乃を、とりあえず上から下まで眺め、

「桐乃の身体、すごいな。
 惚れ惚れしちまうくらいに・・・・・・綺麗だ」

と言った。
・・・・・・あれ?俺今死亡フラグ立てた?
俺の言葉に、桐乃はこれ以上は無いと言えるほどに全身を赤く染め(下着姿だから、全身が赤いのがよくわかるぜ)、
「~~~~~~~~!!!!
 出てけ、このシスコン!!!」
俺を勢いよく締め出した。

・・・・・・・・・どうやら、死亡フラグではなかったらしい。
五分か十分か、大分長い時間をかけて、ようやく俺の思考は快復した。
もしかして、あまりの衝撃に立ったまま気絶していたのかもしれない。
あんなことがありながら、蹴られも殴られも頭突きされもしないなんて、俺たちは思った以上に仲良くなったんだな。
そんなことを考えるのと同時に、結局ヘアピンを渡すことも、お礼を言うこともできなかったことを思い出す。
しかし、今桐乃の顔を直視することはできねえよなあ・・・・・・
仕方が無い、ヘアピンを返すのは明日にして、とりあえず今日は桐乃の素敵な姿を思い返しながら、
桐乃にお詫びとお礼のメールを書いておこう。
・・・・・・お礼ってのは下着姿を見せてくれたことに対してじゃねえからな?
それにしても、下着姿を見ちまって一言だけ弁解のチャンスを貰ったって言うのに、つい桐乃を褒めてしまったのはまずかったか。
せめて、下着が似合ってるとか、俺の選んだ下着を着てくれてありがとうとか、そういう言葉にするべきだったか。
メールにはそのことについても書いておくか。

・・・・・・一つ腑に落ちないことがあるんだが、どうして桐乃は俺の部屋に来た時はシャワーも終わってすでに寝巻きに着替えていたというの

に、
改めて下着姿になんかなっていたんだ?


-END-




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最終更新:2011年09月17日 11:07