208 名前:【SS】[sage] 投稿日:2011/09/16(金) 05:07:08.74 ID:W2BXnwSn0 [1/11]
10巻まで待っていたら
アメリカ留学の桐乃のごとく、プレッシャーで押しつぶされそうになるので
京介→桐乃告白シーン(妄想)を書いてみました。

なお、黒猫には散り際に花を持たせていますのでアンチ黒猫な方はご注意ください。
注意※黒猫の恋愛色強め

登場人物:京介、桐乃、黒猫
特別出演:あやせ


タイトル:「解呪、そして・・・・・」

「三度”約束の地”で京介をまっているわ。」

俺は再び黒猫のメールで呼び出された。
秋も深まった夕暮れ、俺は黒猫に告白された校舎裏にやってきた。
虫の音が響く校舎裏のベンチにいつものゴスロリではなく見慣れない制服をまとった黒猫が座っていた。

「それが新しい学校の制服か?」
俺が声をかけると、彼女はそっと立ち上がる。虫の音にかき消されるかのような小さな声で
「・・・待っていたわ」
「・・・・・」
俺は無言で黒猫の顔をみる。黒猫の瞳はカラーコンタクトが入れられてもいないに関わらず
夕日を受けて赤い光を放っていた。そしてその目はこれから語られるであろうことを最後まで聞くと
決意を宿らせていた。
「あの日は、あの女の放つ邪気に当てられて、最後まで聞くことはできなかったわ。」
「今日は最後まで京介の言葉を聞かせて頂戴」

俺は黒猫の決意を宿らせた目に圧されながらもゆっくりと口を開いた。
「・・・黒猫、今でも俺のことが好きか?」
その言葉を聞いて黒猫は不敵な笑みを浮かべた。
「ええ、好きよ。桐乃が京介を好きな気持ちと・・・同じくらいに・・・」
「あの女が、・・・あれほどの想いを・・・内に秘めていたとは計算外だったわ」
「そうか。」
あの日、俺はむき出しの桐乃の感情を目の当たりにした。いつものように強引で高圧的な桐乃ではなく
アメリカで好きなこともできず、一人きりでがんばりプレッシャーに押しつぶされそうになってもなお
帰国を拒む妹と同じような桐乃から・・・・。

”あたしは兄貴が大嫌い。だけど、だけど---兄貴に彼女ができるのなんて絶対イヤ!
嫌いだけど、すごく嫌いだけど・・・・・あたしが一番じゃなきゃイヤ!”
”あたしは京介に彼女ができるのなんて絶対にイヤ。だけど兄貴が泣いているのはもっとイヤ。・・・・”

あのときの桐乃の言葉が頭の中に木霊する。俺はその言葉の持つ意味を理解できていない。・・・いや、
それが持つ本当の意味を認めたくないのかもしれない。

兄貴としては失格だった俺
そして俺のことを一人の男性として想いを寄せていた桐乃

兄妹なのに・・・・・

しかしあのとき桐乃の想いを確かに気づくことができた。
それと同時に俺の中に急速に育まれた想いがあった。

桐乃の俺に対する想い、俺が桐乃に対する想い、それらはあの日あの場所で捨て身でがんばったあいつらに
よって気づかされ、育まれた。

しかしそれとは別に、俺の選んだ選択肢が導き出す何か漠然とした不安も・・・・・
それは何なのだろうか。

整理のつかない頭を振りながら
「・・・黒猫、俺は・・・・・」
「まって!!」
黒猫の言葉が、俺の言葉を止めた。その顔にはアメリカから桐乃を連れ帰る決意を決めた俺を送り出したときと
同じ想いを浮かべていた。
「わたしの話はまだ終わっていないわ」
「・・・わかった」
俺がそう答えると、黒猫はあの温泉で桐乃の嫉妬心を受け止めたときのようにより険しい顔になった。
「京介、あなたのことは今でも・・・この”約束の地”で再び”儀式”を行ったときに負けないくらい・・・好き」
「でも、桐乃の本心を聞いて・・・やはり、わたしは・・・」
黒猫の体が小刻みに震えた。あの温泉地で自分の命を人質にして俺の言葉を止めたときのように。
俺は黒猫が倒れる前にその体を支えようとした。
「・・・さわるな!」
胸の奥に秘める己が想いのすべてをぶちまけるような声を放った。
それを聞いた俺は、さながら言霊に秘められた魔術に動きを封じられたが如く動くことができなかった。

深呼吸をしながら自分を落ち着けた黒猫は、再び俺に瞳を向けた。その瞳にはより一層決意の炎が宿っていた。
そしてゆっくりと言葉を紡いだ。
「そして、わたしは・・・京介が桐乃を想う気持ちに負けないくらい・・・桐乃のことが好き」
その言葉を聞いた瞬間、俺は愕然とした。
そして、俺が抱いていた漠然とした不安が何なのかも・・・・・

人生はエロゲーと違ってセーブができない。
俺がここで選択をミスれば、桐乃と黒猫の関係が壊れてしまう。
そして沙織と約束したことも果たせなくなってしまう。
それが俺が抱いていた漠然とした不安だった。

黒猫の言葉を聞いた俺は、自分のこれからの選択が間違っていないことを確信した。
「・・・黒猫、終わりか?」
「ええ・・・」
「そうか」

「京介、あなたはどうするの?」

あの温泉での言葉とまったく同じ言葉を同じリズムで放った。
「俺は・・・桐乃が好きだ」
「・・・妹としてかしら?」
「いや、俺はあの日から妹を・・・いいや桐乃を妹として見られなくなった。」
「・・・・・」
「俺は桐乃を一人の女性として好きだ。だからおまえとはちゃんと別れようと思う」
俺は黒猫から視線を逸らさずに言った。
「・・・・・いい目をしているわね」
そういうと黒猫は、

「最後の『儀式』をしましょう」

そう続けた。

「儀式?」
「そう『儀式』。前にあなたに言ったわよね。呪いはより強力な呪いでしか上書きできないと」
前と同じで電波入ってるよ。でもこれをしないと、黒猫としても区切りはつけられないだろう。
「わたしが、あなたと別れたと同時に呪いは解けている。でもあの呪いは、まだあなたの体に残っている」
「前にもそんなこと言ってたな」
「だから新しい呪いで上書きするわ」
「そうか、それじゃやってくれ」
俺がそういうと黒猫は「目を瞑って頂戴」と呟いた。

「こうか?」
俺が目を瞑ると・・・・・

唇に温かい、そうちょうど人間の体温のようなしっとりとしていて・・・それでいてやわらかいものが触れた。
「ん!!!!!!」
俺は、驚きのあまり目を開けた。
目の前には、優しく目が閉じられた黒猫の顔があった。その頬は赤く高揚している。
そして俺の唇には、黒猫の小刻みに震える唇が触れていた。

黒猫はゆっくりと後ろに下がると、うつむいてしまった。黒い髪の間から見える頬はまだ赤く高揚していた。
「これで呪いの上書きは終わったわ。」
「そうなのか」
何とも間抜けな返答だ。

ザッ!!!
背後で人が走り出すような足音がした。
見られた?!!!!!!!
学校でこんなことして!しかも相手が転校した元彼女じゃん。
”セクハラ先輩”だけじゃすまないぞ!
とパニクりながらも俺は足音がした方に振り向いた。
そこには、桐乃と同じ学校の制服を着た茶髪の女の子が走り去っていく姿があった。

---ってか”桐乃”じゃん。

状況を整理できてないというか茫然自失というか完全にフリーズしている俺に対して
「追いなさい!呪うわよ」
邪気眼厨二病全開の口調で黒猫が呟いた。
その声を聞いた俺は、一瞬で現実世界に戻され、黒猫のほうに振り返ることなく桐乃を追いかけた。

しかし桐乃との差を詰めることができない。それどころかどんどん離されていく。
さすがはアメリカ留学まで勧められた陸上選手。俺ごときじゃ追いつけないのか。
でもここで誤解を解かなければ、俺が選んだ選択肢は無駄になってしまう。
普通、エロゲーとかなら何かのイベント起きて追いつけるだろ。
まぁ事故とかもあるけど、それだけは考えたくない。

走って追いつかなければ、携帯で呼び出せば・・・・
俺はポケットから携帯を取り出した。
取り出すときもなるべく桐乃との差が開かないように走るスピードは緩めなかった。
脇目で携帯の画面を見ながら桐乃の番号を選んで、呼び出しボタンを押した。

前の方を走る桐乃からは携帯の呼び出し音が聞こえる。
しかし桐乃はそれを無視して走り続ける。
取ってくれよ!桐乃;
呼び出しを続けながら、なおも桐乃を追いかけた。
はるか前方の角を曲がったことを確認して、俺もそこを曲がった。
しかしその先には桐乃の姿はなかった。
携帯の呼び出し音も、もう聞こえない。

「はぁはぁはぁ、どこかの路地に入ったのか?」
俺は独り言を言いながら、片っ端から路地を調べた。
「どこに行ったんだ・・・・・」
俺は途方に暮れ、その場に膝をついてしまった。

一度立ち止まってしまうと、なかなか走り出すことはできない。
しかも走り過ぎて酸欠を起こしたのか、いろいろな情景が走馬灯のようにぐるぐると頭の中を回り始める。
死ぬ瞬間ってこんなのか?

--俺を罵倒する桐乃
--恥ずかしさのあまり逆ギレする桐乃
--メルルのコンサートでオタク連中に負けじとはしゃぐ桐乃
--落ち込んでいる俺を優しく慰めてくれる桐乃
いろいろな情景ってたって、全部桐乃じゃん。俺、どんだけ桐乃が好きなの!
情景という名の妄想が浮かんでは消える。

--悔しさで涙を流す桐乃

その情景が浮かんだ瞬間、俺はハッっと我に返った。
俺・・・また・・・あいつを・・・桐乃を泣かせてしまったのか。
あいつの彼氏になるなら二度と泣かせないように誓ったのに・・・・・。
情けなくなってきた。

情けない自分がいやで拳を地面に擦り付けながら、今の状況にじっと耐えようとした。
俺、あれだけエロゲーやったのにリアルじゃ全然ダメじゃん。

ピリリリリリ・・・・
俺の携帯がなった。
桐乃か!?
あわてて携帯を見ると1通のメールがあった。
差出人は”あやせ”

そしてメールには『お兄さん、お話があります。至急いつもの公園まで』と簡潔に記されていた。
あやせはいつも淡白なメールを寄越すな・・・
一番長かったのは、桐乃と仲直りさせた後の脅迫メールだよな。
もうあんな恐怖はもう味わいたくないけど。

これ以上ここで途方に暮れていても桐乃は見つけられない。
もしかしたら、あやせが電話すれば出るかもしれない。
そんな期待から、俺はあやせの待つ公園に向かった。

公園に行くと、いつものベンチにあやせがいた。
その隣には・・・・・桐乃が!!
二人の姿を確認すると、俺は急いでそばに駆け寄った。
桐乃がいるので、どう声を掛けていいかわからない。
俯いて無言でいる俺に向かってあやせは開口一番

「最近、わたしにセクハラしないと思ったら、後輩にセクハラしてたんですか!しかもあの泥棒猫に!!」

俺を伏魔殿に誘い込み、手錠拘束プレーやろうそく火あぶりプレーをしてきたあやせをはるかに凌駕する
形相で睨みつけてきた。
いや、ろうそくではなく、ライターだったか・・・・てか冷静に自分の思考にツッコミを入れてどうする。
パニくってる俺に容赦ない上段回し蹴りが炸裂した。
久しぶりにいい蹴りしてるぜ!
空中で2回、3回と回り5mほど後方に顔面から落ちた。いや落ちたというかほとんどスライディング。
あやせ、今度K-1でろよ。。。。。

意識が飛びそうになるが、ここで飛んではあそこであの選択肢を選んだ意味がなくなる。
俺にはロード機能がないんだ。
とわけがわからない思考をしながら何とか立ち上がった。

そして、あやせではなく桐乃に真っ直ぐと体を向けた。
「!!!!!!!!!!!」
桐乃は俯いていたが、きれいな流れる茶色の髪の間から見える頬には、光るものが見える。
泣いている。
やはり、俺はまた桐乃を泣かせている。
情けない・・・・・
しかしここで動かなければ何にもならない。
動け!俺の口!そして俺の体よ!
そう自分に言い聞かせて、桐乃に歩み寄りながら言葉を紡いだ。

「桐乃、聞いてくれ!」
その言葉を聞いた。桐乃は一瞬ぴくっと反応したが相変わらず俯いたままだった。
「桐乃、俺は・・・・・」
口の中を切ったのか痛みが走り、言葉を続けることができない。
そうしていると・・・・・
「あたし・・・誓ったんだ。あんたが・・・京介が・・・あたしか黒いのかどちらを選んだとしても
一生あんたのそばにいようって・・・」
「でも、それでも・・・あんな光景見せられると、やっぱり耐えられない・・・・」
「違うんだ、桐乃!」

「何が違うのよ!」

俯いていた桐乃が俺のほう向いた。その顔は怒りではなく、涙で化粧が崩れてぐちゃぐちゃになって
はいたが、悔しさと情けなさが現れた・・・アメリカで趣味や友達とのおしゃべりもせず、ただ黙々
と練習に励み、そして挫折と重圧に押しつぶされそうになっていたあのときの桐乃そのものであった。
俺はその顔を見て、一瞬言葉を失った。
もし・・・ここで誤解を解かなければ、こいつは壊れてしまう。
何があってもそれだけは避けなければならない。

桐乃の両肩をつかんで俺は言葉を続けた。口の痛みなんて知ったこっちゃない。
こいつが今感じている痛みに比べれば、屁でもないぜ。
「聞いてくれ!」
「聞きたくない!」
桐乃は一向に俺の話を聞こうとせず、俺から逃れようと体を左右に振る。
もうこうなったら・・・・
俺は意を決して両手で桐乃の頬を押させ、そして・・・・・初めてのキスをした。
俺のファーストキスは黒猫の強奪されたけど;;

「!!!!!!!!!!」

桐乃はあまりの突然のことに両腕をバタつかせて拳で俺の胸を叩いた。
しかし俺は、それでも桐乃の唇を離さなかった。
やがて諦めたのか疲れたのか両腕を下に垂らしておとなしくなった。
それを確認すると、俺はゆっくりと桐乃から唇を離した。
桐乃の開かれた目は潤み、顔は耳まで真っ赤になっていた。

桐乃、マジ天使!

昔、あやせに感じたような台詞が頭に浮かんだが、まずは目的を果たそう。
桐乃が逃げないように、しっかりと抱きしめて桐乃にさっきの事情を説明した。

「よく聞いてくれ、桐乃」
「俺は、あいつに・・・黒猫に『ちゃんと別れよう』って言ってきた」
「・・・嘘・・・・・」
桐乃は、先ほどとは打って変わって今にも気絶しそうなくらい弱々しい声で言った。
「嘘じゃない。ほんとうだ!」
「『俺は桐乃が、妹ではなく、一人の女性として好きだ』って言ったんだ」
「桐乃、俺の彼女になってくれ!」
その言葉を聞いた途端、桐乃の顔はさらに真っ赤ってしまった。
こいつ、まだ赤くなれるのか。このままだと茹で上がるな・・・・
まぁ全部言ったから、これ以上はないだろうけど。

多少時間をおいて落ち着くのを待った。
返事をまだ聞いていないからな。
そして、桐乃が意を決したように口を開いた。
「それじゃ、なんでさっきキスしてたの?」
いや、先に返事でしょ?桐乃さん?
そんなツッコミを心の中で入れながら
「あいつが付き合うときの呪いを上書きするって言うから・・・」
「それでキス?」
もうさっきの告白の余韻はなく、桐乃も冷静になってきてるようだ。
もうちょっと余韻楽しみたかったんだけど・・・・
「そうじゃない、ただ目を瞑ってくれと言われて・・・いくら電波入ってるっていっても
黒猫もプライドがあるだろうから、最後って言うことで従った」
「まさかキスされるとは、思わなかったけど・・・・・せいぜい、額程度だと思ってた!」
しばらく俺の顔を見つめた桐乃は俯いて笑いを堪えながら
「・・・マジキモイ」
言葉にいつもの切れはなかったが、何とか冷静さは取り戻したようだ。
それを確認した俺は、ゆっくりと桐乃の体から離れた。

俺の体から離れた桐乃は、2,3歩後ろに下がって俺の顔を見ながら微笑を浮かべて
「マジキモイ!ほんとはキスされるの期待してたんじゃない?」
「そんなことはない!」
桐乃はゆっくりと俺の右脇に回りこみ、腕を組んできた。
「一生、あたしを離さないって誓ってくれたら、許す」
いきなり恥ずかしいことを言ってくる。
「そんなの当たり前だろ!俺は一生おまえを離さない!」
「・・・・・それじゃ、許す」
桐乃は俺の腕をぎゅっと抱きしめながら満面の笑みを浮かべた。
「そういや、まだ返事聞いてないんだけど」
それを聞いた桐乃はきょとんとしている。
「えっ?さっきのが返事じゃいけない?」
「ちゃんと告白したんだから、ちゃんと返事が欲しい」
桐乃はしばらく考えていたが

「あたしを彼女にしてください」

やっと桐乃から返事を聞くことができた。
ほんとうは俺と桐乃の間には、明確な言葉なんて必要ないのかもしれない。
でもちゃんと、言葉として聞くと今まで以上に安心感が沸く。

「あんた、顔ひどいね」
「!!!!!」
彼女になった途端、容赦なく顔を貶さなくても・・・泣けてくる。
「しかもさっきのキスは、鉄の味がしたし・・・あんなのがファーストキスなんてマジ最悪」
どうやら顔が悪いという意味ではなく、さっきの顔面スライディングのことを言ってるらしい。
「あたしも泣きまくったから、化粧が崩れて・・・」
お互いひどい顔をしている。
アニメやエロゲーだって、もっとかっこよくてムードのある告白があるだろう。
どうして俺たちは、こうも嫌になるほどかっこ悪いことしかできないのだろう。
でも、これが俺たちなのかもしれない。
別に無様でも、かっこ悪くても、俺たちはともに手を取り合って歩んでゆけばいい。







と、かっこよく締めようとすると、背後から炎が揺らめくような音がした。
ここ公園だし、誰も焚き火はしてないよね?
そう疑問に思って振り返ると、全身真っ黒なオーラに包まれたあやせが立っていた。
「忘れてた!!」

このあとどうなったかについては、またの機会としよう。
俺が生きていればだけど・・・・・・・・・・




-------------

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2011年09月17日 11:09