503 名前:【SS】[sage] 投稿日:2011/09/18(日) 16:04:03.41 ID:1oHCYGML0 [1/5]
SS 甘すぎる学園祭
「ふーーん」
あたしは今、とある場所の入り口に立っている。
「いかにもフツーって言うか、特徴が無いって言うか。ま、こんなもんよね」
入り口-校門の横の『文化祭』と書かれた看板を見ながら素直な感想が出る。
今日はあたしの親友の1人、せなちーこと赤城瀬菜に誘われて来たのだ。
『えっへへ~!桐乃ちゃん絶対来てね!お友達連れてきてもいいから』
ぐふふふ…とでも言いだしそうなオタ顔全開のせなちーを思い出す。
学祭だし、さすがのせなちーもそこまで暴走しないだろうケド…。
あたしがぼーっと周りを見渡しているとチラチラをこちらを見る視線を感じる。
まあ当然よね。超かわゆくてスタイルがいいあたしなんだし!それに…
「ここがお兄さんの学校なんだ。少し緊張するなあ」
「なーに言ってんの。キングオブ普通過ぎて退屈しそうだって。と言うかお兄さんって誰?」
「あ…ええっと、ね」と言いつつこちらをチラっとみるあやせ。
今日は親友兼モデル仲間のあやせと…ランちんが一緒に来ているのだ。
本当は加奈子が一緒に来る予定だったんだけど急に具合が悪くなったらしい。
昨日までは元気だったんだけどな…『うぇ!?か…加奈子チョーシ悪くてさ。このまま行くと
コロされ…ぐ、いやおなかがヤベェ!だから他宜しくー!』っと一方的に電話を切られた。
調子悪いってワリにチョー元気そうだったじゃん…なんだっての?
で、2人で行こうとした所、暇そうにしてたランちんにあって一緒に行くことになった訳だ。
「…おい、あそこの女の子達すげー可愛くね?」「かわいー!でもどっかで見たよね?」
「お前声かけてみろよ…!」-フン!誰があんたなんかと一緒に歩くかっての!
それにあたしが可愛いのはあんたらのお陰じゃないっつーの…。
外野から聞こえてくる声を無視する事にして、2人を促して中に入る事にした。
「桐乃ちゃん、来てくれたんだ!」
学祭のパンフを見ながらどうしようか…と相談してる所に声がかけられた。
「来たよせなちー!誘ってくれてありがとうね」
「よかったあ。これで目的が達成できそうであたしも嬉しいです!」
…目的って何?と聞きたかったけど怖かったのでスルーする事にした。
「あ、後ろの人はお友達ですか?」
「初めまして。新垣あやせです。もう一人は…」
「あたしはランちんって呼んで!」
「あやせさんと、ランちんさんですね。あたしは赤城瀬菜です」
「あーランちんでイイってば」「あはは」
そう言えば京介のやつ、あたしを誘ってくれなかったんだよね…。
せなちーに誘われた日の夜にあたしは京介を問い詰めに行ったけど
『学園祭!?いやーそんなもん世間にあったんだっけな…アハハハハ』
ミョーに煮え切らない態度だったし…あたしに学校来られるのそんなイヤなのかな。
兄妹…の距離が近づいたと思ったけど、あたしの錯覚かな…はあ…。
「桐乃んどうしたん?」
「ううん、何でもない。ちょっと人が多すぎて疲れただけ」
せっかくせなちーが誘ってくれたんだし楽しまないと。
…それと後で京介の所に行って問い詰めてやろう…!
4人で各クラスの出し物を適当に見て回る。…高校って言っても出し物は中学と変わらないんだ。
あやせは意外と楽しそうにしてるみたい…こっちばっか見てるケド楽しそうだからいっか。
ランちんは既に飽きてるようで携帯をいじりながらついてきてる。
たまに声をかけてくる男がいるけど、当然無視。
「まずは桐乃ちゃんにこれ見てほしいんですけど」
せなちーに案内されて向かった先は…「ゲーム研究会」せなちーの所属クラブだった。
「見せたいのってここ?」
「それはまた別なんですけど、とりあえずこちらも見せたかったんです!」
入った先では3台のパソコンが並べてあり、何かが表示されている。
ゲーム画面みたいだけど、なんだろう…妹モノじゃさすがにないよね。
奥では何人かの生徒が、出し物を見に来ている人の対応をしている。
2人ほどコミケで見た顔があるけど、こちらには気づいてないようだ。
「桐乃ちゃんこっちこっち!」
せなちーに誘われるままに1台のパソコンの前に案内された。
他のパソコンと違って陰に置いてあるんだケド…。
…ってげ、こ、ここここれはぁ!?
「じゃじゃーーーん!愛しあう兄弟をテーマに恋愛ゲーム作ってみぎゃ!」
「どどどどうしてこうなった!てかこんなの持ってくるなあぁぁぁ!?」
-あたしの目の前の画面にはあるゲームのタイトルが表示されていて、そこには…。
ヘタレっぽい男キャラに熱い視線をおくる男キャラ…ライトブラウンの髪にヘアピンをしている。
その2人が今にも熱い抱擁でも始めそうな雰囲気を出していた…ぐうぅぅぅ!?
「桐乃、何か面白いものでもあったの?」
「なななんでもないからっ!せなちーの勘違いなんだって!なんか違う場所案内したいって!」
「…?」
せなちーを黙らせたあたしは有無を言わせずあやせ達と部室の外にでた。
…あ、あれはさすがにあやせ達に見せられない。あたしの存在意義がグラつくっての。
「つーかぁ、なんかツマンナイよね。うちの学祭もアレだけどもっとこうビビって来るものないかなぁ」
「でも、学園祭ってこんなものじゃない?わたしは他の学校を見るのは初めてだし楽しいかな」
「まぁ桐乃んの友達だからいいけど、知らない相手のだったら3秒で帰ってるね」
「…それ学校にすら入ってないんじゃないかな」
せなちーが復活するのを待つ間に学祭パンフを一通り眺めてみる。
…変わったものなんてないなぁ。あ、このスイーツ喫茶ってのだけ後で行ってみよう。
「…でさ、せなちーが呼んでくれたのって結局何?」
普通過ぎる出し物に飽きてきたあたしは、仕方なく目的を聞いてみることにした。
「でゅふふふ…よく聞いてくれました!」
「ごめん。聞かなかった事にする」
「いやーん、桐乃ちゃん聞いてくださいよー!」
明らかにヤバイ表情だったので聞きたくない…。
せなちーの表情は池袋で見たあの表情だった…まさかさっきのより上があると…?
「実はですね。お兄ちゃんのクラスがすっごく面白いんですよ!」
「へ、へえ。そう言えばせなちーのお兄さんも一緒だったよね」
「そうなんです。それでね…」ぐふふ…と笑ってあたしを見るせなちー。
「なんと!メイド喫茶やってるんですよ。メイド喫茶ですよメイド喫茶!」
「メイド喫茶…って学校でそんなのやっていいんだ?」
「受験勉強の合間にやってくれてるって事で、オッケーでたみたいです」
メイド喫茶かぁ。せなちーの雰囲気からそっち系かと思ったけど普通じゃん。
…あれ、でもせなちーのお兄さんのクラスって事は…。
「じゃぁ、京介(うちの)ももしかして一緒だったりする?」
「そうそう。だから2人とも大変だったみたいですよ」
合点がいった。それで京介は話したがらなかったんだ。…麻奈実さんもいるから。
「桐乃のお兄さんも参加してるんだよね。…でも裏方さんだし、あんまり話せないかなあ」
「あやせ…?」「ううんなんでもない。め、メイド喫茶店だから男の人って料理してるんだろうなって」
うーん、京介って料理できなかったはず。あいつ裏でもパシリやらされてんじゃないの?
少し不安もあったけど、京介の居場所が分かってほっとしつつあたし達は向かうことにした。
結構歩き回ったし、そろそろおなかも空いたしね。
京介の作ったスイーツなんて絶対!人に出せるモノじゃないだろうしあたしくらいしか食べたがらないって。
「あ、あそこですよ!やっぱり結構繁盛してるみたいですね」
せなちーが指さす先には結構な列が見える…結構人気なんだ。
まさかあいつのヘタレスイーツ食べたがる変人がいるっていうの…。
最後尾に並んで待つことにした。…でもなんかキャー!とか聞こえるんだケド…。
そういえばさっきパンフにあったスイーツ喫茶ってここだったのかな。
パンフを開いてチェックする…あったあった、場所もあってるしここだったんだ…ってあれ…?
あたしはスイーツ喫茶-の後に書かれている文字を見て……一瞬思考が止まる。
スイーツ喫茶-【メンズメイド・イン・ヘヴン】…ええっと…メンズメイドってナンデスカ?
思考が止まっている間にあたし達の順番がきてたようだ-意を決して中に入る。
「いらっしゃいまてぇ~~ん♪」…「ってき、桐乃ォォォォ!?」
「あああああああんたっっ!な、何やってんのっ!?」
野太い声で接客してきた-メイド服を着た何かは-高坂京介-つまりあたしの兄だった。
『フォォォォォォォ!!』と謎の雄たけびをあげているせなちーを押し避けて、あたしは京介に詰め寄る。
「あ、あんた!?まさかそういう趣味あったの!?というか、マジでせなちーのお兄さんとそういう関係!?」
「ちげえ!こ、これはだな!決してソレに目覚めたわけでなく!そ、そうだ、あいつにハメられたんだ!」
指さす先には爽やかなスマイルをしたメイド男-赤城浩平がいる。
「ふっ…高坂!どうよ瀬菜ちゃんのスペシャルなアイディア!」
「兄妹そろって腐海へ帰れ!」
爽やかなイケメンスマイルを振りまきつつメイド服をフリフリするその姿は…正直ぞぞぞわっと背中に来る。
「うっはぁー!チョーキモカワイイ!」
ランちんは妙に嬉しそうだ。見なかったほうがよかったんだろうケド…。
「お、お兄さん…?は!?まさか!桐乃の服をそんな事に!?」
なんか勘違いしてるあやせ。というかあいつに着れるかっての!?
「…あとで問い詰めるかんね」
京介に釘をさして、とりあえず4人で席に着く。
せなちーは相変わらず謎のうなり声をあげている。
「ね、桐乃ん。さっきのがお兄さんってやつ?」
「ん…あたしにそんなのいたっけ」
「おい桐乃!勝手に家族構成減らすなっ!?」
ランちんの問いかけを軽く流すあたしに、何か聞こえてきたけど気のせいだよね。
「でもさー…あの人。桐乃んのお兄さんって、ホテルから桐乃さらってった人だよね?」
「ぶっ…!」
恥ずかしすぎて思い出したくない記憶を…!
「あ、あれは違うの!ノーカンなの!京介が勝手にしたことだし!」
「へぇー…桐乃んってお兄さんの事『京介』って呼んでるんだぁ」
「ちが…っ!?違ってるけど違わないっていうか…なんていうか…」
「ふぅーーーーん…なんかさぁ、桐乃んってお兄さんの前だと雰囲気違うね」
「違うって…あたしはあたしじゃん」
「んーーそういう意味じゃなくて、お兄さんの前だとすごく自然て言うかさ」
「言うかさ…?」
「はっきり言って超可愛い」
「なっ…!」
こ…コイツ何言い出すんだ。あたしはランちんがここの異常な雰囲気で壊れたのかと思った。
「学校とか仕事の時の桐乃ってなんとなくだけど、少し壁感じるんだよね」
「壁って…あたしそんなにツンケンしてる風にみえる?」
「ちょっと違うんだけどさ、友達のあたし等にも少し遠慮してるっていうか…
しっかりしなきゃって感じで気張ってるっていうかそんな感じ?」
「………」
「でもここでお兄さんといる桐乃んってさ、超自然体でなんか可愛い」
「…ランちんなんか変なもの食べた?」
やばい…顔がなんか熱くなってきたし…こんなとこ京介に見られたら…。
「お…お待たせしました~~ん♪」
注文していたものを京介が持ってきてくれた…けどあたしの中の雰囲気が台無しだ。
「ぷっ…あんた似合ってるよ」
「うるせぇ…てかそれ食ったらとっとと帰れ」
スイーツとドリンクがテーブルに並べられる…と、あたしのスイーツだけなんか変?
みんなと同じの頼んだはずだけど、横に小さなチョコがのっかってた。
「これって何…もしかして地味子が作った?」
「ちげーよ…余りもんのチョコがあったからよ…まあ黙って食えって」
「ふーーん…余りモノ…っか」
そのチョコは少し形が不揃いだけど、明らかに人の手で形が整えられている風に見えた。
…えっと…その…いわゆるハート型ってやつだ。
「桐乃?どうしたの、顔が真っ赤だよ」
「なななんでもないって!」そう言いながらあたしはチョコを一口で食べる。
…やば、超甘すぎるよ…。
-ちなみにスイーツ喫茶-【メンズメイド・イン・ヘヴン】は某ネタサイトに画像が載せられていたらしい。
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最終更新:2011年09月19日 17:06