279 名前:【SS】[sage] 投稿日:2011/09/20(火) 12:04:06.18 ID:krIRD6590 [2/7]
SS俺の妹はこんなに可愛い-再び



『俺の名は高坂京介。どこにでもいるごく平凡な高校生……だったんだよなあ』

ここ一年に起こった色々な出来事は、俺を…俺たちを大きく変えた。

『俺には妹がいる。名前は桐乃ってんだが、俺の目から見ても完璧で非の打ちどころがないとても凄い奴だ。
顔は世界一可愛いし、スタイルだってカ○ビアンコムなんて目じゃねえ、その上成績優秀かつ運動神経抜群
とくる…だが一年ほど前までは兄妹仲が悪く、家でも全く話しすらしなかったんだ』

ふ…と、空を見上げ、あの頃を思い起こす。

『しかしなあ、エロゲー…しかも妹モノでヨリを戻す兄妹ってのは俺たち兄妹らしいよな』

思わず苦笑する。だがそれは一瞬の事だ。再び顔を引き締める俺。

『…これからは俺がずっと一緒にいてやるからな』

「…んで、お前はいつまで自分の世界に浸ってやがんだ?」
「おわ!?いきなり割って入って来るんじゃねえ!」

俺の目の前に暑苦しい顔が現れる。俺の親友、赤城浩平だ。
く…桐乃との思い出に浸っていた俺を現実に戻すんじゃねえ…あと少しで胸の感触が思い出せたってのに…!
俺たちは、桐乃がモデルの仕事をしてるって場所に向かっている途中だ。
赤城に「あやせって娘に会ってみたい」とせがまれたんで、仕方なく来てるだけだからな。

「今日マジで本物のあやせちゃんも来るんだよな?」
「ああ。昨日仕事内容聞いてきたから間違いねーよ。『あんた、あたしの仕事覗き見しにくるつもり?
あーキモいキモい!これだから妹に欲情するシスコンって怖いよね』なんて言われちまったけどな」
「お前って本当に妹に嫌われてんのな。あの写メ送って来たってのが未だに信じられねーよ」

…まあ言葉の割に全然ムカっとしなかったのは、俺が成長したんだろう。桐乃もあの頃に比べりゃ
かなり丸くなった気もしたしな。むしろ嬉しそうにみえたが…はは、ありえねーか。

「お、あの車がそうじゃねーか?」赤城が一台のワゴンを指さす。

スモークガラスのワゴンの側で忙しく動き回っている人だかりが見える。
桐乃に聞いた特徴どおりだな。あれで間違いなさそうだ。

「おお!やってるやってる。すげーな。まるでアイドルみたいだぜ!」
「まあ、似たようなもんじゃねーの?モデルもアイドルも人に見られる仕事だしよ」

ワゴンから少し離れた場所で、モデルらしい女の子とカメラマンが見えた。
見た事ない顔だが、非常に様になって見えた。…桐乃もこんなことやってるのか。
メルフェスで迎えに行った時は殆ど見れなかったしな。

「あんまり目立つと捕まんぞ。こっち隠れようぜ」
「あ、ああ…」

大はしゃぎの赤城を連れて近くの木陰に身を隠す。

「しかしなあ…お前瀬菜一筋なんじゃないのか?これ知ったら瀬菜キレると思うぞ」
「フッ…何を言ってるんだ高坂クン!瀬菜ちゃんが世界一の妹なのは変わらないぜ」

そこでビシィ!っとポーズをキメる赤城。お前そんなキャラだったか?

「未来の嫁候補の姿を見たいだけであって、純真な気持ちなんだよ」
「爽やかに言っても邪なのは変わらないからな」
「つか高坂!お前もあやせちゃんと結婚したそうだったじゃねーか」
「ふっ…それこそ君の思い過ごしってものだよ赤城クン」
「いや…明らかに『俺も俺も』つってただろ」
「甘いね赤城クン…俺にとっては桐乃が宇宙一である事には変わらないのさ」
「お前しれっと瀬菜ちゃん貶めやがったな!」
「あやせは確かに可愛い。だが桐乃が宇宙一である限り、それは叶わぬ関係なのさ…」
「お前本当に妹と仲悪いのか…?」

ジト目で見てくる赤城。まあな…『妹』でなけりゃ最高だったろうにって今更思っちまうよ。
俺たちが言い合ってる間に、モデルが入れかわっていたようだ。
今度のモデルは長い黒髪が似合う女の子-あやせだった。

「うっひょおおおおおおマジあやせちゃん来たこれ!可愛すぎるだろオイ!」
「…後で瀬菜に言っておいてやるからな。最後の晩餐くらい存分に楽しんでおけよ」

モデルとして見るあやせには、確かにいつもの制服や私服と違った魅力がある。
こうやって見てるだけなら、理想通りで俺好みだったんだがな…。
横では興奮しながら写メを撮り続ける赤城。…あとでそれ瀬菜に見つかってもしらねーぞ。

「お、別の娘が入ってきたな…つかあの娘って見たことあるぞ」

赤城の声であやせのいた方向を見る…あやせと一緒に笑いながらポーズをキメる1人のモデル。
ライトブラウンの髪をもち、ひと際目立つ容姿をしている。

「桐乃じゃねーか。…しかし初めて見たな」

モデルってのは単に写真を撮られてりゃいいだけだと思っていたが、目の前の桐乃をみて考えを改める。
カメラの前じゃ最高の笑顔を魅せる傍らで、何か打ち合わせをしている時の顔は真剣そのものに見えた。
…やっぱり桐乃はすげえよ。-つかこんな最高の笑顔を撮らないなんて勿体ないな。

「高坂?どこ行くんだお前」
「気にすんな。すぐ戻る」

赤城をその場に残し、俺は桐乃をもっと近くで撮るべく場所を移動する。
-バレねーようにしないとな。こんな所見つかったら洒落にならないぜ。
木陰を素早く移動していく…お、ここなら正面に近いしいい写真が撮れそうだ。
手早く携帯カメラを起動し、木陰からそっと顔を出す。
…と、気付かなかったがそこには1人の男がしゃがみ込んでいた。
うお!?っと声を出しそうになったが…こいつ隠し撮りかよ!
俺の桐乃を隠し撮りするなんて許せねえ…が、ん?この背中に見覚えがあるぞ…。
男が俺に気付いたのか、後ろを振り返ってきた。しまった!気付かれちまった。

「って、親父!?」
「な…き、京介か!?」

男は高坂大介。つまり俺と桐乃の親父だった…つか何やってんだこのオッサンは。

「親父…娘の仕事を隠し撮りかよ」
「し、知らん!俺はただ桐乃が変な奴に捕まらないか見張っていただけだ」
「…じゃ、その手のカメラは何なんだよ」

暫くお互いに睨みあう親子…何やってんだ。

「京介…」
「なんだ親父」
「俺とお前はここで顔を合せなかった」
「…?」
「ゴホン…つ、つまりだな。俺たちは今日は会っていないと言う事だ」
「ああ…そう言うことかよ」
「…そういう事だ」
「分かった。俺と親父は今日ここで出会わなかった」
「俺も京介とは会っていないし、何をしていたかも知らん」
「家族は…」「見返りを…」
「「求めない!」」

爽やかな笑顔を見せあう親子。傍から見たらどんな光景だったのか考えたくもねえ。
-そして無言で桐乃の写真を撮る2人。
桐乃の出番が終わったと同時に-お互い戻るべき場所へと帰る。

「高坂?お前どこまで行ってたんだよ」
「まあお前と一緒だよ」
「やっぱりお前もあやせちゃん撮ってたんじゃねーか。でも一緒にいた娘も可愛かったよな」
「当然だ」
「ってよくよく思い出したらお前の妹じゃねーか高坂!そりゃ見た事ある訳だ」
「んじゃそろそろ帰るか」
「お前妹に会っていかねーのかよ。つかあやせちゃん紹介してくれ」
「桐乃に顔見られたら何言われるか分かったもんじゃねえ。て言うか本気で瀬菜に言いつけるぞ」

残念そうな赤城だが、俺はさすがに会って行こうなんて言える訳がない。
…あの表情思い出しちまったら公衆のど真ん中で桐乃を抱きしめかねん。

「じゃあまたな」
「高坂、また学校でな!」





家に帰るとお袋と桐乃がリビングにいた。親父は書斎で仕事中らしい。…まあ何やってるかは想像がつく。

「今日もお父さん、あなたの仕事見に行ってたのよ」
「あはは。お父さんまた来てたんだ。今日はバレなかった?」
「今日はね『俺の特等席があるんだ。だから今日は問題ない』なんて言ってたわよ」
「へー。でもスタッフの人も何も言ってなかったし大丈夫そうかな」

身内にはしっかりバレてたけどな!親父ツメ甘いよ!

「でもね。お父さん今日は桐乃の表情が一際良かったって言ってたわよ」
「そ、そうなんだ…?あたしはいつも通りやってただけだよ」
「ふうん。もしかして彼氏でも来てたんじゃないの?」
「あはは。まっさかあ。あたしが並みの男なんて相手にする訳ないじゃん」

リビングから楽しそうな声が聞こえる。まあ今日の様子見てりゃ楽しそうではあったな。
…しかし彼氏、か……桐乃に彼氏。いやあの時を考えると無いはず…いや…まさか…。

「ただいま」
「あら京介お帰り」

ビクッ!っと体を震わせる桐乃。ん…どうかしたか?
そのままこっちに詰め寄って来る。

「あんた、今日なにしてたワケ?」
「何…って、赤城と遊んでただけだよ」
「ふん。いきなりあたしの仕事の事聞いてきたから、超キモーいシスコンの顔が見えたら
あたしのモデル仲間が汚れるしやばーいって思っただけ」
「へいへいそうかよ。でも、お前ってやっぱりすげーな」
「…なによ」
「モデルやってる時のお前、あやせよりも、他の誰よりも一番光ってたぜ」
「な…」

目を見開いて口をぱくぱくさせる桐乃。
…しかし気になるな。桐乃に…まさかな。

「なあ桐乃、お前って…」
「何超シスコン」
「ちげーっての…お前。その、まさか彼氏なんて…つくってねーよな」
「はあ!?」
「前あんな事言ってたけど、その…俺なんかより、もっと頼りになる奴ができたら…いや…」
「あんたね…!ちょっとこっち来て!」

桐乃は俺の手を思いっきり握って2階へ上がり、自分の部屋に押し込んだ。

「桐乃…?」
「あんたさ、この前の黒いのとの会話覚えてない?」
「ああ…『あたしが一番じゃなけりゃイヤ』とか言ってたよな」
「…で、あたしが彼氏作ったってなんで思うワケ?」
「いや、さっきお袋と話してるの聞いてな。なんとなく思っただけだよ」
「…この天然トーヘンボクのバカ…」
「…なんか言ったか?」
「何にも言ってない!けどあたしに彼氏なんて絶対!いないし外に作る気ないから」
「そっか。ならいいんだけどな」

一人納得してほっとする俺。…つかここまで行くとシスコンもいいところだよな。

「へーという事は。あんた今日見に来てたんだあ」

急にニヤニヤして楽しそうな表情になる桐乃。はは、またいつもに戻っちまったな。

「赤城があやせに会いたいって言うから行っただけだっつーの!」
「へー…ふうん。あやせに会いにね…」
「大体俺がお前を見に行くなんて事ある訳が…って返せおい!」

ズボンの後ろポケットの携帯が桐乃に取り上げられる。
それをパパっといじった桐乃は、暫く無言になる。
さすがに撮りすぎたか…そろそろ怒りだすな。
-と、桐乃がこちらに向き直りつかつか歩いてくる。

「あんたさあ……ちょっと目つぶって」
「はあ?」
「で、歯を食いしばって」

…マジで怒ってないか?
言われるがままに目をつぶり、歯を食いしばる俺。

「…トクベツだかんね」

チュッ…と頬に何かが触れるのと同時にカシャリとカメラの音がする。
目を開けて呆然とする俺の手に携帯が放り投げられる。
目の前の桐乃は、なんていうか……この世のものと思えないぐらい魅力的な表情をしていた。
そして俺の手の中に戻された携帯には、その表情を示した一枚の写真が写っていた…。




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最終更新:2011年09月21日 07:04