535 名前:【SS】しないしないもするのうち?(1/2)[sage] 投稿日:2011/09/20(火) 23:40:28.47 ID:IwaQiNt60 [1/2]
「し、しないかんね!」は、魔法の言葉だなぁ。


【SS】『しないしないもするのうち?』

最近、京介のシスコンっぷりが有頂天でヤバい。
「…………(チラッ、チラッ)」
せなちー兄妹の「キス写メ事件」以降、京介は度々、アタシに向かって物言いたげな視線を送ってくる。
「……だ、だから!しないかんねって言ったでしょ!?」
「……そ、そうか」
心底残念だ。そんな表情で落ち込む京介。
ちょっ、ちょっと!別にそこまでしょげなくてもよくない?
アタシは少し胸が痛んだ。
しょ、しょうがないから、後で寝てる時にしてあげよう。そうしよう。


また、ある日に限っては――
「桐乃。この前テレビで見たんだが、兄妹は並んで寝ると快眠を得られるらしいぞ」
「……はっ?」
「俺も嘘かと思ったんだけど、ネットでも評判らしいからちょっと気になってよ」
「で?それがどうしたっての?」
わざわざ聞き返さなくても、京介の言いたい事は予想できる。
案の定、京介は視線を泳がしつつ、チラチラとアタシを見る。
「……試して、みねぇ?」
兄から、添い寝の誘いを受けた。
「チラ見しながら言っても、し、しないかんね!」
最近の京介は、チラ見すれば何でも許可されると思っているのだろうか?
困った傾向だ。
とりあえず、寝るだけならいいだろう。アタシは、お気に入りのパジャマに着替えて、京介の部屋へと向かった。

また、別の日。
私達は、クリスマスの夜に渋谷へと足を延ばしていた。
「あちゃー!大雪のせいで、千葉までの電車が止まっちまった」
「どうすんの?このままじゃ家に帰れないじゃん!」
「……そうだな」
京介は、眼前に広がるネオンライトの煌びやかなホテル街を見やると、
「……入る?」
馬鹿でスケベな兄貴に、ラブホテルに誘われた。
「バ、バ、バ、バッカじゃないの!?入るわけないでしょ!!馬鹿、えっち!!」
「……そっか」
京介がしょげ出した。ああん、もう!その表情はズルいって!
「……は、入るだけだかんね!し、しないかんね!」
え、えっちな事はまだダメなの!他に順序ってもんがあるしっ!
「お、おう」
そうして、アタシ達は色鮮やかな建物へと足を踏み入れた。

538 名前:【SS】しないしないもするのうち?(2/2)[sage] 投稿日:2011/09/20(火) 23:41:11.42 ID:IwaQiNt60 [2/2]
極めつけは、コレ。
「この前は赤城兄妹にしてやられたが、今度は俺達の勝ちだ!」
京介が息巻いてアタシの部屋に入ってきた。
「――今度はどうしたの?」
「喜べ、桐乃!ついに赤城兄妹を倒す方法が見つかったぞ!」
「別に倒す意味無くない?っていうか、アンタテンション高すぎだって」
キスの件以降、京介はやたらとせなちーのお兄さんを敵視している。ったく、どんだけシスコンなんだっての。
「で、その方法って何?」
「俺と結婚すれば、お前がナンバーワンだ!」
兄でシスコンな京介に、プロポーズされた。
「赤城もさすがに『妹とは結婚できない』とか。ぬかしやがってな!
じゃあ俺が桐乃と結婚すれば、世界一可愛いのは桐乃だと認めさせられる」
京介の言葉は、もはや超理論さえも飛び越えていた。ダメだコイツ。
「あ、アンタ。今自分が言ってる事、ちゃんと理解してんの……?」
コイツのシスコンは今に始まった事じゃないから、驚くのにも慣れた。でも、今回の発言は、そんなに簡単に口にしていいもんじゃない。
「当たり前だろ。俺だって、いつも勢いだけで動いてるわけじゃねぇさ」
フン、どうだか?京介の言葉に多少の疑いはあるものの、コイツがいつも全力なのはアタシが一番よく知っている。
それならきっと、半端な気持ちで言っているわけではないんだろう。
「……じゃあ」


『してあげる』


いつもとはちょっと違う言葉で、気持ちを伝えてみた。
京介は、最初目を丸くして呆けていたが、徐々に頬を紅潮とさせ驚きを露わにする。
……何よ。アタシだって、たまには素直になるっての。
「しない」も「する」も、言葉の奥の本心をちゃんと見抜いてよね。

「アタシが京介と結婚してやんよ!」
照れ隠しでそう言ったアタシの顔は、どんな表情だったんだろう?
――ううん、そんなの確かめなくても分かるよね。
きっと、目の前の京介と一緒で、最高の笑顔をしているはすだから――。




-------------

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2011年09月21日 07:07