643 名前:【SS】[sage] 投稿日:2011/09/21(水) 12:40:27.25 ID:YdRy/eSS0 [2/4]
SS簡単なお仕事─レベル2
「はは。こうしてると本当に可愛いんだけどな」
「ぅう…ん……京介ェ……だ……きぃ…」
「ったく、夢で何見ていやがるんだかな」
──突然だが、俺のベッドには桐乃が寝ている。そして俺はと言うと、桐乃を手で守ってる状態だ。
何?訳わからねえって?…くっそぉ!ハッキリ言うよ。俺は桐乃を抱いているんだチクチョウ!
…お前ら勘違いするなよな?さっきまでやってたエロゲが発端なんだ。俺は悪くねえ…はず。
じゃねぇ!?こんなこと言うと余計勘違いする輩が出てくるじゃねえか。
エロゲが発端なのは間違いないんだが、その展開で口論になっちまったのが本当の原因なんだよ…。
… … … …
『はあ?なんであんたはさおりちゃんの気持ちが分かんないの!』
『わ、分かる訳ねーだろ!一緒のベッドで寝るなんて狭いし暑いじゃねーか』
『むぐぐ…!あんたってほんっ…とう!に妹の気持ちが分かってないよね』
『だってよ…このゲームの今の日付って7月末だぜ?真夏の、しかも夜でこの間取りだ。
さおり…なんか親近感はあるな…じゃねえ、この子が熱中症にでもなったらどうする』
俺の言葉に桐乃は少し意外そうな顔を見せる。
『へえ。あんたってもしかして…本当は妹のコト大好きだったりするワケ?』
『ま、待て!そういう言い方だとなんか勘違いするじゃねーか』
【お兄ちゃん…寒いでござるよ…ぐすっ】
『待てぇい!お前本当にゲームキャラか?本当は隠しカメラで某マンションと繋がってんじゃねーのかオイ!』
『さおりちゃん泣きだしちゃったじゃないの!妹の気持ちってのは熱中症なんて話になんないんだから!』
『ワケわかんねーよ。こいつはなんでそこまで兄と一緒に寝たいんだよ…』
桐乃はそこで一瞬口をつぐみ─
『…やっぱ好きだから、一緒にいたいんじゃん?』
『そっか…』
『あんた今日は素直に納得するね』
『いや…別に何かを考えた訳じゃないけどな。まあ、そう言う妹もいるんだろう』
『……で、でもあんたはまだまだ理解度が足りないようね』
『これでも色々あって成長してるつもりだぜ?まだ合格じゃないのかよ』
『……そ、そうだ!あんた今日一日…そ、そのあたしをだ…抱いて寝ればいいのよ!』
『ちょぉぉぉぉっとまったあぁぁ!お前それはさすがにヤバいだろ!?』
思いっきりうろたえる俺をよそに、何かふっ切った表情を見せる桐乃。
だがこのふっ切り方は見た事ねえ…目が思いっきり据わってやがる。
『……あんたが妹の気持ちを理解したら許してあげるから…』
『わ、分かった……でも今日だけだぞ?』
さ、さすがに何回もやられたら俺のリヴァイアサンが我慢できる訳がない。
……桐乃こそ俺の気持ち分かってるってのかよ──俺は兄貴なんだぜ…。
… … … …
──と言う訳で今に至るって事だ。
…だがこの状態は本当にヤバイ。俺が理性をもった兄貴じゃなけりゃとっくに意識が飛んでる所だ。
何しろ、俺の知る中で最高の美少女が俺に抱きしめられているんだぜ。
相変わらずいい匂いがする髪、柔らかな体、そ、その…胸板に感じる2つの膨らみ。
真っ当な高校男子生徒にとってはまさしく天国とも地獄とも言える危うい状況だ。
桐乃はと言うと、すうすうと気持ちよく寝息を立てて眠っている。
その手は俺の体を掴むように─まるで逃げ出さないようにしているように感じる。
そんな事しなくても、俺はお前から離れないっての─そう誓ったからさ。
…だが、さすがに眠いな…ふわ…あ……じゃあな、桐乃、お休み……。
──「…起きろこの変態!!」「ぬわあ!?」
ドガシャア!
気持ちよく眠ってたはずの俺は、いきなりベッドから蹴り落とされた。
…って、あやせ…さん?
俺の目の前には仁王立ちしたままオーラを立ち昇らせているあやせの姿があった。
桐乃─は少し離れた場所で正座して…させられている。その表情は半分夢うつつだ。
「えっと…あ、あやせさん…?なんでここにいらっしゃるのかな…」
「それはこっちのセリフです!全くこの変態は…わたしが少し油断するとこうなんだから!」
「じゃなくて。ここは一応俺の部屋なんだが」
「わたしが着いた時に、ちょうどご両親がお出かけする所だったんです!『まだ寝てるみたいだから
起こしてあげて。ごめんなさいねふふふふ』って言われたので、起こしに来たら…!」
つーかあのババア見に来てたのかよ!?兄妹のこんな所見てスルーしやがるご両親ぱねえわ!
「桐乃はこの通り意識が朦朧としてるし…お兄さん!一体何したんですか!?」
いやそれは…お前が無理やり起こしたからじゃねーのかよ。
「桐乃大丈夫?」
「……すけェ……やだ…もう…入んない…よ」
「この変態桐乃に何したしねェェェェェェェ!!」
ゴガッ!ゴゴガコン!…ドサリ
弁解するタイミングすら貰えず、まるでシスカリのごとき超必殺技を叩き込まれ崩れ落ちる俺…。
ぐ…あやせを隠しキャラにしたら最強なんじゃねーのか…。
「だ、だから何もしてねえっての!桐乃とゲームで口論して、あいつの思うどおりにしてやっただけだよ」
「本当に本当なんですね…?」(嘘だったらブチころしますよ…?)
…ってあれ?俺いま幻聴が聞こえなかったか。
「ふわ…京介…?ちゃんと理解できたでしょうね…って、あれ…?」
桐乃はと言うと、ようやく現実に戻ってきたようだ。
目をぱちくりさせて目の前にいる親友にようやく気付く。
「あ…あやせ?なんであやせがここに…」
「桐乃…本当に大丈夫?」
「大丈夫って何が?」
「お兄さんにヘンな事されなかったよね」
「ヘン…って……あ…あああああああ!?」
ようやく状況をつかんだらしい桐乃は顔を真っ赤にさせていく。
つかちょっと待て!その反応は俺がなんかしたと思われるじゃねーか!
ギギギギギ…という音と共にこちらをゆっくり振り返るあやせ。
「お兄さん…?やっぱり桐乃に…」(ブチ殺されないと分からないみたいですね)
「いやいやいやいや!っていうかお前なんか変だぞ!?なんで声が2つも聞こえる!?」
「それはお兄さんがわたしの逆鱗に触れたせいです」(桐乃に手を出すなと言っておいたはず)
「つか出してねえ!さっき言った通り桐乃の望みを叶えただけだって」
「桐乃の望み…?」
ふう…幻聴が消えた。あやせって何者なんだよ…。
「ねえ桐乃。お兄さんに何望んだの?」
「あ…ええっと…その…」
「き・り・の?」
「あう…そのね…一晩ギュッとして寝てって。でも、違うの!こいつがゲーム理解してくれないから
それを理解させようと…えっと…その…つもり…で」
あやせに鋭い視線を向けられてしどろもどろになる桐乃。
…桐乃でも本気のあやせには逆らえねーんだな…。
「…ったく、最近わたしに全くセクハラしないからおかしいとは思ってたんです」
「…は?」
「お兄さんが…その…わたしに……してくれないじゃないですか」
「ちょ、ちょっと待て!その発言はなにかおかしいって」
振り向くと…桐乃の目に何かが灯っているのが見える。ああ…怒ってらっしゃる。
「あんた…まさかあたしの知らない所であやせになんかした?」
「してねーよ!?」
「じゃあなんであやせがこんななのよ?」
「だから変なのは元々なんだって…って痛ェ!」
思いっきり桐乃とあやせに殴られた。知らないところでどんだけチャラ男にされてんだよ。
「まあ…でも分かりました」
「そうか。分かってくれればいいんだ」
納得するあやせ──は、そのまま部屋を出ていく。
「あやせ?」
「ちょっと待っててね桐乃。…それとお兄さんも」
俺と桐乃はお互いに顔を見合わせる…が、あやせの意図は読めない。
「ねえ…あんた本当に何もやってないよね?」
「やってねえよ。そりゃ前は発言が少しオチャメだったかもしれんが」
「まあいいけど。で、寝た感想は?」
「最高だった」
「な……!」
「だけど大変だったぜ…まあ色々と…な」
「……キモ」
「うるせえ」
「…シスコン」
「悪かったな」
「…超シスコン」
「どんだけ俺ってシスコンなんだ」
「…ぷっ。でも少しスッキリした」
─お互いどちらからともなく笑いだす。
と、カチャリと部屋のドアが開き──そこには
「あ…あやせ…さん?」
そこにいたのは、何故かパジャマに着替えたあやせが立っていた。
「じゃあ一緒に寝ましょうか」
「あ…あやせ。ええ…っと今何て?」
「もう!何度も言わせないで桐乃」
あやせは頬をほんのりと赤くさせる…なんでみんなこういう場面で俺を萌えさせようとするんだよ。
「わたしだって色々我慢してきたんですよ!だから2人にはバツとして同じ事をしてもらいますから」
「バツって…じゃなくて同じ事ってその……!まさかあやせって京介の事」
「……わたしは2人に強制的にお願いしてるんです」
強制かよ!それってもうお願いじゃないよね!断るとまた幻聴聞こえてきたりするんだよね!?
───かくして俺たちはあやせを満足させるべく再びベッドに潜りこんだ。
ちなみにそれぞれの位置はと言うと…俺が桐乃を抱き、桐乃はあやせを抱く形になる。
最初は2人であやせを挟むのかと思ったんだが『わたしに何をするつもりですか!ブチ殺しますよ!
──それだと気持ちが…揺らいでしまうから…だからこっちでいいんです!』なんて言われちまった。
「桐乃、暑くないか?」
「ん…平気。でもあんたの匂いさっきより強いね」
「…そりゃ3人で密着してる訳だしな。だけどあやせ、これで満足なのか?」
桐乃を挟んで向こう側に見えるあやせに問いかける。
「いいんですこれで。今までわたしにとって、凄く近くて──遠かったんですから」
「お前ってたまに難しい事言うよな」
「お兄さんが鈍感すぎるだけです」
「訳わかんねえ…ま、満足するってんならいいけどな」
…しかし…ふわ…ああ…また眠くなってきたな……このまま寝ちまおう…。
「じゃ…このまま寝るわ。まだ寝足りねえしな…」
「……お休み京介」
「お休みなさい…お兄さん」
───ちなみに俺たちは夕方までそのままぐっすり眠っていたらしい。
帰ってきたお袋が、俺たちを見つけてその後どうなったかは───みんなの想像にお任せする。
-------------
最終更新:2011年09月23日 07:57