266 名前:【SS】[sage] 投稿日:2011/09/26(月) 15:50:07.84 ID:Dv+DbQFa0 [1/2]
SS彼女が髪を黒く染めたら1-SIDE京介
時間軸設定は原作6巻辺りのイメージでお楽しみください。
3本立てとなっていますが、
彼女が髪を黒く染めたら1-SIDE京介
彼女が髪を黒く染めたら2-SIDE桐乃
彼女が髪を黒く染めたら3-SIDE???
の順に読まれると面白いかと思います。
「よっしゃあ! これでコンプしたぜ」
寝むい目を擦りつつ俺は小さくガッツポーズをあげた。時計を見ると今は深夜の3時過ぎを指している。
何とか間に合ってよかったぞ。桐乃に『今日中に終わらせる事。遅れたら死刑だかんね!』と言われてたからな。
俺がやっていたのは≪イメチェンした妹とお兄ちゃんが恋をしたら≫と言う正統派(らしい)エロゲだ。
妹がワガママで見た目も大嫌いと言う兄が、イメチェンした妹を見て恋に落ちるって設定なんだが
妹がイメチェンした位で恋愛関係になる兄妹がどこにいるっつーんだよ! 作った奴って絶対に妹いないだろ。
まあいい。とりあえず早くコイツを返して眠りたい。そっと部屋を出た俺は、隣に見える桐乃の部屋に向かった。
ドアを軽くノックし、ノブを捻って─って開いてやがる。
去年だと鍵が閉まってたんだがな、などと思いつつドアを開ける。
──と、そこで俺はありえない存在をこの目で見た。
「きり…の、って。おわ!? あ、あやせ……さん?」
そこに立っていたのは黒いロングヘアを持つ少女だった。その少女は部屋の奥にあるベッドの方を見ている。
あ、あれってあやせだよ…な。つかなんで桐乃の部屋にいるんだよ!? じゃねえ! 桐乃はどこに?
俺の声に反応した少女はびくっと肩を震わせ、ゆっくりとこちらを振り向く。
「…へ? まさか桐乃、お前…か?」
振り向いた少女は、魅力的なマル顔を持ち前髪にヘアピンを付けた俺の妹。桐乃だった。
桐乃は、俺の顔を見るなり表情を引きつらせる。
「あ、ああああんた! なんであたしの部屋に来てんの!?」
「いや、ええと…ってなんで俺が慌ててんだよ! お前が今日までにエロゲコンプしとけつってたから
さっきまでやってたんじゃねえか。んでついさっき終わったんで返しに来たんだよ。じゃねえ!
桐乃、お前その頭はなんだ? なんでその…黒い髪なんだよ」
黒い桐乃のロングヘアーを見ながら、ふと1年前の夢を思い出す。そう言えばあの時夢に出てきた
桐乃ってこんな髪だったっけな。しかも素直で兄思いだし、あれなら恋人になってもいいかもしれねえ
──と、俺は今何考えてた!? 妹と恋? まるでさっきやってたエロゲーじゃねえかよ!
「こ、これは違うっての! 今度やるモデルの仕事で使うから試してただけ」
「モデルの仕事でって、わざわざ髪染めさせるってのか?」
幾ら仕事つっても女子中学生の髪染めさせるとか無いだろ。一応これでも俺の妹だし、
その妹を玩具みたいに扱わせんのは俺だって許せねえぞ。
「大丈夫だって。数時間で落ちるやつだし。それに髪傷めたりしないから」
「そうなのか?」
「うん。そんなキケンなのだったらあたしだってオッケーしないってば。水で洗うとすぐ落ちるし」
「ならいいけどよ。俺の妹にヘンなもん使わせてるんじゃねえかと焦ったぞ」
ほっとする俺を見てニヤニヤしだす桐乃。
「へー。ふーん。あんたあたしの事がそんなに心配なんだ? チョー焦る位に」
このやろ…心配して損しちまったぜ。まあこれでこそ桐乃だよな。
「へっ! 心配なんてしてねーよ」
「はいはい。ま、あんたに心配なんてされてもキモいだけだし」
黒髪で偉そうな態度をみせる桐乃。髪の色が違うだけで中身は変わってねえな。
まあ当然って言えば当然か。だけど髪を染めるってどんな仕事なんだろうな。
「それで一体どんな仕事なんだ? 桐乃がわざわざ髪を染めるほどってよっぽどなんだろ?」
「え…ええっと…その」
そこで何故か言いよどむ。まさか人に言えない内容じゃないよ…な?
「えっと──そう! 黒髪の妹が実の兄と見つめあってるシーンが撮りたいんだって!」
「ぶはっ! ちょ、ちょっと待て! なんでそこで実の兄なんだ!」
まさしくさっきやってたエロゲでおんなじシーンあったんだよね! あれは1人で見てても
気まずいなんてレベルじゃなかったぞ!? 夕日を背に頬を染めて見つめあう兄妹─いやいやいや。
「そう言う設定なんだからしょうがないじゃん! あ、あたしだってキモすぎて止めてって感じだし。
でも、あんたがそう言うつもりならしょうがないかなって。あんたとんでもないシスコンだし」
「ちょっと待てい!? なんでそこで俺が入ってる! それってモデルの仕事じゃないのか?」
さすがに実の兄妹だぞ、自他共に認める美少女つっても一応は兄妹なんだぞ。
「そ、そう仕事の話! そう言うシチュの子撮りたいって話」
「そう言うシチュって…黒髪だったらあやせとかいるだろ。髪染めさせてまで、なんで桐乃なんだ?」
「あやせは一人っ子だから、そう言う表情出すのって難しいみたいでさ。だからあたしがやんの」
「そう言う事かよ」
一応は納得がいった。モデルってのは表情も重要らしいからな。
「そう言うワケだから、あんた彼氏やって」
「無茶言うな! 俺が兄貴だからつってもモデル経験なんてねーぞ!」
「違うっての。実際の仕事はあたしだけ、あんたは表情を作る手伝いしろって事」
「兄妹設定だってのに、1人で撮るのか?」
「当たり前じゃん。相手役なんていたらあたしが受ける訳ないっての」
「仕事じゃねえのか? なんで受けないんだよ」
「…うっさいバカ」
仕事って好き嫌いでやっていいのかよ。まあ俺はそういう業界知らないし、普段の我儘を知る身としては
桐乃の性格でも見た目さえよけりゃ問題ないんだろう、なんて想像してみる。
しかし眠いな。エロゲ返して帰るつもりだったが、さすがにそのまま帰してはくれないだろう。
仕方ねえ、桐乃が納得するまで手伝ってやるか。嫌いあってるとは言え、俺たちは兄妹なんだしな。
「んで、俺はどうすればいいんだ?」
素人の俺に頼むぐらいだし、横に座ってろとか簡単な内容なんだろう。
「あんた、あたしに愛をささやいてみて」
ぶほっ! 盛大に吹いた。
「ま、待て! さすがにそれはマズイだろ!? 俺たちは兄妹だぞ?」
桐乃が黒髪になってるせいか、俺は思わぬ想像を働かせてしまう。いつもと違って、その…
清楚なイメージがあるんだよな。なんて言うか別の意味で魅力的って言うかなんていうかとにかく可愛い。
「か、勘違いすんなっての! あんたの言葉であ、あたしが表情イメージしなきゃなんないの!」
ああ…そう言う事か。今日の俺はなんだかヤバイな。
「じゃ、じゃ行くぞ?」
「かかってこいっての!」
お前に襲いかかる訳じゃないからね。そんな事したら、高校卒業までにどこかの施設にお世話になっちまう。
「桐乃……お前が好きだ」
「ふぇ!? あ、ああああのそそその」
いきなり真っ赤な顔でうろたえ出す桐乃。つかこんなんで大丈夫かよ。
俺だってマジで死ぬほど恥ずかしいんだぜ。
「今のじゃ駄目か?」
「ま、まだなんか足りない」
ちっ。今のじゃ駄目なのかよ。ならこれで…。
「俺の瞳には、お前しか映ってないんだぜ?」
「…あんたそれ、今返してくれたエロゲのセリフまんまでしょ」
なぜばれた!? くそっ…桐乃の記憶力はエロゲのセリフをすべて暗記してやがったか──ならば!。
「桐乃…」
俺は桐乃を見つめながら、その両肩を軽く手で掴む。
「あ、あんた何を…」
少し不安げな表情を見せる桐乃。黒髪の清楚な雰囲気と、甘い花のような香りが俺を狂わせていく。
そう言えば、今日も香水つけてるんだな、などと考えつつ俺の中に浮かんだ言葉をそっと放つ。
「お前を……誰よりも愛している」
「……!?」ガタンッ!
桐乃の見せた表情は、今まで見た中でも最高に美しいと感じた。
やべえな。俺もなんだかおかしくなっちまったみたいだ。
俺の言葉を聞いた桐乃は、目を潤ませながらじっと俺を見つめて来る。
待ってくれ、そんな目で見つめられたら冗談じゃ済まないっての…。
「あ、あたしもあんたの事………し、てるから」
桐乃が何か言ったような気がするが、頭がぼーっとしていてうまく聞こえない。
───だけど、きっとこれで大丈夫だよな。こんなに素敵な表情の桐乃を俺は今まで見た事がないから。
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最終更新:2011年09月26日 21:59