272 名前:【SS】あやかドール 1/3[sage] 投稿日:2011/09/26(月) 16:48:30.44 ID:ya825ESv0 [5/14]
「うっひょぉぉぉぉぉ!!!
キタキタキタキタァァァァァァアアア!!!!」
隣の部屋で桐乃が発狂した。
「このレベルは珍しいな。
この間桐乃が入手した、メルル抱き枕以来じゃないか?」
桐乃に自慢された表が変身途中(つまりマッパ)で、
裏が戦闘でズタボロ(つまりほぼマッパ)のメルル抱き枕は持ってるだけで逮捕されかねないシロモノだった。
「今度は何を手に入れたんだ?」
なんか気になる。
どうせしばらくすれば自慢しに俺の部屋に現れるだろうが、その前にこちらから出向くか。
「おい桐乃、どうしたんだ?」
桐乃の部屋の扉をノックし声をかけしばらくすると、扉がガチャリと開き桐乃が顔を覗かせた。
「な~に?」
こちらを見る桐乃の顔は蕩け切っている。
いつぞやの黒猫姉妹と温泉に行くと張り切っていたときと同じ顔だ。
まさかこのシスコンにしてロリコン、黒猫姉妹を拉致ってきたんじゃないだろうな。
「隣の部屋から奇声が聞こえてきたんでな。
心配になって見に来たんだよ」
「はぁ?あたし奇声なんて上げてないし」
思いっきり上げてたけどな。
「それで、何が届いたんだ?」
「これこれ!見て見て!」
桐乃が俺の手を掴むと部屋の中に俺を引き入れ、ベッドの上においてあるソレを指差した。
「これは、あやせ・・・・・・じゃなくて、あやかのドールか?」
『ラブタッチ』の攻略キャラの一人で、あやせにそっくりなヒロイン『あやか』を小さくした姿がそこにはあった。
「うん。あやかの60cmドールだよ」
「おまえ、とうとうドールにまで手を出し始めたのか・・・・・・」
エロゲ、抱き枕、そしてドール。
誰もが躊躇し、『これに手を出したら終わりだろ・・・・・・』と考える3つの壁を、こいつはいともたやすく乗り越えちまったのか・・・・・・
さすがは高坂桐乃様だぜ!そこにシビレもしないし、憧れないがな!
「あたしは女の子なんだから、ドールくらい持っててもおかしくないでしょ?」
そういえばそうだな。
中身がキモオタだからヤバいと思ったが、女の子が人形遊びをするのはいたって普通だよな。
まぁ、中学生ともなるとちっとは希少だとは思うがよ。
「それに見てよ、このデキ。
ゲームからそのまま飛び出してきたみたいっしょ?
前から気になってたんだけどさぁ、ドールスレを覗いてみたらスッゴイ可愛い写真がいっぱい貼られてて、つい買っちゃった♪」
「そ、そうか」
ラブタッチには一時期ハマったし、生きているかのように見えるこのドールのデキがすごく良いのはわかるんだけどよ、
俺にはそれ以上に、桐乃のだらしなく緩んだ顔が気になった。
「うぇひひひひひ。
これからは毎日一緒にいてあげましゅからね~」
前言撤回。
これはやっぱり、女の子のお人形遊びとは似て非なる、もっと恐ろしい何かだ。
桐乃はベッドの上のあやかを抱き上げると様々なポーズをとらせ始めた。
ゲーム内でよく目にしたポーズから、女の子座りしながら上目遣いでこちらを見つめるあざといポーズなど、どれもこれもあやかの魅力を
引き出すものばかりだ。
さすが現役モデルだ。映えるポーズをよくわかってるぜ。
「うわぁぁぁ。
なにコレ。思ってた以上にマジ可愛いんですけど。
こんな可愛い子をお迎えできて、あたし最高に幸せ~!」
桐乃があやかを抱きしめながら床をゴロゴロと転げまわる。
273 名前:【SS】あやかドール 2/3[sage] 投稿日:2011/09/26(月) 16:48:52.40 ID:ya825ESv0 [6/14]
・・・・・・ナニカ、イライラスルンダガ。
俺が胸のモヤモヤと闘いながら桐乃とあやかを見ていると、桐乃は陶酔した眼であやかを見つめ、
「大好きだよ、あやかちゃん!
むちゅぅぅ~」
と、口をタコのようにしてあやかを抱き寄せた。
これは―
「ぅぅぅ~・・・・・・あれ?
ちょっと、あんたなに人のあやかちゃんを勝手に取り上げてんのよ!」
桐乃の言うとおり、俺はいつの間にか桐乃からあやかを取り上げていた。
「そ、それはだな、え~と・・・・・・」
理由を説明しようするが、どうにも思いつかない。
なぜなら、俺自身無意識の内に行動に出ていたからだ。
「もしかして・・・・・・あんた、嫉妬したの?」
桐乃は蕩けた顔を真剣なものに変え、俺のほうをじっと見つめてきた。
「しっと・・・・・・?」
どういう意味だ?そもそも、俺が何に嫉妬しなきゃいけないんだよ。
「そう、嫉妬。
あんたもラブタッチに嵌ってたし、自分の嫁があたしに奪われると思ったんでしょ。
二次嫁を三次元に持ち込むのは止めてよね」
「おまえが言うなよ!」
「あたしは二次と三次の区別くらいちゃんとついてるし。
ねー、あやかちゃん♪」
ダメだこいつ、早く何とかしないと・・・・・・
「それに、もしあたしに嫉妬したんじゃないとすると、さっきの行動はなんなの?」
「それはだな・・・・・・」
尋ねる桐乃に、再び言いよどむ。
俺自身わからないんだから、仕方があるまい。
悩む俺の様子を見て桐乃は、
「もしかして、あんたが嫉妬したのってあたしじゃなくて・・・・・・」
「何か言ったか?」
呟く桐乃の言葉が聞き取れず、俺はそう尋ねたが、
「なんでもない!
それよりさ、あんた、あたしとあやかちゃんがイチャつくのがそんなにイヤなの?」
「そ、そうみたいだな」
自分でもよくわからんが。
「ふ~ん。
まぁ、あんたがどうしてもって言うなら、あんたの前であやかちゃんとイチャつくのは止めてあげる。
・・・・・・あんたが嫌がることはしたくないし」
「マジか!?」
「でも、あたしがあやかちゃんにちゅっちゅするのを止めさせておいて、
あんたからは何もなし?」
そうだよな、確かに桐乃だけ我慢するのは不公平だ。
それなら・・・・・・
「じゃあ、桐乃」
このときの俺は何をトチ狂ったのか、こんなことを言ってしまった。
「桐乃があやかにちゅっちゅする代わりに、俺が桐乃にちゅっちゅしてやるぜ!」
274 名前:【SS】あやかドール 3/3[sage] 投稿日:2011/09/26(月) 16:49:33.58 ID:ya825ESv0 [7/14]
「~♪~♪」
俺と桐乃は、部屋で仲良くパソコンのディスプレイでメルルを見ていた。
正確に言えば、あやかを膝の上に乗せ抱きしめる桐乃を、俺が両足の間に座らせ、後ろから抱きしめていた。
「~♪~♪~♪~♪」
俺の提案が受け入れられた結果がコレなんだが・・・・・・
確かにあの時の俺はヘンなことを提案しちまったが、なんで桐乃もその提案に乗っちまったんだ?
上機嫌にメルルを見る桐乃を、後ろから優しく抱きしめながらそんなことを考える。
「ねえ、あやかちゃん、やっぱメルルは最高だよね!」
「そうだな、桐乃」
桐乃の膝の上にいるあやかの代わりに、俺が返事する。
「このまま最後まで見ちゃいたいんだけど、そうなると寝る時間ないし、今日はこの辺で終わりにしよっか」
「ああ、助かるぜ」
昨日もこれくらいの時間に切り上げたんだが、まだまだ全然慣れねえ・・・・・・
このままあと二時間三時間も桐乃を抱きしめ続けることはさすがに無理だ。
色々と憔悴した俺を、桐乃はちらりと横目で見ると、すぐに視線をあやかに向け、
「それじゃあ、寝る前に一緒にお風呂にはいろっか。
ねぇ、あやかちゃん♪」
と言った。
「おい。ドールをお風呂に入れるのはマズいんじゃないか?」
無駄だとは思うが、一応言ってみる。
「ビニール袋に入れるなり、水着なりを着せればたぶんOKだって」
桐乃は視線をあやかから俺に移すと、真っ赤な顔で上目使いをしながら、
「それとも、あたしとあやかが一緒にお風呂はいるの、イヤなの?」
「イヤだ!!」
つい叫んでしまった。
「仕方ないな。桐乃とあやかがイチャつくのはイヤだし、代わりに俺が桐乃と一緒にお風呂に入ってやるよ」
桐乃があやかにちゅっちゅする代わりに、俺が桐乃にちゅっちゅする。
俺から言い出したことだ。
だから、仕方がない。
「・・・・・・キモ」
キモいならあやかと一緒にお風呂に入るなんて言わなきゃいいだろ?
「それと、お風呂から上がったら、おやすみのチューして、それから抱きしめて寝るから。
いい?」
「全然ダメだ。だから俺が代わりにやってやるよ」
まったく、仕方がない。
桐乃があやかを抱きしめる代わりに、俺が桐乃の手をとると、俺たちは二人で部屋を出た。
「・・・・・・うへぇ」
誰もいない部屋でなにやら声が発せられたが、その声は誰にも届かなかった。
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最終更新:2011年09月26日 22:01