528 名前:【SS】[sage] 投稿日:2011/09/27(火) 17:48:49.05 ID:7zwRRU3e0 [5/13]
タイトル:温泉旅行
俺は今、桐乃と温泉旅行に来ている。話すと長くなるので要約するが、俺が商店街で当て
た温泉旅行ペア1泊宿泊券をお袋に渡そうと思ったら親父の都合がつかなくて、俺たちが
替わりに来ている。
まぁ正確には、どうしようか悩んでいる俺とお袋にリビングで聞き耳を立てていた桐乃が
「あたし、行きたい」
と言ったことでこの状況になっている。
「桐乃、おまえ一泊なのになんでこんなに荷物が多いんだ」
「うっさいな、女の子なんだからいろいろと必要なもんがあんの」
俺だったら3,4日は山で暮らせそうなくらいの荷物の量である。
「ほら、荷物持ちはがんばれ」
「はいはい」
桐乃は俺をおいてさっさと旅館の中に入っていく。俺は荷物を持ってその後を追う。
ロビーに着くと、桐乃が受付しているようであった。荷物を適当なところに置いて待って
いると、頬を赤らめた桐乃が戻ってきた。
「おまえ、何で顔赤くしてんだ」
「えっ?な、何でもない。へ、部屋は新館の3階だって・・・」
よくわからないやつだな・・・・
俺はそれ以上ツッコミは入れずに、仲居さんに荷物を渡すと部屋に案内してもらった。
「結構いい部屋だな」
俺たちが通された部屋は広々とした和室で、窓の外にはきれいな景色が見える。
そんな景色を見て、はしゃいだ桐乃が窓に駆け寄る。
「ねぇ、ねぇ、山が見える。湖もあるよ」
「おまえは子供か」
「うっさい、きれいな景色見て感動するのがどこが悪いのよ」
「そりゃ、別に悪くはないが、はしゃぎすぎだぞ」
「あんたは、このきれいな景色見て少しはその汚れた心を清めればいいのよ」
「俺の心のどこが汚れている」
俺たちのそんな光景を見た仲居さんが、お茶を入れながら
「ほんとうに、仲がよろしいようで」
「うるさくしてすいません」
「いいえ、かまいませんよ。今の時期は紅葉前なのでお客さんはほとんどいませんから」
俺が仲居さんと話していると
「すいません、あそこの湖って歩いて行けるんですか」
「ええ、遊歩道で30分くらいでしょうか」
「ねぇ、行ってみようよ」
「わかった、一休みしてからな」
俺たちはお茶を飲みながら一休みして、桐乃が行きたがっている湖に行ってみることにし
た。
「おい、何やってるんだ」
「いいじゃん、別に知ってる人いないんだし」
桐乃は俺の腕に抱きついている。
「そりゃそうだが・・・」
「こんな可愛い女の子に腕組んでもらって、ありがたく思いなさいよ」
「いや、おまえの胸が肘に・・・」
それを聞いた桐乃は頬を昂揚させる。
「・・・キモ、何変なこと考えてるのよ、変態」
「俺がやってるんじゃなく、おまえが・・・」
「このシスコン、あんたが意識しなけりゃいいんでしょ」
桐乃は頬を昂揚させながらそう言ったが、相変わらず腕を放そうとしない。俺はもう諦め
て振りほどくのをやめた。
何でこいつ、こんなにテンション高いんだ?
俺と桐乃は遊歩道を散策して湖まで行き、そこで一休みして旅館に戻ってきた。旅館に戻
る頃には夕方になっていた。
「そんじゃ、せっかくだし温泉に行ってみるか」
「そうだね」
俺と桐乃は、タオルを持って温泉に行った。まぁ桐乃は化粧道具やらマイシャンプーやら
いろいろ持っていったが・・・
部屋に戻ると、夕食の準備がすでに済んでいた。
「すごい、ご馳走だな」
「おいしそう」
福引の景品ということで当てにはしていなかったが、かなり豪勢な食事である。
「あっ、これ頂戴」
「待て、それは後で食おうと取っておいたのに」
「いいじゃん、これあげるから」
「くそー・・・・」
桐乃は、盗賊のごとく俺の料理を強奪していく。
「おまえ、そんなに食べるとあとで絶対増えて泣くぞ」
「うっ、うっさい、あとで調整すっからいいの」
食事が終わる頃を見計らって仲居さんがやってくる。仲居さんはお膳をかたづけながら
「露天風呂は行かれたでしょうか」
「いいえ、あるんですか」
「はい、離れにありまして、一度は行かれた方がよいかと」
「あっ、露天風呂なんてあるんだ、ねぇねぇ行ってみよ」
「今日はお客さんがいませんから、ゆっくり入られるといいですよ。その間にお布団を用
意させていただきますから」
「そうですか、それでは行ってみます」
俺はそう言うと、桐乃と露天風呂に行った。
「それじゃ、またあがったら外でな」
「うん」
そういって、俺は男湯に入った。露天風呂には人が誰もいなかった。
「広いな。少し奥に行ってみるか」
俺は奥の岩のところでゆっくりと温泉に浸かる。少しすると、湯煙でよく見えないが人影
が近づいてくる。
なんだ人がいるのか・・・・まぁ別にいいか
人影が近づいてくると、だんだんと輪郭がはっきりしてくる。そしてそれは俺のそばまで
やってくる。
「桐乃!?」
髪を上げタオルで前を隠してはいるが、まさしく桐乃であった。
俺の声を聞いて桐乃はビクンと跳ね上がる。
「こっ、この変態、なっ、なんであんたがここにいるのよ」
「あ、いやその・・・」
状況を説明しようとするが、俺も驚いてうまく説明できない。
「まさか、あたしを覗きに来たんじゃ・・・この変態、シスコン」
「そうじゃない、俺も男湯から奥に来たらここに・・・」
「うっさい、人がいないのをいいことに、きっと、あ、あたしを・・・」
桐乃は俺の頭を押さえてお湯に沈めようとする。必死に抵抗する俺の目に男湯と女湯を仕
切っている柵が見る。
「冷静になれ、あっあれを見ろ」
「な、何よ」
俺が指差したほうを桐乃と見ると、仕切りの柵は途中でなくなっていて、奥は混浴になっ
ているようだ。
「悪かった、俺はあっち行くから・・・」
桐乃が力を緩めると、俺は立ち上がって柵のあるほうに戻ろうとした。
「まっ、待って・・・」
桐乃はそう言いながら俺から少し離れたところで湯に浸かった。
「こ、今回は特別だから、こっち見ないでよ」
「わ・・・・・わかった」
俺がそう言うと、お互い黙ってしまう。そして無言のまま時が過ぎていく。
露天風呂から上がると、入り口で待ち合わせる。しかしさっきことが恥ずかしくて部屋ま
で無言のまま戻る。桐乃は、温泉に入っていてわからないがきっと顔を真っ赤にしている
のだろう。
だが部屋に戻ると次の試練が待ち構えていた。
「な、な、何じゃこりゃ!」
某刑事ドラマの殉職シーンのような声をあげてしまう。そう一組の布団に枕が二つ並べて
あったのだ。
「あっ、あははははは・・・」
「おまえの何か知ってるのか!?」
「えっ、いや受付のときご夫婦ですかとか聞かれて・・・」
「『はい』って言ったのか?」
「・・・キモ、そんなこと言ってない・・・」
「じゃあ、なんて」
「『兄妹』ですって言うのも変だから答えなかった・・・」
「いや別に言ってもかまわないだろ」
「えっ、だって『兄妹』で温泉旅行なんて何か変な関係とか思われそうだし・・・」
「おまえ、エロゲーのやりすぎ!脳みそ侵されてるぞ」
「うっさい、でどうするの?床で寝る?」
正直それは勘弁して欲しい。
「しょうがない・・・まぁ『兄妹』だし一緒に寝るくらい問題ないだろう」
「変なことしたら、殺すかんね」
「別にそんなことはしない、一緒に寝るだけだ」
「・・・シスコン」
その夜、俺と桐乃は一つの布団で寄り添いながら眠った。
完
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最終更新:2011年09月29日 20:33