176 名前:【SS】[sage] 投稿日:2011/10/04(火) 20:37:54.94 ID:GFdW+Tcp0 [4/5]
タイトル:天使の日

俺は桐乃と買い物に来ている。正確には桐乃の荷物持ちだが・・・
最近、桐乃とよく出かけるようになってきた。最初は正直面倒だったが今は結構楽しい。

「桐乃、今日は『天使の日』だな」

俺は、何気なくお店の店頭に貼ってあったポップを見ながらそんなことを言った。

「はぁ?あんた、いきなり何言ってるわけ」

桐乃は変な人でも見るかのような目で俺を見る。

「なんでそんな目で見る。俺としては『天使の日』だなんて言葉を聞くとだな、俺の心を
癒してくれそうな気がしてだな・・・」
「・・・キモ、あんた、マジで言ってるの?」
「もちろん、まじめに言ってるが」
「そう・・・・・」

桐乃は少し考え込むような顔をして黙ってしまった。
どうしたんだこいつ・・・・・・

「いきなり、黙ってどうした」
「えっ、いやなんでも・・・・・・」
「そうか・・・いきなり考え込むような顔をしてるから」

そのまま考え込んでいた桐乃だったが、しばらくすると俺に顔を向ける。

「あんたさ、そんなに・・・『天使の日』に興味があるの」
「えっ、まぁ興味あるっちゃあるな」
「わかった、あんたに後で『天使の日』を堪能させてあげるから、今日一日あたしの言う
こと聞きなさい」

桐乃は唐突にそんなことを言う。
俺は何を言ってるかわからなかったが、桐乃の真剣な顔を見るとイヤとも言えず

「おまえ、そんなの持ってるのかよ」
「はぁ?普通持ってるに決まってんじゃない」
「そうか・・・わかった、俺にできることならな」

と言った。

「それは大丈夫、あんたにできることだから・・・」

桐乃はそう言って、俺の腕に自分の腕を絡ませてきた。

「おい、いきなり何すんだよ」
「うっさい、ちゃんと言うこと聞きなさい。今日一日あんたはあたしの彼氏、いいわね」
「えーーーーーーーーーーーーーーー」

桐乃の唐突な発言に俺は、思わず大声をあげてしまった。

「何イヤなの?そんじゃ『天使の日』の件はなしね」
「・・・・・わかった」

俺は、『天使の日』という甘い魅力に逆らえず、桐乃に従うことにした。
そして腕を組んだまま街を歩いていく。

「なぁ、桐乃・・・・・」
「どうかした」
「いや、あのな俺の肘におまえのその・・・なんだ・・・」
「なに、はっきり言いなさいよね」
「おまえの胸が肘に・・・」

俺がそういうと、桐乃の顔がみるみる赤くなり

「変態、なにあたしの胸の感触を楽しんでのよ、このシスコン」
「そう言ってもだな、今日一日おまえの彼氏になれだなんて言われるとだな」
「・・・キモ、あんたは意識しすぎ、もっと耐性をつけなさい」

そう言って、桐乃は余計に胸を押し付けてくる。

「おまえ、余計に押し付けてくるな」
「うっさい、あんたに耐性をつけてもらうための訓練よ」

そんなやり取りをしながら、俺たちは桐乃の当初の目的でもあるお店に向かった。

「ねぇ、これなんかどうかな」
「おまえ、髪染めてるからその色だといまいちなだ」
「んー、やっぱそうか、でもデザインは気に入ってるんだよな」

俺たちは、買い物をしながらそんなやり取りをする。それを見ていた店員が奥から一着の
服を持ってやってくる。

「こちらの色でしたら、ございますが」
「あっ、すいません。桐乃、試着してみたらどうだ」
「うん」

桐乃は服を受け取って、試着してみる。

「どうかな」
「似合ってるな、まぁおまえは元がいいからな」
「彼氏さんもこう言ってますがどうされますか」

桐乃は店員の言葉を聞いて、顔を赤くしてしまう。俺は『兄妹』ですと言いそうになった
が、桐乃との約束を思い出して言うのをやめた。
買い物が終わると、お昼過ぎていた。

「昼過ぎたけど、どうする」
「それは彼氏がエスコートしてくれなきゃ、ちなみにジャンクフードは禁止」
「はいはい」

俺たちは近くのイタリアンレストランに入る。

「ここなら、俺の財布でも大丈夫そうだな」
「えっ、奢ってくれるの?あんた、たまにはいいこと言うじゃん」
「彼氏なんだからそれらしいところを見せないとな」
「・・・このシスコン」

食事が終わると、桐乃が頼んでいたドリンクが運ばれてきた。それを見た俺は言葉が出な
かった。

「ん、どうしたの」
「いや・・・それは・・・・・」
「食後のドリンク」
「それはわかる。俺が言ってるのは何でストローが二本ついているかだ」

そう桐乃が頼んだドリンクは、たくさんのフルーツが盛り付けられていて見た目も派手で
ある。しかしもっとも注目する点は、ハート型に細工されたストローが二本刺さっている
ことだ。

「カップル用だから」
「やっぱり・・・」
「彼氏と飲むなら、これっしょ」
「いや、別にそこまでこだわる必要は・・・・」
「うっさい、『天使の日』・・・」
「・・・わかりました」

俺は今までの苦労が水の泡になるのがいやなので、渋々桐乃に従った。ドリンクを飲んで
いる間、桐乃は顔を赤くはしていたが、ずっと笑顔であった。

「疲れた」

家に帰った俺は、自分の部屋に戻るとそうつぶやいた。
楽しくはあったが、一日中桐乃のハイテンションに引きずり回されて疲れ切っていた。
しばらくすると、部屋のドアをノックする音がした。

「ん、どうぞ」

俺がそう言うと、桐乃が入ってきた。

「お風呂、空いたから入ったら」
「おお、そうか、それじゃ行ってくる」
「あんたがお風呂に入っている間に、約束のやつ・・・準備しておくから」
「えっ、あっそうか・・・」

俺はそう言って風呂に向かった。正直、桐乃のハイテンションと疲労感で完全に約束のこ
とを忘れていた。
風呂からあがって、部屋に戻ると桐乃の姿はなかった。

何だあいつ、準備するとかいっといて・・・・・

しばらくしても、桐乃は戻ってこない。

「まぁいいか、もう寝よう・・・」

俺はそのまま寝ることにする。昼間の疲れもあってか、すぐに眠くなる。そして意識が眠
りの中に落ちそうになったとき、布団の中に誰かが入ってくる感触を感じた。
俺が確認しようと布団をめくろうとすると、

「変態、めくるな」

と桐乃がもぞもぞと布団から頭だけを出しながら言った。

「おまえ、何やってるんだ」
「昼間の約束守りにきた・・・」
「『天使の日』か」
「そう・・・」
「添い寝と『天使の日』に何の関係がある」
「添い寝はついでというか・・・恥ずかしいから・・・」

添い寝も十分に恥ずかしいだろ。
俺はそう突っ込みを入れようとした。しかし俺に抱きついてくる桐乃の感触がいつもと違
う。あるべきものがないような・・・

「おまえ・・・まさか・・・裸か」
「変態、下着は着けてるよ」
「よくわからん、何でそんな格好する必要がある」
「あんた、楽しみにしてたじゃない・・・・・」
「『天使の日』は楽しみにしてたが、それと下着姿にどんな関係が・・・」
「あんた、マジで言ってんの?『天使の日』ってのは下着メーカーが作った記念日・・・」
「はっ?」

俺は一瞬何を言われているのかわからなかった。

「だから、あんたが『天使の日』を楽しみにしてたのは、あっあたしの・・・下着姿を堪
能したかった・・・からでしょ」

そう言われて、やっと意味がわかった。

「待て、おまえはすごい勘違いをしている。いや俺も『天使の日』の本当の意味を知らな
かったから、言い訳はできない。」
「どういうことよ」
「おまえが、天使のコスプレでも見せてくれるのかと気楽に考えてた・・・」

俺の言葉を聞いて、桐乃は俯きながら顔を真っ赤にする。

「・・・キモ、アキバじゃないんだから街中にコスプレの日なんて書いてあるわけないで
しょ、てかあたしはそんなもん持ってない」
「そう言われれば確かに・・・・」
「マジ信じらんない、あたしがどんな気持ちでこんな格好を・・・・・この変態」
「逆切れかよ」

そう言うと、俺の体にしがみついてくる。

「おい、そんな格好でしがみついてくんな」
「うっさい、今布団から出たらあんたに襲われる」
「襲わない・・・というかそんな格好で抱きつかれると・・・」
「・・・変態、あたしに変なことしたら一生あたしの奴隷だからね」
「変なことはしない、約束する」
「・・・わかった、それじゃおやすみ」
「おい待て、今の話の流れだと布団から出て行くんじゃないか」
「シスコンのあんたには、罰として『天使の日』を堪能させてやる」

そして桐乃は俺にしがみついたまま眠ってしまった。俺はそのまま悶々とした夜を過ごす
のであった。






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最終更新:2011年10月04日 22:35