368 名前:【SS】[sage] 投稿日:2011/10/05(水) 01:00:59.67 ID:CVKwMpTp0 [1/2]
タイトル:『秋の祭典2011』に行こう(桐乃視点)
あたしは、京介のベッドに寝転がりながら携帯サイトを眺めていた。
これ、誘ったら付き合ってくれるかな。
あたしが見ているのは、『雷撃文庫秋の祭典2011』のサイトである。
まぁ迷っててもしょうがない、あたしはダメもとで聞いてみた・・・・・
「面白そうではあるな・・・それじゃ付き合ってやるか、場所はどこだ」
「アキバ・・・てか付き合ってあげるのは、あたし。そこんとこ間違いないでよね」
「おい、言い出したのはおまえだろ」
「うっさい、明日は朝から行くからちゃんと起きなさいよね」
やった、言ってみるもんだな、明日が楽しみ。
あたしはそう思い、京介の布団に入る。しかし京介はそれが不満そうだ。
「待て、そこで寝る気か。俺のベッドだぞ」
「あんたの寝る場所は空けといてあげる。シスコンのあんたはこんな可愛い妹と添い寝で
きるんだから、感謝しなさいよね」
「おまえ、いつもそうやって・・・・・俺に襲われるかもとか考えないのかよ」
「変態、もし襲ったら、あんたは一生あたしの奴隷だかんね。それじゃおやすみ」
あたしは断固としてここを動かない。
襲えるもんなら襲ってみなさいよ、ちゃんと責任とってもらうんだからね。
翌朝、あたしは京介に起こされる。
京介はちゃんと添い寝してくれたみたいだ。
「桐乃、起きろ」
「んー、もう少し・・・・・」
「こら、腕を放せ。てか俺の胸に顔を埋めるな。」
うっさいな、いーじゃん、少し余韻を楽しませなさいよね。
あたしが余韻を楽しんでる間にずいぶん時間が経ってしまい、アキバに着いたのは10時
過ぎていた。
『雷撃SHOP本店最後尾、100分待ち』
物販列の最後尾に着くと、そんな看板が立っていた。
完全に出遅れた。売り切れないといいけどな・・・・・
「おい桐乃、どうすんだよこれ」
「別にいいじゃん。昔の人も『何故、列に並ぶのか。そこに欲しいものがあるから』って
言ってるじゃん」
「おまえ、それ絶対違うから・・・・・」
「いいから、あんたも並べ」
そうしてあたしたちは列に並んだ。
列に並んでいる間、隣にいる京介はあたしを無視して、持ってきたラノベを読んでいる。
あんたさ、あたしが隣にいるんだからあたしと話する気ないわけ?
マジむかつく。
「あーもう、いつまで並べばいいのよ」
「おい、おまえさっきなんて言った。てかまだ30分経ってないぞ」
「いちいちうっさいな、てか喉渇いた、あんたジュース買ってきなさい」
「へいへい・・・・・」
京介は素直にジュースを買いに行ってしまった。
「これでいいか」
「へへっ、サンキュ~」
あたしはジュースを受け取って飲んだ。
あんた、もう少し別のところに気を使いなさいよね
そして1時間くらいすると、あたしたちはやっと物販ブースに入ることができた。中には
ラノベのオフィシャルグッズが並んでいる。
「結構、いろいろあるんだな・・・・・」
「どれを買おうかな、迷っちゃうな」
おかしの家に入ったヘンゼルとグレーテルってこんな気分なのかしら。あたしは夢心地に
なる。
しかし、京介の突然の言葉で我に返る。
「おいおい、そんなに買って持って帰れるのかよ」
「何言ってんの、あんた。あんたが持つに決まってるじゃない」
「やっぱりそうきたか・・・・・」
京介に荷物を渡すと、二人で出口に向かう。出口の脇ではトークショーが行われていた。
「あっ、くららちゃんがいる。ねぇねぇ、見ていこうよ」
「いいけど、立ち見になるぞ」
「別にいいよ、そんなの」
あたしは京介の手を引いて立ち見席に行く・・・・・・・
「んー、楽しかった」
「おまえは、こういうイベント来るとほんと周りと変わんないよな」
「いいじゃん別に、周りと一緒に楽しまないとソンだよ」
「はいはい、次はどうする」
えっと、パンフレットによると・・・・・
「うんとね、別の会場でラノベの挿絵とかの展示してるみたい」
「それじゃ、そっちを見てみるか」
展示会場の壁には、いろいろなラノベの挿絵とか表紙のパネルが展示されていた。
「ラノベだと小さい挿絵だが、このサイズで見ると結構迫力あるな」
「そうだね・・・」
京介は、入り口近くにあった黒いドレスに蝶の羽を纏ったヒロインのイラストに見とれて
いる。
あんた、そんなに黒がいいわけ?
あたしはそんな京介にむかついて背を向けると、反対側の壁にあった一枚のイラストに目
がいった。それは、ウエディングドレスを着たヒロインが主人公にお姫様抱っこされてい
る絵であった。絵のヒロインは、照れているようにも見えるが何か嬉しそうでもある。あ
たしはその絵から目が離せなくなる。
あたしが、こんなことされたらどうなるんだろう?
やっぱりこんな風に照れるのかな?
でも一度くらいされたいかな・・・
お願いしたらやってるれるかな・・・
あたしは京介にお姫様抱っこをされている自分を想像してしまう。なんかそれだけで鼓動
が早くなっていくような気がする。
「何だ、そんなに興味あるのか」と、背後から突然京介の声がした。あたしは思わずドキ
ッとしてしまう。
あたしはどもりながら、「えっ、いや少し憧れるというか・・・・・」と答えてしまう。
ちょっと待って、あたしなに恥ずかしいこと言ってるの。
「お姫様抱っこされたいのか?」
「このシスコン、誰があんたなんかに・・・・」
「いや、俺がするって言ってないだろ」
「うっさい」
何か恥ずかしいことをしゃべってしまった自分に落ち込む。同時にあまりにも淡白な京介
の反応にむかついてくる。
もうあいつ、あたしがあんなふうに言ったんだから『桐乃、俺がお姫様抱っこしてやるぜ』
くらい言えないの?
あたしは会場を出ても、自己嫌悪とむかつきが収まらなかった。
そんなあたしに京介は「桐乃、おみくじ奢ってやるから機嫌直せ」と会場入り口にあった
おみくじ売り場を指差しながら言った。
こいつはほんとうに普段は気が利かないくせに、何でこんなときは気が利くんだろう。そ
んな京介の気遣いを感じると、段々とむかつきと自己嫌悪が収まってくる。でもあたしも
素直じゃないから『機嫌直ったよ』なんて簡単には言えない。
「・・・キモ、そんなんであたしの機嫌とれると思わないでよね」
「いいから、一回やってみろよ」
「あんたがそこまで言うんだったら、一回やってあげる」
あたしは試しにおみくじを引いてみることにした。これを口実にうまく仲直りできるとい
いけど。あたしが引いたおみくじは『神メモのアリス』だった。
「わー、アリスちゃんだ可愛い~」
「よかったな、で何て書いてあるんだ」
おみくじに目を通してみる。そこには・・・
『【恋愛運】自分の気持ちに素直になれないと厳しそうです。せっかくの出会いを無駄に
しないためにも、たまには外出してみるなど積極的に動いてみて!』
と書かれていた。何かおみくじにまで、自分のことを見透かされているようで少し泣けて
きた。
「どうした、何て書いてあった」
「秘密」
あたしはそう言ってバッグにおみくじをしまい、おみくじに書いてあったことをもう一度
頭に浮かべる。
京介はいつも通りの口調で「一通り、見たけど後はどうする」と言う。
あたしは少し素直な気持ちで「ご飯食べて、アキバ見物しよう~」と答える。
そんなあたしを見て京介は、「飯くらいは奢ってやるよ」と言ってくれた。
そんなに気を使ってくれるなら思いっきりサービスしないとね。
あたしは、京介の腕に抱きついて思いっきりの笑顔で「あんたにしては、いいこと言うじ
ゃん。しょうがないな、この可愛いあたしがシスコンのあんたにエスコートされてあげる」
と答えた。
完
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最終更新:2011年10月05日 07:09