552 名前:【SS】[sage] 投稿日:2011/10/11(火) 00:02:07.20 ID:6DIjV+nZ0 [1/7]
タイトル:朝のジョギング
俺がソファーに座ってテレビを見ていると、隣に座った桐乃が俺のことをじっと見つめて
いる。
「ん?どうした?」
「・・・・・・・・・・」
俺が声を掛けても返事をせずに、じっと見つめ続けている。
『プニ・・・プニプニ』
突然、桐乃が俺のわき腹を摘む。
「おいやめろ、くすぐったい」
「・・・・・あんたさ・・・最近太ってない?」
桐乃は俺に衝撃的な言葉を投げつける。
「んー、特に運動してないし、受験生だから外に行く機会も減ってるしな・・・」
「そんなんだと、そのうちお腹がぽっこり出てくるかもよ」
「やっぱりそうか・・・・・」
俺は自分の腹を摘んでみる。確かに昔に比べると、少し肉がついてきたような気がする。
「少しは気にしなさいよね、あたしが恥ずかしいんだから・・・」
「何で、おまえが恥ずかしがる必要がある」
「うっさい、あ、あたしと一緒に歩いてるときに見られたらイヤじゃん」
「まあ、そうだな・・・・」
俺は何となく納得してしまう。確かに桐乃は見た目も可愛いし、外を歩いていたら目を引
きやすいだろう。
一緒に歩くとなると、確かに俺もこのままでは恥ずかしいかもな・・・
「と言われてもな、どうすればいいんだ?」
「朝、走ればいいんじゃない」
「そんなこと言われても、いきなりは無理だろ」
「だいじょうぶ、あたしと走ればいいから」
「はぁ、おまえ、毎朝走ってるのかよ」
「当たり前じゃない、もう三年だから部活とかもないし、走ってなかったらあたしもヤバ
イって」
俺は桐乃の体を見る。
引き締まったウエスト、大きすぎず小さすぎない胸、そしてきゅっと締まった尻、どれを
とっても完璧である。確かに部活とかで鍛えてないのなら、このスタイルを維持するのは
何かやっていないと不可能であろう。
「何見てんの」
「いや、確かにいい体してるなと・・・・・」
「こ、この変態、何いやらし目で見てんのよ」
桐乃は両腕で自分の体を隠すようにしながら後ずさりをする。
「べ、別にいやらしい意味ではなくてだな、さすがモデルやってるだけはあるなと関心し
ただけでだな・・・」
「・・・キモい、あたしのこと関心する暇あるんだったら、自分の心配しろっつうの」
桐乃は『フン!』と怒ったような顔をして外方を向いてしまう。
俺はそんな桐乃に
「わかった、明日からやってみるよ」
と答える。
それを聞いた桐乃はチラッと横目で俺の顔を見るのであった。
翌朝、目覚ましが鳴る前に事件は起こった。
「ほら、起きろ」
「ん、何だよ」
「何だよじゃない、起きろ」
「今、何時だと・・・・」
バチンと頬に強い痛みを感じた。
俺は一気に脳が覚醒されて目を開けた。目の前にはTシャツ姿の桐乃がいた。
「おい、何だよ」
「はぁ、何だよじゃないわよ。あんた今日から走るっていったじゃん」
「んなこと言ったか?」
「マジ信じらんない、昨日言ったじゃん」
俺は昨日のことを思い出してみる。
「そういや、言ったような。でもおまえに関係ないだろ」
「うっさい、あんたがサボんないように、あたしが監視してあげる。ありがたく思いなさ
いよね」
「おい・・・・」
「いいから、さっさと準備して玄関に集合。遅れんじゃないわよ」
桐乃は言いたいことだけ言うと、部屋を出て行った。これ以上怒らせると怖いので、俺は
動きやすい服装に着替えて準備する。
玄関を出ると、桐乃が腕組みして待っていた。
「遅い、あんたどれだけあたしを待たせる気?」
「いきなりだから、準備なんてしてなかったんだよ」
「うっさい、女の子を待たせるんじゃないわよ」
「おまえ、無茶苦茶言ってるな」
「いいから、さっさと走るわよ」
「はいはい・・・」
俺と桐乃は、走り始める。
「どこまで走るんだ」
「まあ、最初だから土手くらいまででいいかな」
「おまえの練習はいいのかよ」
「あ、あたしは、あんたがサボんないように監視しないといけないから」
「俺ってそんなに信用ないか」
「ち、違う、やっぱり一人で走るより一緒に走るほうがいいから・・・・」
「そうか・・・」
桐乃はそういうと俯いてしまう。走っているせいだろうか少し顔が赤い。
こいつはこいつなりに一緒に走る相手がほしかったのかな・・・
二人並んで朝の街を走る。じんわりと汗をかいてくるが、少し肌寒い朝の空気にあたると
清々しさを感じる。
隣にいる桐乃も汗が染み出してきている。シャツも濡れて肌に張り付き、適度な胸の膨ら
みをより強調する。
こうやってみると、ほんとにスタイルいいよな。
俺はそんな桐乃の姿に釘付けになる。
俺の視線に気づいたのか桐乃が俺に視線を向ける。
「ん、どうしたの?」
「べ、別になんでもないぞ」
俺は視線を逸らそうとするが、一瞬遅く桐乃に気づかれてしまう。
「変態、何妹の体に欲情してんのよ!」
「欲情なんてしてないぞ・・・ただ、きれいだなとは思ったけど・・・」
「・・・キモい、このシスコン」
そしてまた俺たちは無言で走り続ける。
目標の土手で折り返し、家の近くまで戻ってきたところで桐乃は自販機の前で立ち止まっ
た。
「どうした、ジュースでも買うのか」
「そうだけど、あんたお金持ってきてる?」
「いや、持ってきてないわ」
「そう・・・」
桐乃はスポーツドリンクを買うと、蓋を開けて少し飲んだ。そして少し考えてから俺の目
の前に差し出す。
「なんだよ」
「あんたも少し飲んだほうがいいよ」
「でもおまえの飲みかけじゃないか」
「はぁ、何意識してるわけ。別に『兄妹』なんだし関係ないじゃない」
「いいのかよ」
「あたしがいいって言ってんの、そのかわり全部飲まないでね・・・あたしもまだ飲みた
いから」
「わかった」
俺は桐乃からスポーツドリンクを受け取ると、それに口をつける。走って熱を帯びた体が
一気に冷やされる感覚がした。久しぶりに味わう清々しい気持ちだった。
しかし、それ以上に桐乃と同じペットボトルで飲みあう恥ずかしさのほうが大きかった。
「ほら、ありがとう」
俺は半分ぐらい飲んだところで桐乃にペットボトルを渡す。桐乃は躊躇なく残ったスポー
ツドリンクを飲み干す。そして飲み終えたペットボトルを眺めながら、少し微笑んでいる
ように見えた。
そこからは家まで歩きながら帰る。玄関の前に着くと桐乃は「どうだった」と聞いてきた。
「まあ、朝走るのも悪くないな」
「そうでしょ、あんたも少しは自分のこと気にしないとね」
「そうだけど、いまいちな・・・」
「いまいち、何よ」
「やる目標って言うのかそれがな」
俺がそう言うと、俺のわき腹を摘む。
「まずは、これ何とかしたら」
「おい、やめろ。確かにそうだが、すぐどうこうなるもんでもないだろ」
「そんなの当たり前じゃん、しばらく続けないとダメだよ」
「だから毎日続けるモチベーションがだな・・・」
「うっさいな、そんなにご褒美が欲しいなら・・・えい」
と言いながら俺の腰に腕を回して抱きついてくる。俺のお腹にあたる感触が、先ほどの汗
に濡れて強調された膨らみを思い起こさせる。
「おまえ、何やってんだよ」
「あんたシスコンだから、毎朝あたしがこうやってご褒美あげるって言ってんの。か、感
謝しなさいよね」
「いや、意味わかんないって」
「だから、どんだけ走って成果が出たか、あたしが測ってあげるっての」
と言って、顔を赤くしながらツンと横を向いてしまう。その髪から香る甘いシャンプーの
香りと桐乃の汗の匂いに心地よさを感じながら、
こんなご褒美があるならがんばれるかな・・・・・
と思った。
Fin
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最終更新:2011年10月11日 22:48