775 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/10/18(火) 22:17:06.30 ID:Avctv/090 [3/5]
「あんたって、好きな子のリコーダーぺろぺろすんの?」
「…………おまえは……俺の事どんな変態野郎だと思ってんだ……」
「だって変態じゃん。それ以上にシスコンだけど。にひひ」

やたら嬉しそうに俺をからかう桐乃。悪戯っぽい笑顔が可愛――じゃなくて
「なんでそんな突飛な話が出てくんだよ」
またエロゲーの影響か?と訝っていると
桐乃はお気楽な声でとんでもない事を言い出した。

「やー、明日から授業で使うから持って行ったんだけど、あたしのリコーダーぺろぺろされそうになったんだよね」
「……あ?」
「未遂だったんだけどぉ~、放課後取りに戻ったら、まさに交換されようとしてる最中で」
「よし、そいつの氏名と住所を教えろ」

俺は立ち上がり、迅速に今後の計画を練る。海か、山か……。
「へ? あ、あんた何? まさかその子になんかする気じゃ……」
「ちょっと躾をするだけだ」
事と次第によってはあやせにも協力してもらおう。
「ちょちょちょ、あんた目がマジだって!」

「おまえはいいのかよ!そんな変態が近くに居て!」
「変態は言いすぎだって!……そ、それに……気持ちはわかるっていうか…………」
「なん……だと……」
このエロゲーマーめ!そこは分かっちゃダメだろ!

……ちくしょう。教室にある以上、これからも常に危険が付き纏うわけで……気が気じゃねぇーって!
むぐぐぐぐ…………はっ!
「桐乃、これから毎日俺とリコーダーの練習しようぜ!」
「……は?」
「勉強の効率を上げるには指を動かして脳をほぐすことが大事なんだよ。リコーダーはうってつけだ。桐乃、協力してくれないか?」
名案だろコレ。これなら毎日リコーダー持ち帰ることになるし、毎日桐乃との時k……なんでもね。

「……あんたって…………。ま、まぁ?やってあげてもいいケド? たまたまリコーダーも持って帰ってきてるし?」
桐乃はそっぽを向きながら早口でまくし立てる。
よし。我ながら強引かとも思ったが、予想以上に上手くいってるぞ。
帰宅後すぐに俺の部屋へ来たらしく、桐乃は一緒に持ってきていた鞄からリコーダーを取り出す。

「……っと、そういや俺のリコーダーはどこやったっけな」
「下の引き出しっしょ。あんた、練習したいってのにしまった場所も忘れてたわけ?」
「うっせ。……よしよし、あった。こんなにちっちゃかったっけか」
なつかしーなリコーダー。ずいぶん長いことほったらかしにしてた気がするけど、かなり綺麗だし、すぐにでもはじめられそうだ。

「よっし、じゃあ」
「……っ! ちちちょと待って!」
「むぁ?」
いざ咥えようとしたところ、いきなり出鼻をくじかれて変な声が出てしまう。
「イキナリすぎだっての!あたしだって授業明日からなんだから、まだ一度もしてないんだかんね!」
「いや……そこまで覚悟いらんだろ」
何を言い出すんだこいつは。
と思って桐乃を見やると、リコーダーを両手で握り締めて真剣に吹き口を凝視している。
おいおい、それじゃ笛は吹けないぞ。
ひょっとしてこの完璧超人サマ、楽器が大の苦手とかなのか? はは、しょーがねー。

「ほれ、そうじゃなくてこう持つんだ」
「ひぇ?」
桐乃の指に手を重ねて、それぞれのポジションに動かしてやる。
ほっそい指だな……それにすごくやわらかくて、熱い。
「……………………」
「よし、それじゃとりあえず何か吹いてみようぜ」

俺なんかに指導されてしまったのがよっぽど恥ずかしいんだろう、顔を紅くして俯いている桐乃に促す。
指の配置まで忘れちゃってるくらいだから期待はできないが、どれくらいできるのか知っておかないとな。
さーて何から教えてやろうか……。
と考えていると、じっと吹き口を凝視したままの桐乃が不意にトーンを落とした声で尋ねてきた。

「………あんた、さ。 さっき言ってたじゃん? 変態だって」
「はん?何の話だよ」
「だから! あんたにとって好きな人のリコーダーぺろぺろしちゃうのは変態なの?」
……こいつ。楽器という弱点を俺に晒すのが嫌で話題を変えてきたな?
まぁいいさ。その不安そうな表情は、それを察せられるのが嫌だからってことだろう。俺は正直に答える。
「それも相手が好きでたまらないからこそなんだろうさ。おまえ自身は理解があるみたいだし、本当は俺が文句言えることじゃないかもな」
「……」
「だけど、やっぱ俺は嫌だ。桐乃のリコーダーがって考えると、俺が、めちゃくちゃ嫌だ」
「……ん…………やっぱ、あたしも同じかも。あたしの言葉で、あやせにも伝えておく」
「え?」
なんであやせが出てくんだ?
「ということで、これは没収~っ」
「な!?」

桐乃は俺からリコーダーをひったくると、二本のリコーダーを抱えて何故か機嫌よさそうにくるくると回る。
「おい、まだ全く練習してないじゃねーか」
「はいはい、ちゃんと返すって」
そのままひょいっと差し出されたリコーダーを手に取ると、桐乃はビシ!と自分のリコーダーを俺に突きつけた。

「練習はなし!最高の本番にすればいいだけだもんね!」



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最終更新:2011年10月21日 22:49