88 名前:【SS】[sage] 投稿日:2011/10/21(金) 01:15:45.95 ID:xTI8eH0k0 [1/3]
タイトル:とある日常の高坂京介
「ん、朝か」
まどろみの中でカーテンを開ける音が聞こえる。窓から差し込む日差しはまぶしい。今日
もいい天気みたいだな。
「ほら起きろ」
俺はいつものモーニングコールで目を覚ます。目の前にはパジャマ姿の桐乃がいる。
「おはよう、桐乃」
「おはよう、さっさと起きないと遅刻するよ」
「いつものしてくれたらすぐ起きるよ」
「・・・しょうがないんだから、このシスコンは」
桐乃は頬を染めて照れくさそうにしながら、俺の頬にキスをする。
「ほら、これでいいでしょ」
「おう、サンキューな、このまま抱きしめてやろうかと思ったぜ」
「マジキモい、そんな時間ないじゃん」
「そうだったな、そんじゃ着替えるわ」
「うん、あたしも部屋に戻って着替えるから」
桐乃はうれしそうな顔をしながら、俺の部屋を出ていく。俺も制服に着替えると下に降り
て顔を洗う。
「桐乃、そろそろ学校行くか」
「そうだね、それじゃいってきます」「いってきます」
「いってらっしゃい」
玄関を出ると、桐乃は自然に腕を絡ませてくる。
「今日も腕組んで行くのか」
「いいじゃん、こうやってくっ付いていたいんだし・・・いつもの角までだから・・・」
桐乃は頬を染めながらもじもじと下を向いてしまう。
「おはようございます、お兄さん、桐乃」
「おはよう、二人ともいつも仲いいんだから~」
いつもの角には、あやせと麻奈実が待っていた。
「「おはよう」」
俺と桐乃は、二人に挨拶するといったん分かれてそれぞれの学校に向かう。
これから夕方までの数時間桐乃がいない退屈な時間が始まる。
「きょうちゃん、何見てるの?」
「ん?桐乃からメールがきてたから確認してた」
「もうほんとに仲いいんだから、そのままお嫁さんにしちゃえば?」
「俺はそのつもりだけど」
「桐乃ちゃんはいいな・・・」
「ん?なんか言ったか」
「何でもない」
放課後はそんなたわいもない話をしながら、麻奈実と一緒に校舎を出る。普段はこのまま
帰ってもいいんだが、今日は桐乃からお誘いがきている。
「待たせたな、桐乃」
「あんた、あんまり女の子待たせんじゃないわよ」
「悪い、あとでなんかおごるから」
「ふん!」
「桐乃ちゃん、許してあげてよね・・・それじゃわたしはここで」
「麻奈実、それじゃまた明日」
「まなちゃん、今日もこいつ借りちゃってごめんね」
「なに言ってるの、きょうちゃんは別にわたしのじゃないよ~」
麻奈実はそう言うと、少し離れたところで手を振る友達たちのところへ走っていった。
「俺たちも行こうか」
「あんた、さっきの奢るって話忘れんじゃないわよ」
桐乃はそう言って、朝と同じように腕を絡めてくる。俺と桐乃は、そのまま寄り添うよう
にして駅前に向かう。
桐乃は、買い物と言っていたが実際には何か目的があるようでもない。
きっと俺とこうしていたい口実なんだろ。
しかし楽しい時間はすぐに過ぎてしまう・・・
「桐乃、もう時間だし帰るか」
「あっ、もうそんな時間?しょうがないか・・・」
俺たちはもう少し二人だけの時間を過ごしたい誘惑を振り払い家路についた。
「京介、桐乃お風呂入っちゃいなさい」
食事を終えて部屋で勉強していると、下からお袋の声が聞こえてきた。
どれ風呂に入るか・・・
俺はイスに座ったまま、くるっと後ろに振り返るとちゃぶ台で勉強している桐乃を見る。
「桐乃、風呂入るか」
「そうだね、あたし着替え取ってくるから先に入ってて」
「わかった」
桐乃は着替えを取りに自分の部屋に行く。俺は自分の着替えを持って先に風呂に入って待
つことにした。
「あんたの背中って広いね」
「そうか?親父のほうが広いだろ」
「しばらく、一緒に入ってないからわかんないや。それにあんたの背中はちょうどいい抱
き心地だし」
背中を洗ってくれていた桐乃が、不意に抱きついてくる。
「桐乃、あんまりじゃれつくなよ」
「別にいいじゃん、もっとギュってさせろ」
「ほらやめろ、今度はおまえの背中を洗ってやる」
「ふん、ケチなんだから」
俺は桐乃と場所を交換すると、桐乃の背中を洗ってやる。背中を洗い終わると、俺たちは
一緒に湯船に浸かって温まった。
風呂から出た俺たちは、部屋に戻ると勉強の続きをする。
勉強をしていると「ねえ、ここわかんないから教えて」と桐乃が時々質問にやってくる。
俺はそのたびに、桐乃がわかるまで教えてやる。
そんなことを繰り返すうちに時間は12時を過ぎてしまった。俺の勉強もだいぶ捗ったし
寝るにはいい時間だ。
俺は、後ろにいるはずの桐乃に声をかけてみる。
「桐乃、そろそろ寝る時間だな」
しかし桐乃からの返事はない。いないのかと思い、後ろを振り返ってみると桐乃はちゃぶ
台に突っ伏して眠っていた。
まったくこのお姫様は、風邪ひくぞ・・・
俺は桐乃を起こさないようにそっと布団に寝かせると、部屋の電気を消す。そして桐乃の
脇に寄り添うように眠る。
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「と言う夢を昨日見たんだよ。いやー、続きを見たかったんだけど途中で目が覚めちゃっ
てさ」
「・・・・・・」
「桐乃、どうしてそんな目で俺を見んだよ」
桐乃は、『何この変態、頭おかしいんじゃないの』とでも言いたそうな目をしながら俺を
睨んでいる。
「・・・マジキモい、あ、あんたどんな夢見てんのよ、この変態」
「どんな夢って、おまえと俺の日常生活だったけど・・・」
「あんた、シスコン拗らせて脳みそ溶けてんじゃないでしょうね。今聞いた夢のどこが日
常よ!?」
「普通の仲のいい『兄妹』の日常だと思うけどな・・・」
「は?普通の仲のいい『兄妹』は一緒に風呂入ったりしないんですけど、しかもあたしが
裸であんたに抱きついたですって!?マジキモいんですけど」
桐乃はそんなことを言いながら、足の裏で俺の顔面をぐりぐりと踏みつけてくる。
「おい痛いって、もうちょっと俺に優しくしろよ」
「はぁ?何か文句あんの?」
「夢の中の桐乃は、もっと優しかったぞ」
「うっさい、マジむかつく。もうこの話はヤメ。寝るわよ」
桐乃はそう言うと、部屋の電気を消して布団に潜り込んでくる。
「おい、そんなに引っ付くなよ」
「あんたは、いちいちうっさいわね。あんたの夢よりは健全でしょ」
桐乃は俺の腰にがっちりと腕を回して抱きついてくる。
「おまえ、胸がわき腹に当たってる」
「この変態、何意識してんのよ。夢のあんたは意識しなかったんでしょ」
「そんなの知んないって。現実だとやっぱり・・・・・」
「今晩はあたしががっちり押さえて、あんたが変な夢見ないようにしてあげる。感謝しな
さいよね」
「桐乃、そんなことやってると、そのうち俺に襲われるぞ」
「な、なに変なこと考えてるのよ。お、襲ったらちゃんと責任とってもらうかんね」
桐乃は恥ずかしくなったのか、腕を回したまま俺の胸に顔を埋める。
「安心しろ、襲わなくても責任とってやる」
「キモい、このシスコン・・・」
俺は優しく桐乃の頭を撫でてやると、桐乃は安心したのか目を閉じる。俺と桐乃はそのま
ま眠りについた。
今が現実なのかそれとも夢なのか・・・・
俺が見ている夢は果たしてどっちなんだろう。
まあ、どっちが夢だとしても桐乃がそばにいてくれるから・・・・・
Fin
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最終更新:2011年10月22日 23:44