61 名前:いたずらしちゃうぞ【SS】前編[sage] 投稿日:2011/10/27(木) 20:58:48.78 ID:SJT4h3VKO [2/4]
前スレ1000からお題を頂きまして……
「Trick or treat!」
「へっ??」
見ると、何やら黒づくめの衣装を身にまとった桐乃がそこにいた。魔女の格好か、これは?
「お菓子、ちょうだい」
「……なんで?」
「ハロウィンだからに決まってるじゃん。早く出して」
「いやいや、そんな用意とかしてないし。だいたい、俺がお前に菓子をくれって言ったらくれるのか?」
「ハァ? なんであんたにお菓子やらなきゃいけないワケ? まあいい、
あんたにイタズラするの決まったから、楽しみにしてなさいよ」
そう言いながら桐乃は部屋に戻っていくのだった。
翌朝
「わっ!!!」
突然後ろから桐乃に肩を押されたが、正直なところ、さほど驚きはしなかった。
「ふっ、その程度でビビるようなヤワな神経じゃねえよ」
「チッ」
「残念だったな。じゃあ言ってくるぜ」
学校に近づくにつれて、なんだか周囲の様子がおかしい。女子がやたらこっちを気にしてニヤニヤしてるようだが??
そうこうしてるうちに、赤城の奴が近づいてきた。
「高坂、お前って奴はぁ!!!」
「な、なんだよいきなり」
「それはこっちのセリフだ。これを見ろ!!!」
そう言って赤城は俺の背中に腕を伸ばすと何やら掴んでみせた。
「こ、これは………」
そこには
『俺は、世界の誰よりも一番可愛い妹が、大ッッ好きだぁぁぁぁぁぁーっ!』
と書かれた紙があった。
「高坂!! この前の勝負は瀬菜ちゃんが世界一可愛いってことで勝負がついた筈だ。
なのにぬけぬけと自分の妹が世界一可愛いとか……恥を知れ!!!」
「ま、待て、恥をさらされてるのは俺のほうだぞ。だいたい、こんな張り紙自分で背中に貼るやつがどこにいるんだ?
これはきっと妹の仕業だ。そうだ、ハロウィンに菓子をくれなかったからとか言ってだな……」
「い、妹とハロウィンだと……」
「人の話を聞けよ」
「うるさい! 妹と楽しくハロウィンやった自慢話かよ! 俺は瀬菜ちゃんにハロウィンネタを振ったのにスルーされたんだぞ…」
何やら話がおかしな方向に進みだしたが、とにかく校内で俺(プラス赤城)が、
どうしようもないシスコン野郎であることが確定したのは確かだった。
※※※
「どう、あたしのイタズラは」
得意気な顔をして聞いてくる桐乃。
「馬鹿だなあ、あんなのすぐに気付いて剥がしたわ。残念だったな」
「へぇー、じゃあなんで昼休みにせなちーのところにお兄さんが会いに来て、
あんたが世界一可愛い妹を持つ兄の座を奪いやがったなんて愚痴をこぼしてたのかなあ??」
ニヤニヤ笑いやがる桐乃。
赤城のヤツ……てか、学校で瀬菜にいちいち報告する内容か、それ?
「これであたしのイタズラは大成功。とばっちりを受けたせなちーにはちょっと気の毒だったかもしれないけどねえ」
チクショウ、このまま妹にやられっぱなしかよ……待てよ、そうか!
「この借りは返させてもらうからな。お前にもイタズラしてやるから覚悟しとけ」
「えっ??」
「俺もお前から菓子を貰えなかったからイタズラをする資格があるわけだ。見てろよ、顔真っ赤になるようなことしてやるからな」
……とまあ、桐乃の前で大見得を切ったわけだが、一体どうしたものだろうか?
62 名前:いたずらしちゃうぞ【SS】後編[sage] 投稿日:2011/10/27(木) 21:00:50.63 ID:SJT4h3VKO [3/4]
※※※
「………。」
勉強しながら、何かネタはないか考えてたんだが、これはというものが思い付かなかいまま、深夜になった。
「とりあえず、イタズラしてみるか」
俺は水性ペン片手に桐乃の部屋に向かった。桐乃の顔にヒゲでも書いてやろうと思ってた。
部屋に入ると、桐乃は熟睡していた。暗い部屋に、パソコンのモニターが光る。
「消し忘れか、仕方ねえなあ」
電源を落とそうと机に向かうと、なにやら紙と箱が置いてあるのに目が止まった。
『変なイタズラしちゃってごめん。これはあたしからのお詫びの気持ち。開けてみて
あと、あたしのことを世界最高の美少女だって言ってくれて ありがとね
ほんと、うれしかったんだよ、京介』
「桐乃………」
いろんな思いで胸がつまりそうになって、やっとの思いで俺は箱を開けた。
『ビョョョョーンン』
俺の視界に、なにやら緑色の丸い物体が迫ってきて、顔面に、命中した……
※※※
「またひっかかってやんの。ホント、あんたって単純なんだからw」
見ると、眠っていたはずの桐乃が飛び起きて、昼間のようにニヤニヤしている。
「これでまたあたしのイタズラ大成功なわけね。ねえねえ、イタズラしようとしてやり返されて、今どんな気持ち??」
あまりの急展開に、正直気が動転していた俺は、とにかく桐乃に一矢報いてやりたかった。
「ふ、ふん。これくらい読めてたさ。だいたいビックリ箱なんて古典的すぎるんだよ。それより俺はだなあ…」
「何よ、何かあんの?」
しかし、起きてる桐乃の前でイタズラ書きなんてできない。どうしたものか?
ふと、頭に学校での赤城とのやりとりが浮かんだ。これをネタに行ってみるか?
「赤城の件だが、あいつは『ホッペにチュー』写真があるから瀬菜が世界一だって頑として譲らなかった」
「そ、それがどうしたっていうワケ?」
「俺は、妹が世界一だってこんな形だが広めちゃったからな。それがウソにならない為にも、赤城に勝たないといけないわけだ」
「………。」
「それには、せ、世界一可愛い妹に、キスしなくちゃいけないからな……」
自分で言った「世界一可愛い妹」って言葉で、なぜか物凄く胸が高鳴るのを感じた。
桐乃を顔真っ赤にさせるために、イタズラでキスしてやろうと思ってた。
思ってた……はずなのに……なんだろうこの気持ち……
目の前にいる桐乃は世界一可愛い。それは間違いない。でもそれだけじゃない、それだけじゃないんだよ!
つまりだな、俺は、桐乃のことが、世界一大好きなんだよ!!!」
「な、なに? 止まっちゃってさ。イタズラするの? しないの?」
「イタズラは止めた。イタズラじゃなくなっちまったからな」
「何それ?」
「俺は本気で桐乃のことが好きになっちまったからキスをする。イタズラとか勝負とかもうカンケーねえ
桐乃のことが、大好きだ……」
「……馬鹿じゃん、変なところでカッコつけちゃってさ……
いいよ 京介。キスして」
お互い初めてで、すごいぎこちなかったけど、お互いに相手を好きで好きでたまらない気持ちでいっぱいだった。
「あたしも、京介のこと、大好きだよ」
「今夜は、一緒に寝てもいいか?」
「うん。京介……」
大好きなひとの温もりを感じながら、ハロウィンの夜はふけていった……
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最終更新:2011年10月28日 12:17