730 名前:【SS】[sage] 投稿日:2011/10/31(月) 14:04:03.36 ID:6EyLCvYi0
SSトクベツな悪戯
────トリック・オア・トリート! お菓子をくれなきゃ悪戯しちゃうぞ!
「おっかしいなあ。どこいったんだろ……。ねえ、京介もちゃんと探してる?」
振り返ると、桐乃は俺にケツを向けてベッドの下を覗き込んでいる所だった。
「……お、お前に言われなくても探してるって」
眼前で軽く左右に揺れるブツを名残惜しみながら、俺は壁際のタンスへと向き直る。
部屋の中だし楽勝だと軽く考えていたんだがな……一体どこに行きやがったんだ?
俺はつい一時間ほど前に呼び出され、桐乃の部屋に来ている。理由はいつもの兄妹プレイだ。
そこのお前! 勘違いするんじゃねえぞ。単に妹モノエロゲーを兄妹でやってただけの話だ。
──その時点で何か間違ってるんじゃないか、ってツッコミは無しな。
今回のゲームは兄貴が扮する素人マネージャーが妹をアイドル声優に仕立て上げるべく奮闘
するって内容なんだが──妙に既視感を感じるが、気のせいか──面白い機能が付いてるんだ。
このゲームはリアル日付に連動してイベントが発生するらしい。つまりその感動を分かち
合いたいと言う名目で俺が呼び出されたって寸法だ。
「き、京介もいつかリアルでやるハメになるかもしんないし、予行練習する必要があるの」
なんて言われて来たんだが、俺には正直ピンとこねえ。つか今日はアレ──ハロウィンじゃ
ねえか。相手が子供ってんなら分かるが、桐乃は俺に何をやれってんだ?
まあ、そんなこんなで一緒にプレイしてたんだが……途中でトラブルが発生しちまった。
さっきから桐乃が派手に動き回るもんだから、勢いで机の端に置いていたキーホルダーを
下に落としてしちまったんだ。で、それがどこを見渡しても見つからねえ。
かぼりんってカボチャの萌えキャラキーホルダーで、限定版の特典アイテムって事もあって
無くしたままだと、桐乃としては納得がいかないらしい。その辺の心情は同じアイテムを収集
してる奴らにならきっと分かってもらえるんじゃねえか?
『トリック・オア・トリート! お菓子をくれなきゃ悪戯しちゃうぞ!』
ディスプレイ画面には、カボチャをかぶった主人公が妹に襲いかかるシーンが表示されて
いる。ハートが散りばめられたカボチャがとてもシュールだが、桐乃いわく「辛い業界で身も
心も疲れ果てた妹を奮起させる為の兄の思いやりが感じられる」らしい。兄妹の絆を心と体で
感じると言う名イベントだと絶賛しているが──どう見積もっても俺には変態が襲いかかって
いる様にしか見えねえ。
『お、お兄ちゃん!? ダ、ダメだよ。あたし達は兄妹なんだから』
うお!? 勝手に進んでやがる──って、こいつは自動で台詞が進むんだっけな。
しかし早く探さねえと……名シーンを見逃したとか言って桐乃まで落ち込んじまうな。
桐乃に視線をやると、ベッドの下を探っていた手が止まっている。顔が僅かにパソコンへと
向いている所を見ると、ゲームが気になって仕方がない様にも思える。
「桐乃、先にゲーム進めちまうか? それから探してもいいだろ」
「ダメ! あれがないと……と、とにかく探して!」
ゲームの進行が気になってるらしく、桐乃は探しながらもチラチラと横目で画面を見ている。
──ったく、変な所で几帳面っつかなんつか。
そんな桐乃に呆れつつも好ましい感情を感じる。
桐乃の考えが全て分かる訳じゃねえが……とりあえず片っぱしから探すか。最悪イベントは
見直せばいいだけだしな。
『トリック・オア・トリート! お菓子をくれないキミには──悪戯決定だ!』
探している間もイベントは進んでいる様だ。視線をディスプレイに向けると、変態カボチャ
男(主人公)が妹へにじり寄っている。あと数シーン進めば妹は変態の毒牙にかかる事だろう。
このまま行くと──いいタイミングで気まずいシーン突入じゃねえかこの野郎!?
「こっちは無いなあ。京介そっちは────キャ!?」
「──っあぶねえ!」
俺の方へ歩き出そうとして、何かに躓いた桐乃。
桐乃の体を受けとめようとして、同じく何かに足を取られ盛大に仰向けに倒れる俺。
そんな俺の視線には倒れこんでくる桐乃の姿がスローモーションの如く感じられ──。
────チュ。
『ウェッヘッヘッヘ──うおお!?』
『やだっ お兄ちゃ──!?』
『────チュ』
『──トリック・オア・トリート! お菓子をくれないと悪戯しちゃうぞ!
甘くて酸っぱい二人にしか使えない最高の悪戯さ!』
その時──ディスプレイ以外の何処かから、声が聞こえた気がした。
-------------
最終更新:2011年11月01日 05:59