848 名前:【SS】 1/3[sage] 投稿日:2011/10/31(月) 23:41:27.39 ID:rsdhmYRgP [9/11]
何とか間にあった! と言うことでSS投下
タイトルは「Trick and treat~きりりんはただいま悪戯ちゅう~」
とある秋の日の夕暮れ。
外へ出かけた帰りの道すがら、今日がハロウィンだと言うことを思い出した。
「ハロウィンねぇ。つっても特別何かあるわけでもないか」
ハロウィンと言えばTrick or treat、お菓子くれなきゃ悪戯するぞ、って言うのが定番だ。
とはいえ、ハロウィン自体それほど日本でも流行ってる行事でもなく、田村屋でその手のセールをやってたり
しなければ俺も知ることがあったか怪しいもんである。
家でその手のイベントをしたがるやつと言えば真っ先に桐乃の顔が思い浮かぶが、今までそんなことをしていた記憶がない。
ま、桐乃はこういったイベントにはあまり興味もないだろうし、お菓子は用意しなくても平気だろう。
―――そんな風に思っていた時もありました。
「Trick or treat! お菓子くれないと悪戯するわよ」
その日の晩、いきなり俺の部屋へと押しかけてきた桐乃の第一声がそれだった。
おいおいおい、これはちょっと予想外だぞ。というか桐乃、お前ハロウィン知ってたのか。
それに桐乃、なんだその格好は。何やら頭に耳をつけていて服が、その、毛皮みたいなものだ
けってのはどうなんだ。
大事なところは隠れてるようだが、それにしても露出が大きすぎるだろう。
これはコスプレか? コスプレなのか? 狼男ならぬ狼女ってか? 襲い掛かっちゃうぞこのやろ
う。
・・・・・・冗談だからね? 本気にするなよ?
「――ちょっと、何か言いなさいよ」
「ああ、スマン。お前の格好に見とれてた」
「な!? ふ、フン! まあ? あたしのこの格好が可愛すぎて見とれちゃうのもわかるケド~。
でもなんかあんたの視線、いやらしい」
「お前はなんてことを言うんだ!?」
「ふぅん。じゃあお菓子持ってないわけね」
「そういうことになるな」
「じゃああんた、悪戯決定ね」
嬉しそうに口端をあげる桐乃。
きっと頭の中で俺にどんな悪戯をするかを考えてるに違いない。
なんともいやしい理由で笑顔になっているにも関わらず、その笑顔を可愛いと思ってしまった俺はもう手遅なんだろう。
だがな桐乃。そうは問屋がおろさないんだぜ?
ハロウィンを仕掛けるってことは、自分も仕掛けられるってことを忘れちゃ困るな!
「それより桐乃」
「何よ」
「トリックオアトリート! お菓子くれなきゃ悪戯するぞ!」
ふっ、決まった。
どうせ桐乃のことだ。仕掛けることばかりに頭がいって仕掛けられることまでは考えは回っていな
いだろう。
そう踏んだ俺のこの作戦だったのだが――
850 名前:【SS】 2/3[sage] 投稿日:2011/10/31(月) 23:42:11.29 ID:rsdhmYRgP [10/11]
「はいコレ」
「・・・・・・なんだと?」
悩むそぶりさえ見せずに差し出されたのは一箱のポッキー。
そう、桐乃はちゃんとしっかりお菓子を用意していたのである。
「どーせあんたのことだから、やったらやり返してくるだろうなあと思って用意してたの。
そしたら案の定だし。さっきのあんたのドヤ顔ちょーウケたんだけどw」
・・・・・・どうやら俺の行動は完全に読まれていたらしい。
俺ってそんなにわかりやすいんだろうかとちょっと凹むが、気を取り直す。
「ちっ、お菓子あるんだったらしかたねえな。悪戯してやろうと思ってたのに」
「残念でした~。あんたに悪戯されるなんて何されるかわかったもんじゃないし~?
悪戯と称して襲われちゃたまんないもんね」
「んなことするか!」
せいぜいおっぱいタッチさせろとかそれぐらいしかしねえよ!
・・・・・・冗談、冗談だからね? イヤだなあ、妹相手にそんなこと考えるわけないだろ?
・・・・・・タブンな。
「それより早くお菓子よこせよ。じゃねえと悪戯すんぞ」
「はいはい。・・・でもあたしだけあんたにお菓子あげるなんてなんか損した気分になるわね」
「んなこといわれてもな」
そういうイベントなんだからしかたねえだろ。
つかお前は俺に悪戯できるんだからそれぐらい多めに見ろと言いたい。
しかたなさそ~にポッキーを差し出す桐乃からそれを受け取ろうとした瞬間、ポッキーが引っ込められた。
「おい、なんで引っ込める」
まさか今更名残惜しくなったとでも言うつもりか?
どういうつもりだ、とポッキーに落としていた視線をあげて桐乃の顔を見てみると、何やら顔が赤くなっていた。
「? なんで顔赤くしてるんだ桐乃」
桐乃に問いかけるものの、桐乃は黙ったまま答えない。
そのかわりに、俺にくれるつもりだったはずのポッキーの箱を無言のまま開けてしまう。
まてまて、何でお前が開けちゃうわけ? それ俺にくれるつもりじゃなかったのかよ。
なんてことを思ってる間にも桐乃の手は止まらず、とうとう中のビニールまでをビリッと開けてしまった。
桐乃は中に入っているポッキーのうちの1本をつまみ上げて・・・何故か元に戻した。
出しては戻し、出しては戻しを繰り返す桐乃。
俺はその間、何故か邪魔をする気にもなれず、ことの成り行きを見守っていた。
そうしているうちに桐乃はようやく一本のポッキーを袋から抜き出した。
それは半ばで折れてしまっているやつで、長さは他のポッキーの半分ほどになってしまっている。
一体それをどうするつもりだ? と思っていると、桐乃はパクッとその先端を自分の口にくわえてしまった。
結局自分で食うのかよ! と心の中で突っ込みを入れる俺を誰が責められようか。
そして桐乃はポッキーを加えたまま俺のほうを向いた。
その顔はさっきよりも更に赤くなっている気がする。
851 名前:【SS】 3/3[sage] 投稿日:2011/10/31(月) 23:43:19.42 ID:rsdhmYRgP [11/11]
「ほ、ほら!」
「あん?」
「お、おかひ! さっさほたべなはいよ!」
「はい?」
ちょ、ちょっと待て、マ、まさかと思うが・・・・・・
「そ、その口にくわえてるポッキーを食え、と言うのかお前は!」
「ほ、ほう!」
「バ、バッカ! んなことできるわけねーだろ!」
ただでさえそんなに長くないポッキーが半分になってんだぞ!?
そんなものを直接食うようなことしたらお前・・・!
「い、いいはら!」
「いやいやいや! よくねーだろ!」
「くっ! いいからくいなはいよ! ほれはあたひのいたふらなの!
だからあんははコレを食べなくちゃはめなの!」
「なん・・・だと・・・!?」
つまり、コレは俺にお菓子を与えると同時に悪戯をしてるというのか桐乃は!?
・・・・・・まあ、それならしかたないな、うん。
だって俺はお菓子持ってなかったから悪戯されるのはしょうがないし?
そんでもって、桐乃はお菓子持ってたから俺にあげるのはおかしくないわけで。
だから俺はコレを甘んじてうけるほかないわけだ。
その際に生じるアレコレはまあ、目をつむらなくちゃいかんのだろう。
うん、しかたないもんな。しかたないしかたない・・・・・・
「――わかった」
「あ・・・・・・」
覚悟を決めて、桐乃が動かないように肩を掴むと桐乃が声をあげる。
「じゃあ、いくぞ?」
「う、うん。――ねえきょうふけ」
「なんだ?」
「はっぴーはろうぃん」
とりっく、あんど、とりーと
その後のことはあえて語る必要もないだろう。
俺は桐乃から悪戯を受けて、お菓子を貰った。それだけである。
強いて言うならば、桐乃からお菓子をすべてもらう頃には既に日付が変わっていたとか、
『何故か』異様に疲弊していた桐乃とそのまま一緒に寝ることになったとかその程度のことである。
まあ、こんなハロウィンも、悪くないな。
そんなことを思ったあるハロウィンの夜のことだった。
-END-
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最終更新:2011年11月01日 05:59