748 名前:【SS】[sage] 投稿日:2011/11/06(日) 00:48:16.01 ID:rony/F5x0 [1/9]
タイトル:妹で、そして恋人で・・・
「・・・あんた何見てんのよ、マジキモいんですケド」
向かいの席に座って餡蜜をうまそうに食べている桐乃が、ジロリとこちらを睨んでそんな
ことを言っている。
俺たちは今、とある紅葉スポットに来ている。別に紅葉狩りとかそんなんじゃなくて、桐
乃が学校の芸術コンクールに出す写真を撮るっていうんで俺が付き合っているわけだ。
「ああ、すまん。うまそうに食ってんなと思って・・・」
「もう、しょうがないんだから・・・・・」
そう、事の発端は一昨日、桐乃から校内芸術コンクールに何を出せばいいのか相談を受け
たことから始める。
コンクールは、テーマとして『季節』という漠然としたものが決められているだけで、特
に何を出すかは自由らしい。ようは生徒の自主性と創造性を尊重したお祭りみたいなもの
だ。こいつは、中学三年の思い出として何か出してみたいらしい。
まあ、入賞とかは特に狙っていないようだが、出すからにはそれなりのものを出したいと
いう桐乃らしい考えはあるようだ。
俺は最初、無難に絵を描けばいいだろうと言ったのだが、桐乃はあまり絵が得意ではない
らしい。そこで紆余曲折あり、紅葉を写真に収めることとなった。
もちろん俺が一緒に来る羽目になったのは、桐乃が強引に俺の同行を求めたからである。
俺が受験勉強ばっかりで引き篭もってるのを心配しているようだがどうだかな・・・
「・・・・・口開けなさいよ」
ボーっと考え事をしていた俺は桐乃言われるままに口を開ける。すると、口の中にひんや
りとした感触とほどよい甘さが広がる。
「モグモグ・・・・・うまいな、これ」
「でしょ♪」
スプーンを持って微笑む桐乃が答える。
あれ待てよ・・・・・これって・・・・・・っ!?
「桐乃、おまえ今何したんだ?」
「んっ?あんたがあたしの餡蜜食べたそうにしてたから、食べさせてあげたの。感謝しな
さいよね」
予想通り、桐乃は自分のスプーンで俺に餡蜜を食べさせていたようだ。まあいわゆる恋人
同士定番の『あーーーん♪』である。俺たちのことを見ている周りはきっと『リア充はシ
ネ!』と思ってるに違いない。
しかし当の桐乃はそんなのお構いなしと言わんばかりに、俺の口に入ったスプーンで餡蜜
を食べている。
まったくこいつは・・・・・
俺は桐乃の顔を見ながら、ため息をついた。
「あんた、何ため息なんかついちゃって、キモいんだけど・・・」
「・・・・・いや、なんでもねーよ」
「あっ、そうだ・・・・・・あーーーーーん♪」
俺が諦め半分で答えると、桐乃は何を思ったのか口を大きく開けて何かを催促してくる。
「おまえ、突然口開けてなんだよ」
「あんた、あたしの餡蜜食べたじゃない。だからあんたもあたしに食べさせないと不公平
でしょ」
「おまえが勝手に口に入れたんだろ」
「うっさい、いいから食べさせろ!・・・あーーーーーん♪」
桐乃はそう言いながら、再び口を開けて催促してくる。
俺はしょうがねーなと言わんばかりに、ぜんざいをスプーンで掬うと桐乃の口に運ぶ。
「・・・・・どうだ、うまいか?」
「こっちも甘すぎないで結構いけるかも・・・」
桐乃は嬉しそうな顔をしながらそう答えた。
食事を終えた俺たちは、当初の目的である写真撮影をするため渓流沿いにある遊歩道に向
かった。山肌から色取り取り紅葉の枝が張り出してきて渓流の川面に鮮やかな影を落とし
ている。まあ、まだ見ごろには少し早いんだろう緑色の葉っぱ混じってるけどな。
俺たちはそんな遊歩道を並んで散策する。
「うーん、なんかイメージと違うな・・・・・」
時折何かイメージが沸いたのか桐乃が、シャッターを切っては首を傾げている。
「どんなの撮れてんだよ?」
俺は桐乃が撮った写真が気になり、聞いてみた。
「これなんだけど・・・・・」
桐乃はカメラの液晶に撮った写真を表示させると俺に見せる。
「これだと、普通に観光で撮った写真だよな・・・」
それが写真を見た俺の第一印象であった。
「やっぱりそうだよね。うーーーーん、どうすればいいのかな・・・」
「ちょっと貸してみろ」
どうすればいいか分からずに煮詰まっている桐乃からカメラを借りると、俺は適当なアン
グルを見つけ何枚かシャッターを切ってみる。
「これなんかどうだ?」
「あっ、なんかすごい!結構いい感じかも。あんた、何でこんなテク知ってんのよ」
「ふふふ、それは企業秘密だ」
「なにキモいこと言ってんのよ」
俺は、種明かしをしろとばかりの表情を浮かべる桐乃に対し、自慢げな顔をしてみせる。
実は桐乃に誘われた後、こっそりとインターネットで写真の撮り方を調べておいたのであ
る。調べてるときは『俺なんでこんなことやってんだよ』って気持ちではあったが、桐乃
のこんな顔を見られて『まあ悪くないか』と思える。
その後、桐乃は何か感じがつかめたのか、俺の教えた方法を真似しながらいろいろなもの
を写真に収めていく。ときには自分なりのアレンジをしたりと、ほんと応用が効くという
か勉強熱心なやつだよな。
散策を続けながら写真を撮っていた俺たちは、いつしか見晴らしのいい高台にたどり着い
た。山裾を彩る木々は夕日を受けて緑の葉っぱすら紅い色に染め上げていた。
「ここ座ろっか」
「休憩すんなら、戻ろうぜ。もう夕方だし・・・」
「うっさい、いいから座れ!」
桐乃は半ば強引に俺をベンチに座らせる。そして桐乃はそんな俺の隣に寄り添うように腰
を降ろす。
「おい、何でそんなに引っ付いてんだよ」
「少し寒いからいいじゃん」
「そうかよ・・・」
俺はぶっきらぼうに答えると、桐乃と視線を合わせることができず正面にある夕日に映え
る山肌を眺めた。
『寒いなら帰ろう』とも言えたのだが、桐乃がこうしたことには何か意味があるんじゃと
思えて言うことができなかった。
「あんたさ、あたしが今日誘った理由わかる?」
桐乃がそんなことを言ってくる。横目で桐乃の顔を見ると俺と同じように正面の山肌に視
線を向けていた。
「そりゃ、受験勉強ばっかりで引き篭もってる俺を心配したんだろ?」
「それは半分・・・」
「あとの半分は、写真撮るためじゃねーのかよ」
俺は当たり前と言わんばかりにそう答える。しかし桐乃の答えは違っていた。
「ああ、それは・・・・・ついで・・・」
「はあ、ついでだと?」
桐乃の答えに呆れてしまい、俺は桐乃に視線を向ける。すると、さっきまで俺と同じよう
に山肌を眺めていたはずの桐乃が、真っ直ぐに俺の顔を見つめていた。しかもその顔は眉
をきゅっと引き締め真剣そのものである。そんな顔を見た俺は、次の言葉を続けることが
できない。
「あのさ、実はあんたに言いたいことがあって連れてきたの・・・ごめん」
普段は俺に頭を下げるというか、謝るということが『あたしの辞書にはない!』と言わん
ばかりの桐乃であるが、俺に『ごめん』と言ってくる。
呆れついでに怒ってやろうと思っていた俺であったが、その言葉に怒ることができなくな
ってしまう。
「・・・で、言いたいことって何だよ」
俺が桐乃に話を続けさせようとすると、桐乃は
「ちょっと待って・・・・・・」
と言って目を閉じる。そして何回か深呼吸をすると再び目を開ける。
「それじゃ言うね」
「おう・・・・・・・・」
桐乃は少し間を開けて、俺に聞き取れるようなはっきりとした声で
「あたしさ・・・『京介』のことが好きなの」
と言葉を紡いだ。
俺はその言葉にしばし反応することができなかった。桐乃はそんな俺の反応に訝しげな表
情を見せるが、すぐに穏やかな微笑みに変わる。そして俺が口を開くまでの間を繋がんと
ばかりに言葉を続ける。
「ほんとはさ・・・あんたから言ってもらおうって思ってたんだけど、あんた言ってくれ
ないし・・・今の関係が続くんなら、このままお婆ちゃんになってもいいかなとかも思っ
たけど・・・やっぱダメだった・・・」
俺は桐乃の言葉を聞きながら頭の中を整理した。
それって、兄貴の俺が好きって意味だろ?
でもお婆ちゃんになるまでこのままって何だよ・・・・・
「だからさ・・・今日あんたに告白するって決めて・・・・・告白したの。あんたが、ど
う思ってくれても構わない・・・・・あたしが『京介』を好きってことは、この先一生変
わらないから」
桐乃は言いたいことを全部言ったというようなすっきりした顔をして俺の顔を見つめる。
俺はここまで聞いて、ようやく頭の中の整理が追いついた。
「それって、俺のこと兄貴としてじゃなくて・・・その・・・好きってことだよな?」
しかし俺の口から出た言葉は、何とも間抜けなものであった。
「はぁ?あんた、あたしの話聞いてたの!?もちろんそうよ!」
「それっていつからだよ?」
桐乃は少し考えると
「いつからだろ?・・・ロス行くときは、たぶん好きだったと思う」
と答えた。
それを聞いた瞬間、これまでの桐乃の言葉や行動が走馬灯のように流れる。普通、こうい
うのって死ぬときって相場は決まってるのだろうが、今の俺にはまさしくその表現があっ
ていた。そして次に浮かんできたのは、その時々での俺である。
浮かんでは消える桐乃と俺の言葉や行動、俺はそれらを整理してある結論に行き着く。
おい、これって言ってもいいことなのかよ・・・・・
俺の口から、その言葉を出すことが躊躇われる。そのまま俺たちの間に沈黙が続く。
どれくらい経っただろうか、お互いに一言も口を開かない。桐乃は俺の答えを待っている
に違いない。
ええい、道理なんて知ったことかよ!
俺はそう腹を括ると、自分の結論を言葉にする。
「桐乃・・・俺もおまえが好きだ。たぶんおまえと一緒で『兄妹』って気持ちじゃないと
思う・・・・・だからその・・・」
しかし俺は肝心なところで口篭ってしまう。桐乃は俺の言葉を遮らずにじっと俺が話し終
えるまで待っている。
「だから・・・・・『彼女』になってくれ!」
最後の力を振り絞って俺は言葉を続けた。
「やっと言ってくれた・・・・・」
桐乃が一言だけ答えた。
そのまま俺たちは無言で体を寄せ合う。刻の移り変わりとともに、高台から見える紅葉は
より一層夕日の紅に染まり、鮮やかさが増していく。
「ねえ、記念写真撮ろうか」
沈黙の中、桐乃が突然そんなことを言ってくる。
「そうだな」
桐乃と写真を撮るのはどれくらいぶりだろうか、俺は何だか緊張してしまう。
「それじゃ、いくよ」
桐乃はセルフタイマーをセットすると、駆け寄ってくる。そしてそのまま俺の首に飛びつ
くと顔を寄せてきて・・・唇を重ねる・・・
これが俺たちの始めてのキスであった・・・・・・
『カシャ!』
いいタイミングで、シャッターが切られた。神のなせる業か、桐乃の計画か、どちらにせ
よ決定的瞬間が記録されてしまった。
「桐乃、データ消せ!」
「ベーーー!これは今日の記念なんだからね」
俺たちの撮影旅行はこうして幕を下ろした。
---それから数日が経った。
俺と桐乃は恋人同士になったが、表向きはいつものままだ。俺たちの関係は、まだ誰にも
知られるわけにはいかない。
「桐乃、弁当買ってきたから晩飯食おうぜ」
「うん」
その日、親父たちは知人の法事とかで出かけていた。場所が結構遠いらしく、明日の夕方
まで戻らない。
夕食の間、俺たちは終始無言であった。せっかく二人っきりなんだし、何か恋人らしい会
話をすりゃいいんだろうが、俺には何を話していいか検討もつかない。
夕食が終わり、かたづけをすると桐乃が
「あのさ、写真プリントしたから、あとで部屋きて」
とだけ言ってリビングをあとにする。俺は風呂に入ると、桐乃の部屋に向かう。
「おい、入るぞ」
「入って」
俺は桐乃の部屋の扉を開け中に入る。桐乃はベッドに腰を降ろして、写真とにらめっこを
していた。俺も桐乃の隣に腰を降ろすと、一緒に写真を眺める。
「なかなか決まらなくてね」
「おまえが一番いいと思ってんのはどれだよ」
「あ、あれは・・・さすがに・・・」
桐乃は、頬を染めながら照れ笑いを浮かべる。
あー、あれね・・・・・
俺は桐乃の反応を見て、一人納得してしまう。
「あんたはさ・・・どれがいい?」
桐乃から写真を受け取ると、その中から一枚よさそうなのを選ぶ。こいつも納得したよう
で、それをコンクールに出すことにしたようである。
しかし写真選びが終わってしまうと間が持たなくなり、なんとも落ち着かない。すると桐
乃から体を寄せてくる。
「おまえ、なにやって・・・・・」
「いいじゃん別にさ・・・今日は二人きりなんだし」
桐乃の言葉を聞いて踏ん切りがついた俺は、桐乃の体を抱き寄せる。桐乃も腰に腕を回し
て甘えてくる。俺はそんな桐乃が愛しくなり、優しく唇を重ねる。桐乃は驚いたように目
を丸くする。
「京介ッ!」
唇を離すと、お互いの唇は部屋の明かりでキラキラと輝く銀色の糸で繋がっている。今ま
驚きの表情をしていた桐乃の目から涙が溢れてくる。
「おまえ、泣いてっ」
「うっさい、ビックリしたからとかカン違いしないでね!う、嬉しいからに決まってんじ
ゃん!」
涙をぼろぼろと流しながら桐乃はそんなことを言う。
「二回目だろ」
「だってさ・・・・・最初のはあたしからっていうか・・・不意打ちみたいなもんだし、
あんたからしてくれたから・・・」
そう言うと今度は桐乃からキスをしてくる。
「あたしからのお返し・・・・伝わった?」
「ああ・・・・・」
「ふふふ・・・・・じゃあ今度は舌だしてみて」
俺は桐乃に言われるままに、舌を出してみる。すると桐乃は俺の舌に優しく自分の舌を絡
める。
「きょ、ふけえっ・・・・・」
「桐っ乃ッ!」
「んっ・・・・れゆ、っはふ・・・」
柔らかく温かな桐乃の舌に触れると、頭が真っ白になり何も考えられなくなる。それは桐
乃も同じようで、お互いただひたすらに相手の舌を求めあった。
---翌朝、あたしは肌寒さを感じて目を覚ました。何か頭がボーっとする。風邪でも引
いたのかな?
布団を肩まで掛け直して寝返りを打つと、目の前に安らかな寝顔を浮かべる京介がいた。
何こいつ安心そうな顔しちゃってさ。あたしと添い寝してんのがそんなにいいんだ。
そんな京介の寝顔を見てイタズラ心を擽られたあたしは、京介を起こさないように注意し
ながら、腰に腕を回して抱きつく。するとさっきまでの肌寒さが嘘のようになくなり、京
介の温もりで心地よさを覚える。それはまるで直に肌が触れ合うかのような温かさだ。
あれ?何かおかしい・・・・・・・・・・・・・・・
いつもと何か感触が違うのである。しかしその違和感がなんであるかはすぐにわかった。
京介の胸に埋めているあたしの顔にパジャマの感触がないのである。
なんでこいつパジャマ着てないのよ。
あたしは京介がついにシスコン拗らせて変態になったのかと思い、布団の中も覗き込んで
確認してみる。すると下も穿いていない、もちろんあれも・・・それはあたしも同じであ
った。
「ーーーーーーーーっ!」
あたしは声にならない驚きの声をあげて、パニックになりそうになる。
待ってよ・・・昨日なにあったっけ?
写真選んで・・・・・抱き合って・・・キスして・・・・・っ!
そして一つの記憶にたどり着いた。
「そっか、あたしたちあのあと・・・・・」
あたしの顔の少し上にある京介の顔は、いまだに安らかな寝顔である。しばらくは起きな
いだろう。そう思ったあたしは、京介を起こさないように体を上にずらすと、京介の寝顔
を覗き込み
「もう一生離さないかんね」
と言って京介にキスをする。
「ん・・・・・・」
あたしが唇を離すと、京介がゆっくりと目を開ける。でもまだ寝ぼけているのか状況が、
飲み込めていないようだ。しかし少しするとやっと頭が働いてきたのか
「おまえ、なにしてんだよ」
と言った。
「おはようのキス」
あたしはそう答えると、また京介の胸に顔を埋める。京介はそんなあたしの髪をやさしく
撫でてくれた。
どれくらいそうしていただろうか突然京介が
「桐乃、そろそろ起きないとやばいぞ」
と言い出す。あたしも一応時計を確認してみるがまだ6時前である。
「あと一時間くらいこうしてられるじゃん・・・もう少し抱き締めさせろつーのっ」
あたしはそう言って駄々をこねる。
「俺はいいけど、おまえシャワー浴びなくっていいのかよ」
「-------っ!」
あたしはその言葉で我に返る。
そういや、その・・・・・・・そうじゃん!
あたしは慌てふためき、ガバっとベッドから飛び起きるとそのままの姿でお風呂場に駆け
込んだ。
もうあいつったら、こんなに・・・・・
あたしはそんなことを考えながらシャワーを浴びる。
しばらくすると外で洗濯機が回る音がして、お風呂場の扉が開く。ビックリして振り返る
と京介が立っていた。
「あんた、なに勝手に入ってきてんのよ」
「別にいいだろ、昨日は・・・・・」
「うっさい!」
あたしは手に持っていたシャワーで京介にお湯をかけた。
「もうほんと変態シスコンなんだから・・・」
結局、あたしの攻撃に怯まなかった京介に押し切られて、体を洗ったあたしたちは湯船に
浸かっている。うちのお風呂は少し狭いから、あたしが京介に抱っこされている。
「わるかったな、変態でよ。てか、恋人同士なのにシスコンはないんじゃないか?」
「だってあたしたち・・・恋人同士だけど兄妹だし」
「まあそうだな・・・」
「後悔した?」
「ばーか、するかよ!」
京介はそう言うと、あたしの顔に手を当てて振り向かせるとキスをする。なんて優しくて
心地いいんだろうか、ずっとこうしていたい。
しかしあたしたちだけの時間はそう長くは続かない。洗濯終了を告げるブザーをともにお
互い名残惜しそうに唇を離すと、お風呂からあがる。シーツとかは部屋に干しておけば夕
方までに乾くだろう。
そのままあたしたちは部屋に戻ると制服に着替えて、リビングで朝食をとる。
そろそろ、いつも学校に行く時間だ。
「桐乃、そろそろ学校行こうか・・・」
「・・・そうだね」
あたしたちは手を取り合って玄関に立つ。いつもは別々だけど今日は二人揃って。
この扉をくぐれば、あたしと京介は次に二人だけの時間が来るまで『兄妹』に戻らなくて
はならない。
「桐乃、幸せか?」
「うん、あたしは幸せ。京介は?」
「俺も幸せだ」
あたしたちはお互いの気持ちを確かめあうと、どちらともなく軽いキスを交わし玄関を抜
けるのであった。
Fin
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最終更新:2011年11月07日 06:58