922 名前:愛情弁当【SS】[sage] 投稿日:2011/11/14(月) 16:06:49.12 ID:SuoRDL20O [2/6]
「明日はあたしのお弁当作って」
「へっ、何の話だ?」
桐乃が自分が載ってる雑誌を見せてくる。そこにある桐乃の近況欄を見てみると、

『最近お兄ちゃんが料理にハマッてて、今度お弁当を作ってくれることになりました。どんなお弁当になるか楽しみです♪』

「…と言うわけで、弁当作って」
「いやいや、と言うわけで、とかおかしいだろ」
「このままじゃあたしが雑誌にウソ書いたことになっちゃうじゃん。
あんたが弁当作ってくれれば解決するんだから。分かったら作る!」
「……へいへい」
どう見ても桐乃の無茶ぶりなのに、ついつい返事をしちまった。やれやれだぜ。

※※※
翌朝、早起きして俺は台所に向かう。
「何やってんの、京介?」
「お、お袋? ……いやあ、弁当を作ろうとしてな」
「それ、桐乃の弁当箱よね?」
「……ハハハハ、おかしいな、なんで桐乃の弁当箱持ってんだろ、俺は? ホントおかしいな、アハハ……」
「………」
「分かった、分かったよ。白状します。桐乃の弁当を作るつもりでした」

「へぇー。で、どんな弁当作るつもりなの?」
「それは、お袋がいつも作ってる感じで」
「なるほどね、でも京介は、母さんが桐乃にどんな弁当作ってるか知らないでしょ? 京介用とは大分違うんだから」
「そうだったのか……」
「だから桐乃用の弁当を教えてあげるわ。そうと決まれば支度ね♪」
やたら張り切りだすお袋の監督の元、俺は弁当を無事に作って桐乃に渡したのだった。

※※※
「桐乃、お弁当たべよ」
「うん、たべよたべよ」
「それにしても、桐乃のお弁当はいつも美味しそうだよね」
「ありがと。今日はいつもとちょっと違う感じで作ったみたいだけどね」
「へぇー、そんなことがあるんだ。面白そう。早く開けてみせて」
「うん。」

「……こ、これは……」
「うわあ、可愛いー」
あたしの目の前には、桜でんぶで大きくハートが描かれたお弁当が姿を見せていた。
「この刻み海苔で描かれてる似顔絵は桐乃……と、お兄さん?………」
「ハハハハ、全くお母さんったら、お茶目なんだから、ハハハハ……」

あいつ、なんて弁当を作ったワケ? 幸いあやせはお母さんが作ったものだって信じてるからいいけど、
これじゃまるで、まるで、愛妻弁当じゃん! キモっ!! キモっ!!!

「桐乃、なんだかニヤケてるよ。それによだれが」
「……ああ、あんまり美味しそうだったから。とりあえず食べようか」
「おっ、うまそーな弁当じゃん。桐乃ぉ、ちょっと食べさせてくんね?」
「加奈子、ダメ。これはあたしの弁当なんだから」
「いーじゃんか、加奈子の弁当も分けてやるからさぁ」
「ダメダメ」
「ちぇ、分かったよ。てか、なんでわざわざ弁当を撮ってんだョ桐乃?」

※※※
…しかし、いつも桐乃があんなに可愛い弁当を食べてるとは知らなかったぜ。
俺の脳裏に、満面の笑みを浮かべながら弁当を食べる桐乃があらわれ、何故かドキッとしてしまった。
「たまには、あいつのために料理作るのもいいかもな」
何故かニヤケるのを抑えながら、俺は桐乃と同じスタイルの弁当を食べるのだった。




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最終更新:2011年11月15日 07:16