737 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[] 投稿日:2011/12/01(木) 22:36:08.21 ID:B3uPEFzG0 [14/15]

桐乃「おっっっそい!」
京介「すぐ行くから待ってくれよ…」


身支度が遅れたのは桐乃の方だった。で、待ってる間に寝てた
俺が罵られてるっていう。まあ仕方ないが。昼、1時過ぎ。

桐乃「ランチの時間終わるでしょ、早くしてよね!
   いっっっつもどっか抜けてるんだから!」
京介「悪かったって…でも、もともとはお前が
桐乃「ほら、行くよ!」
京介「…へいへい。あ、ていうかどこの店なんだ?」
桐乃「言ったでしょー!? 渋谷の店よ。」
京介「ぇ、いや今初だが…」
桐乃「あんた寝てたからじゃないの?」
京介「すまん…ってそれ俺のせいか…?」
桐乃「ナニ?」キッ
京介「本当スンマセン」
桐乃「ほら時間ないんだから、行くよ!」

ニラミをきかされたが、どっか嬉しそうだ…何なんだ。

ひとまず説明すると今日は、桐乃が陸上で記録を出したお祝いで
出掛けることになった。というのも応援に行く約束をした俺が寝過ごして…
何やらキレまくった桐乃に苦し紛れに
「ど、どっか連れてってやるから!」
と言ったところ、何やらスっと桐乃の怒りが収まって
「ぇ、ん…。じゃあ土曜日、空けときなさいよ!」
と。まあ埋め合わせだ。振り回されることは覚悟済みなのだぜ。


桐乃「はー、ラッキー!今日はそんなに混んでないみたいね」
京介「おお、何か予想と違って落ち着いた店だな。小綺麗で」
桐乃「感謝しなさいよ、隠れ家タイプの名店なんだから」
京介「へー…まあ自分じゃこういうとこ見つけられねーなぁ」
店員「お二人様ですか?」
桐乃「へっ?…あっ///…っそうです!」
京介「?」
店員「お煙草は吸われますか?」
京介「あ、いえ禁煙席で」
店員「では奥の席へどうぞ~」

桐乃「……///」
京介(どうしたんだ?急に声掛けられてびっくりしたのか?)

京介「あ、おい」
桐乃「へぁ///!?な、なに?」
京介「いやお前が何なんだ…。席ココだろ」
桐乃「ん、あ、そうね、何かボーっとしてた…」
京介「大丈夫かよ……ほら奥座れよ」
桐乃「え…あ、うん……ありがと///」
京介「あ…おぅ(はい?)」

何か様子がおかしい。何この可愛げ。と思って見てたら

桐乃「…何ジロジロ見てんのよ、キモ!」
京介「……へいへい…逆に落ち着くわ、それ…」
桐乃「何そのM宣言。マジありえないんですけど」
京介「M宣言じゃねえ…いいや、ほら注文しようぜ」

まあ、とりあえず一息ついた。


桐乃「あー、やばい♪やっぱおいしー♪」
京介「おお確かに旨いな。流石だわ」
桐乃「トーゼンでしょ!」
京介「まああれだな、しかし。大会新記録?だっけ?」
桐乃「そうよ、まあ私の実力なら余裕っしょ!」
京介「おま、自分で…まあ事実だけどな。うん、すげえわ」
桐乃「ってそれをアンタ、寝過ごすって!!どういう神経してんの!?」
京介「(うわ地雷った!)いや、だからゴメンって!ここも奢るから!」
桐乃「ほらもう、簡単に済ませようとする!…神経疑うわ」
京介「だから今日一日で何とか埋め合わせするから…」
桐乃「トーゼンでしょ!…でも別にここは奢りじゃなくていい」
京介「え? …あ、そう?」
桐乃「…その代わり、後でしっかり埋め合わせしてもらうからね!」

ああ…正直ランチ奢る程度で済ませたかった…
こいつの要求って何だ…怖過ぎるだろ…

桐乃「…それに脚速くなったの兄貴のせいだし…」ボソッ
京介「…ん?スマン、何て言った?」
桐乃「何でもない!アンタってほんっと…肝心なとこでダメよね…」
京介「いやスマン…ってそんなにか?」
桐乃「そんなによ!ほら、さっきっから顔!ソース!」
京介「え?付いてるか?」
桐乃「もう、だらしないんだから…」スクッ
京介「わかっ(たよ…って、うぉ!)」
桐乃「……」フキフキ
京介「」
桐乃「……///」スッ
京介(//////何が起きたってんだ…)
桐乃「…///気をつけてよね!一緒に居る私が恥ずかしいじゃない!」
京介「…///あぁ、悪い…」
桐乃「…何か子どもの頃もあったわ、こんな感じの…」
京介「(///頭がボーっとする…)ああ、あったっけな…」
桐乃「…憶えてる?」
京介「ん……あぁ、何か一時期やたら消毒されたような、ケガした時とか」
桐乃「あ!…そうよアンタいっつもどっかに傷付けて帰ってきてw」
京介「そうそう、もう俺が帰ったら消毒のスプレー持って待ってるまでになってw」
桐乃「っな!だ//////だってアンタが!!」
京介「懐かしいな~、随分昔だよな。よっぽど気に入ってたんだな、消毒」
桐乃「………。」
京介「ん?あれ、どうした?」
桐乃「…ホント、バカさに定評があるだけあるわ」
京介「…どこでだよソレ」

そんな感じで食事の時間は過ぎていった。


ちょっと不機嫌になったりもしたが、桐乃は基本的に楽しそうだった。
まあずっと陸上の練習が続いてたし、久々に落ち着いたんだ。
羽目を外したかったんだろう。青山のショップで服とかを見たかと思えば、
秋葉原に行ってエロゲー関係を買ったり。相変わらずこいつの振れ幅は広い。

京介「あれ?お前自分で金出すのか?」
桐乃「へ?何で?」
京介「いやてっきり…ほら、埋め合わせって」
桐乃「…あぁ、それは後でいいよ。アンタお金ないんでしょ?」
京介「ぐ…いやまあ正直そうだが…」
桐乃「ほらどいて、邪魔!すいませーん!」
京介(…何か気ぃ使って安めな物にしてくれるんかな…。
   それはそれで情けない…助かるが)


そうしていくつかの買い物を済ませ、夕方になっていった。
が、それらしい気配がない。と思ってたら

桐乃「はぁ~…りんこりんの限定モノも買えたし!そろそろ帰ろうか」
京介「!? え、帰るのか?」
桐乃「え何? …アンタ何か他に用あるの?」
京介「…いや、」
桐乃「じゃあほら荷物持って!」

…忘れてるのか?
何度も訊くのも変な気がしてそのまま歩いて駅まで行き、
普通に帰りの切符を買った。
疲れたのか桐乃は電車の中でちょっと静かだった。


家のある駅に着くと外は薄暗くなっていた。
帰り道は昼とは違い、ほとんど会話はなかった。
桐乃を見ると何かフラフラ腕を揺らして歩いている。

京介「…疲れたか?」
桐乃「え?…まあうん、そうね。ちょっと」
京介「何か悪かったな、やっとの休みなのに」
桐乃「全然。私が行きたかったんだし」
京介「まあそうだけど…」
桐乃「…何よ、アンタ自分がヘトヘトだって言いたいの?」
京介「いやいや違うって、ほら何回か怒らせたりもしたしさ」
桐乃「ああ、別にそんなの。基本的に楽しかっ…」
京介(…ん?)
桐乃「………///」
京介「……いや///、良かったならいいんだ。ほら、
   埋め合わせできたかなってな」
桐乃「…うん」
京介「……そっか」
桐乃「………ねえ、兄貴」
京介「ん?」
桐乃「………」

桐乃「…………手、繋いでいい///?」


聞き違い、ってことはない。薄暗くて人気のない道で
声は小さくはあったが、はっきり聴こえた。


京介「なん……俺の、手?///」
桐乃「…他に誰がいるのよ」
京介「いや…俺は構わないけど…」
桐乃「…薄暗いし。これで埋め合わせOKにしてあげるから」
京介「…こんなんでいいのか?」
桐乃「…いいの?わるいの?」
京介「いや……いいけどよ…」
桐乃「……///」-スッ


桐乃の揺れてた手が、そっと俺の方に近づく。ふわっと香水の匂いがした。


桐乃の指が、俺の手の平に入ってきて、キュッと握ってきた。


 
俺は我に帰り……握り返した。


普段強気な桐乃の手は小さくて滑らかで柔らかく、温かかった。


桐乃「……///」
京介「……//////」

何も喋れない。静かに歩いていると時々、桐乃の肩が俺の腕に当たった。
ぎこちなく歩く速さをお互い合わせながら…お互い顔を見れなかった。


桐乃「…なんか、ひさしぶりだね///…」
京介「……//////なに、が?(やばい緊張で声が)」
桐乃「むかしはさ、よくこうしてたなって」
京介「…ああ、小さい頃はな…」
桐乃「…うん」
京介「………もう消毒はそんなに必要なくなったな」
桐乃「ふふっ。…うん。そうだね」


そんな話で…慣れないことをしてる緊張感は徐々になくなっていった。
普通に可愛いと思った。桐乃を。
フォークダンスくらいでしか女の子の手を握らない俺は、ドキドキしてはいたが…

桐乃「あっ……」
京介「ん、どうした?」

見ると近所の公園。小さい頃はよく遊んでた。
そう思った直後、桐乃の手の握りが強くなった。
そして、桐乃は握ってた手をパッと離した。

京介「……おい、どうしたん
桐乃「なんでもないっ!!」
京介「!!」ピクッ


桐乃は大きな声を出した後、ハッと我に帰ったみたいだった。
俺は……驚いたまま声を出せなかった。どうしたって言うんだ?

桐乃「………」
京介「…………」
桐乃「……っもう…」
京介「…もう…?」
桐乃「………もう、大丈夫だから…」
京介「…え……ああ…」

…何だろう、急に恥ずかしくなったのか?確かにもう家は近いが…

結局、その後は無言のまま、手は離したまま歩いた。家の近くまで来た。

桐乃「…ねえ、アンタ先に家に入ってよ」
京介「え、どうして?」
桐乃「…親がヘンな勘違いするかもしれないでしょ?だから時間ずらすの」
京介「そんな心配…まあ、そうかもな。でもじゃあ、お前から入れよ」
桐乃「何で」
京介「もう家近いけど、一応…危ないかもしれないだろ」
桐乃「…!///」
京介「いやまあ、普通そう考えるだろ」
桐乃「……わかった」
京介「…おう」


そう言うと桐乃は小走りで玄関に向かった。
15分くらい、俺は携帯をいじったりしながら時間を潰した。
頭の中は、さっきのことで一杯だ。何だ?癇に障ることしたのか?

何も分からない…結局分からないまま、俺は家に入った。


京介「ただいまー」
母「あら、京介。丁度よかった。ご飯できたから手洗っていらっしゃい」
京介「…はいよ~」

手を洗って、食卓に向かう。
桐乃は普段通りに椅子に座ってた。一瞬目が合ったが、すぐ外した。
いつも通り、桐乃の隣に座っての食事。

父「そう言えば桐乃、陸上で新記録を出したんだって?」
桐乃「父さん、大会の新記録ね。それだと世界新記録みたいだからw」
父「んん。まあ凄いことに変わりはない。よくやったな」
桐乃「うん、ありがと」
母「お父さん、大会の写真ずーっと見てたもんね~」
父「…ずーっとじゃない。娘の活動を確認しんたんだ」
桐乃「ははっw、そうなんだ」
父「それはそうと京介、おまえまた成績が下がったらしいな」
京介「……ちょっとだよ」
父「油断すると下がり続けるんだ。継続力なんだ、あまりサボるなよ」
京介「だーいじょーぶだよ、勉強するって…」
母「あんまり田村さんのところに迷惑かけちゃだめよ」
京介「わーってるよ。わかったから」
父「その点、桐乃は一人でしっかりできてる。おまえも見習え」
京介「へいへい…」
桐乃「……」
母「桐乃?どうかしたの?」
桐乃「え?ううん、何でもないよ!」
母「そう?じゃあほら、冷めない内に。桐乃の好きな物作ったんだから」
桐乃「…うん!ありがとう、お母さん」
京介「………」

…若干、調子が外れるところがあるが、まあいつも通りに戻ったか?
まあ、今日はもう俺にできることはないだろう。

食事を終え、いつも通りテレビを見て風呂に入り、自分の部屋に帰る。


京介(…何だかんだ、疲れたな今日は…)
京介(よくわからんことも多かったが…)
京介(帰ってから、桐乃とは結局何も話さなかったな…)
京介(………………)
京介(明日になったら、いつも通り、ってこともあるかもな…)
京介(……ねむい……まだちょっと早いけど……寝るか)

照明を消し、ベッドに倒れこむ。すぐ眠りに入った。


………………


…………














トン…




 


 
 
トン…



京介(ん…何だ…)



トン…



京介(…壁から?桐乃の部屋か?)



トン…



京介(……)トン



…………




京介(……治まった?寝返りか何かだったのか?)









…キシ…キシ …


京介(……ああ、桐乃……起きちゃったのか?)


ガチャ…


…バタン



京介(………)



…キシ…キシ…




…………




京介(…………ん?)












…ガチャ…





…バタン


 
 

 


京介「………桐……乃…?」
桐乃「…………」
京介(…桐乃だ。何か持ってる…エロゲーか?)
桐乃「…………」
京介(……目が慣れてきた…ん?あれは…エロゲーじゃない…)
桐乃「…………」
京介(……ぬいぐるみ?…部屋にあったな。エロゲー関係の奥に)
桐乃「…………」
京介「…桐乃、どうした?何も言わねえとこえーよ…」

桐乃「…………」
桐乃「……………」
桐乃「………………おにいちゃん」
京介(!!///……おにいちゃん?)
桐乃「………おにいちゃん………」
京介「…桐乃、おにいちゃん///って…」
桐乃「……ほめて…?」
京介「!? …な、何を?」
桐乃「……………」
桐乃「…きりの、あし、はやくなったよ…」
京介(何だ…子どもみたいな喋り方…)
桐乃「………ねえ、ほめてよぅ…」
京介(誉めるって…)
京介「いや…うん、凄いよ桐乃。お前頑張ってたもんな。」
桐乃「…………」
京介(……こういうことじゃないのか?)
京介「……どうしてほしい?」
桐乃「…………」
桐乃「………………なでなでして?」
京介「!? …なでなで?」
桐乃「………うん」

目の前にいる桐乃は、まぎれもなくあの桐乃だ。だが、
言ってることとやってることが子ども…あの頃に戻ったような…

京介「………」
桐乃「………」
京介「…おう、分かった。こっちに…」
桐乃「…うん」

ベッドの近くに桐乃が来て、俺は立ち上がって、
桐乃の頭をなでた。

京介「…これでいいのか?」ナデナデ
桐乃「……もっと」
京介「………」ナデナデ
京介「…………」ナデナデ
京介「……………」ナデナデ…

京介「……なあ、まだ
桐乃「まだ、まだだよ」
京介「……」
桐乃「だって…」
桐乃「…きりのはずっと待ってたんだよ?」
京介「……?」
桐乃「ずっと頑張りながら、待ってたんだよ?」
京介「…………ずっと?」
桐乃「ずっと……あの日、おいていかれてから、ずっと…」
京介「!? …あの日……から…?」
桐乃「お兄ちゃんが…公園で、ついてくるなって…あの日から…」
京介「………………!!」
桐乃「きりの、何でかわかんなかったよ。何でお兄ちゃんに
   来るなってゆわれるのか…
   あしが、おそいからだと思った。だから一生懸命、練習したんだよ…
   追いつこうと、思ったんだよ…」
京介「……桐、乃…」
桐乃「…でも、違った…勉強もやってみた…それも違った…
   他にもいろいろやった…でも…
   …目指したとこに着いたら、そこにお兄ちゃんはいなくて…
   やればやるほど…もっと離れてって……時間ばっかり経った…」
桐乃「…みんなは、誉めてくれた」
桐乃「…でも、それは私が欲しいものじゃなかった」
桐乃「きりのは…」
桐乃「…私は、お兄ちゃんに…」
桐乃「お兄ちゃんに誉められたかったのに…」


俺は、思い出した。幼い頃の幼い過ちを。
同い年の友達と遊ぶときに、年下の、しかも女の子を連れて行くと、
残酷なまでにからかわれ、そして俺はそれに耐えられず…


桐乃「……お兄ちゃんのこと、嫌いになろうとも思ったよ、でも、」
桐乃「でもなれないよ……大好きだったんだから…」
桐乃「ずっと……お兄ちゃんのこと…」
京介「…き…りの………」
桐乃「…おにい……ちゃん…」
京介「……ごめっ…ん………ごめん…な……」
桐乃「う……うあ……」
桐乃「うあぁぁっ…ひっ…
   うあああああああああああああああぁ……」

俺は、その資格があるのか…考える間もなく桐乃を抱きしめた。
桐乃は涙を停めずに流し続けた。俺も一緒になって泣いた。  

京介「…ごめん……桐乃、ごめん……」
桐乃「うあぁぁぁぁ……お兄、ちゃん…さびしか、った…
   さびしかった、よぅ……」
京介「もう……二度とあんなこと、言わないから…ごめんな……」
桐乃「……お兄ちゃん…うぅぅ……」ギュゥ…
京介「きりの……」
桐乃「お兄ちゃん……お兄ちゃぁぁぁん!」ギュゥゥゥ…


桐乃は力一杯、俺に…こんなどうしようもない俺にしがみつくように、
抱きついた。そのまま……しばらくの間、そのままだった。
薄暗くて時計は見えなかった。


京介「…………」
桐乃「…………」スンッ…
京介「……桐乃…」
桐乃「………………ん…」

桐乃はゆっくり…手をほどいて…ベッドに座った。
俺はどうしようか迷っていると、桐乃が俺の手を引き、隣に座らせた。

京介「……桐乃、すまなかった。本当に……どうしようもねえ…」
京介「…正直、どう償っていいか……今は分からない…」
桐乃「………」
桐乃「……いいよ、もう……気は済んだし…完全にじゃないけど…」
京介「……本当、抜けてる兄貴だよな……」
桐乃「……本当よ!……なのに…」
桐乃「…何か、急に……優しかったり…」
京介「……そうか?」
桐乃「……///そうよ! …今日だって、一緒に歩道を歩く時は絶対、
   私に車道側を歩かせないし…」
桐乃「…公園で、私が急に大声出しちゃった後なのに…
   私に先に家に入れって…言うし…」
京介「……はは、それくらいのこと…お前に鍛えられたのかもな」
桐乃「………だから、嫌いに…なれなかった」
桐乃「……嬉しいのが…苦しかったり…してたんだ」

京介「…俺もさ、その、原因を忘れてたけど…
   お前にはウザがられて…嫌われてるんだって思ってたよ…」
桐乃「うん…でも……それは
京介「手掛かりだったんだよな…
   それをずっと、
   …守っててくれてたんだよな」
桐乃「!!!…」
京介「それを俺は…ずっと……逃げてたようなもんだ」
京介「…もう、殴りたいときに殴ってくれてもいい。
   蹴りでもいい。そんなの安いもんだ」
京介「そんなもんですむものじゃ、ないんだから…」
京介「俺は桐乃の…時間を……埋め合わせを、しないといけない」
京介「……でもすまない…どうしたらいいか…今は思いつかない…」
桐乃「………」
桐乃「……いいよ」
京介「…いいってことないだろ」
桐乃「…いいの」ギュ
京介「え…」
桐乃「…………」
桐乃「…ありがとう。私の…時間を、
   想いを……考えて、大事にしてくれて」
桐乃「……報われた気がするの、今。…嬉しかったの」
桐乃「だから、いいの……ありがとう…お兄ちゃん」


桐乃のその言葉を聴いた瞬間、いろんな桐乃のイメージ……
小さい頃から、さっきの公園まで…笑ったり怒ったり泣いたりしてる
桐乃の顔が走馬灯みたいに一瞬にして流れ、
それらが束ねられたような…そんな映像が見えた。

そして、今。桐乃の体温を感じている。ここに…帰ってきた。


京介「……」ポタ…
桐乃「……泣かないでよ…」
京介「……ああ、悪ぃ…」グイッ

桐乃「…あったかい」
京介「…ああ、そうだな」
桐乃「…ふふっ」
京介「………けど、あれだな、いや…」
桐乃「…何?…言ってよ」
京介「いや…やっぱ久し振りだからさ、お兄ちゃんっての…照れるな」
桐乃「…!!//////」
京介「あ!//////いや、悪い!嫌だってことじゃねえよ、当然」
桐乃「…うぅ///」
京介「あ、いやだから(しまった2人して赤面って///…)」
桐乃「……わかった!」
京介「うぉ! え、何が?」
桐乃「だから……埋め合わせよ!」
京介「え?あぁ、何か思いついたのか?」
桐乃「そうよ!それは……」
京介「……それは……?」グッ
桐乃「………」
桐乃「一緒に、寝る…///」
京介「……ぇ…!?」
京介「いや///!それはおまぇ…まずくないか?」
桐乃「まずくない///!ほら、そうやってまた私のこと…」
京介「いやいや!これはまた違うだろ!なんつーかさ」
桐乃「違わない///!昔は一緒に寝てたじゃん!」
京介「いや、そうだけどよ…」
桐乃「埋め合わせ、するって言ったじゃん…」ジワッ
京介「っ!」
京介「…わ!わかった、わかったよ」
京介(えぇ~…ほんとかよ?大丈夫かよ?俺がな?)
桐乃「ほんとっ?」パァッ
京介(勝てんわコレ)
京介「ああ…ほんとだともさ…」

……落ち着こう。いくら俺が女慣れしてないからって、
相手は妹だ。流石に問題は起きないだろ…起こさない。
そう念じながらベッドに入ってると

桐乃「……何か、ドキドキするね///」
京介(そ……そういうこと言うなあああああぁぁぁ!)

ベッドの中、俺は出来るだけ端に寄って外向きだ。
が…多分、心臓の音は伝わって…

桐乃「…ねえ」
京介「! な、何?」
桐乃「何、離れてるのよ…」
京介「え…いやぁ…」
桐乃「…結局、距離とるのね」
京介「!! いや、そんなこと
桐乃「じゃあ…こっち向いてよ///」
京介「ぅ…ああ…」

そして、言われるがままに…しかも、頭が回ってないせいか、
くるっと寝返りを打った俺は、
…その分距離が縮まることを考えれてなかった。

桐乃「」
京介「」
桐乃「――///!!」
京介「――//////!!!」
桐乃「な、急っ、に///」
京介「あああスマン///!ちょっと
桐乃「あ!待って、離れないで、」キュッ
京介「!!」
桐乃「…よ……///」
京介(……うわ…///)

桐乃「…このくらいで…いいじゃん///」
京介「う……おぉ……///」
京介(やばい視線どこやっていいかわからん…)
京介(腕のポジションが変だし…もう少し)ピトッ
桐乃「ひゃ!?//////」ビクッ
京介「ふぉ!?//////」バッ
京介「ご、ごめん!///」
桐乃「あ…」
京介「その、ワザとじゃ…!」
桐乃「…っだから!」
京介「! え?」
桐乃「…そういう」
桐乃「…そういうの、やめたいの!」
京介「そういうの、って…」
桐乃「だから、今みたいに!あんた私が嫌がるって思ったんでしょ!?
   そうやってさ…ヘンな距離ができちゃうの、もうイヤなの!」
京介「!! ……いや、つっても、さ…」
桐乃「…嫌じゃ、ないから……さっき言ったじゃん…」
桐乃「……す…」
京介(え……ちょ……)
桐乃「…す…………好きだってっ//////」
京介(う…うわああぁぁぁぁ//////////)

桐乃「わ、私だって、確かに緊張してるけど!でも!」
桐乃「が…がんばる、から…」
京介(……がん……ばる…?)
桐乃「……ん…///」ギュッ
京介「!!っ」ビクッ
京介(う、腕に///!)
桐乃「動かないで///!」
京介「!!」ピタッ
桐乃「そ…そうやっていちいち……離れてたら…」
桐乃「…追いつけないじゃん……あの頃から…」
京介「……!」
京介(ああ……)
桐乃「だから……」
京介「……そうだ、いつも…おまえばっかり…」
桐乃「――え」
京介「おまえばっかり頑張らせてちゃ…ダメなままだ」ダキッ
桐乃「!!//////」ビクッ
京介「俺も……俺が、追いつかねえと、な…///」ギュッ
桐乃「あ!あんた何、急に…///」
京介「///…は、離さないから……」ギュゥゥゥ…
桐乃「!!!//////」ゾクゾクッ
京介「……俺も…」
京介「…俺も、おまえのこと…す……」
京介「……好きだからな///」
桐乃「――――――!!!/////////」ボシュー…


…顔が、熱い。多分、桐乃も。
いつもこうはいかないだろう…でも、せめて今だけでも、
そらさない。薄い月明かりが差す部屋の中、
目が慣れてきてる…今、お互いの目を、合わせたまま…

桐乃「…う……ぁ…//////」スゥッ
京介「ん…………//////」シュ…

言葉にならない声、呼吸。衣擦れの音まで…耳が捕まえてしまう。
時計が見えた。丁度、23:59 から 0:00 になったところだった。


桐乃「ね、ねぇ…///」
京介「は、な///、なに?」
桐乃「…髪、ちょっと痛い…」
京介「か?…ああぁ悪ぃっ…」スッ
桐乃「…ぅん……」サラッースッ
京介(あ…何かまた少し…近く…ああ数センチがでかく感じる…)
桐乃「――ありがと///」
京介「え、いや大したこと…」
桐乃「ちがう…さっきの……///」
京介「――!//////…うぁ……いや」
桐乃「///……ね、あに…お兄ちゃん」
京介(――お兄…!///あんまいろいろ、連発は…)
桐乃「……甘えて、いい?///」
京介「―――っっっっっっ!/////////」
桐乃「………だめ?」
京介「っっっだっ、なわけ…//////」
桐乃「――ん…///」ギュゥゥ…スリスリ
京介(―――っっっ!!!//////)ゾクッ
桐乃「…ねぇ……」
京介「ふぁい?///」
桐乃「…お兄ちゃんも……ぎゅって…してよ///」
京介(――――っっっっっ!!!////// や、休みがねえ…!)
桐乃「……ぎゅって…してぇ…」
京介「ぅ…く……ああ……//////」…ギュゥゥ
桐乃「―――!//////」


…近過ぎる…互いの吐息が、流れて、当たる。
柔らかくて、温かい、桐乃。

桐乃「………///」
京介「………///」
桐乃「…ねぇ」
京介「!…なんすか?」
桐乃「…………なでて?///」
京介(―――くっ///)
京介「……ああ…」スッ

 ナデナデ…

桐乃「――ん…///」
京介(…ああもう……)

桐乃「………」
京介(……かわいい、な…)
桐乃「…………」
桐乃「……………!!//////」
京介(……ん?)
桐乃「//////っ――」ビクッ
京介(…………?)
桐乃「//////…………」クッ
桐乃「――――っ//////」スッ


 -チュッ

   スッ-



京介(           )
桐乃「~~~~~っ/////////」スッ


 -チュッ

 -チュ………



京介( )

京介(――――――!!!!!!!!!////////////)

京介(3か……っ長い……!!!////////////)




 パッ


  …スッ-


桐乃「…………//////////」ドキドキ
京介「……………/////////」ドキドキ
京介(…キ……ス……//////)
京介(………)
京介(……桐乃、おまえ…)
京介(…そんな…恥ずかしそうに…)

京介「//////…………」クッ
京介「――――//////」スッ
桐乃「っ!!」


 -チュ………


京介「~~~~~っ/////////」ギュゥゥゥ
桐乃「っ!!!////////////」…ギュゥゥゥ





……パ ッ




京介(/////////…キス長過ぎて…唇が引っ張られた…)
桐乃「~~~~~っ////////////」ドキドキ
京介(ああ…鼓動が……もう俺も…聴こえるくらい…///)ドキドキ
桐乃「………/////////」ギュッ
京介「…………/////////」ギュッ

京介(…も……もう………)
京介(か……顔…見れねえっ………//////)

桐乃「……ねぇ…//////」
京介(!うわ……耳元で…//////)
桐乃「……ドキドキするね…//////」
京介「ぅ……する…//////」
桐乃「…聴こえる?//////」
京介「…聴こえる…//////」


桐乃「……………… ス キ …//////」









…………………




――――朝。7時前、ちょっと早め。
桐乃が眠ってる…髪をなでる。デコを合わせてみる。
桐乃のヘアピンが触れ、ひんやりしててそれが心地良かった。

桐乃「……ん……」
京介「…あ……」
桐乃「……」
京介「……」

桐乃「~~~~~っ/////////」
京介「ぅ………~~っ/////////」
桐乃「…お!」クッ
京介「! ぁ?」
桐乃「おはよっ!//////」
京介「~~~~~~~~っ//////」
京介「……ぶふっっっ!」
桐乃「!? んなっ…///」
京介「……いや……桐乃!」
桐乃「…ふぇ!?///」
京介「……おはよう、桐乃///」
桐乃「!!……んぅ…///」

桐乃「………き、キモ!ばか!///」
京介「……おまえな…」
桐乃「………」
京介「……まぁ…」
桐乃「~~~っ//////」ギュゥゥゥ…
京介「!!っ//////」
桐乃「………シスコン!///」バッ


……そう言うと桐乃は…真っ赤な顔のまま小走りで部屋を出て、
自分の部屋に帰って――というかまだ静かで壁一枚だから聴こえるが
――ベッドに「ドンっ」と倒れ…何やらジタバタしてるのが聴こえる。
…いや俺は俺で、今鏡見たらキモい状態になってるな…
埋め合わせは……まだまだこれから、か……?
まあ炭酸の抜けたコーラじゃ物足りないもんだ。


「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」           END






‏‪いろいろとすんません…長々と読んでくれてありがとう。では‬




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最終更新:2011年12月22日 21:28